.hack//OverLord   作:ヨツバ

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こんにちは。ついに最終決戦です。今回でウィルスバグと完全決着です!!!!
そう、ついに完結までたどり着きました!! いきなりの展開かもしれませんが、前々からは知らせております。でも急だったかな。

まあでも物語をどうぞ!!


コルベニク3 ~そして決着へ~

最終決戦

 

コルベニクはついに第三形態へと転生した。転生した影響によりカイトたち、アインズたちはコルベニクの空間へと閉じ込められた。

コルベニクの空間は花びらが鮮やかに、歪むように舞う。まるで別世界に転移させられたかのようである。しかし実際は閉じ込められただけだ。このことから自分も相手も逃がさないように完全決着をつけようとしている。

その誘いに堂々と乗っていく。決着ならカイトたちだってつけたい。これが今度こそ最終決戦だ。

 

「この空間…己自身の空間を作り出す程の力を持つのか!?」

 

大きな目のような、花びらのような存在であるコルベニク。全てを見通すかのような感覚に陥ってしまう。

 

「飲まれるな。相手が創り出した空間でも負けるな!!」

「この空間にさほど影響はない。攻撃に徹しろ!!」

「って何か目から出した!?」

「シーカーだ。回復、魔法、状態異常となっている。早めに潰せ!!」

 

3体のシーカーをオルカ、ユリ、アウラが潰しにかかる。シーカーはコルベニクが生み出す無限の存在だ。本体であるコルベニクを倒さないと延々と生み出される。

オルカたちは渾身の力で潰すがいつまた生み出されるか分からない。早くコルベニクを倒さないといけない。

 

「再誕もいつ発動するか分からないぞ!!」

「こんな場所じゃ逃げ道がないでありんすよ!?」

「再誕が発動したら逃げるも何もねえぞ!?」

 

まさにその通りである。

 

「なら何が何でも倒せってことね!!行くわよマーレ!!」

「う、うん!!」

 

シーカーを潰したらコルベニクに何度も何度も総攻撃を繰り出す。もう倒すにはこれしかないのだ。

 

「それにしても大きい…」

 

コルベニクの第三形態は大きい。大きすぎる目で不気味である。

 

「行くぞ。三爪炎痕!!」

 

蒼炎を纏い、コルベニクの目に三つの傷痕を残す。

 

「蒼海の剣を見せてやるぜ!!」

 

蒼き精霊を呼び出し、コルベニクにぶつけて大剣で一閃。

 

「蒼天の剣を見よ!!」

 

純白の翼を拡げ、神速の如くコルベニクに突撃して一閃。

三蒼騎士が同時に攻撃した。コルベニクに計5つの傷痕がつけられるがすぐに修正されていく。

 

「チッ、駄目か。なんつー丈夫さと修正力だよ」

 

ジジジジ・・・ジジジ・・ジジジジジジジジジジジジジジジジ。

コルベニクが本体も含め周囲に小さい自分の分身を散らばらせる。中心にいる本体が光線を複数発射し、小さい分身体に反射させて予測不可能な軌道で攻撃してきた。

これは『華麗なる錯綜』。コルベニクのレーザー攻撃だ。逃げ場の空間内にはとても有効すぎて被害甚大。

 

「ったく、なんでこいつは!!」

 

転生するたびに威力が凶悪になっていく相手のスキルにはもうウンザリのナザリック勢。もちろんカイトたちも前に味わっているので無言で噛みしめている。

それほどまでに強すぎるコルベニク。だが回復して立ち上がる全員は諦めない目をしてコルベニクを見る。

 

「立ち上がれナザリックの皆よ!!」

「「「「は、アインズ様!!」」」」

「諦めるな皆!!」

「分かってるわ!!」

「ああ!!」

「はい!!」

「おう!!」

 

鮮烈なレーザーをくらっても勇気を持って戦う。

 

