セバスとバルムンクたちは娼館に突撃します。
始まります!!
.hackers、ナザリック陣営
異世界の暦を現実に当てはめるならば現在は9月3日。昼時にバルムンクとセバスたちは娼館を襲撃していた。
狙いは娼館にいるであろう八本指の幹部の捕縛である。堂々と表の入り口と裏口にと2手に分かれて襲撃したのだ。
表から襲撃したのはバルムンクとセバス。裏から襲撃しているのはオルカとブレイン、クライムである。
「ここに八本指の幹部がいるはずだ。話がしたいと伝えてくれ」
バルムンクは受付人に堂々と言う。それを聞いた受付はすぐさま近くの用心棒たちに声をかける。どうやら受付人は八本指を狙う者が現れた時の行動を教えられていたようである。
マニュアル通りの動きだなとバルムンクは思う。こちらは襲撃班であるため相手の行動は間違いではないが。
「10人か。いけるかセバス?」
「1分もかかりません」
本当に1分もかからなかった。寧ろ数十秒で用心棒たちを一蹴するのであった。そして用心棒と受付人から娼館にいる八本指の手の者を聞き出す。
娼館だから客が行為中なのは分かる。しかしバルムンクたちには関係無い。行為中だろうがなんだろうがある人物が楽しんでいる部屋へと突撃する。
そこに居たのは国の悪徳巡回使のヘーウィッシュであった。その行為中の一部を見てバルムンクとセバスは反吐を吐きたい気分であった。
なぜならヘーウィッシュは裸にした娼婦を組み敷いて、全身を殴るのが趣味の変態だからだ。趣味は人それぞれであるが正義の心を持つ彼らに我慢は出来なかった。
彼に何も言わせずに2人の鉄拳をくらわした。会話は拳から始まるのであった。
「貴様らああああああああ!!」
「大人しく捕縛されることをお勧めします。でなければ酷い目にあいますよ」
バルムンクは殴られていた娼婦に毛布を掛ける。そして癒しの水を渡す。趣味とは言え、女性にこれだけ痣を残すほど殴るとは許せない。
この異世界に来てから初めての怒りであった。
「バルムンク様。この方と私は少し因縁があります。ここは任せてくれませんか?」
「……分かった。オレはもう1人がいる場所に向おう。そいつは任せた」
「任されましたバルムンク様」
「貴様らこんなことをしてただで済むなよ。この娼館には六腕の1人がいるんだぞ!!」
『六腕』と言われても何のことか分からない。とりあえず信頼する用心棒なのだろう。
しかし大事なのはこの場には居ないことだ。ヘーウィッシュが何を言おうが今の状況を打破できない。彼の敗北は決まっていた。
「大人しくしてくれると良かったのですが仕方ないですね。元々許すつもりはありませんがね」
セバスは神速で間合いを詰めてヘーウィッシュに手刀を振るった。
一方、バルムンクは八本指奴隷売買部門長コッコドールを早くも捕縛していた。なぜかオネェ口調で気に入られたが気にせずに捕縛したのだ。
やはり用心棒が居たが敵では無い。クライムから王国に巣食う裏犯罪組織を襲撃するから証拠と人質を残して欲しいと言われている。それも成功している。
「そういえばこいつも六腕とか言っていたな。オルカたちは無事だろうか」
side変更
オルカ、ブレイン、クライムチーム
娼館の裏口から襲撃した彼らはやはり警備隊や用心棒たちと戦っていた。
オルカとブレインは容易く一蹴し。クライムは善戦していた。この騒ぎに乗じて娼婦たちは逃げ出す。その逃げ出しにも手伝う。
「やっぱ好きでこんな仕事をしているわけじゃねえんだな」
「だろーよ。しかし人助けも良いが幹部を捕獲しないと襲撃した意味が無くなるぜ」
「ブレインの言う通りだな。奥へと急ぐぞ」
廊下を走っていると廊下が長く感じた。走っても走っても永遠に廊下なのだ。これは異常事態である。
オルカたちは一旦足を止めた。まずはブレインに確認を取る。
「なあブレイン。これって何か幻術か何かか?」
「恐らく魔法による幻術だ。もしかしたら館全体に幻術をかけてるとなると相当な術者だぜ」
「そーかい、そーかい。こりゃあ油断できねえな」
大剣を構える。幻術にかかっているなら今は危険な状況である。どこから攻撃が来ても嘘か本当かすら分からないからだ。
敵も近くにいるかもしれない。ブレインもいつでも抜刀できるように構える。
幻術は恐ろしいものである。その恐ろしいのは現実が分からなくなるからだ。もしかしたら自分が死んでいるのさえ気付かないかもしれない。
