.hack//OverLord   作:ヨツバ

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こんにちわ。
今回はジルクニフがアインズに謝罪にくるシーンとなります。
そこにカイトが介入してジルクニフが訳が分からなくなります。
がんばれ鮮血帝!!

では、始まります。


舌戦

バハルス帝国陣営

 

 

草原を駆ける馬車が6台。馬車の周囲には過剰とも言える警護だが当然の処置かもしれない。確かにこの草原にはどんなモンスターが現れるか分からない。だからこそ警備をしている兵士は気を抜かずに警戒している。

最もな理由は馬車の中にいるが皇帝であるジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスがいるからだからだ。

 

「・・・・・周囲にまだ異常無し」

 

ポツリと呟いた女性はこの警戒している兵士の中で最も周囲を警戒している者。彼女の名前はレイナース・ロックブルズ。

帝国四騎士の一人で紅一点でもあり、『重爆』の二つ名を持ち、帝国四騎士の中でも最も攻撃に長けた騎士と評される。

今回の護衛に任されたのはやはり彼女の攻撃性能によるものだろう。本来ならば『不動』のナザミ・エネックが護衛として適任であったがアウラとマーレにより重症を負ってしまい、ガルデニアたちに助けられた為、今は療養中で動けない。

だが彼女だけが今回の護衛の要ではない。今回の護衛は.hackersのメンバーも護衛として組み込まれている。先頭にはレイナースの他にマーローも加わっている。そして殿にが月長石が守っている。

 

「おうおう。全員が超警戒してんな」

 

マーローは超警戒している中でも余裕そうに呟く。大抵のモンスターなら倒せるし、アイテムも豊富に持っているので対処ができるからだ。

そして今回の一連の流れの真実を知っているからこその余裕もある。月長石は真面目に警護しているが、それはナザリックに対してでは無く野生のモンスターに対してのものである。

 

「余裕そうね。流石は大墳墓を最奥まで攻略したからかしら」

「まあな。あと到着まで数時間ってとこか」

「数時間ね。あともう少し行進したら皇帝に報告しますかね」

「てめえもどこか口が軽い感じだな。仕事はしてるけど」

「私は自分が第一なので・・・でもこの呪いが解けるまではね」

「んあ?顔の呪いが解けたのか?」

「ええ、あの人のおかげでね。もし帝国四騎士を止めたらあの人についていって冒険者やるのも良いかもしれないわね」

 

良く見えないが頬を紅くした気がするがマーローは見なかったことにした。余計な詮索は面倒ごとを醸し出すものだ。だからレイナースが小さく「・・セヲ」と言ったのも気にしないことにした。

 

「砂嵐三十郎は皇帝様と何を話してるかね」

 

マーローは馬車の方を見る。馬車の中にはジルクニフがいる。

 

「起きてくださいジルクニフ様」

「んん、ああヴァミリオンか。久しぶりに昼寝なんてものをしたよ。最近業務が忙しかったからな、こればかりはゴウンにある意味感謝だな」

「またそんなことを言って・・・」

「休憩は大事だぞ。根気を詰めて倒れられては困るだろう。皇帝様なら尚更だ」

「そう。砂嵐三十郎の言う通りだ」

 

目覚めに水を飲む。

今、この馬車の中にはジルクニフにフールーダ、砂嵐三十郎、ロウネ・ヴァミリオンである。

ロウネ・ヴァミリオンはジルクニフが信頼する優秀な秘書官だ。

 

「爺も休憩は大事だと思うよな?」

「そうですな。しかし休憩がサボリになると困ります」

「はあ、どうやら今の仲間は砂嵐三十郎だけらしいな」

「そんなことは後にしてください」

 

ジルクニフが砕けた話し方をするのは信頼する者だけ。その中に砂嵐三十郎も含まれるのは彼の人柄のおかげである。

 

「出発する前にいくつか案件は片づけましたがまだありますよ」

「聞きたくないな」

「まあ今だけはよしましょう。これから起こる案件は酷いものでしょうから」

「まったくだ。ゴウンに謝罪に行くとは・・・頼りにしてるぞ砂嵐三十郎」

「ああ、任された。それにカイトたちも心配だしな」

「生きてるのか?」

「生きてるさ」

 