「うああああああああああああああ!!」

「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

全員が決死の覚悟で突撃するがコルベニクは無関心の如く目の中心に光を収束させる。高エネルギーを全身で感じてしまう。

『鮮烈なる浄化』というスキルが発動する。コルベニクが巨大な光線を放った。

全てを浄化させる無の光線が無慈悲に発射され、カイトたちに向けられる。だが恐れない。

 

「データドレインを展開する」

「いえ、ここは私に任せてもらうわ。私の役目を果たす時よ」

 

アルベドが全員の、アインズの前に出る。

 

「ウォールズ・オブ・ジェリコ!!」

 

アルベドのスキルが発動する。完全に防げるとは思っていない。ただ少しでも時間が稼げれば良いだけだ。

「はあああああああああああああああああああああああ!!」

手が焼けるように熱い。手だけではなく、身体全てが溶けるように熱い。だがアインズを守れるなら本望である。

 

「ああああああああああああああああああああああああああああ!!」

「アインズ様を守るのは貴女の役割だけではありませんよ」

 

パンドラズ・アクターもアインズを守る。彼だけじゃない。他のナザリックのメンバーも皆を、アインズを守るために前に出る。

階層守護者もプレアデスのメンバーも全員が主であるアインズを守るために前に出る。アインズのためなら犠牲になっても構わない忠誠心だ。全員が本望である。

 

(全員がオレを守ってくれている…ならば主として応えねばならん!!!!)

 

アインズは魔力を高速で練り上げる。仲間の為に、部下の為に、主として魔法を放とう。

 

「メテオフォォォォォォォォォォォォォォル」

 

コルベニクの攻撃を部下たちが防いでいる隙に魔法で隕石を真上が墜落させた。

ジジジジジジジ・・ジジジ・・・・・ジジジジジジジジジジジジジジジジジジジ。

アインズの攻撃でコルベニクの動きが止まる。

 

「今ですカイトさん!!皆さん!!」

「行くよ皆!!」

 

カイトを先頭にブラックローズたちが続く。

 

「はああああああああああああああ!!」

「てやあああああああああああああ!!」

 

カイトたちはコルベニクの目にめがけて武器を突き刺し、斬る、撃つ。

.hackers全員の攻撃が通り、コルベニクにヒビが、亀裂がビシビシィと走った。亀裂から黒い靄のようにウィルスバグが霧散していく。

コルベニクは完全に再生が追いついていないことから倒すのにあと一歩である。この状況は前の最終決戦と同じだ。だからこそ次の予想が立てられる。

前回の最終決戦の最後にコルベニクはドレインハートを放った。最後の最後の足掻きにしては痛烈すぎる一撃である。そのおかげで仲間たちはドレインハートの餌食になってしまった。だが今回は違う。

カイトには腕輪がある。エンデュランスたちだっている。今回は前と同じにはならない。

 

「来るぞ!!」

 

予想した通り、コルベニクは崩壊寸前の身体でデータドレインを展開した。

 

「ドレインハート…やっぱり」

 

無慈悲の閃光が縦横無尽に、複数も撃ち上げられた。狙いはカイトたち、アインズたち全員だ。この攻撃を防ぐ術はなく、回避率も低い。いや回避できるのはそうそういない。唯一、例外ならばカイトだろう。

 

「エンデュランス、八咫は準備はいい!?」

「いつでも」

「大丈夫だよ」

 

カイト、エンデュランス、八咫はデータドレインを展開する。

 

「ドレインハート!!!!」

 

カイトたちもドレインハートも発動する。コルベニクの空間は花びら舞う空間からデジタルの空間へと歪んでいく。

ジジジジジジ・・・ジジジ・・ジジジジジジジ・・・・・ジジジジジジジジジジジジジジ。

ドレインハートが空間内を縦横無尽に放たれ。カイトたちとコルベニクの撃ち合いとなる。

 

「はあああああああああああああ!!」

「おおおおおおおおおおおおおお!!」

「てやああああああああああああ!!」

 

