裏のサブタイトルがあるならば・ミア・ですね。
今回はミアの話となります。彼女は自分の正体を理解しています。
その結果、彼女は運命を受け入れています。
どう意味かは物語をどうぞ!!
では、始まります。
カイト、アインズ、エンデュランスチーム
エノコロ草畑の中心にいるのはミア。
「ミ、ミア!!」
「やあ」
笑顔で返事を返してくる。その雰囲気は前に出会ったミアそのものであった。
懐かしさで胸が溢れてくる。この温かい感覚は本当に凄く懐かしいのだ。
「ミア・・・ボクは」
「分かってるよ。大丈夫」
エノコロ草を1つ取ってクルクル回す。エノコロ草は彼らにとって思い出の品である。
「ミア。君は・・・」
「やあカイト。また素敵な腕輪をしているんだね」
「・・・また見えるんだね」
『黎明の腕輪』が輝く。このやり取りはミアに出会う決まりのようなものだ。
彼女は「目に見えなくても、そこにあると分かってるなら、見えているのと一緒だけどね」と言う。これもまた懐かしい会話だ。
「そして、この大墳墓の主であるアインズ。勝手にお邪魔してるよ」
「アナタは誰ですか?」
アインズはいつの間にか自分のギルドに侵入していたミアに驚きだ。
彼女はミア。エンデュランスの大切な人であり、もう会えない人、心にいる存在。そして.hackersの元メンバー。イタズラが好きなお茶目な猫だ。
「ボクはミア。.hackersの元メンバー。そして『誘惑の恋人』であるマハ」
「なっ・・・!?」
アインズが驚くのは仕方が無い。でも彼女からは危険な感じはしない。感じるのはどこかお茶目な雰囲気だ。
正直、彼女ならアインズにもイタズラを成功させそうである。実際にいつの間にかナザリック大墳墓に侵入して気付かない内に第6階層の一部をエノコロ草畑にしている。
それだけでもとんでもない。終始笑顔なのが余裕の表れかもしれない。
「実はこの第6階層に1つだけ愉快なトラップを仕掛けたよ(笑)」
「え・・・」
「まあ、そんなことよりも」
「そんなことよりも!?」
気になること言ったが今は置いておかれた。「愉快なトラップて何!?」って本当に気になる。
「ミア。ボクは会えて本当に嬉しいよ」
「ボクもだよ。今はエンデュランスって言うんだね」
「そうだよミア」
エンデュランスもカイトもミアに出会えて本当に驚きであり、嬉しい。アインズは急な展開過ぎて驚きである。
何から話せばよいか分からなくてお互いちょっと気まずい感じの雰囲気が流れる。そしてお互い空笑い。
「アハハハ。何から話そうかな」
「ミア。あれから色々あったんだよ」
「うん知ってるよ。ボクは欠片の1つ。エンデュランスの中にいるボクから感じてるから分かるんだよ」
「欠片の1つってまさか」
「カイトが思ってる予想で正解だよ」
目の前にいるミアはオリジナルのミアであって違う。『チャップチョップ事件』でデータとして分解された。その一部が回収されなかったのだ。その一部が目の前のミア。
「ここにいるボクはエンデュランスの中にいるボクに共鳴している感じかな」
「それって、キミはやっぱり破片を取り込んだウィルスバグなのかい」
「そうだよカイト」
良いこともあれば悪いこともある。やはり予想していたことが当たってしまった。
できれば当たって欲しくなかったが彼女はウィルスバグであった。
「安心してよ。カイトたちをどうこうしようってわけじゃないからさ。もちろんアインズにもね」
からかうように笑っている。ウィルスバグには見えなく、ミア自身にしか見えない。
「まあ、今のボクはミアでありマハでありウィルスバグだよ・・・ウィルスバグはボクとしてもいらない部分なんだよねー」
自分の手を見る。何ともない手だが中身はウィルスバグだと思うと気が滅入るのだ。どうにかしたいがどうにもならない。
「ふう」と息を吐く。世界には本当にどうしようもないことは必ずあるものである。
「何から話そうかな・・・何か聞きたいことはあるかい。ボクでよければ話すよ」
「何でも?」
「うん。ボクはゴレのような存在じゃないしね。好き勝手にやるさ」
「ねえミア。君は残りのウィルスバグに何か知ってる?」
「それはオレも知りたい」
「うん勿論。ボクは勝手にアインズの家に転がりこんだからね。宿泊費のつもりで話すよ」
先ずは自分のことから話す。
ミアはマハの破片データを取り込んだウィルスバグで間違いない。そして、何故ナザリック地下大墳墓の第6階層のジャングルにいるのか。
「アインズは部下のアウラから少し聞いてると思うけど・・・」
時を遡ると、アウラがゴレと対峙した時の話となる。
アウラがゴレを鞭で攻撃した時が重要だ。ゴレはアウラの持つ鞭にマハの破片データを取り込んだウィルスバグを仕込んだのだ。
「で、そのままナザリックへと帰ったアウラから離れてこの第6階層に居着いたんだ」
