.hack//OverLord   作:ヨツバ

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こんにちわ。

カイトたちは第4階層へと進んでいます。
順調に攻略中です。でも負けてばかりじゃないのがアインズたちです。

では、始まります。


第4階層

.hackers陣営

 

 

ナザリック地下大墳墓の第4階層は地底湖である。

巨大な地底湖が広がっており、その底にガルガンチュアが沈んでいる。もし動けば.hackersたちは苦難を強いられるだろう。しかしガルガンチュアが動いたらアインズも多少なりとも困る。

なにせ室内で巨大ゴーレムが動けば被害は甚大だからだ。なのでガルガンチュアの役目は.hackersを驚かせるくらいしかない。

現に、カイトたちを驚かせていた。補足だがカッコイイと思う感想もあった。

そして今この階層では防衛線が始まっていた。

 

「クラックビート!!」

 

マーローによる剣技が振るわれる。相手はソリュシャンとシズである。

マーローと寺島良子、月長石が第4階層に進んだらシズが待ち受けており、戦いが始まったのだ。途中にてソリュシャンも加わって激戦必至となる。

 

「まったく危ないですわ」

「……の割りには余裕そうだな。おらよぉ!!」

 

今は3対2の勝負である。戦況はソリュシャン側が不利なのだがシズの戦闘スタイルによって補っている。

彼女は銃を使った狙撃や援護射撃と他の者とは一線を画しているのだ。そもそも世界観が完全に違うような存在だ。

 

「……くらえ」

 

シズが連射式の銃を連発してくる。弾丸がマーローたちを襲う。

 

「ギガンゾット!!」

 

寺島良子が魔法により足元から鋭利な石柱が隆起させて弾丸から身を守る。それでも連射は止まない。

ソリュシャンは勝つのは難しいと思っている。ならばこのまま時間を稼いで隙を見て倒そうと考えたのだ。しかしシズは勝つと言う二言のみで戦う。

 

「これで……」

「シ、シズ。それって」

 

シズが大きなバズーカを取り出してソリュシャンを驚かせていた。マーローも岩の隙間から見て驚いた。

ガチャリとバズーカを担いで照準を定める。狙いはマーローたちが隠れている岩だ。これにはマーローも「世界観が違うだろっ」と文句を言うのであった。

発射されたロケット弾は隆起した岩を破壊した。パラパラと木っ端微塵になった石ころが転がる。

シズはこの異世界で異質な強さであるかもしれない。

 

「……まずはシズを倒す」

 

月長石が双剣を振るうがシズも負けじとサバイバルナイフを持って応戦する。素早すぎる双剣とナイフ捌きで並みの者では見えないだろう。

 

「……夢幻操武!!」

「……負けない!!」

 

ガキンガキンガキン!!

剣を振るう腕は止まらない。もうお互いが動かす腕の残像を出している。

 

「……勝つ!!」

「……倒す!!」

 

シズと月長石はお互いとも剣戟中だ。今なら狙えるとソリュシャンは酸を分泌しようとする。

しかし、残りの2人が許してくれるはずも無い。寺島良子は巨大な斧を振るう。

 

「やあああああああ!!」

「まったく……可愛い顔してやることはえげつないですわ」

「お前が言うか。何でも溶かすお前がよ」

 

今度はマーローが横から剣を振るう。剣は届くが彼女は物理攻撃への耐性を持っているため、決定打ではない。

それでも実力は軽く上なのでダメージは効いている。応戦するために両手から酸をドロリと分泌して投げかける。さすがに接近戦は辛い。まずは距離を取らないと思うソリュシャンである。

 

「チッ、篭手が少し溶けたぜ。何でも溶かすのは面倒だな」

「魔法で応戦します」

 

闇属性の魔法であるオルメアンゾットを発動。足元から暗黒の結晶が隆起してソリュシャンを襲う。

 

「シズ援護を!!」

「……ん」

 

手榴弾をポイッと投げてくる。剣戟中で手が離せないので援護はそれくらいしかできない。

コロンコロンと転がる手榴弾を見てマーローたちはすぐに回避する。爆発が地底湖に響く。

 

「ちょっと危ないですわよシズ!?」

「……今、手が離せない」

 

