タイトルのわりには。ええ、タイトルのわりには。
本格的なバトルは次回です。
今回も生暖かい目で読んでってください。
カイト、アインズチーム
アインズがいる私室にノックをして返事があることを確認してから入るカイト。入ると目に入って来たのはアインズが堂々と椅子に座って、何かモニターを見ている姿であった。
「あれ、仕事中だったかな?」
「いえ、もう大丈夫ですよ。ただナザリックの状況を見ていただけでしたから」
モニターを消すアインズ。用意してくれた椅子にカイトが座る。
「どうでしたか帝国は?」
「王国と同じくらい広かったよ。でも改革的なのは帝国側だったね」
「やっぱり。オレも帝国に行った時はそう思いました。これもあの皇帝がどんどん新しい物を取り得ているからでしょうね。ああいうのをカリスマのあるって言うんでしょうね~」
「カリスマならモモンガさんだって負けてないよ」
「勘弁してくださいよカイトさん(汗)」
「ハハハ(笑)」
「まったく、ただでさえ王になるのが精神的にキツイのに」
ため息を吐くアインズ。
「でも本当にモモンガさんなら王になってもおかしくないけどなあ」
「それを言うならカイトさんだって、そうですよ」
「いやいや、ボクに王様はムリですよ」
「何言ってるんですか。今は.hackersのリーダーで、その風格は王に勝らないですよ」
「ええー」
「そうだ。オレが王になったらカイトさんも王になってください」
「何で!?」
「いや、どーせオレの対抗者としてカイトさんが帝国や王国から担ぎあげられますし」
アインズの言葉は間違っていない。
「たぶんオレがジルクニフ皇帝にそれっぽいことを言えば向こうがカイトさんの国でも作り出すんじゃないですか?」
「国は簡単にポイポイ建国できないからね!?」
「そうだ。カイトさんの拠点のタルタルガでしたっけ。あれを見せれば空中浮遊国家として認められますよ」
「待ってモモンガさん。何か逃げ道がなくなっている気がする!?」
「オレもこうやって逃げ道が無くなりました。ハハハ(笑)」
カイトとアインズは真面目な話を学生な感覚で進めていく。こんなのはいけない。
「オレが『魔導王』だから…カイトさんはスキルから『蒼炎王』か腕輪からで『黎明王』とか?」
「ゴメン。モモンガさん勘弁して」
「割と本気で考えてます」
「うそ!?」
「マジ」
「ええー(汗)」
閑話休題。
「ところで皇帝は何て言ってましたか?」
「建国はするけど秘密裡に対ナザリック戦力を考えるって言ってたよ」
「やっぱり…まあ、自分で言うのも何ですけど世界を亡ぼすつもりはないんですけど」
「ウィルスバグがいるからそれどことじゃないよね。皇帝もウィルスバグのことを伝えたら優先順位を変えたよ」
「それでも対ナザリックを?」
「うん。皇帝は考え事が多いみたいだ」
「考えすぎじゃないかなあ」
「まさか」
実際のところ考えすぎで混乱しているのだ。ジルクニフに安息の日はまだまだ先である。
「建国だけど、どうやら戦争を利用するみたいだよ」
「ああ、聞きました。建国場所はエ・ランテルみたいで、そこはずっと前からナザリックが領地として手にした場所であり、許可なく王国が勝手に我が物にしている。だから返せ、でなければ戦争だってやつですよね」
「そうそう。聞くだけで何それ?って言いたくなる戦争理由ですよね」
「はい。オレもこの戦争をふっかける理由としては大胆すぎると言うか、無理矢理すぎると言うか…ねえ?」
「だよね」
この戦争理由に「なんじゃこりゃ?」と言いたくなるが、いきなり建国をするには大胆で無理矢理すぎる理由の方が良いのかもしれない。
そうでなければアインズたちナザリック地下大墳墓の存在を無理矢理、国として大陸に建国なんてできないだろう。
「戦争の準備はしてありますけど…実際のところその戦力は戦争のためじゃなくてウィルスバグとの最終決戦用なんですよね」
「次は『復讐する者』タルヴォス。ミアの話からタルヴォスが襲撃してくるのが明後日」
「向こうから襲撃してくる。ならばこっちは襲撃対策しないといけない」
カイトたちはタルヴォスが襲撃してくるということで3つのチームに分かれた。タルヴォスが襲撃してくるといっても何処で誰を狙うかが判断できない。
予想としては腕輪を持つカイトだと思うが可能性は100%ではない。なのでカイトをリーダーとするチームは周囲に被害の無い場所で待つ。
もう1つはカイトたちの拠点であるタルタルガ。ここに.hackersのメンバーを配置する。そして最後はナザリック地下大墳墓。もちろん、ここは階層守護者たちが守護する。
