物語もそろそろ次の段階である『戦争』へと近づいていきます。
最も、この物語は大幅に変更があるので原作通りではありませんね。
ウィルスバグとの最終決戦もそろそろです。
では、物語をどうぞ。
ナザリック陣営
アインズは今の状況に胃を痛めていた。胃なんて無いのだが、気持ち的に痛いのだ。何故かと言われれば自分が部下の行動を御しきれてないからだろう。
アインズの部下である階層守護者たち、中でもデミウルゴスやアルベドを筆頭に『世界征服』なんて計画をいつの間にか掲げられていたのだ。それはアインズが何となく言ってしまった言葉のせいであるが。
現在は建国まで計画が進んでいる。世界征服の第一歩である。
(そもそも、ウィルスバグの戦い中だから世界征服も何も…)
ウィルスバグとの戦いの中でも計画は進める。デミウルゴスはウィルスバグと戦いながら計画を進行させるつもりでいるのだ。
(それはそれで凄いけど、ウィルスバグとの戦いは世界を賭ける戦いだからなあ)
アインズの気持ち的に「世界征服なんてしてる場合じゃねえ!!」と言いたい。
そもそも今はそれよりも階層守護者たちからの説明を求められている状況だ。その説明とはこれからの建国についてだ。だがアインズは建国の計画なんてこれっぽちも考えてない。
ほとんど部下任せであるため、デミウルゴスから「これからの計画の説明を」と言われても何も言えないのだ。それとなくデミウルゴスから口から説明を任せようかと思ったが失敗。
何故か部下たちに追い詰められるアインズは自分が情けない。
(だって本当に計画について分からないんだよー!!)
アインズが嘆くのも仕方ないだろう。勝手に部下が計画を考えて進めていたらアインズだって分からない。例えるなら超難関計算問題を途中まで計算して、あとは任された状況である。
「アインズ様。これからどうしますか?」
(どうしますって…。ああ、カイトさん助けてください)
残念ながらカイトは今いない。実はカイトを含めて.hackersは帝国に向かっているのだ。帝国側と話しがあるのと、護衛に付いているのだ。
アインズ、カイト、ジルクニフとの会談が終わった後はジルクニフがカイトたちの会談だ。内容はきっとアインズのことだろう。彼はアインズを世界最大、人類最大の敵と思っている。
帝国に帰還したらどうやって倒すかなんての話でもするのだろう。だが世界最大、人類最大の敵はアインズより違う存在がいる。それが先ほど思ったウィルスバグである。
(帝国側の方は任せましたカイトさん)
アインズもようやく覚悟を決めて階層守護者たちに説明を始める。
side変更
帝国陣営
ジルクニフはある1つの事実に辿り着き、馬車の中で絶望していた。それは我が右腕の如く信じていたフールーダが裏切ったということだ。
よくよく考えてみればナザリック地下大墳墓に同行している時やアインズに出会った時ですら言動や動作から少なからず違和感があったのだ。それでも信じられない為に絶望しているのだ。
(じ、フールーダが裏切った。これは私が奴の魔法に対する執念を軽く考えすぎていた失態だ)
事務的な考えで処理して落ち着かせようとしたが無理であった。やはりフールーダは特に親しくしており、裏切りを知った時は動揺してしまう。だが、まだそれは可能性としての話だ。
(可能性の話でもほとんど確定の可能性だ)
「陛下。一応、第4階位の魔法を使う者は帝国にいますが」
「駄目だ。フールーダの代わりになるものか」
「じゃあ、あいつらはどうですか?」
「あいつらとは誰だバジウッド?」
「ドットハッカーズですよ」
「…そうか!?」
フールーダの裏切りの件で一瞬だけ忘れていたが、今カイトたちという.hackersの力があるのだ。これに関しては砂嵐三十郎と出会った時から考えていた。
そしてカイトがあのアインズと同等の実力と分かっている。よくよく考えればフールーダというカードを失ったがカイトたちという強力すぎるカードを何枚も手に入れられる可能性があれば御釣りがくる。