月長石との剣戟はまだ続く。ガキンガキンと剣の打ち合いが鳴り響く。

 

「虎輪刃!!」

「うわっ……独楽みたい」

 

独楽のように高速回転し連続斬りするので例えは正解である。シズのナイフがそろそろ耐え切れなくなり、パキンと刃が折れる。

その一瞬の隙を月長石は逃さない。双剣のスキルを発動する。

 

「疾風荒神剣!!」

「うああああ!?」

 

ついにシズに決定打を食らわせた。風の斬撃によって切り刻まれる。だが簡単に倒れないのがナザリックのメイドだ。

シズは懐からありったけのの手榴弾を取り出してピンを外す。これを見た瞬間理解する。これは自爆であり、道連れだ。

地底湖に大きな爆発が起こる。爆風が晴れると月長石が消えており、シズがボロボロで倒れていた。

 

「シズ!?」

 

シズ脱落。

 

「悪いが隙ありだぜ」

 

「しまっ……!?」

 

ソリュシャンの一瞬の隙を突くマーロー。

 

「アンクラック!!」

 

ソリュシャン脱落。地底湖での戦闘は終了した。

 

「月長石さんはどこでしょうか?」

「爆発で消えたからな……まさかコナゴナになって消えたってことは無いだろうし」

 

月長石はシズの自爆によって道連れにされた。しかしどこにも居ない。脱落したシズに聞いてみると「知らない」とのことだ。

メッセージ会話も繋がらないのだ。死んだはずは無い。

 

「もしかして地底湖まで飛ばされてしまったのでしょうか?」

「かもしれないな。溺れてたらマズイな……」

 

寺島良子の考えは正解である。地底湖の方からポチャリと月長石が這い上がってきたのだ。

身体は手榴弾の影響でボロボロである。火傷を負っているが飛ばされたのが地底湖で案外良かったかもしれない。

 

「……無事だ。でも少し休んでから追いかける」

「分かったぜ」

 

 

side変更

 

 

エンデュランスチーム。

 

エンデュランスは今、第5階層の一角「真実の部屋」にいた。なぜなら転移のトラップによって第2陣のチームから切り離されたからだ。

そして彼の目の前にはニューロニスト・ペインキルと呼ばれる特別情報収集官、またの名を拷問官がいた。しかもちょうどニューロニストがヘビーマッシャーの1人を捕縛していたところであった。

 

「……美しくない」

 

エンデュランスの感想は本音であった。あまりの醜悪さにアインズですら思わず目を背けたほどでもある。

そのニューロニストはそれをストイックさの表れだと勘違いしているのだが。

 

「んぐぐぐぐぐぐぐ!?」

 

ヘビーマッシャーの1人がエンデュランスに気が付いたようである。目で「助けてくれ」と訴えている。

確かに捕縛されて醜悪なニューロニストにこれから何をされるかも分からない状況なら助けを求めるのは当然だろう。

まだニューロニストは気付いていない今がチャンスだと目でまた訴えてくる。

 

「……」

 

無視するわけにいかずに頬をポリポリと掻く。剣をカチャリと持って気配を消しながらスタスタと近づく。そして薔薇を散らしながら剣を一閃した。

ニューロニスト脱落。

 

「大丈夫かい?」

「はあはあ……助かった。ってお前は『薔薇剣舞』のエンデュランス!?」

「薔薇剣舞?」

 

自分が帝国の闘技場で『薔薇剣舞』と呼ばれているのに興味は無かったので今初めて聞いた感だ。

 

「まさかお前もこの大墳墓の調査を依頼させられていたのか!?」

「何を言っているの?」

 

ヘビーマッシャーの1人はエンデュランスに驚いていた。まさか秘密裡に依頼を受けていたのかもしれないと勝手に思っている。

もしそうなら一緒に同行してもらいたかったものだ。ならばこんな恐怖を植え付けられることは無かったのだから。

 

「と、取りあえず全員と合流しないと!!」

 

帝国の闘技場チャンピオンに出会えたことはヘビーマッシャーたちにとって希望だ。

だがエンデュランスは彼らがここにいても邪魔でしかないし、命も無いと理解している。だからすぐさま顔文字囚人を呼んだ。

 

