「ゲヘナ」の作戦がどのようなものかが語られます。
と言っても原作と少し変わるくらいなのですがね。
そして、タイトルの意味は如何に!?
では、始まります。
.hackers、ナザリック陣営
カイト、モモン、ヤルダバオトチーム
カイトとモモン、ヤルダバオトは戦いながら誰も居ない場所まで移動していた。
「ここなら誰にも聞かれずに今回のゲヘナについて説明できますね」
「デミウルゴスよ。私は無益な殺生は好まない。だが今回の事件は死傷者が出るものだ。詳しく真実を言うのだ」
「はいアインズ様」
デミウルゴスはアインズに説明する。今回の『ゲヘナ』は全てアインズのためとウィルスバグを発見するためのものだと。
第一段階として八本指の八つの拠点を襲撃し、殲滅と資源の奪取。これに関しては構わない。元々、アインズが命令したことである。
(ふむ。これに関しては良い)
第二段階として王都の一画を『ゲヘナの炎』で包み、その内側の人間と資源を奪取。人間に関しては人質のようなもの。悪魔対戦士の構図をつくるためのものである。
そしてモモン(アインズ)の活躍でヤルダバオトに勝利し、人間を救うことで救国の英雄とする。これで王国とのパイプを作るのだ。
(なるほど。しかし大それた計画だな……)
第三段階としてウィルスバグが王国に潜んでいるならば、『ゲヘナ』にて炙り出そうと言うのだ。そして超の付く過剰戦力と.hackersのメンバーでウィルスバグを駆除する作戦に移行する。
その作戦の中で王国の民に脅威が迫ろうとも気にしないのがカルマ値が最悪であるデミウルゴスの設定のせいだろう。
(あー……そういう作戦か)
(うーん……この作戦はある意味完璧だね。ボクら人間サイドのことを気にしなければ)
(ですよね)
デミウルゴスからしてみれば下等な人間を考えないのは仕方ない。でもアインズからして見ればもう少し人間について考えてほしいものだった。
(カイトさん……どう思いますか。これは許せませんか?)
(……やり過ぎはあるけど、これも全てアインズさんのためなんだよね。ここで注意してもどうしようも無いかな)
カイトの気持ちは複雑である。デミウルゴスはアインズのためとウィルスバグを倒すために計画を練って実行した。それに関して文句は無い。
でも王国の人間を多く巻き込んでまで行う計画となると本当に複雑なのだ。やはり人間として割り切れない部分があるのだ。
アインズもカイトの影響で心は人間寄りになっているため同じく複雑な気持ちなのだ。しかし家族が自分のために実行してくれた。それは嬉しい。嬉しさと複雑な気持ちが混じっているのだ。
割り切れない気持ちだ。でも実行されたのならばどうしようも無い。受け止めるしかないのだ。
「……分かった。さすがデミウルゴスだ」
「はい。ありがとうございますアインズ様」
デミウルゴスは自分の計画がアインズに褒められて心の底から喜んだ。アインズの本音としては複雑だが部下を悲しませるわけにはいかなかったのだ。
叱る時は叱る。それは考えていたが今回は褒めたのであった。
「だが次回からは事後報告ではなく、前もって説明すると助かるぞ」
サプライズも嬉しいが、このような大計画は前もって説明がほしいのだ。
「はい。分かりました」
この後は演技の激闘を行うのであった。
演技と言えど、超激闘だ。短い時間の中での激闘だが濃すぎる戦いであった。
『ゲヘナ』は終わる。
大悪魔ヤルダバオトを撤退させ、悪夢のような戦いは終わった。実はヤラセの戦いであろうとも昨日から起きた大事件であることはかわりない。
「やったねモモンさん」
「そうですねカイトさん。激動の戦いでしたよ」
大悪魔ヤルダバオトと戦って、撤退させた彼らは王国の英雄である。カイトなんて3つの国や都市から英雄扱いである。
「疲れたから休みたいよ」
「カイトさん。星は見えますか?」
「周りの炎が明るくて星は見えないかな」