(そうだ。絶望している場合じゃない。人類を賭けた戦いがこれから始まるのだ)
今すぐカイトと砂嵐三十郎を呼ぶように兵士に連絡するジルクニフ。すると数分もせずに2人が馬車の中に入ってくる。ジルクニフは気持ちを切り替える。
「急に呼んですまないなカイトに砂嵐三十郎よ」
「いえ、構いませんよジルクニフ皇帝」
「で、話をしたいんだろう?」
「その通りだ。ナザリック地下大墳墓に関してだ」
「建国の話ですね」
「それもそうだが違う。如何にナザリックと戦うかだ」
「はあ…」
「カイトに砂嵐三十郎よ。戦った者は奴の危険性は分かるだろう。これは人という種族の存続をかけた戦いになる」
(…そんなことは無いけどなあ)
真実を知らないので仕方ないがジルクニフは実際は一般人であるアインズの思考も深読みしてしまい、勝手に混乱しているのだ。
だが親類を賭けた戦いは確かに間違いではないだろう。敵はアインズではなく、ウィルスバグだからだ。そのことを今から話さねばならない。
「確かにアインズは強大な敵だと俺たちの調査で分かったが、実は少し安心しているんだぜ」
「安心だと!?アレで何が安心!?」
バジウッドが砂嵐三十郎の言葉に驚愕する。こいつは何を言っているのだと思っているのだ。
「まあ落ち着けバジウッド。続きがある」
「そう。ボクらはナザリック地下大墳墓を調査したのは目的があるんだ」
「それは謎の大墳墓の調査だろう?」
「それもありますジルクニフ皇帝。でも最大の目的はナザリック地下大墳墓にウィルスバグがいるかもしれないと思って調査したんだ」
「ウィルスバグ?」
「ジルクニフ皇帝も王国で事件を耳にしていると思いますよ」
「…まさか王国で起きた災厄か!?」
「はい。その通りです」
王国で起きた災厄とは2つある。『ゲヘナ』と『カオスゲヘナ』。カイトたちが言う災厄は『カオスゲヘナ』の方だ。
「災厄の名前がウィルスバグと言うのか?」
「はい。そしてウィルスバグの上位個体に『八相』と呼ばれる存在がいます」
「八相?」
「ああ。王国でも八相が2体も現れて危機的状況だったさ」
「ウィルスバグと八相について聞かせてくれないか?」
ジルクニフはカイトの考えを聞きたい。何故ならカイトはナザリック地下大墳墓よりもウィルスバグの方が危険だと言っているように聞こえるからだ。
「ボクたちは元々ウィルスバグを倒すのが目的で旅をしているんです」
「そういえば、砂嵐三十郎もある目的で旅をしていると言っていたな。それがそうか」
「はっきり言いましょう。ウィルスバグはナザリックよりも危険で強大ですよ」
「マジかよ」
「マジだ。バジウッド」
ウィルスバグの危険性。八相の強さを正確に説明する。
「それは本当か!?」
「本当です。ウィルスバグにかかればナザリックは1時間もしないうちに飲み込まれます。それは王国も帝国も同じです」
「八相に関してはさらに強大で1体だけで大陸1つを亡ぼしてもおかしくはないぞ」
カイトと砂嵐三十郎の説明は信じられないものばかり。だが嘘を言っている顔をしていない。
この説明を聞けば確かにナザリック地下大墳墓をどうこうするなんて話を置いておくべきだろう。ウィルスバグは人類の最大の敵と思っていたナザリック地下大墳墓をも軽く飲み込む災厄なのだから。
最優先順序もそれは変わるだろう。だが、こんなことを聞かされてジルクニフはもう混乱を通り越して頭が爆発しそうである。
「そんな災厄をどうしろと」
「それはボクたちがいます」
「と、言うと?」
「ボクたちはウィルスバグを倒す方法がありますから。それにウィルスバグも倒してきてますし、八相も残り2体です」
「本当か!?」
「はい。残り2体なんですよ」
残り2体。『復讐する者』タルヴォスと『再誕』コルベニク。
その2体は今までの八相よりも強力である。しかもコルベニクは大陸と言わずに世界を無にする。
(…王国の災厄の件があるからカイトたちの言う言葉は本当だろう。ならば本当に!?)
