今回からVOL.4に入ります!!
今回の話は帝国の話ですね。原作で言うところのアウラたちが皇帝ジルクニフに謝罪に来いと脅迫するシーンあたりです。
でもオリジナルの話になっているのでフォーサイトやガルデニアたちも加わります。
帝国へ
帝国陣営
ジルクニフは頭をフル回転しながら現状をまとめていた。
帝国に使者として来た双子のダークエルフのアウラとマーレに攻撃されて被害は甚大だ。兵士もまたいっきに削られてしまったのだ。
だが一般兵士くらいなら代えはいくらでもいる。痛い打撃とは帝国の最高戦力とも言える帝国四騎士の1人がやられたことだろう。こればかりはジルクニフも大打撃と言う他ない。
今の状況で相手を攻撃するのは愚策であるから、ここは情報収集が大切である。笑顔でアウラとマーレにお茶会に誘う。
「良いよ。どうせ話はゆっくりしたいしね」
「そうですか。では此方に」
高価そうな椅子に机、香りが良い紅茶に甘いクッキー。お茶会には文句無しの用意だろう。
アウラは出された紅茶を何も疑問を持たずに飲む。これを見たジルクニフは彼女には警戒心が無いのか、毒に耐性を持っている中と考える。
だが彼女が「毒は入ってないみたいだね」と言ったの聞いて、アウラは毒が入っている可能性を知ってなお飲んだと理解した。
やはり毒の耐性を持っているからこそ言える言葉だろう。だから毒入りの紅茶を想定して飲めるものだ。
「さて、まず貴女方は使者として来たのですね」
「そうだよ。アインズ様がお怒りだからね。謝罪に来いってさ」
「それは私自らが大墳墓に向かうということですか?」
「そんなのそうに決まってんじゃん」
ポリポリとクッキーを齧る。
アウラは余裕にクッキーを食べて、マーレはオドオドしながら姉と皇帝を交互に見る。最初ジルクニフはアウラが男性かと思っていたが女性であると意外であった。そしてマーレが女性だと勘違いしている。
「アインズ様は早く来いってさ」
(早くか・・・どのくらいかが分からないな。だがいきなり敵地に赴くのはできない。準備には5日だな)
5日後に行くことを決定する。そもそも行かないと言う選択肢は無いのだ。行かなかったら今すぐにでも殺される可能性があるからだ。
「そうですね。業務や準備もあえるので10日後に行こうと思います」
「10日・・・遅くない?」
10日と多めに言ったのは時間はできる限り欲しいからだ。だから平然と言ったものだが、やはり難しいようだ。
ならば当初の5日を言う。最初に行った日にちよりも半分なら相手も納得するだろう。
「5日かあ・・・それでも遅くない?」
「先ほど申しましたが帝国の業務もあります。必要最低限のことを片づけてから向かいます。それにアインズ様と言う方に贈り物も準備したいですしね」
「む、贈り物」
主への贈り物の準備と言われれば彼女も思うところがあるらしい。やはり相手への贈り物とはどの相手にも有効のようだ。
「お姉ちゃん。・・・贈り物は大切だよね」
「まあ、そうだね」
クピクピと紅茶を飲む。ちゃっかりマーレのクッキーも完食している。
「では5日後に向かいますね」
「待ってるよー。あ、そうだ。地面に埋まった人たち掘り起こそうか?」
小悪魔的な笑顔で言ってくるアウラにジルクニフは普通に笑顔で返事をした。
「はい。お願いします」
「ひき肉かぺっちゃんこになってるかもね」
これは相手の挑発だ。挑発によって思考を鈍らせ、こちらの情報を取り出すか不祥事を起こすかだろう。これはジルクニフや他の奴らだって使っている手段だ。
だからジルクニフは挑発されるのに慣れている。そもそも『鮮血帝』と言われているのだから相手の挑発くらいわけもない。
「じゃあ掘り起こすよ。マーレ」
「ええ、ボクがあ!?」
アウラ特有の弟への命令。マーレはいつも逆らえない。
そんな時にある声が聞こえた。
「それは必要ない。もう私たちが助けたからな」
声が聞こえた方を向くと兵士がある人物たちを連れてきていたようだ。今の状況が緊急事態だからジルクニフも急な登場は知らない。
しかし、その人物たちを連れてきた兵士には後で褒美を与えようと考える。何せ、今の状況に一緒に居て欲しい人物たちだからだ。
(やっと帰ってきたか!!)