何の根拠があるのか分からないが砂嵐三十郎はカイトのことをとても信頼しているようだ。彼ほどの者が信頼する相手ならゆっくりと話しをしたいものだ。

それに相当な実力者ならスカウトもしてみたい。もし成功すれば.hackersの戦力が丸ごと手に入るはずである。

 

「もし無事帰れたら世継ぎについて話を進めるのも良いですね」

「その話はまだ構わんだろう」

「愛妾のロクシーはどうですか?」

「ああ、彼女は確かに良い女だ。しかし彼女自身が拒否している。私にもっと釣り合う美人がいるとな」

 

ロクシーは聡明な妾の一人で美貌は持たないが「次期皇帝を育てる」という点において最も頼れる存在だ。だからジルクニフは彼女を女性の中で上位に信頼している。

 

「そうなのですか。ジルクニフ様との子なら美形で生まれると思いますが」

「より美形の方が良いらしい。指揮する皇帝もハンサムの方が兵士たちに受けが良いからな」

「確かにそうですな。醜面より美形の方が良い。誰もが思うことです」

 

子作りもいろいろと考えているのだなと思う砂嵐三十郎。確かに王族ならば子孫を残すのにより良い血統を残すのが良いに決まっている。

だからこそ容姿、知性、身体能力も考えるのだろう。現実世界でも似たような考えはある。こればかりはどこも同じなのかもしれない。

 

「そうですな、リ・エスティーゼ王国の第三王女はどうですか?」

「やめてくれ。あんな気持ち悪い女と結婚は無理だ。もし結婚したとしても帝国をごっそりと持っていく計画を立てるに決まっている」

 

ため息を吐く。ラナーはまだある程度の距離を保つくらいで良い。彼女の奴隷廃止や冒険者組合の改革など画期的なアイデアを出す頭脳の持ち主で、そればかりは認めている。

だからこそ画期的なアイデアを生み出してもらい、多少は参考にさせてもらうのだ。ジルクニフは帝国のためなら何でも利用して取り込む技量はある。

 

「では、竜王国の女王はどうでしょうか?」

「若作り婆は勘弁してくれ」

「しかし竜の血が流れており、始原の魔法が使えるとか」

「それは爺が調べたいだけだろう。確かにもし、蘇生魔法に関して分かれば良いがな」

 

バハルス帝国には蘇生魔法を使える者はいない。そもそも蘇生魔法は相当魔力を消費するので使える者は限られてくる。

ここでジルクニフは思い出す。そういえば『不動』を甦らしたのは砂嵐三十郎たちだ。

 

「そういえばどうやって『不動』を甦らした?」

「それは蘇生アイテムを使った」

「ほう、そんなアイテムがあるのか」

「ああ。それに蘇生魔法ならうちに使える者はいるぜ。しかもリーダーのカイトだって使える」

「ほほう。それはぜひ教えてもらいたいですな」

 

ズイっとフールーダが顔を近づける。やはり魔法のことになると年甲斐も無くはしゃいでしまう。

 

「おお、仲間と合流したらな」

 

謎の圧に少しだけ押された。なんとも元気な爺さんだと思ってしまう。

 

(蘇生魔法が使えるマジックキャスターがいるのか。それにリーダーであるカイトも使える・・・一体どれほどの人材をドットハッカーズは抱えているんだ。そしてそのチームをまとめるカイトとは一体!?)