ジルクニフは混乱しているが少しずつ処理していく。
「ボクらはウィルスバグを倒す旅をしています。そして、ナザリックに行って調査したと先ほど言いましたよね」
「ああ。それで気になったんだがどうして無事だったんだ。戦いが終わった後だ」
「そういえば会談の時に詳しく言ってませんでしたね。ボクたちがなぜ戦いが終わった後で無事だっったのを。単純に引き分けで痛み分けで終わったわけじゃないんだ」
簡単に説明するとアインズ側にもウィルスバグのことを説明したのだ。既に最初から説明してあるから分かっているが、今回の話に合わせて説明する。
「アインズさんも強大だけどウィルスバグに比べればね。だから向こうも理解してくれたんだ。ウィルスバグを倒すまで休戦、そして力まで貸してくれることになったんだ」
「本当か。力まで貸してくれるとは、いや…ウィルスバグとやらのことが本当ならばゴウン殿も当然の考えだな」
何もかも飲み込み、侵食するウィルスバグは特別な力(ワクチンプログラム)でなければ倒せない。その力を持たないアインズは強力するだろう。
それは今のジルクニフと同じでむざむざと亡ぼされるなら今は同盟でも組んで力をため込むのと同じだ。最も、ジルクニフの苦労して同盟したのとカイトの同盟は全くもって逆であるが。
「力を貸すのは今の所、ウィルスバグを倒すまで。でも案外話してみると分かってくれる人だよアインズさんは」
「そんなバカな」
「分かってくれる人だけどなあ」
「相手はアンデッドだぞ」
「人間らしいアンデッドだよ」
中身は本当に人間である。
(カイトが分からん。でもとても誠実な者だというのは分かる)
(アインズさんのこと勘違いしてるなあ。でもアレじゃあ仕方ないよね)
「カイトよ。皇帝…いや、ジルクニフ個人として頼みがある。力を貸してほしい」
「良いですよ」
「こんなことに巻き込むのは…って本当か!?」
「はい」
即決で答えたので肩透かしというか驚いてしまう。だが強力してくれるのは助かり、これで強力なカードを手に入れてジルクニフは子供のように心の中で嬉しくなる。
(取りあえず協力は得た。カイトも話が分かる者で良かった。このまま国に所属させたいが今はこれで良い。後々その話をしないとな。そうしないと他国に取られる)
カイトたちはこれでも竜王国にリ・エスティーゼ王国から引っ張りだこである。
「強力しますけどボクたちの最優先はウィルスバグの駆除というのを忘れずに」
「もちろんだ。ナザリックの件もそうだが、カイトの話を聞くとウィルスバグの方が重要だな」
目つきが変わる。
「これから人という種族の存続をかけた戦いに入る。未来を守る戦いだ。全身全霊をかけろ」
この言葉の意味はナザリックとウィルスバグを相手にするという意味が含まれている。
「…まずは建国を手伝わないとな」
(…大変だね皇帝も)
「まずは王国と戦争か」
「え?」
戦争の準備は1ヵ月を要する。だがその前にミアの警告より『復讐する者』タルヴォスの決着しなければならない。
side変更
漆黒の剣陣営
漆黒の剣と言う冒険者チームは未熟なりも成長している。冒険者としても階級も銀からミスリルまで昇り詰めた。カイトやアインズも認めるチームだからだ。
彼らは目標の為に毎日頑張っている。しかし今日だけは頑張れず、顔から笑顔も消えていた。もう雰囲気は通夜である。
「カイトさん・・・」
「信じられません。しかしあの蒼の薔薇が嘘を付いているとも思えません」
ペテルとニニャは同じようなことを繰り返し呟いている。それは何度も自分に言い聞かせているようなものだが、認めることは出来ない。
「美人ばかりだったな」
「そんなことを言っている場合であるか」
「分かってるよ。何も言えないんだ」
カイトが死んだ。
そんな噂が流れているのだ。発生源は蒼の薔薇からだが、彼女たちが堂々と流したわけでは無い。ただ耳に入ってしまっただけなのだ。
「信じられないのは確かである。カイト殿はそれは強い。それなのに死んだのは・・・」
「ああ。信じられねーよ」