ドレインハートは撃ち合われ、お互いにぶつかり合い、破壊される。劣化しているコルベニクとはいえ、ドレインハートの力は変わらずだ。食らえば消滅に近いのだから威力は関係無い。

「はああああああああああああ。負けるかああああああああああああ!!」

3対1のはずだが、やはりコルベニクの方がデータ量もとい、エネルギー量が大きい。何せ、八相の破片データを元に強大巨大大量のウィルスバグで構成されているのだから。

 

「くそっ…コルベニクはもうボロボロなのにエネルギー量が大きすぎる!!」

「諦めるな。この撃ち合いに勝ちさえすればボクたちの勝利なんだ!!!!」

「そうだな!!」

「こんな時にハセヲがいれば!!」

 

バアアアアアアァァァン。

いきなりコルベニクの空間が破壊され、瓦解していく。そしてコルベニクに向けて知らないデータドレインが放たれていた。

 

「アレは?」

 

5つのデータドレインがコルベニクに撃たれた。その瞬間にコルベニクのドレインハートが止まる。

 

「なるほど。彼らも来ていたのか…痕跡はあったからな」

「ハセヲ…」

 

カイトの目には白髪の青年に、青髪のガンナー、緑の衣装のマジックキャスター、桃色髪の拳闘士の女性、太陽の基調とした服を着る女の子が映った。

 

「今だ!!」

「カイトさん。オレの力も使ってください!」

 

アインズも自分の切り札であるスキルを発動する。コルベニクだけに向けて。

 

「The goal of all life is death。あらゆる生あるものの目指すところは死である」

 

エクリプスの限界レベルである5に到達した者のみが100時間に一度使える特殊スキル。 このスキルを発動させて唱えた即死魔法は時計の針が一周する12秒間のタイムラグがある代わりに生きていようがいまいが、あらゆる耐性を無視して対象を即死させる。

このスキルをカイトのドレインハートにエンチャントさせたのだ。これがコルベニクに当たれば完全に消滅させられる。

 

「「いっけええええええええええええええええ!!!!!」」

 

力を合わせたドレインハートはコルベニクを貫いた。

 

「これで決める!!」

 

カイトのデータドレインの展開が変化する。彼の持つ弓矢を中心に、まるで大きな砲台が構成された。そして銃口に超高密度のエネルギーが球状の収束する。

 

「これで終わりだ。いっけええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!」

 

カイトの紋章砲、データドレイン砲とも言うだろう。コルベニクが撃たれた瞬間にエネルギー球は大きく広がり、コルベニクを全て飲み込み消滅させた。

 

「ボクたちの勝ちだ!!」

 

 

side変更

 

 

コルベニクはカイトたちの尽力によって再誕を発動する前に完全消滅した。残るウィルスバグはカッツェ平野にいる大量のバグモンスターのみ。

だが数は何百、何千、何万といるのだ。その全てを倒すにはどうするかを誰もが考えているが、その答えは空にあった。

 

「アアアアアアア」

「大丈夫。ここからは私の役目」

 

ポーー・・・ン。ハ長調ラ音がカッツェ平野全体に響き渡った。

王国軍は『カオスゲヘナ』の時に聞こえた奇跡の音だ。そして降臨する女神アウラ。

 

「ウィルスバグよ。この世界から消えなさい」

 

女神アウラは優しい光を照らし、小さな光の粒子を降らした。光の粒子の正体はバグモンスターを倒すワクチンプログラムだ。

光の粒子によってバグモンスターは全て消滅し、戦った者たちは癒される。その癒しはどんな重症患者もたちまちに回復させた。

今ここに王国軍と帝国軍は奇跡を目の当たりにしたのだ。王国軍は2度目の奇跡に感動し、帝国軍は女神を肉眼で見ることで祝福された気がした。

 

「ウィルスバグとの戦いは終わりました。…そう、ウィルスバグとの戦いは」

 

ウィルスバグとの戦いは完全決着を果たした。

 

