データドレインも怖いけど、呪殺遊戯の方がもっと怖い…
苛烈な戦いが始まった。既に戦いの現場はぐちゃぐちゃである。それはタルヴォスの攻撃によるものだ。
地面は泥だらけ、抉れ、周囲には錆びた釘が無数に散らばっている。これはもう悲惨な光景だ。
「復讐の波動がくるから気を付けろ!!」
砂嵐三十郎の掛け声を聞き、すぐにタルヴォスから離れる。するとタルヴォスの周囲はぐちゃぐちゃに吹き飛んだ。
「皆無事か!!」
「はいアインズ様!!」
「タルヴォス自身に刺さっている釘が抜けたら『呪殺遊戯』だ。最新の注意を払え!!」
「オオオオオオォォォォォォ!!」
無数の錆びた釘が集中的に襲ってくる。その全てをアインズとマーレが魔法で防ぐ。
「オオオオオオオオ」
呻き声を上げながらタルヴォスは泥の涙を垂らす。そして地面へと潜った。
「地面を移動してるわ!!」
「真下に気を付けて!!」
「オオオオオオオオオォォォォォ」
「耐性が物理に変わった。アインズさんお願い!!」
「任された!! いくぞマーレ、シャルティア!!」
「はい!!」
魔法合戦開始。
アインズの、マーレの、シャルティアの魔法がタルヴォスに集中砲火する。それでも効いているのか分からないくらい硬い。
「オオオオオオオオオオオオオオ」
『怨念の魔光』が発動する。空高くに七色の魔光が上がり、一気に降り注ぐ。
「うわあああああああああ!?」
「があああああああああああ!?」
その威力は凶悪。それでも前に出て戦う。今度は魔法耐性に変化したのでカイトたちが攻撃する。
「天下無双飯綱舞い!!」
「奥義・甲冑割!!」
「くらえ。叢雲!!」
「オオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
また無数の錆びた釘がカイトたちを狙うがアインズの魔法である『ウォール・オブ・スケルトン』で防いだ。
「まだまだぁ!!」
ブラックローズの『サイクロン』で連続攻撃。
「ったく硬いわね!!」
「ですね。こんな硬い敵はいないですよ」
「そうねって、また耐性が変わったから頼むわよ!!」
「任された!!」
「アース・サージ」
「ドリフティング・マスターマイン!!」
「フォース・エクスプロージョン!!」
「オオオオオオ・・・オオオオオオオオオ!!」
カイトたちも魔法で応戦する。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
タルヴォスから泥の涙が垂れて泥人形が生成される。その姿はカイトである。そしてタルヴォス本体から大きな釘が抜けだした。
この動作をカイトたちは知っている。まさに『呪殺遊戯』である。ターゲットになったカイトは背筋にゾッとする悪寒を感じる。
悪寒どころではない。明確な死を感じているのだ。
「ヤバイ!!」
大きな釘は高速回転しながら泥人形であるカイトに迫る。
「させません。タイム・ストップ!!」
時間停止。カイトの泥人形に大きな釘が刺さる前に釘をずらすためにありったけの魔法を放った。そして時間が動き出す。
「た、助かったよアインズさん」
「いえ、なんとか助かって良かったですよ。ずらせるかどうかも分かりませんでしたから」
「蘇生魔法があっても死は…ね」
自分たちが強くても、蘇生魔法があっても死が簡単に済まされるものでは無いだろう。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
「プロテクトが剥がれたわよ。カイトお願い!!」
「お、お願いします」
カイトが前に出て、腕をタルヴォスに翳す。『黎明の腕輪』を展開し、ターゲットを定めた。
「くらえ、データドレイン!!」
蒼き閃光がタルヴォスを貫き、呻き声をあげながら消滅した。
「オオオオオオオ、オオオオォォォォォォ!?」
「これで終わりだ!!」
第七相『復讐する者』タルヴォス消滅。
これで残りの八相の破片データを取り込んだウィルスバグは1体。
side変更
蒼の薔薇陣営
「おかえりカイト様!!」
「ただいまイビルアイ」
タルヴォスとの決着後、エ・ランテルに帰還したカイトたち。補足だがシャルティアとマーレはナザリックに帰還した。
「お疲れさまです。モモンさんもお疲れ様です」
