.hack//OverLord   作:ヨツバ

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今回は死の恐怖スケィスとの戦闘です。
さあどうなるかアインズ様。どうするかカイトたち!!

では、始まります。


スケィス

精神安定が発動していてもオレは怒っている。この怒りはンフィーレアを誘拐された時に感じた不快感よりも不快すぎる。

ナーベラル・ガンマはオレの仲間が、弐式炎雷さんが作ったNPCだ。彼女はナザリック地下大墳墓ではもう家族同然なんだ。

大切な家族を傷つけられた怒りはアンデッドの精神安定作用でも収まりきらない。先ほどから何度も怒り、精神安定作用が繰り返されている。

 

「許さんぞこの石人形如きがぁ!!!!」

 

オレの怒りを無視しているのか、黒い石人形はナーベをゴミのように捨てた。それを見た瞬間に更なる怒りが膨れ上がる。

 

「コール・グレーター・サンダー!!」

 

巨大な豪雷が黒い石人形を貫いた。

 

「サウザンドボーンランス!!」

 

無数の骨の槍が地面から飛び出し貫く。

 

「エクスプロージョン!!」

 

トドメの爆発によって黒い石人形を吹き飛ばす。

無慈悲とも言える上位の魔法を連発する。もう黒い石人形の破片すら残さん。理性の無い石人形には感じるかは分からぬが苦しみ抜いて殺してやりたがったが我慢しよう。

爆煙で黒い石人形が見えないが、あれだけ連発したのだ。もう塵にすらなっていないだろう。

 

「ナーベ大丈夫か?」

「アインズ様……申し訳ありません。情けない姿を……お見せしてしまいました」

「気にはしない。それよりもお前が心配だ。今すぐ治療する」

「勿体無きお言葉……」

 

すぐにでもナーベを治療する。黒い石人形をコナゴナにして、ナーベの無事を確認したからか少しは冷静になった。

まさかナーベを圧倒する敵がこの異世界に存在するとはな。ナーベのレベルは推定60はある。ならばさっきの黒い石人形のレベル70から80はあったかもしれない。

王国最強戦士のガゼフですらユグドラシルのレベルで推定すると30くらいだから、この異世界の人間の実力が弱いと分かる。

 

(いや、弱いんじゃなくてオレたちが規格外なのか。でもさっきのみたいなヤツもいるみたいだからな。これからはもっと慎重に動いたほうが良いかもしれない)

 

これからもっと慎重になろうと考えた時にノイズが聞こえた。

 

ジジ……ジジジジ……ジジジジジジジジジジジ。

 

このノイズはまるで空間全体が異常をきたしているかのようだ。何かと思ったがナーベの顔が信じられないものを見た顔している。

何を見たのだろう。まるで幽霊でもみたかのような顔だ。……オレはアンデッドだけど。

 

「アインズ様避けてください!!」

「何!?」

 

気付かなかった。油断した。まさか背後に敵が近づいていたとは。

しかもその敵はオレがコナゴナにしたはずの黒い石人形だ。だが身体には傷1つ無い。有り得ない。

 

「くっ!?」

 

黒い十字架が振り下ろされる。オレはナーベを抱えたまま避ける。さっきまで居た場所には黒い十字架によってクレーターが出来ている。

 

「馬鹿な。魔法が効いていないのか?」

 

黒い石人形は確かにオレの上位魔法が直撃していたはずだ。なのに傷が1つも無いなんて有り得ない。

もう一度上位魔法を発動する。ナーベも身体に鞭打って戦闘に参加する。オレとしては休んでもらいたいがな。

 

「エクスプロージョン!!」

「チェイン・ドラゴン・ライトニング!!」

 

確実に魔法が当たったはずだ。だが無傷のままだ。いや、今の言い方は相応しくない。魔法が当たった場所に焦げた跡や傷は見えた。

しかし黒い霧だか煙だかが修正しているかのように回復しているのだ。まさか自動回復のスキルなのか。だとしても上位の魔法を連続でくらっても回復できるスキルなんて厄介だ。

それに厄介なのはまだある。速過ぎる。あの黒い石人形の動きが速過ぎる。すぐに間合いを詰められる。

 

(残像を伴うほどの高速移動だと!?)