「気が付いたら首が取れてったなんてオチは勘弁だぜ」
「オレもだ」
しかし2人とも恐怖は無い。これ以上の恐怖を体験したから慣れているからだ。
オルカはスケィスで、ブレインはシャルティアで。だからこれくらい何とも無い。あとは油断せずにするだけだ。
「ところで少年剣士のクライムは?」
クライムがいない。オルカはバッドステータスを治すアイテムを使う。
そのクライムもまた幻術に掛かっていた。それに逸早く気付いて自分の手を噛む。
幻術を解く常套手段だ。痛みで幻術を解いた。すると目の前には青白い肌に黒い外套を着た男が立っていた。
彼こそが幻術をかけた張本人である。その男の名は『幻魔』サキュロント。八本指の警備部門最強の部隊『六腕』のメンバーである。
「手を噛んだくらいで幻術が解かれるか。やはり全体的に幻術をかけると脆さが出るな」
「お前は八本指の者か」
「そうだ。六腕が1人の幻魔サキュロントだ」
魔法であるマルチブルビジョンを発動する。サキュロントは何人も増えた。これも幻術による残像である。
幻術士としての戦い方の1つだ。幻術により相手を錯乱させて刺す。
「襲撃班の中でお前が1番弱い。だから先に殺しに来た」
「……確かに自分は弱い。でも負けるつもりは無い!!」
クライムは剣を振るった。その剣はサキュロントを斬るが手応えが無し。それで分かるのは斬ったサキュロントが幻術であったことだ。
斬ったつもりが斬れていない。逆にこっちが斬られてしまう。
「ぐう!?」
「このまま嬲り殺してやろう」
残像による嬲り殺しが始まる。数分もしないうちにクライムは傷だらけになる。それでも諦めない目をする。
負けられない。自分の主人であるラナーの為に、国の為に、自分自身の為に負けられないのだ。
「その目。うっとおしいな」
「言っていろ!!」
「八本指に関わってしまったのが運の尽きだ。他の襲撃班も始末しに行く」
今の言葉を聞いてクライムは笑う。確かにサキュロントは強い方だろう。しかし、セバスに比べると弱すぎる。比べるのも失礼なるかもしれない。
自分は強くなるのだ。こんなところで死ぬわけにはいかないのだ。
「俺は負けない。負けられないんだ!!」
「気に食わないな。そんな目をする奴らはいつも気に食わない。でも全員殺したよ」
「じゃあ俺が殺されない1号だな」
剣を振るうがそれでも剣は届かない。でも剣を届かせる、届かせなければ勝てないのだ。
「剣は届く!!」
「永遠に届くはずがないだろうが!!」
残像による刺殺が向ってくるが冷静にサキュロントを見る。本物は1人で残りは全部幻影だ。
クライムは強く歯を噛む。全身に力を入れる。剣の柄を強く握る。
「うおおおおおおおおお!!」
雄叫びを上げるクライム。その瞬間に脳のリミッターが外れた。身体全体に力がみなぎる。それが過剰の力でもだ。
今はサキュロントを倒すだけを考える。今なら剣が届く。
「1人なんて狙わなくて良い。全員斬る!!」
脳力解放。リミッターを外して幻影を含むサキュロント全員を斬る。その動きは未熟だが間違いなく英雄級に届くだろう。
「うおおおおおおお!!」
「馬鹿なぁ!?」
自分が斬られたことを予想外と言わんばかりの顔をするサキュロント。こんな未熟な奴に斬られる。ありえないと何度も言う。
「こんな小僧如きにぃ!!」
「このまま捕縛する!!」
「舐めるなぁ!!」
またも幻影の分身を生み出す。その数は先ほどより多い。でもクライムは限界を超えて剣を振るう。
「殺す!!」
「やってみろ!!」
「その戦いに俺らも加えてくれよ」
サキュロントの幻影を斬るオルカとブレインが現れた。
「悪ぃな。はぐれちまって」
「何だと!? 貴様らも幻術を破ったのか!?」
助太刀だ。クライムが武技を発動する。領域と神閃の合わせ技。
シャルティア戦では不発に終わったがサキュロントの戦いには有効であった。自分の間合いに入った瞬間に本物だけを斬った。
「秘剣……虎落笛!!」
神閃の抜刀術がサキュロントを襲う。その攻防は一瞬であった。
「へえ。ブレインもやるじゃねえか」
出番が無かったオルカはブレインの実力を認める。勿論クライムの善戦も褒めた。彼らはきっと強くなると、そう思った。
実際に今日でクライムはまた1つ壁を越えた。ブレインもまた成長したのだ。
「捕縛完了だな」
今回の件で八本指の奴隷売買部門長コッコドールと警備部門の六腕のメンバーであるサキュロントを捕縛するという大戦果を挙げた。