 

ここで馬車の外からレイナースから報告が来る。どうやら先発隊がナザリック地下大墳墓に到着したらしい。あと一時間弱で到着とのこと。

 

「ついにか・・・」

 

 

side変更

 

 

フォーサイト陣営

 

先発隊にはフォーサイトにガルデニア、エンデュランスがいる。

 

「カイトさん・・・」

「大丈夫だアルシェ。カイトはきっと無事だ」

「ガルデニアさん」

「カイトは強いよ。心もね」

「エンデュランスさん」

 

アルシェはガルデニアたちから励まされていた。カイトは生きている、そう強く言われながら。そもそもガルデニアとエンデュランスはカイトの強さを知っている。

今回の件が仕組まれたことと知っているが、実際にカイトがピンチでも乗り越えると思っている。ガルデニアは彼の強さを昔に知って尊敬して惚れている。エンデュランスもまたそうだ。

彼のおかげで昔の自分は少し強くなれた、成長できたからだ。そしてその後は彼とは違う英雄となる者のおかげで成長できている。

 

「俺らとしても生きてもらわない困るぜ。それにしてもまさか闘技場のチャンピオンと一緒に行くとは思わなかったぜ」

「闘技場のチャンピオンか」

「ん?」

 

エンデュランスは何気ない顔で傾ける。まるでチャンピオンがそれほど凄いことじゃない感じだ。

それはエンデュランスがThe Worldでチャンピオンの1人であったからだ。

 

「え、チャンピオンだった?」

「エンデュランスは故郷では元チャンピオンだったらしいぞ」

「チャ、チャンピオン!?」

 

エンデュランスは紅魔宮アリーナの無敗の宮皇とも言われていたのだ。

 

「宮皇・・・実は王族だったり?」

「そんなことないよ。それに宮皇だったのは昔の話さ。今はハセヲが宮皇だよ」

「ハセヲ?」

「ボクの大切な人・・・大事な仲間だよ」

 

ハセヲを言われてもガルデニアも分からない。何せ知らないからだ。

 

「ハセヲさんと言う方はドットハッカーズでは無いんですか?」

「違うよ。別のチームだよ」

「ん?ってことはエンデュランスは別のチームにも所属していたのか?」

「ううん。元々は.hackersが最初に所属していたチームだよ。ややこしいかもしれなけど、.hackersは一度解散したんだ。その次にハセヲと出会って新しいチームに所属したんだ」

「そうなのか」

「その後に.hackersが再結成されたんだよ。『禍々しき波』である八相を倒すためにね」

「そうだったんだ」

「・・・そろそろ到着だね」

「ついにか・・・また来ちまったか」

 

ナザリック地下大墳墓に到着。

 

 

side変更

 

 

ナザリック陣営

 

ついにナザリック地下大墳墓に到着した。現地が情報と合っており、フォーサイトと砂嵐三十郎の情報からも当てはめると間違い無い。

辺りは薄暗く、不気味だ。天候だって暗い雲で太陽の光が差していない。

 

「あれがナザリック地下大墳墓か」

 

ポツリと呟く。フォーサイトの話からしてみると内部は別大陸に来たかのような作りらしいが、そうは見えない。

だが『地下』と名が付く大墳墓なら地下に空間に広く続いているのだろう。そして周囲をよく見渡してみると1つログハウスを発見する。「ログハウス」とポツリと誰かが呟くとカチャリと扉が開く。

ログハウスから出てきた者にジルクニフや護衛騎士たちは全員見惚れる。なぜならログハウスから出てきた2人は感嘆のほど美人だからだ。誰かが「美人」と言って、誰かが舌打ちしたが気にしない。

 

(・・・なんという程の美人だ。贈り物として帝国周辺から美人の若い娘を集めたが、彼女たちに比べると見劣りしてしまうかもしれん)

 

彼らを見惚れさせた2人とはユリにルプスレギナだ。ユリはいつも通り冷静だが、ルプスレギナに関しては静かにしている。ボロを出さないようにしゃべるなと言われているのか妙に大人しい。

 

「遥々ようこそおいで下さいました。私はユリ・アルファ。隣に控えますのはルプスレギナ・ベータと申します」

ペコリとお辞儀をしてくれる。これはまた丁寧で礼儀正しいものだ。しかし、油断はできない。これでも彼女たちは敵と者たちだからだ。

 

「丁寧なあいさつ有り難い。私はジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス。それにしてもとてもお綺麗ですね。帝国の皇帝としてでは無く、1人の男として仲良くなりたいものだ。気軽にジルと読んでも構わないですよ」

「御戯れをジルクニフ様。アインズ様からは丁重にもてなせと言われております」

(アインズ様か・・・主の名をこうも簡単に呼ぶとは親しい間柄。愛人の枠か?)