「あの時か。・・・しかし、何もしてこなかったのは何故だ。まんまと侵入されて何もしないのは?」
「ゴレの命令なんて聞く気は無かったからさ。今のボクはマハじゃなくてミアだからね」
もしもマハとしてナザリックにいたらウィルスバグを侵食させて、壊滅させていただろう。
そもそも『カオスゲヘナ』ではマハによるナザリックの大侵食も策として組み込まれていたのだ。
それを聞いて冷や汗をかいてしまう。
「まあボクはウィルスバグがバグった存在かな。ウィルスバグとしての本能なんて無いし、侵食しようとも思わない」
マハの破片データの中にミアのデータがあったからかもしれない。
しかし、ウィルスバグであることは変わりないと付け加える。
ミアはゴレの命令を無視して自由にしていたのだ。それでイタズラ感覚でこの辺りをエノコロ草畑にしていた。
「そうなんだミア」
「そうだよエンデュランス。まあ害があるけど無害的なウィルスバグかな」
軽く笑う。
次は第七相の破片データを取り込んだウィルスバグについて。
「タルヴォスに関してだけど、アイツは探しても意味無いよ。何せ八相のうち第六相まで倒せば向こうから来るからね」
「タルヴォス自身が来るの?」
「うん。ゴレがそういう策にしたから。第六相を倒してから2週間後くらいに襲ってくるよ」
第七相のタルヴォス。復讐する者といわれる存在である。その破片データを取り込んだウィルスバグは厄介すぎる。
(タルヴォスの襲撃対策が必要だな)
(第六相を倒した後ってミア・・・)
最後に第八相のコルベニク。再誕の名を持つ存在。
「コルベニクに関してだけどゴメン。ボクは分からないんだ」
「分からない?」
「うん。どうやらゴレもコルベニクだけは起動させたくないみたいでね。どこに隠したか分からないんだ」
コルベニクは最終安全装置、つまり初期化プログラムだ。
コルベニクの初期化プログラムが起動すればウィルスバグですら消滅してしまう。なればゴレは起動させたくないだろう。
コルベニクの破片データを取り込んだウィルスバグは別物の存在と言ってもいいだろう。
「コルベニクが初期化プログラム・・・」
アインズは焦る。最後の八相の破片データを取り込んだウィルスバグが初期化プログラムなんて能力をもっているからだ。
どんな魔法やスキルも効かないし、防ぐことも不可能だ。データドレインも有効かも分からない。
(初期化プログラムが発動する前にコルベニクを倒さないと)
コルベニクの再誕は異世界を全て無に戻すだろう。
「隠されているから分からないけど、コルベニクが動き出せば分かると思うよ」
貴重な情報を得られた。今日、ミアに出会えたのはとても大きい。
「ボクが知っているのこれくらいかな」
残り八相の破片データを取り込んだウィルスバグの話は終わった。
「さて、話したいことは話したから満足だ」
ミアは何かを決意した顔する。
「最後だ。ボクにデータドレインを撃ってほしい」
「な、何を言っているんだよミア!?」
「ボクは本気だよ。ボクはミアであり、マハであり、ウィルスバグなんだ」
目の前にいるミアはウィルスバグだ。ミアであってミアはではないのだ。
マハの破片データにミアのデータがあった。それだけだ。
「ミア・・・」
「エンデュランス。ボクはウィルスバグだ。今は無害でもいつかこの世界を浸食させてしまう。この世界にはエンデュランスがいる。その世界を浸食するのは嫌なんだ」
「で、でも!!」
嫌だ。
それがエンデュランスの気持ちだ。誰だって大切な友人を手にかけるなんて嫌に決まっている。
カイトだって、アインズだって同じ気持ちだ。
それでも大切な友人であるミアが頼んでいるのだ。だが、嫌だ。
「嫌だよミア・・・ボクはミアを殺せないよ!!」
「ボクはエンデュランスが良いんだ。お願いだ」
カイトでも構わないがミアの心はエンデュランスが良いと思っているのだ。
その気持ちに気付くカイトとエンデュランス。
嫌だ。その気持ちは変わらない。だけど、このままならカイトが嫌と思いながら悩みに悩んで実行するだろう。どちらも大切な友人だ。エンデュランスは悩みに悩む。どちらも嫌だ。
そして、時間をかけてエンデュランスは決めたのだ。
まさに断腸の思い。いや、それ以上だ。
「・・・・・・わ、分かったよミア」
「ありがとうエンデュランス」
エンデュランスはミアに近付く。大切な彼女を殺すなんて嫌で嫌で仕方ない。でも彼女の頼みも断れない。心が引き裂かれそうな気持ちで覚悟を決めた。
「ごめんねエンデュランス。君には辛い役目を与えてしまった」
「いいんだよミア。ボクはミアの頼みを断らない」
エンデュランスがミアを優しく抱きしめる。データドレインを展開した右手を背中に宛てる。その右手は悲しみで震えていた。
「大丈夫だよ。ボクは死ぬんじゃない・・・君の心に還るだけだ。ボクはいつまでも君と一緒だ」
