今回から新章に入ります。
それはタイトル通りです!!
フォーサイト陣営
アルシェは涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら逃げていた。美少女が台無しなんて思っている場合ではない。後ろには凶悪な魔獣が追いかけてくるのだ。
第三位階の魔法を修得しているのに敵わない。だから逃げるしかないのだ。
(はあはあ……嫌だ嫌だ嫌だ!!)
声を叫んで助けを求めたい。しかし仲間とは転移のトラップでバラバラにされてしまった。叫べば魔獣が増えるかもしれない。
どうしようもない状況である。
アルシェはナザリックの第6階層のジャングルで出口も分からないまま逃げるしかなかった。
(死にたくない死にたくない死にたくない!!)
彼女には大切な妹たちがいる。大切な妹たちを守るために死ぬわけにはいかないのだ。
しかし現実は絶望的だ。叫びたい気持ちを抑えて口を強く噛む。
だから心の中で叫ぶしかなかった。
(嫌あああああああ!!)
今は絶望しかない状況だ。だけどアルシェたちが今日をナザリック地下大墳墓の調査日に決めたのは運が良かったとしか言えないだろう。
今日はアルシェたちワーカーだけがナザリックに侵入しているわけではないのだ。他にも侵入している冒険者チームがいる。侵入と言うよりも挑戦というのが正しいだろう。
その冒険者チームの名前は.hackersだ。
「きゃっ!?」
アルシェは誰かにぶつかる。そのせいで抑えていた叫びが解放されてしまった。
「嫌あああああ!?」
「だ、大丈夫?」
「……え?」
優しくて心配してくれる声が聞こえた。顔をあげると目の前には赤を基調とした服に弓矢になる双剣、青髪の青年がいたのだ。
彼こそが.hackersのリーダーであるカイトだ。
「た、助けてください!!」
藁にもすがる気持ちで助けを求める。絶望的な状況で誰かが目の前にいれば当然の行動である。
すると、アルシェの後ろから凶悪な魔獣が追いつく。
「き、来たあ!?」
「なるほど」
カイトは双剣を構えて魔獣に突撃する。蒼炎を纏わせる。
「三爪炎痕!!」
蒼炎の斬撃が魔獣を倒す。
「うえ……?」
「もう大丈夫だよ」
side変更
カイト、アインズチーム
『カオスゲヘナ』を解決してから1ヶ月が過ぎようとしていた。カイトとアインズは怒涛の事件を解決した後は休みながら冒険者組合の依頼をこなしていた。もちろん、その中で残りのウィルスバグを探していた。
「見つからないねウィルスバグ」
「そうですね……とりゃ!!」
「あ、負けた!?」
彼らは休暇を楽しんでいた。具体的にはナザリックのプライベートルームでダーツで遊んでいた。
「じゃあアノ依頼はオレが貰いますね」
「アノ依頼は報酬が良かったのに……」
「負けた者に文句は言わせませんよー」
「うん正論だ(汗)」
ダーツで賭け勝負をしていた。しかも賭けの対象は冒険者の依頼であった。
案外、平和である。
「残りのウィルスバグが見つからないし、時間がある感じですね」
「そうだね。本当なら早く見つけたいんだけどね」
ここでカイトはあることを思い出す。今、時間があるからこそ出来ることだ。
「そういえばシャルティアがオルカとバルムンクにリベンジしたいって言っていたよね。今ならできるんじゃないかな?」
「おお。確かにそうですね」
アインズもまた歓迎の時にシャルティアが言っていたリベンジ戦を思い出す。確かに今なら時間があるからリベンジ戦をさせることができるだろう。それにバルムンクたちからは了承を得ている。
「じゃあ、シャルティアとバルムンクさんたちに説明しないとね」
「そうですね……あっ」
ここでアインズはあることを思う。それはカイトと戦ってみたいというものだ。
アインズは自慢のギルドが伝説のギルドである.hackersにどこまで通用するか試してみたいのだ。
PVPをしていた身として伝説のギルドを相手にするのは興奮ものだ。
「カイトさん。実は相談があります」
「何かなモモンガさん?」
「お互いの戦力強化という名目でギルド同士の試合をしませんか?」
「面白そうだね。やろうやろう!!」
カイトも食いつく。アインズは喜ぶ。今ここに時間を超えてレアカード同士のギルド試合が組み合わされた。
「じゃあ早速みんなに連絡しましょうか」
「そうだね。ボクもブラックローズたちに連絡しとくよ」
カイトとアインズは仲間にギルド同士の試合を伝える。するとみんなは全員一致でギルド同士の試合に参加すると解答がきたのだ。
全員がナザリックの玉座の間に集まる。
集まった理由はもちろん.hackers対アインズ・ウール・ゴウンのギルド対決について説明を聞くためである。
「皆よ、集まってくれて感謝するぞ」
アインズは早速、ナザリックの王のロールしながら説明する。
「此度に集まってもらったのは他でもない。我らナザリック勢と.hackers勢とのギルド対決をするためだ」
「そう。アインズさんの案でギルド対決をすることになったんだ」
「王国でのウィルスバグの戦いは苛烈さを極めた。一歩間違えていたら我々が死んでいただろう。だからこそ戦力強化は必要だ」
八相の破片データを取り込んだウィルスバグは残り3体だ。その3体は今までの八相とは厄介さが一段と違う。