 

side変更

 

 

戦後について。

 

.hackersはウィルスバグとの戦いで英雄になっている。その知名度はどの国にも響いているほどである。

特にリ・エスティーゼ王国とバハルス帝国には大樹が根付くくらい知れ渡っている。そして忘れてはいけないのが竜王国だ。かの国はビーストマンとの戦いで国を救った英雄。そこにウィルスバグと戦って大陸を、世界を救ったなんて話も加われば竜王国ではもう大英雄だ。

国が1つチームに対して大騒ぎなのだ。本当に、特に竜王国は、特にそのトップは。

さらに付け加えるなら各国は如何に.hackersを自国に所属させるかで牽制し合っている。王国も帝国も竜王国もどこの国も躍起になっているが、その話はまた今度である。

 

「ボクたち凄いことになってるよ」

「そうねー。正直ここまで英雄扱いされると逆に嬉しいんじゃくて面倒だと思うわ」

「出歩く度に有名人扱いだから対応がな」

「そうか。オレは気にしないぞ」

 

カイトたちも最初は恥ずかしがって、嬉しくは思っていたが中には面倒だと思う者も出てきた。

有名人扱いされるのは良くも悪くもというところだろう。

 

「現実の有名人もこんな思いをしてたのかな?」

「さあな。でも多くの人々の注目を浴びるのだ。精神的に疲れるのはあるだろうな」

「私は全然気にしないぞ。ハーハッハッハッハッハ!!」

「ぴろし3は良くも悪くも最初から注目されてますからね」

「ああ…そういえば」

「HAHAHAHAHAHAHA!!」

 

黄金の鎧と白い歯がピカーンと光る。

 

「皆、ウィルスバグとの戦いはきつかった。でも皆のおかげで倒せたんだ。本当にありがとう」

「なーに言ってんのよ。力を貸すのは当たり前よ」

「そうだぜ」

「うむ」

 

みんながカイトの言葉を嬉しく思い、そして返事を返す。カイトは思う。やはり彼女たちは最高の仲間だと。

彼女たちがいたからこそ、この異世界で強く歩を進めることができたのだ。もちろんブラックローズたちもカイトがいたから、仲間がいたから異世界でウィルスバグと戦えてこれたのだ。

カイトやブラックローズ、バルムンクにオルカたちは全員が今までの戦いを思い出しながら談笑を交わす。ウィルスバグとの戦いは終わったのだ。後は現実世界に帰るだけだ。

だが、いつ帰れるかは分からない。それは女神アウラに聞かないと分からないものだ。

そんな中で帰るのが惜しむ気持ちもある。それはアインズたちのことだ。せっかく仲良くなれたのにお別れとは悲しいものだ。向こうがどう思っているか分からないがカイトはアインズと仲良くなったと思っている。

 

(お別れは悲しいよ。やっぱり)

 

ならば、まだ異世界にいられるなら、いられるだけ思い出は残そうと思う。そう考えているカイトたちだったが、違うことを思う者もいた。

それは八咫であった。

 

(ウィルスバグとの戦いは終わった。だが気になる点がある。今までずっと気にしていたことだ)

 

八咫の脳裏に響く言葉。

 

『まda策&あっタ+ニ……ザwン・sン……A@D#……反&*ク%ア……%”W(’)’=”~#(&%!!?!』

 

『策謀家』ゴレの遺した言葉だ。聞いた言葉のニュアンスではまるで3つの策があるようであった。3つの策、3つの計画、3つの脅威という感じだ。だが本体であるゴレが消滅してしまったことで真意は分からない。

 

(その3つは特に気になる。バグっていて言葉が上手く聞き取れなかったが…私が予想しているものであったならば結果は最悪だ)

八咫が思う3つの最悪。その1つとしてアノ黒い斑点の電脳生命体を思い出す。だがアノ存在は『あの時』に完全に消滅したはずである。

 

(考えすぎだろうか…まあ今は忙しくなりそうだ)