 

従者である者が主の名を軽々しく言うならば関係があるのだろうと予測するが、それは当て外れだ。アインズは特にそういうのを気にしていないし、王としての細かい決まりに暗黙のルールなど知らないからだ。

 

(ふむ。これでも男として美男子の自覚はあるのだが・・・ダメか。そもそも人間の容姿に見えるが亜人なのだろうか)

 

ジルクニフはこれでも美男子の自覚があり、その容姿と言葉使いで引き込もうかと思ったが不発に終わる。

フールーダに彼女は人間かどうかと聞くと亜人と予測してくれた。種族までは分からないようだ。

 

(人間では無いことは確か。まあ良い、今は本題が大切だ)

 

今回は謝罪に来たのだ。美人を口説きにきたわけでは無い。

 

「私はゴウン殿に謝罪に来ました。案内してくださいますか?」

「勿論です。しかしアインズの支度が準備できてからとなります」

「なるほど。では、私たちはここで待機していればよろしいですね」

「いえ、待機はさせません。アインズ様から丁重にもてなせと言われてますので待っている間は暇など与えません」

 

ユリがパンパンっと手を叩くとデスナイトが5体ガチャガチャと出てくる。この瞬間にジルクニフたちは恐怖を慄く。

 

「ば、馬鹿な・・・デスナイトだと!?」

 

デスナイトの登場に兵士はおろか帝国四騎士の者まで驚いている。それはデスナイト一体だけで帝国を壊滅させる程だからだ。

そのデスナイトが5体となれば恐怖するのは仕方ない。

 

「やべえな。こりゃあ帝国四騎士全員でもデスナイト1体を抑えきれるかどうか分からないぜ」

 

震える声で呟くのは四騎士の筆頭でありリーダーのバジウッド・ペシュメル。『雷光』の二つ名で知られる強さだが5体のデスナイトの前では動揺を隠せない。

 

「おい爺。本当にあのデスナイトが5体なのか!?」

「そのようです・・・まさかデスナイトが5体とは。凄い。何と言うことか!!」

 

フールーダは慄く。それは神と称するアインズの力の1部を見たからだ。帝国を壊滅させるほどのデスナイト使役するなぞ上位のマジックキャスターはいない。フールーダですら不可能だ。

ジルクニフたちが慄く中、砂嵐三十郎たちとフォーサイトは冷静である。最も、フォーサイトが冷静なのは砂嵐三十郎やガルデニアたちがいるからである。

 

(妙に冷静だな・・・攻略したと言っていたが嘘ではあるまいな!?)

 

デスナイトが出現したおかげで.hackersが本当にナザリック地下大墳墓の最奥に行ったかどうか眉唾物になってしまう。しかし、ここでフォーサイトのヘッケランが説明してくれる。

 

「陛下。ここで自分がこんなことを言うのも変ですが、大丈夫です」

「何故、大丈夫と言える?」

「ガルデニアたちの実力は本物だからです。自分は墳墓にてガルデニアたちがデスナイトを屠るのを見ました」

「本当か!?」

 

チラリとガルデニアたちを見ると彼女たちは涼しい顔でデスナイトを見ていた。兵士たちとは明らかに違い、怖がっている様子も無い。

 

「ご安心ください。このデスナイトたちはアインズ様が作り出した物。主の命令以外で襲うことはありません」

(な、馬鹿な・・・デスナイトを作り出しただと!?)