「100%じゃないけど、たぶんボクのところ来るはずだ」
『復讐する者』タルヴォス。拘束された姿をしており、今まで受けてきた苦痛を相手にそのまま返す能力を持つ。
特に「呪殺遊戯」という技は今まで受けたダメージを相手に返す技で、ターゲットに対して対して確実に9999のダメージを与える。つまり即死技だ。
「とんでもないスキルですね…強力すぎるな。オレや階層守護者でもヤバイ」
「しかもタルヴォスは物理耐性と魔法耐性を切り替えてくる」
「両方に対応したパーティー編成をしないといけません」
「うん」
既に編成パーティは考えている。カイトとアインズを筆頭にブラックローズに砂嵐三十郎、マーレ、シャルティアだ。
物理耐性と魔法耐性に対してぶち壊すパーティとして充分な編成なはずだ。
「これでいきましょう」
「はい。必ず倒そう!!」
「もちろんです!!」
タルヴォス襲撃まで残り2日。
side変更
蒼の薔薇陣営
蒼の薔薇のイビルアイとラキュースはカイトたちが生きていたことで心から安心した。その影響で嘘みたいに元気そのものである。
早速、王国に戻ってカッツェ平野の現状を報告するために戻ろうとするがここで問題が発生する。
「おいチビ。行くぞ」
「やだ」
「あー、えっと」
「悪いなカイトそのままじっとしていてくれ。今すぐウチのチビを引き剥がすから」
イビルアイはカイトに引っ付いていた。それはもうガッチリと。
「イビルアイが」
「超引っ付いてる」
ティナとティアも呆れている。
これはイビルアイの乙女心として、カイトが無事であったことにとても安心したが、すぐに離れるのが嫌という気持ちである。
女性として恋する乙女の気持ちは分からないでもないが、このままでは一向に依頼された調査の報告ができないのだ。
「離れろぉ!!」
「やだ」
「このチビ…ってすごい力!?」
「あの…服が」
グイグイと引っ張られるカイトたちを見るバルムンクたちは終始見ているだけでしかなかった。
「依頼中だったのかラキュースたちは?」
「ええ。実は王国から直々に戦争場所のカッツェ平野の調査なの」
「戦争か」
「国と国とイザコザよ。まあ冒険者たちを巻き込まないのは良いと思うわ」
「そうなのか。てっきり自国に所属している冒険者は戦争に参加させられるかと思っていたがな」
「ううん、違うわ。流石にそんなことないわよ」
帝国も王国も戦争に冒険者たちを起用したいと思っているが暗黙の了解と言うべきなのか、冒険者は戦争には参加させないようになっている。
「まあ、そっちの方が良いな」
「オルカの言う通りだ。戦争なんて良いものじゃない」
現実世界でも異世界でも戦争なんて良いものじゃない。戦争の歴史は深く、冷たく、血みどろが詰まったものである。
ラキュースも同じ意見なのか頷いてくれる。やはり戦争は良いものではない。
「おまえさんたちはどう思う?」
「特に」
「同じく」
暗殺者であったティナとティアは思うところはあまりないらしい。人を殺す仕事をしていれば考えも違うようだ。
(考える思いは人それぞれ。当たり前か)
うんうんと頷くバルムンクであった。
「おーい、チビを引き剥がすの手伝ってくれ!!」
「仕方ない」
「やれやれってやつ」
ティアとティナもイビルアイに引き剥がすのを手伝う。それでやっとイビルアイを引き剥がせたのだ。
「やっと引き離せ…」
「やっ」
またカイトに引っ付く。
「いい加減にしろぉ!!」
「まったくイビルアイは。ガガーラン、出発は明日にしましょう」
「おいラキュース」
「何かしら?」
「アンタもバルムンクと離れたくないからイビルアイを今だしに使ったろ」
「ななな、何を言ってるのよ!?」
顔が真っ赤のラキュース。
「だってバルムンクとの距離が異様に近いぞ」
バルムンクとラキュースとの距離は肩と肩が付きそうな位。
「あ、これはその…」
積極的すぎるイビルアイとモジモジするラキュースを見てガガーランが一言。
「今日はもうお前らデートでも何でもしてこい!!」
急遽始まった蒼の薔薇と.hackersのデート。
side変更
カイト、バルムンク、イビルアイ、ラキュースチーム
エ・ランテルの街中を有名な冒険者である4人が歩いている。これは噂になる他ない。
何せアダマンタイトクラスの冒険者であるカイトにイビルアイ、バルムンクにラキュースがペアで歩いているのだから。
見る者は口々に呟く。しかもいい加減である。「まさか蒼の薔薇とドットハッカーズが合併!?」や「え、あの二人って付き合ってる!?」、「彼らの子はきっと才能ある冒険者になる!!」なんて訳も分からない事を言っているのだ。