カイトは星を見ようとしていた。正確には強制的に見せられた。なぜなのかと問われれば仰向けで倒れているからだ。仰向けなら目線は空になるのは当たり前である。
「……そろそろ助けてくれると嬉しいかな(汗)」
「中々面白い光景なんでもう少し傍観かな(笑)」
「えー、酷いよモモンさん」
現在がどんな状況かを簡単に説明する。
カイトは仰向けで倒れている。
倒れた原因を作ったのはイビルアイ。カイトに突撃して押し倒す。そしてガッチリとホールドしている。
モモンことアインズは面白く傍観。
「いやあ、イビルアイさんがいきなりカイトさんを押し倒した時は警戒しましたが大丈夫そうですね」
イビルアイがなぜカイトを押し倒したのは理由がある。単純に勝利した喜びを分かち合うための抱擁に過ぎない。しかし、心のどこかに甘酸っぱく淡い想いがあったのは否定できない。
そのため、抱き付いた後はどうすればよいか分からずに可愛い暴走を起こしたのだ。
「あの、イビルアイ。そろそろ離れてもらって良いかな?」
「……まだ」
「え、何?」
彼らのやり取りを見ていて面白いと思うアインズ。だが、彼にも似たような運命を迎えることをまだ知らない。寧ろアインズの方が酷い状況となるだろう。
「何してんのよー!!」
「あ、ブラックローズさんが来た」
その後の一悶着は予想できたと後にオルカたちに語ったアインズである。
(それにしてもゲヘナの炎が消えないな)
一悶着が起こった後でもゲヘナの炎が消えない。これに疑問を思う。メッセージ会話でデミウルゴスに連絡を取ろうとしたら出来なかった。
ノイズのような音が聞こえるだけでメッセージ会話が出来ないのだ。
(何だ?)
「どうかしたのモモンさん?」
「実は……」
「あ、ちょっとゴメン。ヘルバから連絡がきた」
同じくメッセージ会話にノイズが混ざる。聞こえるのは少しだけ。
『カイ……ト……聞こえ……』
「何ヘルバ。聞こえないよ。何かあったの?」
『カイト聞こえる?』
やっとメッセージ会話が繋がる。
『何かの影響でメッセージにノイズが混ざってるみたいなの。だから用件だけを言うわ』
「うん。何かあったの?」
『王国から大量のウィルスバグの反応をキャッチしたから気を付けて。反応源は王国の真下よ』
「何だって!?」
そのメッセージを最後にヘルバとの通信が切れた。そして地鳴りが響く。
「地震か!?」
王国の中心街からありえないくらい大量のウィルスバグが噴き出したのであった。
side変更
デミウルゴスは自分の立てた計画が成功して満足していた。
彼が立てた計画は『ゲヘナ』。内容は八本指の殲滅による資源の強奪。次に自分自身が大悪魔ヤルダバオトを演じて王都にゲヘナの炎を放ち混乱に乗じてさらに資源を強奪。最後に自分が圧倒的な力を見せつけてモモン(アインズ)と戦い敗北する。そうすればモモンは英雄となる算段だ。
「ゲヘナは成功。アインズ様も喜ぶだろう。……しかし欲を言えば生け贄も欲しかったですね」
燃え上がる王都にいる脆弱な人間を見やる。彼は人間を下等に思っているが嫌いではない。しかし好きとは違うベクトルである。
「人間牧場はカイトたちが加わって廃棄になりましたからね。残念です」
アインズからしてみればカイトたちには見せたくないものである。
それでもデミウルゴスは新しい趣味が見つかり代わりに楽しんでいる。それは創造主ウルベルトが調べていたという八相についてだ。
分からないことだらけだがアインズとともに議論する時間はとても至福であった。最近は時間があればアインズとよく議論しているのだ。
「まあ、カイトや八咫も議論に加わっているのは少し邪魔ですがね」
八相についての議論はたまにカイトや八咫も加わる。それはアインズが呼びかけたからだ。八相をよく知っている者から話を聞くのは悪くない。
「しかし最近はドットハッカーズの人間を人間と思えなくなっているのもあるんですよね」