 

帝国を亡ぼすほどのモンスターを作り出す。それは圧倒的戦力を教えられたのも同じだ。そして勝てない事を直接言われたようなものだ。

フールーダにいたってはデスナイトを生み出した事実によって更に興奮している。これはもう話しかけても無駄だと理解してしまう。

 

(ゴウンは無限にデスナイトを作り出せるとでも・・・・・・・・・・・もう駄目だ。考えたくない)

 

最初はアインズの腹を暴いてやろうと思って来たがもうこんな事実を叩きつけられては考えが可笑しな方向に傾く。

 

(もう墳墓の戦力とゴウンがどんな奴か分かれば良いかな・・・)

 

ジルクニフの心が擦り減ってきている。

 

「それにそちらにはドットハッカーズのお方がいるのでもしもの時は大丈夫です。最も、『もしも』なんてことはありませんが」

 

ユリがガルデニアや砂嵐三十郎たちを見て口を出す。彼らがいれば大丈夫だと口にしたのだ。これはデスナイトを倒せる者だとナザリック側が認めているようなものだ。

 

「さて、天候も悪いのでどうにかしないといけませんね」

 

ユリが天候のことを口にする。確かに天候は悪く、今にも雨が降ってきそうだ。しかし急に暖かくなり、太陽の光が射す。

まるでポカポカな春の陽気だ。この天候の変化にまた驚いてしまう。

 

「急に太陽が!?」

「温かいぞ!?」

「これは一体!?」

 

兵士たちが驚き、ジルクニフが驚き、フールーダが驚く。

 

「爺、これはまさか魔法か!?」

「でしょうな。天候を変える魔法なら第7から第8程の・・・何ということだ。これほどの魔法が存在するのか!!!!」

 

フールーダは年甲斐も無くはしゃぐ。

 

「準備ができました。アインズ様のお仕度の待っている間は紅茶とお菓子をどうぞ」

 

出された紅茶を菓子を食べるジルクニフ。そして更に現れる美人のメイド。

 

(美味いし・・・美人の大安売り・・・ドットハッカーズの実力。もう分からない)

 

 

side変更

 

 

ナザリック地下大墳墓の内部に案内されるジルクニフたち。内装の豪華さと造りに早くも経済の力を見せつけられた。

そして玉座へ続く扉を開くと更に豪華な部屋であった。やはり玉座なのだから当然だろう。しかしそれよりも目を惹いたのは部屋に並び立つ悪魔たちだ。

堂々と並ぶ悪魔の先には主であるアインズがいる。その姿はまるで死の王と言っても過言では無い。

 

「よく来たなバハルス帝国の皇帝、ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス殿よ。我がこのナザリック地下大墳墓の主であるアインズ・ウール・ゴウンだ」

 

声を聴いた瞬間にアインズが人間のような声を出してくれたおかげで幾分だけ楽になる。もし声までもおぞましいものだったら会話になったすらか分からない。

 

「謝罪のための時間を作ってください感謝します。私はジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス。名が長いのでジルクニフで結構です」

「そうか。ならジルクニフ殿と呼ばせてもらおう」

 

それにしてもナザリックの戦力さには驚かせる。ジルクニフに控える兵士たちは恐怖していることは確かだが責めはしない。寧ろこんな地獄について来てくれるのだから逆に褒めたいくらいだ。

 

「それにしても下等な人間がアインズ様と対等とは許せませんね・・・跪け」

 

デミウルゴスが言葉を発した瞬間にジルクニフと砂嵐三十郎以外が跪いた。

 

(何が起こった!?あのスーツの悪魔が口にした瞬間に兵士たちが跪いただと!?)

 

ジルクニフは持っていた装備アイテムのおかげで無効化した。砂嵐三十郎たちも聞いているようだが、堪えているようだ。

 

「止めよ。これでも彼らは客人だ。無礼なことはするな」

「はっ、申し訳ございません。自由にせよ」

 

デミウルゴスがもう一度口にすると兵士たちが開放される。

 

「すまないジルクニフ殿。我が部下を無礼なことをした。気分を害したなら私自ら頭を下げることも構わないぞ」

 

アインズの言葉に部下である悪魔たちがざわめく。

 

「いや、大丈夫ですゴウン殿。部下の間違いは上に立つ者としてあるものです」

「そう言ってくれるとありがたい」

「では、本題の方に入ります」

 

兵士がゴトリと大きなツボを持ってくる。この中にはナザリック地下大墳墓にワーカーを送り込んだ貴族の首がある。

毒にも薬にもならない貴族の上手い使い方だ。最もそうさせるように誘導したわけであるが。

 

「ふむ・・・ありがたくいただこう。有効に使わせてもらおう」

 

アインズが首を持ち、魔力を込める。アンデット創造だ。貴族の首がおぞましく変化してデスナイトになった。

 

(なっ・・・デスナイトを生み出した!?)