「な、何だこいつらは……ぐっ!?」

 

顔文字囚人は大人しくさせるために気絶させてナザリック外へと運んだ。もちろん残りのメンバーもだ。

残りのヘビーマッシャーのメンバーも脱落。

 

「早く先に進もう」

 

エンデュランスは何事も無かったかのように歩き出す。目指すはナザリック地下大墳墓第6階層だ。そこにはエンデュランスが相手をする階層守護者のマーレがいる。

彼を倒すのがエンデュランスの役目だ。そしてマーレも今頃.hackersを倒す算段を考えている。

.hackers対アインズ・ウール・ゴウンの勝負は後半戦に進む。

 

 

 

 

 

side変更

 

 

黄昏の旅団陣営

 

アーグランド評議国のある場所にて数人のメンバーが集まっていた。そのうちの1人は1体と言うべきだろう。なぜならドラゴンだからだ。

そのドラゴンの名前はツァインドルクス=ヴァイシオン。アーグランド評議国永久評議員の5匹のドラゴンのリーダーであり、『プラチナム・ドラゴンロード』の名を持つ竜王だ。

親しい者からはツアーと呼ばれている。

 

「フフフ。まったくリグリットは私の後ろを取るとは……変わらずだな」

「カッカッカッカ……油断しすぎじゃないか。ボケとらんよなあ」

「ボケてないよ。かつての友に会えて、感動に身を震わせていたんだ」

 

お互いに笑いあう。やはり古き友に出会えるのは嬉しいものだ。

 

「それに団長や君にも集まってもらってありがとう」

 

ツアーが2人の人物を見る。1人は黄昏の旅団の団長であり、もう1人は和装の恰好をした女性メンバーだ。

 

「まだ残りのメンバーは来てないか……まあ今のメンバーだけでも話を始めよう。残りのメンバーには後で説明すればいいしね」

「大事な話とは何かなツアー?」

 

団長が確信とも言える質問を言う。そしてその答えは言うツアー。

その内容は八欲王のギルド武器に匹敵するアイテム、あるいはユグドラシル由来のアイテムの捜索だ。既にツアーは八欲王のギルド武器を守っている。だから本人は動くことができない状況になっている。

だから他のメンバーに捜索を頼んだのだ。

 

「依頼は分かった。でも何故?」

 

和装の女性メンバーが問う。

 

「……時期的にユグドラシルからの影響があるかもしれないんだ」

「ユグドラシルから?」

「ああ。500年前みたいに八欲王みたいな奴らがきてたらマズイからね。もしもの時のためにさ」

 

ツアーが恐れているのは八欲王のような存在がこの異世界に転移してきてまた世界の理を崩そうとすることだ。もし戦争になれば本当にただでは済まない。

 

「なるほど」

「まあ君たちのような人物なら少しは安心できるんだけどね」

「だが敵は転移してきた者たちだけじゃない」

「団長が言う敵とはもしかして黒い煙のことかのう?」

 

黒い煙。それはウィルスバグのことだ。

 

「その通りだよリグリット」

「あの黒い煙はとんでもないぞ。正直、魔神より厄介じゃわい。団長が居なかったらと考えると怖いのう」

「団長が言うウィルスバグというヤツか。アレも確かにマズイ。でも団長のおかげで侵食は広まっていないのだろう?」

「ああ、だが大元を倒しているのは俺ではない。俺の先輩たちが倒しているよ」

「君の先輩たちって……初耳だぞ!?」

「話してないからな」

 

団長は(わる)びれもせず淡々と話す。なにせ今まで言われることが無かったからだ。ツアーはヤレヤレと息を吐く。

なぜなら団長は多くを語らないからだ。彼には団長として働いてもらって助かるが、多くを語らないのは困る部分の1つだ。

 

「一応聞くがその先輩たちは大丈夫なのか?」

「ああ。黄昏の勇者はとても素晴らしい人物だよ」

「黄昏の勇者?」

「俺が尊敬する人物だ」

 