デミウルゴスにとって人間は下等で貧弱な存在である。しかし.hackersのメンバーは予想を超える実力者ばかりだ。そんな彼らを下等で貧弱だとさすがに思えなくなっている。
アインズがナザリックと対等と言うのも頷けるのであった。
「同盟とは言え、意外にも仲良くやっていけている。案外悪くないと思う私は気の迷いに陥っているのでしょうね」
特に八咫とは話が案外合うのだ。参謀同士だからだろうかとも思う。
仮面を外して眼鏡をかけ直す。今は仲良く同盟している。しかし最高の主人であるアインズを裏切るならば全力で.hackersを潰すことを考える。女神アウラに消されようが、アインズのために戦うのだ。
「今のところ裏切りはどちらもありませんがね。……アルベドは微妙ですが」
守護者統括を思い浮かべる。有能な存在なのだがアインズが関わるとある意味酷い。何を仕出かすか分からないのが恐い。
「まあ大丈夫でしょう。カイトなら案外どうにかすると思いますしね」
演技とはいえ、カイトと戦った身だ。それだけでも実力は分かる。間違いなくカイトは強者だとデミウルゴスは確信した。それでもアインズ程ではないと思う。そこはやはり忠誠心があるのだ。
「さて、そろそろゲヘナの炎を消してナザリックに帰りますか」
ゲヘナの炎を消して作戦は終わる。
終わるはずだった。だが終わらない。なぜかゲヘナの炎が消えないのだ。これにはおかしいと気づく。自分で発動したゲヘナの炎が消せないなんてことは無い。何か異常が起きたのかもしれない。
デミウルゴスが冷静に分析しようとしたとき背後から不気味な声が聞こえた。
「アナタの役目は終わりですよぉ大悪魔ヤルダバオト」
背後から腹部を貫かれた。それはいきなりだった。口に血の味が広がる。
「ぐああっ!?」
「……やはりワクチンプログラムを仕込んでましたか。このまま感染させて手駒にしようとしたのですが残念ですねぇ」
「貴様は何者だ!?」
「ワタシはジェミニ」
振り返ると太陽をイメージした仮面の男がいた。そして、ジェミニという名前を聞いて重要なことを思い出す。
「貴様がシャルティアを洗脳した奴か!!」
「はい。それとジェミニという名前は偽名ですよ。本当の名前はアナタも聞いているはずですよぉ」
本当の名前は確かに気になるが、どうでもよい。それがデミウルゴスの今の気持ちだ。大切な仲間を洗脳し、最高の主と戦わせた。それだけで許せないのだ。腹部に風穴が空いていても気にしない。することはジェミニを肉塊にすることだけだ。
「悪魔の諸相……豪魔の巨腕!!」
「おオ?」
腕が悪魔のようにおぞましく、巨大化する。その悪魔の巨腕はジェミニを襲った。
グシャア、と聞こえた。
だが、潰れたのはデミウルゴスの腕であった。
「ワタシは物理耐性があるんですよぉ」
「な……!?」
「もう一人のワタシなら効いてましたよ。でもワタシには効かないんだよねぇ」
ジェミニは腕をデミウルゴスにかざす。
「忍び寄る謀殺」
「ぐあああ!?」
凶悪な爆発がデミウルゴスをおそったのであった。
「アナタの作戦はこのままワタシたちが引き継ぎます。サヨナラ」
「そ、ソドムの火と硫黄!!」
「むオ?」
スキル攻撃がジェミニを襲った。その威力で顔が吹き飛ぶ。太陽をイメージした仮面が割れる。
「私は……ナザリックの階層守護者。ただでは殺されない」
デミウルゴスはボロボロになりながら炎の渦巻く王国に落ちていく。
「ふン。最後ノを足掻きカァ」
ジェミニの顔は確かに吹き飛んでいた。だが首から上は黒い煙のようなものが滲み出ていたのだ。そして不気味な目がギョロりと覗く。
「さて、策の実行です」
指をパチンと鳴らす。そして作戦名を言う。
「カオスゲヘナ実行です」
読んでくれてありがとうございます。
ついにウィルスバグが動き出しました。策の名は「カオスゲヘナ」。
カイトたちにウィルスバグが大侵食を始めます。
デミウルゴス 「腹部に風穴が・・・」
アインズ 「大丈夫か!?」