 

アインズが本当にデスナイトを作り出した事実に驚愕する。死体1つで帝国を脅かすデスナイトを1体生み出すなんて事実は本当に戦力の差を叩きつけられた。

これでは勝てない。今の帝国の全戦力を総動員しても勝てない。もう舌戦どころではないのだ。最初から負けていれば何もできはしない。

フールーダに関してはもう自分の役職を忘れているだろう。自分よりも上のマジックキャスターに出会ったのだから。

 

「さて、今回の件は終了だ。立ち去ると良い」

「え?」

「我が部下の失態に、貴族の首を差し出されたことで我が墳墓の侵入に関しては不問とすると言ったのだ。これから忙しくなるからな。時間を取っている暇は無い」

「忙しくなるとは?」

「我が墳墓がこれから公になってくる。また侵入者が来たら面倒だ。だから邪魔になりそうな勢力を消す準備だ」

(な、何だと!?)

 

ハッタリや冗談かと思ったがナザリックの力を見れば不可能では無い。ただデスナイトを数体送り出せばできるのだから。

アインズはその後、ナザリックを建国するまでと言いだす。

この状況をジルクニフはすぐさま考える。アインズと敵対したら帝国が亡ぼされる。何とかしなければと。そして出た答えが「同盟」であった。

 

「同盟だと?」

「はい。我が国がゴウン殿をバックアップし、建国の手伝いをさせていただきます」

「それだと其方に何もメリットは無いと思うが・・・?」

「私はゴウン殿と友好な関係を築きたいだけです。帝国の平和のために」

 

本当に帝国のためにだ。敵になったとしたら考えたくも無い。

 

「ふむ、では助かるな。私も友好な関係を築きたいものだ」

(・・・友好な関係?有効な関係の間違いだろうが)

 

心の中で毒を吐いてしまう。しかし、ここでは何もできない。とりあえず時間が欲しいし、刺激をするわけにはいかないのだ。

 

「では・・・今後の話を」

 

これから今後の話を始めようとした時、フォーサイトのアルシェが口を開く。

 

「あ、あの。カイトさんは!?」

「ん?お前は以前に我が神聖なるナザリックに侵入した蟲では無いか。せっかくに逃げ出したのにまた来るとは中々の度胸だな」

 

軽く笑うがジルクニフたちにとっては機嫌が悪くなるのではないかと固唾を飲んでしまう。出来れば余計なことをしないでほしいと思ってしまう程だ。

そんな気持ちを知らないアインズだが特に不機嫌になっているつもりは無いのでジルクニフたちの気持ちは空回りである。

 

「カイトか・・・奴は人間にしては大した奴だったよ。何せこの私に張り合うくらいだからな。しかし我が魔法で消し飛ばしたよ」

「え・・・!?」

「消し飛ばした。殺したよ」

「う、嘘・・・あああああああ」

 

最悪の言葉を叩きつけられてアルシェは涙がポロポロ、口から声にならない声が漏れだす。

 

「こんな所で喚くな蟲。五月蠅いぞ」

 

もうアルシェはアインズの言葉は聞こえない。イミーナは急いでアルシェを落ち着かせるために抱える。

 

「落ち着いてアルシェ。大丈夫、大丈夫よ」

「うあああああ」

「ったく、今日は話し会いにきたのだろう。喚きにきたわけではあるまいに」

 

ヤレヤレと言った感じに骨の頬に手を置く。誰が喚こうが興味が無いが時間が無駄になるのはいただけない。

これに関しては早くにどうにかしたいのでアインズはジルクニフに顔を向ける。無言でこの喚きを止めろと言うことだ。

 

(ぐ・・・こっちに来たか。確かに今回は謝罪と話し会いの場。喚くのはいただけないな)

 

ジルクニフはフォーサイトを睨む。睨まれたヘッケランも意味を分かっているがアルシェの方が心配だ。こんな状態のアルシェ黙らせるなんて出来ない。

例え相手が皇帝でもだ。

 

(ったく俺は本当にリーダーらしくねえ。本当なら皇帝様に従うんだがな。それにしても本当に死んじまったのかよカイト!?)