この後にセバスとバルムンクと合流して、そのまま八本指の手がかかった娼館を潰した。この襲撃は八本指にとって大きな痛手であった。
それが原因で後にまた八本指に狙われるがセバスたちは知らない。しかしそれでも構わない。それに八本指を潰すつもりでいたから襲ってくるならば反撃してやる精神である。
これは始まりに過ぎない。この王国で起こる大事件の始まり。その大事件は八本指とセバスたちの問題だけではない。
この王国全体を巻き込んだ大事件と発展するのだ。
side変更
王国陣営
ラナー、クライムチーム
その日の晩にクライムは王城へ戻り、娼館で起きた事をラナーへと報告する。報告を聞いたラナーはクライムにあることを言った。
「明日は激動の1日になる」と言ったのだ。この言葉に何の意味があるかは分からない。しかしクライムは主人の言葉をしかと受け止めた。
(ラナー様は必ず守る)
今日は出会いがあり、激動の1日であった。それでも今夜は休息が必要である。
クライムは明日の為に早めに休むのであった。
side変更
八本指陣営
六腕チーム
ある屋敷に5人の強者たちが会議を開いている。その5人とは八本指の警備部門に所属する六腕というチームだ。
リーダーである『闘鬼』ゼロと『不死王』デイバーノック、『踊る三日月刀』エドストレーム、『空間斬』ペシュリアン、『千殺』マルムヴィスト。
今回の議題は仲間であるサキュロントの捕縛についてとその捕縛して相手であるセバスたちについてだ。
「サキュロントに関しては八本指の権限で釈放できる。しかしまた失敗するとなると次は無いな」
「まあヤツは六腕でも最弱。そこまで言わずとも良いでしょう。それよりも議題はセバスとかいう奴らだ」
「それに関してだが俺ら全員で奴らを皆殺しにする。それで娼館襲撃事件の見せしめにする」
ゼロから提案に残りのメンバーが賛成する。それにしても六腕全員で抹殺しにいくとは過剰な作戦だと思う。
それでもゼロは「油断するな」と言う。そう油断していって死んだヤツは何人もいるからだ。
「だけど我々が全員が暴れても大丈夫か?」
「それに関しても大丈夫だ。それも権限で何とかなる。それに今回はスポンサーがいるしな」
暗い奥から月をイメージした仮面を付けた男がゆっくりと現れた。その姿と雰囲気さから六腕のメンバーは不気味さを感じた。
「ええ、いくらでも暴れても良いですよ。後始末は全てこちらで負いますから」
「お願いしますよジェミニさん」
ゼロは不気味に思う。このジェミニという男は王国の裏社会に深く根付いている人間であり、裏の人間ですら絶対に彼に敵対したくないなんて噂もあるのだ。
ゼロ自体が裏の人間の中で上位に食い込むが彼ほどでは無い。六腕ですらジェミニには頭が上がらないのだ。
「それにしても珍しいですね。ジェミニさんが表に出てくるなんて何かあるのですか?」
「えぇ。ちょっと殺したい人間たちがいるのですよ。その人間が今回の抹殺作戦に含まれていたのでね。頼みますよ六腕の皆さん」
不気味に笑うジェミニ。しかし心の中では自分の考えた策を成功させるためにと六腕を利用しているにすぎない。
そもそも六腕がオルカたちに敵うとは思っていない。ただの時間稼ぎと策の目くらましになれば良いとだけ思っているのだ。
(良い目くらましくらいにはなってくださいねぇ)
八本指最強の戦闘部隊である六腕のメンバーはセバスたちへの復讐を決めた。
そしてジェミニと言う名乗る男は策を決行する準備を始めるのであった。
(くふは#ふ&gは$はかhかぁmhじははは!!)
心の中で言葉にもならない不気味な笑いを挙げるのであった。
一方、カイトとアインズたちは王都リ・エスティーゼに到着していた。
「ボクはこれからなつめたちと合流します。蒼の薔薇っていう冒険者チームと顔合わせがあるんですよ。アインズさんはどうします? 一緒に来ますか?」
「いや、オレはセバスと合流します。実はちょっと確かめたいことがあるんですよ。なのでまた後でお会いしましょう」
「分かったよアインズさん」
「ええ。ここまでの冒険楽しかったですよ」
明日は激動の1日の幕開けである。
読んでくれてありがとうございます。
娼館襲撃は原作と違いますが、そこまで大きな変化はありませんでした。
寧ろ次からが八本指との戦いが少し変化します。
次回をお楽しみに!!
オルカ 「出番ねえな」
セバス 「出番はきっとありますよオルカ様」