 

最終決戦で『彼ら』にも出会ったのだ。その件についても調べ上げなければならない。

 

(いや、調べる必要は無い。ただ会って話せば良いだけだ。仲間なのだから)

 

 

side変更

 

 

アインズはついに魔導国を建国に成功した。場所はエ・ランテルだ。そこは戦後の後処理で上手く王国と帝国に圧制をかけて奪い取ったというものである。

もっとも上手く水面下で動いたのはデミウルゴスとアルベドのわけではあるが。

気が付いたら本当に1国の王となってしまったのだからさあ大変である。しかもコキュートスは上手いパスで『魔導王』を名乗ることになってしまいもう戻るに戻れない。

 

(ここまで上手くいくと逆に後が怖いぞ)

 

アインズは玉座に座りながら親愛なる部下たちを見る。部下たちの目はどれも煌ている。それは我が王がより煌きを放った至高の存在になったからだ。

 

「アインズ様。魔導王としておめでとうございます。我らナザリック一同はこれからよりアインズ様にお仕え致します」

「うむ。これからもお前たちを信じている。頼むぞお前たちよ!!」

 

この言葉は嘘ではない。仲間たちの忘れ形見のような存在を信じないわけがない。だからこそアインズは、モモンガが彼らを失望させないように王になる。

 

「アインズ様!!」

「アインズ様」

「ア、アインズ様」

「アインズ様!!!!」

「んアインズ様!!!!!」

「アインズさまぁぁぁ!!」

 

誰もがアインズを讃える。

 

(頑張ろう。ウィルスバグは完全に消滅したし、建国も上手くいった。でも今はゆっくりしたいし、またカイトさんと冒険がしたいな)

 

取りあえず、今はこの建国したことを祝おう。そして難しいことは部下に任せてカイトと冒険しようと思っている部下任せなアインズであった。

 

(良いよなこれくらいの我儘は。もうお別れが近いのだから)

 

アインズは真面目すぎるし、流れやすい。なら彼も我儘くらいは良いだろう。

 

 

side変更

 

 

王国のある場所にて。

 

「よおガゼフ。疲れた顔してんな。戦後の後処理は大変なんだな」

「お疲れさまですガゼフ殿」

 

蒼の薔薇のラキュースたちがガゼフにあいさつをする。他にもブレインやクライムもいる。

ガガーランはいつもクライムに会うと「童貞か?」と聞くのはお決まりである。クライム自身からしてみれば勘弁ものである。

 

「もうやめてくださいよガガーランさん」

「無理だね」

「うん無理」

「ティナさんにティアさん~」

 

もういつものことなので仕方ないだろう。

 

「どうだクライム。ん?」

「遠慮しておきます」

「そっちは何をしてんだ?」

「ブレイン。こっちはただ休暇を取ってるだけさ。ウィルスバグとの戦いの後だからな」

 

ウィルスバグとの戦いの後は休暇を取っている蒼の薔薇。何せあれだけの戦いの後だ。冒険者として休暇をとっても悪くない。

逆にガゼフは戦争の後処理のためまだゆっくりできそうにない。

 

「戦後の後処理でナザリックにエ・ランテルを取られた件もあるから大変なんだ」

「ナザリックか…」

「できればゴウン殿と話がしてみたいものだがな」

 

ガゼフはアインズには借りがある。それに話してみるとそこまで悪人とは思えなかった。それが勘違いかもしれないが、それでもまた会って会話がしてみたいのだ。

なぜ建国したのか、何故人類の敵のようなことをするのか、なぜウィルスバグと戦ったのか。会って話たいことはいくらでもある。

 

(でも今は戦後の処理で無理そうだな)

 

忙しすぎて苦笑してしまう。

 

「ブレインとクライムも忙しいのか?」

「いや、俺らはそうでもない。俺らはガゼフが忙しくて疲れが出てるから気分転換に外に連れ出しただけだぜ」

「なるほど。確かに忙しいからって無理してはいけませんよね」

 