 

ヘッケランも本当に信じられない。あのカイトが死んでしまったとは。だからこそ次に聞こえてきた声には更に驚いたものだ。

 

「それは嘘をついたからでしょ」

 

この声はアルシェたちが心の底から聞きたかった声である。その声の主とはもちろんカイトである。

 

「カイトさん!!!!」

「やあアルシェ。それにフォーサイトのみんな。ボクはこの通り無事だよ」

 

柱の物陰からスタスタを歩いてくる。カイトの両隣にはバルムンクとオルカもいる。3人とも傷痕が身体中にいくつかあるが無事のようである。

 

「まったく・・・面白いものを見せると言ってたから待機してたのに。アルシェたちを苛めるなら待機してられないよ」

 

カイトもヤレヤレと言った感じに顔を横に振る。そしてアルシェたちを安心させるために手も軽く振る。

 

「何、ちょっとした戯れと言う奴だよ。人間どもも戯れをするだろう?」

「確かにするけど、これはちょっと悪質だね」

「はっはっは。確かに私としたことが悪質のレベルが低すぎたな。もっと酷いものにすれば良かったな?」

「勘弁してよ」

 

カイトたちが登場したことで空気の流れがガラリと変わる。凍えるような雰囲気で精神的にまともな呼吸ができなかったジルクニフたちであったがカイトたちのおかげでようやくまともに呼吸ができた。

何故かは分からないが彼らのおかげで落ち着くことができる。と言っても本当に多少の程度ではある。

 

「本当に無事で良かった・・・」

「詳しく話したいけど今はできない。この話し会いが終わったらゆっくり話そうねアルシェ」

「はい!!」

 

枯れ始めた心が潤い始め、アルシェは今度は嬉しい涙をポロリと垂れ落とす。ヘッケランたちもカイトが生きていて本当に良かったと思っている。

やはり彼らは簡単には死なない実力者であって、心のどこかで少し諦めていたヘッケランは自分の弱い意志を恥じてしまう。

 

(彼がドットハッカーズのリーダー『蒼炎』のカイト。王国で災厄を退け、今目の前にいる化け物ろ戦った男か)

 

ジルクニフも戦士で無いが皇帝として人を見る目は確実に持っている。だからこそカイトを見て強者だとすぐに理解し、両隣にいるバルムンクとオルカも同じくらい強者だと理解できた。

ここがナザリック地下大墳墓でなく、バハルス帝国の城で自分の玉座部屋であったらすぐにでもスカウトしていただろう。

 

「ふ、こいつは人間にしては大した奴でな。先ほど言ったがこの私に本気を出させるほどの実力者だ。私も人間たちの中にこれ程の者がいるとは・・・いやはや世界は広いな」

 

骨なのでカラカラと笑うが声は枯れたものではなく肉感があるほど不気味だ。逆にカイトはアインズの笑いにまたもヤレヤレと言った感じだ。

 

(彼らの会話から嘘と言う感じではない。本当にあの男があの化け物と対等に渡り合ったと言うのか!?)

(ば、馬鹿な、あの男がアインズ様と対等だと・・・ありえぬ!?)

 

ジルクニフは化け物相手を御することの出来る存在を見つけて奮え、フールーダは至高の存在に対等な存在がいることに信じられないでいた。

 

「ふふ。どうやら彼らはお前が私と戦ったのが信じられないでいるな」

「まあ今はボクも完全には回復してないから本調子じゃない。もし、戦う羽目になったらキツイよ」

「なら今殺しておくか。カイトよ、お前は私にとって最大の難敵になりうる存在だからな」

 

そう言った瞬間に玉座にいる部屋の空気がまた変わり、酷く冷たくなった。これは魔力ではなく殺気だ。しかも部屋全体に飛ばしているのでジルクニフたちはたまったものじゃない。