テーブルに置かれた暖かい飲み物はいつの間にか冷えていた。しかも誰も口につけない。
「モモンさんはこの事を知っているかな?」
「分からない。でもカイトさんたちと仲が良かったからすぐに耳に入ると思う」
「モモンさんはどう思うかな・・・」
本当に暗い。そんな時、彼らのいる冒険者組合に漆黒のフルプレートを装備したモモンとナーベことナーベラルが入ってきた。
「モモンさんにナーベさん!!」
「漆黒の剣の皆さん、久しぶりですね。お、階級がミスリルなったんですか。おめでとうございます」
「モモンさん!!」
「な、何ですか?」
漆黒の剣がズズイと近付いてきて、つい足を少しだけ後退する。
「モモンさん。カイトさんが、カイトさんがあ!!」
「カイトさんがどうかしました?」
「カイトさんが・・・死んだって」
カイトが死んだと聞いてハテナマークを浮かべる。カイトなら先程まで一緒だった。今いないのは別に動いていて、宿の受付にいったからである。
彼らは冗談を言っているようには見えないし、意味が分からない。だからこそアインズは素直に思ったことを口にした。
「・・・は?」
side変更
蒼の薔薇陣営
城塞都市エ・ランテルの宿屋にて。
蒼の薔薇は宿屋にて戦争場所を確認した報告書をまとめている。そのまとめをしているのはガガーランにティアだ。
「まったく・・・まさかリーダーとうちのチビがあそこまで塞ぎ混むとは思わなかったぜ」
「ほんとう。そのおかげでティナがずっと励ましてる。次はガガーランのばん」
「わあってる。しかし、マジでヤバイな」
イビルアイとラキュースが宿屋の部屋で塞ぎ混んでるのは理由がある。それは彼女たちが信じたくもない悪夢をみてしまったからである。
まず始まりはガガーランたちがまとめている帝国と王国の戦争場所だ。カッツェ平野と言う場所であり、危険なアンデットが出没する。だからこそ強者たちである蒼の薔薇が選ばれたのだろう。だが、そんな強者である彼女たちにも処理しきれない事くらいある。それがカッツェ平野で見てしまった悪夢だ。
「信じられないけど・・・まさかあのカイトがアンデットになるなんて」
「今でも信じられねえよ」
彼女たちが見た悪夢とは信頼する冒険者仲間がアンデットになっていたことだ。
その冒険者仲間とはカイト、バルムンク、オルカである。
イビルアイはカイトに恋をして、ラキュースはバルムンクに恋をした。そんな2人が恋する相手のアンデットを見てしまえば悪夢以外の何物でもないだろう。
「あいつらに何があったんだか」
「なつめたちもどうなったんだろう?」
「連絡がつかねえからな」
アンデットになったカイトたちの姿はツギハギでありボロボロであったが恐ろしい程までに不気味な強さを感じた。やはり元が強ければアンデットも相当強いのかもしれない。
「あん時はわけもわからなかったが、今思うと相当危険だ。もし討伐対称になってみろ。何人も返り討ちになって死ぬだけだろ」
「・・・伝説と言われるデスナイトも形無し」
討伐対称。ガガーランはついそんな言葉を口にしてしまう。気の合う冒険者仲間が討伐対称とは嫌な気分になってしまう。しかし、アンデットになったカイトたちが人を襲えば、どうしても討伐しなければなくなる。
「もしそうなったらリーダーとうちのチビはどうなるか・・・」
最悪、心中してしまうのかと思ってしまったが頭を横に振る。流石に無いだろうと思いたいのだ。
「アンデットになってもオレらのことを覚えてるかね」
「わからない。でもあの時はこっちを攻撃する気ではなかった」
「だな。オレらのことを覚えていたか、もしくは興味がなかったか。それにしても何でカッツェ平野にいたのか」
アンデットにになったカイトにバルムンク、オルカは沸いて出てくるアンデットモンスターを倒しなから佇んでいた。まるで何かを見張ってるようにだ。あの場所に何かがあったかもしれないが、その時はラキュースとイビルアイが酷く心を病んだかのようや状況であったため確認なんて出来なかった。
「しかもそんな時に限ってアンデットモンスターが襲ってくる始末」