無理して身体を壊したら本末転倒である。休む時は休まないといけない。

 

「ラキュースの言う通りだ。だから今日は休もうぜガゼフ」

「そうですよガゼフさん。今日くらい大丈夫ですよ。それにバルムンクさんとオルカさんも来てくれるんですよ!!」

 

バルムンクと聞いてラキュースが反応する。

 

「バ、バルムンクが来るの!?」

「ああ。剣の稽古でもしようって話だ」

「わ、私も一緒に良いかしら!!」

「構わないけど休暇はどーした?」

「大丈夫よ!!」

 

急に自分の服装を気にし始める。「今日の服は変なところないわよね」なんて聞こえてくる始末だ。

そして噂をすればなんとやらだ。バルムンクとオルカが現れる。

 

「よお。こんなところに居たか」

「おお、オルカ殿にバルムンク殿」

 

バルムンクがラキュースにも手を振る。それを顔を真っ赤にしながら返す。本当に乙女の顔である。

すぐさまバルムンクの元に駆け寄るが彼は今ブレインと剣の稽古についての話をしている。ライバルでもないのについ睨んでしまう。これにはブレインも心の中で「おおう…」と呟く。

 

「おいオルカ」

「ん、何だイビルアイ?」

「カイト様は?」

「いないぞ」

 

一旦、間が空く。

 

「カイト様は?」

「いない」

「…カイ」

「いないから」

 

また間が空く。

 

「何故だ!?」

「んなもん、今日は来てないからとしか言えねえよ。それにカイトは今日用事があるみたいだしな」

「場所を教えろ!!」

「落ち着けイビルアイ」

 

ヤンヤヤンヤと騒ぐ一方であった。そして件のカイトはナザリックにいる。

 

 

side変更

 

 

カイト、アインズ

 

エ・ランテル改め、魔導国の城の一室。そこにはカイトとアインズがいる。お互いにフカフカのソファに座り、ゆったりとしているのだ。

ウィルスバグとの最終決戦が終わったのだからゆったりしても誰も文句は言うまい。

プレアデスのユリが淹れてくれた紅茶をクピリと飲んで一息つく。

 

「ウィルスバグとの戦いは終わった。力になってくれてありがとうモモンガさん」

「どういたしまして。オレも決着がつけられて本当に良かったです。本当に終わったんですね」

「うん」

「と、いうことは…お別れですかね」

「…そうなるね」

 

肯定されてしまい少し心が痛むアインズ。だがこれは理解していたことだ。カイトたちの目的はウィルスバグを倒すこと。

その役目が終われば元の世界に戻るのは当然の帰結である。出会いがあれば必ず別れも訪れるものだ。

 

「本音を明かすなら残念です。オレはもっとカイトさんたちといたいですよ」

「それはボクも同じかな。でも、できない」

「ええ。出会いがあれば別れもある。当然ですよ」

「うん。今すぐに帰るわけじゃない。残された時間はモモンガさんと冒険したいと思うんだ。どうかな?」

「もちろんです。この世界にはまだ未知なところがありますからね。時間があるかぎり冒険しましょう!!」

 

別れは悲しいけれど、今すぐというわけじゃない。なら時間がある限り共に冒険しようと思う2人。

彼らは住む世界、時間枠が違えど仲間なのだ。2人はもう親友だとお互いに思っている。

 

「…ところで魔導王になった感想は?」

「正直辞めたい気分です」

 

急に雰囲気を変える。湿っぽい雰囲気より馬鹿らしい雰囲気の方が男として騒げるのだ。切り替えが早いともいう。

 

「ははは。頑張れモモンガさん」

「あ、他人事だと思ってますね!!」

「うん(笑)」

 

カイトにとってアインズが王になろうがアインズはアインズでモモンガだ。彼がプレッシャーに悩まされてもまだ気にしない。まだ。

本当に悩みだしたら相談は乗ろうと心の中で思うのであった。

 