補足だがラキュースは「彼らの子はきっと才能ある冒険者になる!!」という言葉を聞いて顔が真っ赤っかである。イビルアイに至ってはもう身体が火照っている。
「何を買いに行こうか?」
「そうだな。アイテムはもう既に十分揃っているから特に買う物はないな」
カイトとバルムンクはデートとか分かっていないので普通に買い物感覚である。
「カイト様との子…でも私は」
「バルムンクとって、私はそんなつもりは」
彼女たちはそれどころではない。
「ねえイビルアイ?」
「ラキュース?」
カイトたちが声をかけても反応するのも返事までが時間がかかった。
「は、はいカイト様!!」
「な、何かしらバルムンク!?」
「いや、ボーっとしてたから」
「だ、大丈夫よ」
「そうか、なら良い。倒れたら心配だからな」
「そ、そう」
「どうした顔が真っ赤だ。熱があるんじゃないか?」
バルムンクがラキュースの額に手を翳す。そのおかげで更に真っ赤である。
「うおっ、大丈夫かラキュース!?」
許容オーバーなのか頭から蒸気がボビュフッと出た。案外彼女は初心である。
「だ、大丈夫かな?」
「大丈夫ですカイト様。あれでもリーダーです」
「そっか。ところイビルアイ、突拍子もない話をしていい?」
「どうぞ!!」
「ボクがもし、王様になったらどう思う?」
「カイト様が王ですか?」
「うん。実は仲間から王様になったらどうなんだろうって感じで言われてね。一応言うけど、本当に王様になるわけじゃないからね!!」
「カイト様が王様…」
ポワァンとカイトが王様であることを妄想し、自分が妃になることも妄想する。
「良いと思います!!」
「ええ嘘ぉ!?」
「カイト様なら王になれます!!」
「ええー(汗)」
まさか賛同されるとは思わなかったカイト。これはマズイと思ってアインズにどうにかそうさせないようにしなければと割と本気で考え始める。
直感が言っている。アインズをどうにか説得しないと本当にカイトが王になるような動きをするに違いない。しかも理由がただの道連れに近いものだ。こんなんで王になるなんて不敬なものだろう。
(マズイなあ。理由はアインズさんの唯一の対抗者ってことで本当に通りそうなんだけど。いや、でもそれくらいなら王になる必要はないはず!!)
だがアインズの言葉巧みな話術で引っ張られたらたまったものではない。
(大丈夫だよね?)
不安が増す一方である。
(でもその前に何か怖いことが起きそうな気がする。タルヴォスじゃない何かが…)
カイトの予想は的中している。実はカイトたちより離れた後方にオルカたちがいるのだが追加でいる人物たちもいる。
「カイト~(怒)」
「カイトさん…」
「カイト」
「…すまんカイト。骨は拾ってやる」
タルヴォス襲撃前に違う襲撃がありそうであった。
side変更
カイト、アインズ、ブラックローズ、砂嵐三十郎、マーレ、シャルティアチーム
広く広く広大な大地。ここにはカイトたちだけがいる。その方が良い。
これから大きな戦いが始まる。きっとここらの地系が変わるかもしれない。それほどの戦いだ。
全員はどこから敵がやってくるか分からないので緊張しながら周囲を見渡す。戦う準備はできている。いつでも来いと思う気持ちは皆一緒である。
「すう、はあ」
誰かが息を吸って息を吐く。
身体のコンディションは万全。己の持つ武器も調整してある。スキルだって大丈夫だ。アイテムも補充済み。
どこからでもかかってこいと言ったって平気なくらいだ。
「来ますかね?」
「来るよ」
武器をグッと握り直す。
「いつでも来い」
ジジジジジジジジジジ・・・ジジ・・ジジジジジジジジジジジ。
急にノイズが空間中に響き渡る。空間が歪む。これを感じたことですぐに理解できた。
ついに八相の破片データを取り込んだウィルスバグが現れる。その名は第7相の『復讐する者』タルヴォス。
埴輪に長い釘を刺したような歪な存在がカイトたちの目の前に現れた。
「これがタルヴォス」
「行くよ皆!!」
タルヴォスの襲撃に迎え撃つ。
読んでくれてありがとうございました。
感想などあれば気軽にくださいね。
さて、今回はタルヴォスと戦うわけでもなく日常的なものでした。
そして急に始まったデートというより買い物。
もっと深く書こうと思いましたが、それはまたの機会にします。まあ結果カイトが他の女性陣に・・・おっとこれ以上はいけない。
そして戦争の準備も始まります。もっとも戦争が起こるかも分かりませんが。
カイト 「何だろう未来のボクがヤバイ目にあってる気がする」
イビルアイ「カイト様カイト様」←引っ付き中
他の女性陣「カイト~!!」
アインズ 「もういつものことだね」