ガルデニア、砂嵐三十郎、マーロー、月長石、エンデュランスである。
「助けた?」
「ああ。全員助けた。負傷者は居たが死傷者は居ないぞ」
ジルクニフは兵士を見るとコクンと頷いたのを確認して、ガルデニアが言ったことを信じる。
「あと・・・帝国四騎士も助けた。やりすぎだ。早く助けなければ完全に蘇生はできなかったぞ」
「だって向こうから襲ってきたし、正当防衛」
「見た感じ其方が先に襲っているようだが?」
「先に不敬を働いたのは帝国」
「ただの迷子のようなものだろう」
「アレが迷子ぉ。ただの墳墓荒しでしょ?」
「それだったら私たちは?」
「アンタらは・・・・・もう災害?」
「自然災害に例えられるとはな・・・そこまでじゃないと思うが」
「アレが災害じゃなければ何だって言うのよ!!」
「・・・押しかけ?」
「性質悪!?」
急にガルデニアとアウラの会話の意味が分からなくなる。彼女たちの会話をまとめると、まるでガルデニアたちもナザリック大墳墓に侵入したかのような言いぐさである。
(災害、押しかけ?・・・まあいい。まさか帝国四騎士である『不動』が助かったのなら戦力の変化は無い。これは本当に助かる・・・しかし蘇生か。それほどの魔法かアイテムを持っているのか)
実力は知っているがまさか蘇生させる程の魔法かアイテムまであるなら、これほどの人材はそうそう居ない。本格的にスカウトしたいが今は緊急事態のため出来ない。しかし、流れは少し変化している。
「ところでジルクニフ皇帝よ。ワーカーたちはどうした?」
ここで砂嵐三十郎が口を開く。何故、彼らはワーカーのことを知っているのだろうと疑問が出てしまう。
大墳墓に調査に行かせたワーカーに関しては秘密裡にしているため、流石に砂嵐三十郎でも知らないはずだ。なのに何故ここでワーカーの単語が出てくるのか。
フールーダに目配せして確認するが顔を横に振られる。何も知らないようである。
「ワーカーはまだ到着していないのか?」
「ああ。まだ到着していない」
そもそも生きているかも分からない。
「そうか。先に俺たちが到着したってことはいつの間にか追い抜かしてしまったか」
「・・・何故ワーカーたちのことを知っているんだ?」
「何でって、そりゃあ出会ったからな」
「出会ったとはまさか例の大墳墓でか?」
「まあな」
(彼らも大墳墓に行っていたのか。成程だからワーカーのこと知っているのか。ならばワーカーは生きているな。彼らの口ぶりだとそう言える)
ジルクニフの予想は正解でワーカーたちは全員何とか生きている。フォーサイトは帝国に向かっているが他のワーカーは知らない。恐らく他のワーカーたちも一応報告のために帝国に向かっているに違いない。
(しかし用事で帝国を離れると言っていたが、まさか彼らも大墳墓に行っているとはな)
ここで1つ思いつく。彼らがここにいると言うことは無事にナザリック地下大墳墓を脱出できたと言うことだろう。これなら彼らや帝国に向かっているであろうフォーサイトから情報を手に入れられることができる。
「ったくワーカーの侵入に関しては楽に対処できるけど・・・アンタらは別。あんな事になるなんて大変よ、もう」
(あんなこと?)
「じゃあ、アタシらは帰るわ。5日後にね。来なかったら国を亡ぼすわ」
「さ、さようなら」
アウラとマーレはドラゴンの背中に乗ってナザリック地下大墳墓へと帰還する。
side変更
フォーサイト陣営。
ヘッケランたちは地獄のナザリック地下大墳墓から脱出してやっと帝国に帰還した。帰還できたことに心からホッとしてしまい早く休みたいと思うが先に報告が必要だ。
しかし早速帝国に入国したのは良いのだがその惨状に目を丸くしてしまう。何せ帝国がまるで攻撃させられたように酷い有様だからだ。
「何があったんだ!?」
「取りあえず早く城へ行きましょう」
「そうだなロバーデイク」
早く城へと向かうフォーサイトのメンバー。そんな状況でもアルシェの顔は優れない。
それはカイトたちの心配をしているからだ。カイトたちの実力は強いと知っているがアインズの実力も強い。アルシェが直接感じ取ったからアインズの危険性に恐ろしさ、強大さが身に染みて理解している。
「心配なのは分かるが今は信じるしかない」
「うん。分かってる」
それでもヘッケランはカイトたちのことに関して心のどこかで諦めてしまっている。もうナザリック地下大墳墓を脱出してから4日だ。
エンデュランスと一緒に途中まで脱出したが彼に安全なところまで案内された後、ナザリック地下大墳墓に戻っていった。その後はどうなったか分からない。
時間はどんな状況でも必ず過ぎているため今カイトたちはどうなっているだろうか。勝ったのか殺されたのかどちらかだ。
(もう4日も経った。決着はついているだろう。ここは早く報告して捜索隊を結成して探すしかない)
捜索隊を結成して探すと思うが、あのナザリック地下大墳墓に行く志願者は居ないだろう。知る者なら尚更である。
だがカイトたちがもし勝利していたらヘッケランたちも安心して行けるものだ。
(マジで生きていてくれよカイト。じゃなきゃアルシェが悲しむ!!)