しかしカイトたちは気にしもしないで涼しい顔で受け流す。こんなものはまるで昼下がりに吹く風とも言わんばかりだ。

 

「はあ・・・何を言っているの。そっちだって戦うことなんて出来ないくせに」

「・・・戦えない?」

「そう。あ、ボクはカイトですジルクニフ皇帝」

 

そういえば自ら自己紹介をしていないと思って名前を言う。

 

「ああ、よろしく。バハルス帝国皇帝のジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスだ」

「ジルクニフ皇帝とは仲間がお世話になっているみたいで、後で話をしてくれませんか?」

 

確かに彼とはゆっくりと話しがしたいものである。こんな状況でなければ本当に会話をしてスカウトしたい。

 

「構わないとも。しかし、先ほど言った戦えないとは?」

「彼は戦えない。見た感じ平気そうにしてるけど実際はそうでもないよ。ボクと戦った後から完全に回復してないからね」

「余計な事を」

「先に余計なことを言ったのはそっちでしょ」

「ふん・・・確かにまともに戦えん。魔法も第5位魔法か第6位魔法くらいだ。それ以上は本当に放てない」

 

不機嫌そうに「ふん」と言うがジルクニフたちにとって第5位魔法と第6位魔法が放てるなら十分、それ以上に脅威すぎるのだが。

それでもカイトたちはまだ余裕そうと言うか危機感は少ない。これは危機感覚が麻痺しているのでは無く、本当に対処できるからこその佇まいである。

 

(・・・こんな状況でも余裕そうだ。本当に彼はあの化け物と対等そうだ)

「安心しろジクニフ皇帝よ。最初に言ったが手出しはせぬ。カイトが言ったようにまともに戦えない。それに私が余計な動きをすると・・・」

 

アインズが手から魔力を放出した瞬間にカイトがアインズの目の前に移動していた。双剣の柄を握りながらだ。

 

「このように私の宿敵ともなりえるカイトが首を狙いに来る。あと我が親愛なる部下たちよ武器を降ろせ・・・これは単なる児戯にすぎん」

「本当に魔法を放つかと思ってヒヤヒヤするから、止めてよ。墳墓の主であるアインズさん」

「フフ、構わないだろうこれくらい」

 

手を降ろしたのを見てカイトも元居た位置に戻る。

 

(み、見えなかったぞカイトの動きが・・・どれほど早く動いたんだ。それにしてもカイトとアインズがどこか仲が良いように見える。そもそも戦っていたのに何故アインズは侵入者であるカイトを無事のままでいる?)

「どうやらジルクニフ殿は何故、お前が無事なのか気になるようだな」

「・・・そういえばいきなりの登場で何も説明してなかったね」

「ま、簡単なことだ。このカイトたちが侵入してきた時、ワーカーたちとは違い大きな戦いとなった後は決着はつかなかった。このままではお互いに無駄に傷つくだけ、なので一旦休戦したのだ」

「休戦・・・」

「そうですジルクニフ皇帝」

(休戦までにさせる程の実力だと?・・・一国を亡ぼす者たちと休戦だと!?ならカイトという奴らの実力だって国を亡ぼせるんじゃないか!?)

 

ナザリックの強大さと.hackersの未知数にまたジルクニフは混乱してきた。しかし、.hackersと上手く強力すればナザリックと渡り合える可能性がある。これだけでも謝罪にきた甲斐があるものだ。

少しだけ安心したが今後の方針を決めなければならない。

 

(まだ気が抜けんな)

 

カイト、アインズ、ジルクニフは今後のことを更に話し合う。

 




読んでくれてありがとうございました。
感想などあれば気軽にください。

どうでしたでしょうか。
何だかんだでカオスな会話になったような、そうでもないような感じになりました。
アインズも原作のように表に出てきます。カイトもどんどん異世界に名が広まりますね


ジルクニフ 「・・・やっと帝国に帰れる(疲)」
カイト   「演技ってバレなかったかな(汗)」
アインズ  「たぶん大丈夫だと思います(汗)」

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