「ああ。あん時はヤバイと思ったけど、まさか他の冒険者に助けられるとはな」
「うん。あの3人のこと。何者で、何でカッツェ平野にいたか知らないけど助かった」
「次に出会ったら礼を言わないとな」
ガガーランは助すけてもらった冒険者たちを思い出す。
白い服装に白髪の男。緑の服に大きな帽子が特徴のマジックキャスター。青い長髪のガンナー。彼らは何者かは分からない。しかし、助けてもらったのだから悪者では無いだろう。
「・・・あの白髪の小僧は好みだな。童貞かな」
「ガガーラン」
「2割冗談だ」
8割は本気のようである。ティアはヤレヤレとどうでもよい返事をする。
「ただいま」
「ティナ。リーダーたちはどう?」
「少し落ち着いた。でもまだ部屋からは出れなそう」
「そうか。じゃあ王都には戻れないな。エ・ランテルで休養するしかねえ」
ラキュースもイビルアイも相当塞ぎ混んでる。食事もあまりとっていない。心も病んでいるのに、このままでは身体も壊れてしまう。せめて少しでも良いから何か口にしてもらいたい。
「・・・何か果物でも買ってくる?」
「そうだな。何か果物でも買ってきてくれ」
「わかった」
「ったく、何で死んじまったんだカイト、バルムンク、オルカ」
あの3人が死んだなんて今でも信じられない。
「え、誰が死んだって?」
「いや、だからカイ・・・」
ガガーランが後ろを振り向くと話の3人であるカイト、バルムンク、オルカがいた。
「カイトにバルムンクにオルカぁぁぁぁ!?」
「うわっ、びっくりした!?」
「「ほ、ほんもの?」」
「どっからどう見ても本物だ」
ガガーランたちのリアクションが分からないカイトたち。まるで有り得ないものを見た顔をしている。
「な、何で・・・死んでアンデットになったんじゃ」
「死んだ?アンデット?何を言ってるんだ?」
「いや、それよりもカイトにバルムンク、オルカだよな。本物だな。生きてるな。アンデットじゃないな!?」
「正真正銘お前たちが知っている人物だ。本物で生きてるし、アンデットじゃない」
バルムンクが当たり前だと言わんばかりの顔をする。その当たり前顔見たガガーランはカイトとバルムンクの腕をつかんでラキュースたちの部屋へと急いで向かう。
「うわわ、何々!?」
「急にどうしたガガーラン!?」
「いいから来てくれ!!」
わけもわからず部屋へと連れられる2人。ガガーランは部屋の扉を勢いよく開く。
「ラキュース、イビルアイ!!」
「・・・ごめんなさいガガーラン。今は静かにしてほしいの」
「・・・・・・」
ラキュースの顔色は青く、イビルアイにいたっては布団にうずくまっていた。
「んなこたどうでもいい!!」
「どうでもいいって、それはないんじゃな・・・」
「見ろ。カイトにバルムンクだ。オルカだっている。生きてたんだよ!!」
ラキュースはバルムンクを見た瞬間に顔色が戻り、心が熱くなる。イビルアイはカイトが生きていたと言う言葉だけで布団から顔を出した。
「う、嘘・・・バルムンク」
「カ、カイト様」
彼女たちも信じられない者を見た顔しているが、そんなの関係無い。死んだと思っていた最愛の人が生きていたという事実が大事で、とても嬉しいのだ。
「バルムンク!!」
「カイト様!!」
イビルアイとラキュースは今の姿が寝間着だと言うのに構わずカイトとバルムンクに抱き付いた。抱き付かれた2人は今だに分からない状況だが、彼女たちが悲しんでいたことは理解出来た。
彼らは優しく抱き締めて、優しく頭を撫でてあげる。
「大丈夫だよイビルアイ」
カイトは優しく言葉を欠ける。
「ラキュース、何があったか知らないが今はオレに身体を預けると良い。オレで良ければいくらでも支えになろう」
バルムンクはラキュースを落ち着かせる抱き締める。
彼女たちが完全に落ち着くまで1時間は掛かった。
「・・・落ち着いた?」
「落ち着いた」
「一体何があったんだ?」
「実はカッツェ平野でアンタらにソックリなアンデッドに接触したんだ」
「ボクらにソックリ?」