「我々はウィルスバグに負けないためにも気を引き締めなければならん。だから戦力強化をする。そのような時であるからこそ我らナザリックと同等の力を持つ.hackersとギルド対決をすれば気も引き締まるうえに、戦略の幅も広がる」
「なるほど。さすがはアインズ様です。ドットハッカーズと対決することで戦力を強化するのですね」
「その通りだアルベドよ」
アルベドの返事にウンウンと頷く。
「ある程度説明を聞いていると思うが、もう1度確認したい。お前たちはどうだ?」
「はい。アインズ様の案はよろしいかと。守護者一同賛成でございます」
「そうか。カイトさんたちはどうだ?」
「ボクたちも賛成だよ」
全員が賛成した。次はギルド対決の説明だ。
「では、ルールを説明しよう」
.hackers対アインズ・ウール・ゴウン。
.hackers側の勝利条件はナザリック地下大墳墓の第8階層の突破。
アインズ・ウール・ゴウン側の勝利条件は制限時間内までの防衛、もしくは.hackersのメンバー全滅。
リタイアの判断は気絶、瀕死、自らのギブアップ。
負けたらリタイア部屋に直行。
各アイテムの使用は有り。
ワールドアイテムの使用は有り。
データドレインの使用は有り。しかし弱体化(チムチム化)のみと回数制限有り。
.hackersは五人一組ずつでスタート。
階層守護者たちは自分の階層しか動けない。
アインズとアルベド、セバス、プレアデスたちは自由に階層を動ける。
最後に、全力で戦いに望むこと。
「以上だ。あと、これはあくまで親善試合だ。本気の殺し合いではないからな。ここ大切」
アインズの説明は終える。
.hackers側もアインズ・ウール・ゴウン側も今回の親善試合に真剣になる。
親善試合を楽しもうとする者。
リベンジに燃える者。
戦ってみたいと思う者。
余計なことを考える者。
それぞれの思いを馳せる中、.hackers対アインズ・ウール・ゴウンの親善試合が始まるのであった。
試合開始の三日前の話である。
side変更
フォーサイト陣営
フォーサイト。帝国の首都に活動拠点を置くワーカーチームである。
メンバーはヘッケラン・ターマイト、ロバーデイク・ゴルトロン、アルシェ・イーブ・リイル・フルト、イミーナ。
男女四人で構成された少数精鋭のチームだ。
そんな彼らに1つの依頼が届く。それは王国の謎の墳墓を調査するものであった。
その内容は怪しいものであったが、破格の報酬に釣られて依頼をうけるのであった。
「えっと、他の参加するワーカーはヘビーマッシャーにグリーンリーフ、天武か……」
リーダーであるヘッケランが大墳墓の調査チームを読み上げる。どのワーカーも腕のある実力者たちだ。
その中でイミーナはあるワーカーチーム名を聞いて苦虫を噛み潰したような顔をする。
「……うげぇ。あいつもいるの? あーそうか。じゃあ、あそこにいる森妖精たちは……最悪、死ねよ糞」
「急に荒れたなイミーナ」
「あいつとチームを組むのが嫌だからよ。そもそも天武がチームを組むとは思わない」
「確かにな」
うんうんと頷くヘッケラン。
「一応、大墳墓を調査する仲間なのですから問題を起こすのはいけませんよ」
「天武の方から問題を起こすのよロバーデイク。アタシもいつか彼のようにあいつの鼻をへし折りたいわね」
「彼って誰?」
イミーナの言葉にアルシェが質問をする。
「そういえばアルシェは知らなかったか。じゃあ教えるぜ」
テンションの高いお兄さんが如く話す。
「天武のエルヤーが帝国の闘技場で活躍しているのは知ってるだろ」
「うん。知っているわ」
「エルヤーの野郎はあんなんでも実力は本物。闘技場でも活躍はバンバンしてたさ」
闘技場にあまり良い思い出が無いヘッケランだが、その日だけは違ったのだ。彼はその日にある剣士を見たのだ。
「んで、エルヤーの対戦相手に無名の剣士が組まされたんだよ。他の観客はエルヤーの勝ちは揺るがないと思っていたし、賭けにもならないって感じたったぜ」
「でもその剣士が観客たちの予想を超えたのよ」
「ああ。あのエルヤーを軽く倒したのさ。勝負はほんとうに一瞬だった」
その剣士の実力はエルヤーを軽く超えていた。そもそも勝負にもなっていなかったと思うのがヘッケランの感想である。
「ありゃあ実力はアダマンタイト級だな」
「彼があいつを倒したときはスカッとしたわ。もしかしたら英雄級にも匹敵するわね」
「その人の名前は?」
「そいつの名前はエンデュランス。初日で闘技場20人抜きをした現チャンピオンだ」
それは凄いと本当に思う。初日で闘技場を20人抜きは驚く。
「んでもって超イケメン。ちくしょぉ」
「あと、武技なのか分からないけど彼が剣を振るう度に薔薇の花びらが舞うから二つ名は『薔薇剣舞』って呼ばれているわ」
エンデュランスが剣を振るう度に薔薇の花びらが舞うのは彼だけのエフェクトである。その理由は謎なのだ。
「凄い剣士なんだね」
「エンデュランスも調査するチームに入ってくれれば恐いもん無しなんだよなあ」
ナザリック地下大墳墓に侵入する三日前の話である。
読んでくれてありがとうございます。
今回は親善試合的な形でカイト対アインズとなります。
どんな戦いになっても、どんな勝ち負けになってもガッカリせずに生暖かい目で読んでってください(ここ大事)
次回もお楽しみに!!
カイト 「負けないよ!!」←勝つ気マンマン
モモンガ 「こっちだって!!」←こっちも勝つ気満々
アルシェ 「うええ・・・」←巻き込まれる可哀相なワーカーたち