「いえいえ。しかし苛烈な戦いでした」
モモンの漆黒の鎧はボロボロ。もちろんカイトたちもボロボロである。タルヴォスとの戦いは苛烈であった。
だが勝利した。ゴレとの「カオスゲヘナ」の戦いより比べるとマシかもしれないが、タルヴォスとの戦いは気が付けば死を簡単に味わう。そう、そんな能力を持っていたからだ。
それでもカイトたちは生き残った。運が良かったと簡単に言えば終わりだが、本当に運が良かった。
(苛烈な戦いだったけど…タルヴォスを倒せた。簡単というわけではないけど順調に。それが不安のような…いや、気にしないでおこう)
今回の戦いは確かに苛烈であったが順調に倒せた。その結果が一瞬だけ不安に感じたが、今は勝利への思いを馳せた方が良いだろう。
ついにウィルスバグは残り1体なのだ。最終決戦は近い。最後、最大、最凶、救いの八相であるコルベニク。世界も再誕させる力を持つ存在。
それが暴走しているならば止めねばならない。カイトは心を強く持つ。
(コルベニクを探さないと)
「あ、あのバルムンクは?」
「ああ、バルムンクは別行動だぜ。まあカイトたちそっくりに会いに行く時はちゃんと来るから安心しろ」
「ボクたちにそっくりなアンデットか」
この案件はとても気になるものだ。自分にそっくりなアンデットなんてそうそういるものではない。何かあるはずだろう。
このことを八咫やヘルバに話してみたが「もしや…」なんて含みのあることを言っていた。そして「自分の目で確かめるのが一番」なんて言った。
自分の目で確かめる。その方法が一番だろう。
「でも行くなら2日後かな」
今は疲労でいっぱいだ。休暇が必要だ。
「そうだなお前らは化け物と戦ったからな」
ガガーランがニカっと笑う。
「じゃあまずは精をつけねえとな」
「ごはん?」
「おう飯だ飯!!」
ガガーランがカイトたちを引きずって飯屋に向かう。
「ほらモモンもよ!!」
「え、いや、私は…」
「いーからいーから」
(オレは飯を食べられないんですけど!!)
骨だから。
(でもアインズさんって本当に食べ物が食べられないんですか?)
(いや、だって骨だし)
(でもそれだと気になるんですよね。アインズさんって話したり、聞いたりできるじゃないですか。それって鼓膜と舌がないと不可能ですよね?)
話すには舌がないと話せない。聞くには耳が、鼓膜がないと聞けない。目は眼球がないと見れない。
(え、それは…)
骨だから食欲が無い、性欲が無い。そういうふうに思っていた。だから今まで当たり前のことに気付かなかった。
(で、でもそれは魔法とか、そういう力とかじゃないですか?)
(それなら、そういう不思議なご都合的な力で食べ物とか食べられるんじゃないかな)
(そ、そうですかね)
(聞く、見る、話す、ができるなら食べるのもできそうだけどね)
(できるかな?)
(認識することが大切じゃないかな)
認識と言われて目から鱗であった。今度実験してみるのも良いかもいれない。しかし今はどうにかしないといけない。
side変更
ウィルスバグ陣営
ゴレが消滅する前。彼らは同じ八相であるコルベニクを封印した。
それはコルベニクの持つ再誕の力を恐れたからだ。再誕の力が発動すればウィルスバグでさえ簡単に消滅する。
そして人間も亜神も魔物も、全ての生命は再誕の力によって形を変えて再びこの世に生まれる。だからゴレは再誕を発動させないために封印したのだ。
場所は理性のあるマハにも教えられなかった。誰にも教えずに永遠に封印しておくつもりであった。しかしゴレは消滅し、第七相までも消滅してしまった。だからコルベニクを止める者はもういない。
ドクン…ドクン…ドクン…。
胎動する音がある場所から聞こえる。そこは地下深く。さらに蠢く黒きウィルスバグ。
ドクン…ドクン…ドクン…。
「ついにコルベニクが目覚める。カイト…三葬騎士が抑えてる。早く来て」
読んでくれてありがとうございました。
今回のタルヴォスとの戦いは順調に勝てました。これに関してカイトは順調すぎて不安という思いを馳せましたね。順調すぎて逆に怖い…みたな感じです。
何せ最後に待ち受けるは『再誕』のコルベニクですから。
カイト 「ごはんって食べられる?」
アインズ「食べたいです」
ガガーラン「食うぞ!!」