「そう。カイト様にそっくりなアンデッドに出会った。正直不気味な騎士のようだったけど、強さだけは本物だと思う」
「ええ、バルムンクほどでは無いけど…ウィルスバグも相手にできそうだったわ」
「うん」
「そんなことが」
カイトたちは考える。自分たちにソックリなアンデッド。どこかで聞いたことはあるような、ないような。そして思い出す。
女神アウラが、エンデュランスが、八咫が言っていた『三葬騎士』のことを思い出したのだ。彼らは確か女神アウラの直属の護衛騎士であり、THe Worldの異変に必ず駆け付けてイレギュラーを狩る存在だ。
イレギュラーを狩る存在、守護者とも言える存在なのだから強さも規格外だろう。
話をさらに聞くと『三葬騎士』はカッツェ平野のある一角で何かを見張っているようだったらしい。辺りには彼らに倒されたアンデッドの山が積まれているとのこと。
(確かアウラは前にウィルスバグを探すための措置をしているって言っていたなあ。それが三葬騎士かも)
これはカッツェ平野に向かって確認しなければならないだろう。今後の予定が決定した瞬間である。
「今度調査してみるか」
「そうだな」
相手が『三葬騎士』ならこちらも『三蒼騎士』で向かうべきだろう。敵では無いはずだが、ウィルスバグについて何か情報を得ているかもしれない。
「待ってバルムンク。私も連れって欲しい」
「む、しかしラキュースはまだ体調が悪いのでは…」
「もう平気よ」
「それはバルムンクの顔が見れたから」
「ちょっと黙ってガガーラン」
頬を一瞬赤くしながらガガーランを黙らすラキュース。そしてイビルアイまでもがついてくると言う始末である。
もちろん力になりたいという気持ちもあるが、今はもうカイトとバルムンクからは離れたくない気持ちが強いのである。
「私たちなら詳しく場所を知っているカイト様」
「うーん、確かに道案内は必要だよね」
「まあそうだな。ついて来てもらえるか?」
「任せて」
ギュッとバルムンクの手を握るラキュースに、カイトに寄り掛かりすぎて最早ガッチリと抱き付いているイビルアイであった。
「いつ出発にするんだ?」
「早速明日?」
「いや、今はある案件を片づけてからだ」
「ある案件?」
その案件とはナザリック地下大墳墓で昔の仲間であるミアから言われた警告だ。それは八相の一角である『復讐者』タルヴォスが襲撃してくることだ。
その時間がもうすぐなのだ。カイトたちがエ・ランテルに来たのも襲撃対策準備の一環である。
「ウィルスバグの上位個体の八相が襲撃!?」
「ああ。第七相の『復讐者』タルヴォスは向こうから襲撃してくる。確かな情報さ」
「なら私も力になりたい」
「それは危険だイビルアイ。タルヴォスは前に戦ったウィルスバグより危険なんだ」
「でも…」
「大丈夫だよイビルアイ。ボクたちは負けないから」
優しく頭を撫でる。
「そう、ボクたちは負けない」
カイトの顔は覚悟ある顔、瞳もまっすぐだ。それを見たイビルアイは見惚れてしまう。
(カ、カイト様。カッコイイ)
その後、アインズたちと漆黒の剣のメンバーにも合流しながらまたカイトたちの死亡の噂でアレやコレやと五月蠅くなるのであった。
戦いは激化していく。そろそろ最終決戦も近づく。
読んでくれてありがとうございました。
感想などあれば気軽にください。
今回は『戦争』前の物語と『三葬騎士』、『タルヴォス』への前話的な感じです。
『戦争』での『大虐殺』は原作と違い『ウィルスバグ』との最後の戦いとなります。どうなるかはゆっくりとお待ちください。
『三葬騎士』…彼らの出番もそろそろです。
『タルヴォス』は次回にてついにあらわる。
ジルクニフ 「人類の敵が・・・」←もう全て投げ出したい
イビルアイ 「カイト様が素敵!!」←暴走するかも
ラキュース 「私ったらバルムンクに」←自分でも大胆になっているのに驚き
漆黒の剣 「出番はまだある?」←たぶんまだある
カイト 「イビルアイがガッチリ離れない」←でも嫌がらない(背後に注意)
バルムンク 「ラキュースは最近綺麗になっているな」←気付かない鈍感