「ぐぬぬぬぬぬ」

 

だがアインズはどうにかこの気持ちをカイトに味わわせたいと思っている。そう、ただ巻き込みたいだけである。

 

「だけどカイトさんも人のこと言ってられませんよ。なにせカイトさんだって王になるかもですから」

「ああ、あの時に言っていた話か。でもそんなの無理だよ。そう簡単に王にはなれないよ」

 

カイトの言う通りで簡単に王になれるものではない。しかし、ここは異世界でアインズとカイトの業績がある。実は可能性はゼロではない。

 

「フフフ、甘いなカイトよ」

 

ここで急に魔王ロールが発動。

 

「どういうことかな魔導王?」

 

カイトもロールに乗る。

 

「お前は分かっていないな。自分がどういう存在かを、私がどういう存在かをな!!」

「何だって!?」

 

アインズは語る。

カイトは既に大陸の英雄だ。その知名度はバハルス帝国、リ・エスティーゼ王国、竜王国まで大きく響いて影響している。さらに彼の性格ゆえ、多くの人々からも好まれている。

強気仲間からも囲まれて、リーダーシップもとっている。王としても資格も少なからず持っているのだ。そして王の土地はと言われればカイトたちの本拠点がある。

 

「あのタルタルガも大したものだ。あれはもう浮遊国家だろう」

 

ギクリとしてしまうカイト。なぜだか逃げ場を塞がれた気分になる。

 

「く…っ!?」

 

そしてアインズは魔導王。帝国や王国に対して相当な影響力がある。そんな中で一応同盟国のバハルス帝国に裏回ししながらカイトを一国の王にしようと計画すればジルクニフは乗るだろう。

材料は十分にそろっている。カイトは大陸の英雄。さらに魔導王アインズの唯一の対抗できる人間。浮遊国家とも言えるタルタルガ。ジルクニフならすぐさま利用するだろう。

帝国に所属できないなら同盟国として手を結ぶことのほうが何倍も価値がある。

 

「フフフ。どうだ蒼炎の勇者カイトよ。どこからどう聞いても可能性はあるだろう。ゼロではないだろう?」

 

確かに材料は揃っている。今のカイトたちならば不可能というわけではない。現実世界ならな不可能だが、異世界であるここならば可能性はあるのだ。

カイトは冷汗がダラダラである。心の中では「そんなの不可能だよね!?」と呟き続けている。

 

「では、早速計画を開始させてみるか。蒼炎王の建国をな」

「そんなことはさせないぞ魔導王!!」

「止めてみるがよいカイトよ」

「アインズ…!!」

 

ゆっくりとソファから立つ2人。

 

「捕まえてみろカイトさん!!」

「待てモモンガさん!!」

 

2人の追いかけっこが開始された。ウィルスバグとの戦いは終わった。だからこそ馬鹿できる。残された時間を有効に使おうと思う2人であった。

 

「ちょ、マジで待ってよモモンガさーん!!」

「ハハハ、捕まえてみろー!!」

 

第一部、完。




今まで読んでくれてありがとうございます。急かもでしたが、これで完結となります。
私の書いた小説を読んでくださった読者様にはとても感謝いたします。

ついに完結しました。第一部が!!
そう、第一部が完結したのです。まだ回収していない伏線があるので、その回収は二部となります。
もともとこの物語はカイトとアインズたちの物語でしたからね。
第二部ではついに『彼ら』が本格的に登場しますよ!!

第二部はこれから構成し、練り上げて、書き上げるのでまだ投稿は先となります。
(原作のオーバーロードにも追いついてきてしまいましたしね)
そして今の章がちょうど区切りが良かったので第一部はここまでにしました。

まだ待っててくれるという読者様がいればゆっくりと待っててください!!
では、本当に読んでくださった読者様方。ありがとうございました!!


カイト 「今までこの物語を」
アインズ「読んでくださって」
みんな 「ありがとうごいざました!!」

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