「うん・・・うん」
涙が溢れる。本当はミアにデータドレインを放ちたくない。ウィルスバグなんて関係無い。今、抱きしめているのはミアなのだ。
「じゃあねエンデュランス」
「うん。バイバイ・・・ミア」
「ありがとう・・・エルク」
「ミア・・・!!」
データドレインが悲しく、優しく放たれた。ミアは優しい笑顔で消えていく。
エンデュランスは静かに泣きながら消えたミアを抱きしめる。
もう腕の中にミアはいない。それでも抱きしめる体勢は止めない。そこにまだミアの心があるからだ。
「エンデュランスさん・・・」
アインズはエンデュランスに何て声をかけてよいか分からない。友人を、仲間を手にかけた者にかける言葉が出てこない。
アインズにとってエンデュランスがしたのは大切なギルメンを殺したようなものである。そんな悲しみを癒す言葉なんて無い。自分だったら壊れてしまうかもしれないだろう。
「エンデュランス」
カイトも言えない。でも仲間として一言は言う。
「ミアはずっと君の心にいる。それを忘れないで」
「うん」
涙がエノコロ草にポタリと落ちる。
「アインズさん・・・ここは1人にさせてあげよう。大丈夫、エンデュランスなら立ち直るよ。だって心の中にミアがいるから」
「そうですね。エンデュランスさんが立ち直るまで部下には手を出さないようにしときます」
2人は静かに立ち去る。
これで残りの八相の破片データを取り込んだウィルスバグは2体となった。
(・・・ミア)
異世界にいたミアはウィルスバグだった。偽者で本物ではなかった。彼女の記憶も破片データに残っていた過去の記録ようのもの。
でも、心だけは本物だった。
一方、その頃。
ぴろし3とエントマの追いかけっこは第6階層のジャングルまで続いていた。
「しつこいですぅ!!」
「アーッハッハッハッハッハ!!」
金ピカボディがキラリと光る。まさかずっと追いかけっこをしているとは誰も思わないだろう。
そもそもエントマにとってぴろし3が永遠と追ってくるのは怖い以外の何物でもない。
「く、しつこ・・・って何ですかそれはぁ!?」
「うん?」
まさかの変化。ぴろし3の金ピカボディは紫ボディに変化していた。
「い、嫌ですぅ!?」
「な、何なのだこれはあああああああああ!?」
彼の頭には生意気な猫を思い出す。「あの猫めが!!」と小さく呟く。だが口元は微笑してしまっていた。
「許せんぞおおおおおおおお!!」
「それ、わたし関係無いですぅ!!」
「知っておるわ!!」
追いかけっこはもう少し続く。
side変更
カイトチーム
まさかの再開に驚きであったが、気を持ち直してギルド対決を再開する。
目指すは闘技場。そこでブラックローズたちと合流することになっている。もしかしたらもう先に到着しているかもしれない。
そう思うと急がないといけないだろう。ミアのことを話したいが今はその時じゃない。
ギルド対決が終わったらたくさん語ろうと思うのであった。
「またブラックローズに怒鳴られそうかな(汗)」
走るカイトは大きな木を通り過ぎた時、誰かにぶつかった。
「うわっ!?」
「きゃあっ!?」
ぶつかったのはマジックキャスターの女の子。様子を見ると切羽詰まった状況である。
声をかける前に悲鳴をあげられてはどうしようもない。
「いやああああああ!?」
「だ、大丈夫?」
「・・・え?」
そして近づく凶暴なモンスター。それを見て双剣に蒼炎を纏わせる。
まずはモンスターを倒さないと会話もままならないだろう。走り出し、双剣を振るう。3つの痕が刻まれる。
「三爪炎痕!!」
カイトの代名詞とも言える技。本人からしてみればいつの間にか代名詞になったと言う技。その一撃は計り知れない。
「もう大丈夫だよ」
「え・・・?」
カイトはアルシェと言うマジックキャスターと出会う。
読んでくれてありがとうございました。
感想があればジャンジャンください!!
今回の物語は最後の最後でミアのお別れでした。このような展開でしたけど生暖かい目でご理解ください。
彼女は自分の正体がウィルスバグと理解しているので消滅する運命を受け入れていたのです。
本来だったらエンデュランスは嫌で嫌でデータドレインを撃たなかったかもしれないけど、物語的に、彼の成長的に苦渋の選択を選んだ結果となります。本当は嫌でしたでしょうに。
そしてシリアスブレイクと言うかオチでぴろし3がミアの愉快な罠に引っかかりました。
ぴろし3はミアのことを思い出してヤレヤレと笑いながらキレましたよ。
彼もまたミアのことを友達と思っていますからね。
そして本当の最後にカイトはアルシェとついに遭遇。
ここで44話の最初の「大墳墓の挑戦者」につながります。
ミア 「もう出番は終わりかー」
エンデュランス「またミアに会いたいな」
ぴろし3 「おのれ猫めが。また私のボディに!!」