急いで城に走り入城する。自分たちのことを兵士に説明して、皇帝への謁見を求める。
どうやら帝国側も此方のことを知っているのでスムーズに入城できた。兵士に案内されるまま皇帝ジルクニフのところに案内される。
『鮮血帝』と言われる皇帝だ。失礼の無いようにしなければならないだろう。大きな扉を開いて中へと入る。
「我々はフォーサイト。リーダーのヘッケランです」
「よくぞ帰還したな。この帝国の有様を見て色々と聞きたいことがあるようだが、こちらも大墳墓に関しての情報を知りたい。報告してくれるか」
「はい」
ヘッケランはナザリック地下大墳墓の詳細を詳しく説明する。あの場所はまさに地獄で選りすぐりのワーカーたちでも全く太刀打ちできない。
もし攻略するなら英雄級でなければならないだろうと推測している。凶暴なモンスターに魔神とも言えるほどの存在。まさに魔の巣窟、魔の世界。
この説明を聞いたジルクニフは顔を歪める。実際に双子のダークエルフに悪夢を見せられたからナザリック地下大墳墓の力は分かる。
「なるほどな。その情報は信じよう」
「ありがとうございます。我々は攻略できません。しかし・・・」
「しかしドットハッカーズなら攻略できると?」
「な、何故それを?」
ジルクニフが手を上げるとガルデニアたちが出てくる。
「ガ、ガルデニアにエンデュランス!?」
信じられない者を見た顔をしたフォーサイトのメンバー。それはそうだろう、何せナザリック地下大墳墓で別れたはずなのに逆方向に位置するバハルス帝国にガルデニアたちがいるからだ。
しかも先にバハルス帝国に向かったフォーサイトより到着しているなんてあり得ない。どんな方法で向かったか知りたいくらいだ。
「彼らは客将として帝国にいる。つい先日まで彼らはある用事で国を空けていたんだがな・・・その用事とやらがお前らと同じ大墳墓の調査っだたらしい」
(本当に運が良かったんだな俺ら)
「彼らからも大墳墓の話を聞いている。そしてお前たちの話も合わせてみると確かに嘘ではないな」
「あ、あの口を開くことを許してください」
「何だマジックキャスターの少女よ」
「カ、カイトさんたちはどうなったんですか!?」
「それに関しては今から砂嵐三十郎たちに聞くつもりだ。お前たちワーカーが来るなら一緒に聞いて話を合わせた方が良いからな」
砂嵐三十郎が前に出る。これから説明をするからだ。
「お前さんがフォーサイトのアルシェだな。カイトが心配してたが無事にバハルス帝国に到着したみたいだから安心したぜ」
「あ、あの。カイトさんは無事ですか!?」
ここで「ふぅ」と息を吐く砂嵐三十郎。
「それは知らん」
「な、何でですか!?」
「俺らはカイトに指示を受けて帝国まで戻って来たんだ。ナザリック地下大墳墓のことを伝えるためにな。お前らフォーサイトの知らない情報もあるから一緒に合わせる」
「知らないわけは・・・」
「知らないのは途中でナザリック地下大墳墓を脱出したからだ。俺が知る情報だと最奥まで行った。そこで墳墓の主であるアインズとやらと戦ったはずだ」
「そこまでしか知らねえんだよ。戻った者は先に進んだ奴らのことなんざ分からないからな」
マーローも砂嵐三十郎の説明に加担する。
「そ、そんな。心配しないんですか!?」
「してねえよ」
「はっはっはっは。これでもマーローは心配してるぞ」
「な、んなわけねえだろ砂嵐三十郎!!」
いきなりテレるマーロー。ここにレイチェルかニューク兎丸がいれば「ツンデレか!!」ってツッコミをしそうである。
「んで、ナザリック地下大墳墓の情報を伝えるために帝国に来たんだ。本当ならこの情報は俺らだけで共有するつもりだったんだが帝国からもワーカーが来てるなら情報をこっちも共有した方が良いと思ってな」
「それは助かる」
「しかしまあ・・・まさかナザリック地下大墳墓から使者が帝国に来るとは驚いた。流石に俺らが帝国と繋がっているなんて情報が無いように.hackersというチーム単体できたんだが・・・どこでバレたんだ?」
(・・・それは確かに。砂嵐三十郎たちは信用できる奴らだから情報を与えるなんて無い。それにだから客将を一旦止めて国を空けた程だからな。それだとワーカーか・・・いや、ワーカーの方も帝国から頼んだことは無いように裏回しはしたからな。墳墓の奴らはどうやって帝国の仕業だと辿り着いたんだ!?)