和装の女性メンバーは「ああ、彼か」と呟く。確かに彼らにとっては先輩である。

面識は無いが彼らの活躍は聞いていて凄いと言うしか無い。そう、本当の活躍をだ。団長はハセヲのようにThe World救った勇者を尊敬している。

黄昏の勇者、もしくは蒼炎の勇者とも言われている。女神アウラが1番信頼し、最初にThe Worldを救った英雄だ。

 

「なるほど。ならば彼らにも接触はしてみたいものだな」

「時期が来れば接触する」

「時期が来れば?」

「ああ。今の敵はウィルスバグだからな。次の敵が動き出す頃には彼らの力を借りねばならない」

 

次の敵と団長は言った。その次の敵とは一体何か気になる。

 

「その敵とは最近に目撃された虹翼のドラゴンか?」

「それもあるが他にも2ついる」

「2つ。何じゃいそれは?」

 

リグリットだって気になる。新たな敵ならば気になるのは当然である。

 

「……不自然で異常な知的生命体と言うべき存在。そして、その2つを遥かに超える影なる少年だ」

「はぁぁぁ。今の世界は危機ばっかりじゃのう」

 

長く生きるリグリットは魔神との戦いよりも今の世界に危機が迫る状況にため息を吐く。ツアーも同じくだ。

まさか八欲王よりも大きな異変が起きるなんて考えたくないが、可能性はゼロでは無い。ドラゴンの胃は強靭だが痛くなりそうである。

 

「それらも踏まえて動かないのいけないのう」

「そうだね。だから今はギルド武器の捜索を頼む。虹翼のドラゴンは私の方でも情報を集めとくよ。申し訳ないけど残り2つも君たちに情報集めを頼む」

 

頼んでばかりで済まないと言うがツアーの頼みなら断らないと団長とリグリットは言う。

 

「ありがとう」

「カッカッカッカ。構わんよ」

「そうだ。新たな黄昏の旅団のメンバーは見つかったかな?」

 

実はツアーが出していた依頼は今頼んだギルド武器集めだけでは無い。その前に頼んだ依頼があるのだ。

それが黄昏の旅団への新たなメンバー集めだ。理由は簡単。少人数ではツアーの考える世界を守る方法は実行できないからだ。

ツアーにとって仲間が多くいる方が助かる。我儘を言うならば強い戦士がほしいとのことだ。

 

「それに関しては何人か集めておるし、候補も見つけたぞ」

「それは良かったよ」

「まあ、中には性格に難ありもおったがのう」

 

これには仕方なしと思うしか無かった。強者は案外性格に難があるものだ。実際に今いる黄昏の旅団メンバーは癖のある人物ばかりである。

 

「特に団長が蘇生させた狂れ女と顔が怖い男は信頼するに値できるか不安だがな」

「彼女と彼は元々所属していた組織にある程度詳しいからな。情報収集目的でもある。それにもしその2人が怪しい動きをしたら団長として始末はする」

「ワシはよく蘇生させたものだと思うわい。バッキバキに折られた女はともかく、塵になったあの男をよく綺麗に蘇生させたもんじゃい」

「やはり団長は凄いね」

 

団長は「過大評価だ」と言う。だがツアーやリグリットにとっては団長の中に秘める能力は恐ろしい者だと実感している。

 

「さて、話は終わりじゃ。ワシはさっそくリベンジするぞい」

 

リグリットは和装の女性メンバーを見る。

 

「リベンジじゃ殴られ屋!!」

「分かった。1分間攻撃をかわし続ける。一度も当たらなかったら、ご祝儀をもらうわ」

「いくぞミドリ!!」

 

ツアーと団長の前で殴りかかるリグリットとかわす碧が余興的なものを始めた。

 

「フフフ。今回はリグリットは勝つことができるかな?」

「彼女の頑張り次第だ」

「そうだね。じゃあ依頼の方は頼むよ。オーヴァン団長」

 




こんにちわ。

ギルド対決は後半戦に突入します。
アインズ側もそろそろ猛威を振るいますよ。
そしていつの間にかワーカー陣営はフォーサイトだけになってしまいました。どうなる!?

そしてそして最後にまた黄昏の旅団陣営の話でした。
団長の名前がでましたよ。

ではまた次回をゆっくりお待ちください!!

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