「墳墓の奴らが帝国に襲撃を!?」
「そうみたいだぞ。それで皇帝様じきじきに謝罪に来いとのことだ」
「頭が痛い話だな」
「あ、あの。墳墓の主が謝罪に来いと言っていたんですか?」
「ああ。使者の奴らがな」
何気ない言葉だが、深く考えれば実は恐い意味が含まれている。それはナザリック地下大墳墓の主が謝罪に来いと言う言葉に含まれている。
アインズはカイトと戦っているはずだ。それなのに使者を帝国に寄越したのは戦いが終わったからこそできるものだ。戦っているのに使者を帝国に寄越している暇なんて無いはずだ。
だからこのことからアルシェは最悪の予想をしてしまった。それはカイトがアインズに負けたという予想。
「そ、そんな・・・」
アルシェの目から涙がポタリと落ちる。
「ア、アルシェ!?」
「これはマズイ。心の傷は魔法でも・・・」
「あー・・・アルシェ。お前さんの考えてることは分かるが、決めつけるのは早いぞ」
「でも・・・」
「まだ確証は無いぞ。もしかしたら生きてるかもしれない。俺らだってカイトには生きてもらわなきゃ困る。それに謝罪に行くのには俺らも行く。何せ他の仲間もまだ墳墓にいるからな」
砂嵐三十郎の言葉にジルクニフは心の中で「当然だ」と思う。ナザリック地下大墳墓行くにしても彼らについて来て来なければ困る。彼らは最奥まで攻略できたと言うなら連れて行かない馬鹿はいない。
「な、なら私も連れてってください!!」
「ア、アルシェ!?」
「ごめんなさいヘッケラン。私はどうしても心配なんです」
「・・・・・ったく本当は嫌だがアルシェが言うなら仕方ないな」
「まったくよね」
「仕方ありませんね」
「みんな・・・ありがとう。お願いします皇帝様!!」
ジルクニフは考える。どうせなら駒は多い方が良いし、ある程度地理を知る者がいるならこれも多い方が良い。これでも目の前にいるワーカーはあの地獄から帰還した者たちだ。
十分な実力者なため、足手まといにはならないだろう。しかし、心配だからと言ってまた地獄に戻るのは可笑しな話だ。
「良いだろう。同行を許可する。出発は4日後だ」
ジルクニフたちは人員を揃えてナザリック地下大墳墓へと出発することを決める。
(それにしても・・・災厄を退いたドットハッカーズでもダメなのか。どんな地獄なのだナザリック地下大墳墓。しかし砂嵐三十郎たちは最奥まで行ったと言うならアインズの所までは安全に行けるかもしれないな)
(あの御方の大墳墓を最奥まで攻略しただと!? ドットハッカーズとは何者だ!?)
(カイトさん・・・生きていてください!!)
(またあの地獄に行くのか・・・いや、これもアルシェのためだ。マジで生きていてくれよカイト!!)
(・・・・・嘘を言うのも大変だ)
読んでくれてありがとうございました。
感想などあればガンガン気軽にください。
はい。何となく分かるようにアインズ側とカイト側がイロイロと考えて帝国に行きました。流れは同じですが経緯は少し違う感じですね。
原作だとアウラとマーレが帝国兵士を潰しますがガルデニアたちのおかげで助かりました。良かったね帝国兵士たちよ!!
次回はジルクニフがアインズと会合します。そこにカイトも加わります。どんな会話になるかは構想中です。
次回もゆっくりとお待ちください。
カイト 「皇帝様とどう話を合わせるか・・・」
アインズ 「難しいですね。取りあえずオレらの関係は内緒にしましょう」
ジルクニフ「何者なのだアインズとカイトとは?」