 

マジックキャスターが相手との距離がとれてないのはマズイ。長い詠唱を伴う強力魔法も発動できない。この手の敵はマジックキャスターのある意味天敵だ。

そしてさらに驚いたのは攻撃力だ。黒い十字架の薙ぎ払いを1度くらってしまったが火力が有り得ない程に高い。HPの4割以上は減らされた。

これでも装備は完璧に用意している。なのにこの異世界に来て初めてHPを減らされたのだ。

 

(おそらくヤツは単純に火力と速さにステータスを振っているモンスターだろう。そしてレベルは70から80と予想したが、もしかしたらレベル100かもしれない)

「アインズ様。私が時間を稼ぎますのでそのうちにヤツを」

「ダメだ。ヤツはもしかしたらレベル100の可能性がある。そんなヤツに時間稼ぎは通用しない」

「しかしアインズ様。私が犠牲になれば少しでも……」

「それ以上先を言うな。これは命令だ」

 

家族を犠牲にしてまで倒す戦い方はしない。

 

「こうなればゴッズアイテムを使用するしかないな」

 

アイテムボックスから今使えそうなアイテムを取ろうとした瞬間、衝撃波が放たれた。黒い石人形が黒い十字架を地面に叩き付けたのだ。まるで狂ったかのような波動とも言える。

 

「ぐおおおおお!?」

 

黒い石人形は黒い十字架でオレとナーベを薙ぎ払った。本当にふざけている。1発くらっただけでマズイ火力だ。ナーベにいたってはHPを7,8割減らされるんじゃないか。

 

「ナーベは離脱しろ!!」

「……できません。至高の御方であるアインズ様を置いて逃げるなど死よりも恐ろしいことです」

 

HPを大幅に削られてそんなことを言っている場合じゃないだろう。オレは家族同然であるナーベに死んでほしくは無い。

 

(こうなったらンフィーレアを回収して全員で離脱するしかないか……)

「チェイン・ドラゴン・ライトニング!!」

 

ナーベがもう1度魔法を撃ち込んだがやはり効いていない。なんてヤツだ。クソッ……ワールドアイテムも必要かもしれない。

 

「いかん!? ナーベ、また衝撃波がくるぞ!!」

 

衝撃波がまた襲ってくる。この衝撃波も威力が半端無い。防御を上げないとマズイ。

 

「ナーベよ無事か……何ッ!?」

 

いつの間にか黒い十字架が俺の背後にあった。直後、身体が動かなくなった。まるで十字架に磔にされたかのようだ。

そのまま空中に浮かび上がり、黒い石人形の前に止まる。ヤツは左腕をオレに向けた。すると左腕から蒼い半透明な紋様のようなものが展開された。

アレはマズイ。直感で理解できた。どんな効果かは分からないけど本当にくらったらマズイと理解できる。

 

「クソッ……身体が動かない」

 

今まさに何かが放たれようとした瞬間に声が聞こえた。誰の声だろうか……。

 

「させるかぁ!!」

 

 

 

side変更

 

 

 

.hackers陣営。

カイト、ブラックローズ、ミストラルチーム。

ボクは叫んだ。せめて相手の気がこっちに向けられるようにだ。

 

「させるかぁ!!」

 

ロケットスタートのように走り抜ける。この瞬間だけ足の筋繊維が千切れても良いから限界を超えろ。走れ。間に合うために。

両手で双剣を強く握り締める。速く速くと口にする。黒い十字架に磔にされた人を助けるために限界を超えろ!!

 

「旋風滅双刃!!」

 

双剣にカマイタチを纏わせて、スケィスの左腕目掛けて連撃する。

スケィスの放ったデータドレインは黒い十字架に磔にされた人にあたらずに誰もいない方向へと放たれた。

 

「よし、間に合った!!」

 

本当に間に合って良かった。もしデータドレインをくらっていたら間違いなく恐ろしいことになっていた。

この異世界だと未帰還者にならないと思うけど、おそらく同じような症状になる。リアルで言うなら意識不明になるということだ。それはきっとこの世界の魔法や薬じゃ治せない。

 

(それに最悪のケースだと消滅の可能性だってある)

 

治すにはデータドレインを放った元凶を倒すしかないんだ。そしてその元凶の八相というのはデータドレインで弱体化しなければHPが無限であり、倒すことは絶対に出来ない。

その八相の破片データを取り込んだウィルスバグはおそらくその不死性の能力も持っている。だからボクらが倒さないといけないんだ。

ボクの両サイドにブラックローズとミストラルが来てくれた。

 

「アタシは準備オッケーよ」

「私も大丈夫!!」

「いくよみんな。この黎明の腕輪にかけて必ず倒す!!」

 

ついにウィルスバグの駆除が始まる。

もう一度よく相手を見る。見れば見るほど因縁の相手であったアイツに瓜二つだ。

因縁の相手……それは「死の恐怖 スケィス」。親友のオルカを未帰還者にし、アウラを分解した。ボクにとって忘れられない最悪の敵だ。

 

「何かちょっと黒いし、霧だか煙っぽいのも滲み出てるわね」

「もしかしたらアレが元のウィルスバグかもしれないね。だけど八相の破片データを取り込んで八相そのものを再生しようとした結果があの黒いスケィスかもしれない」

 

正直言ってデータドレインの能力まで再現しているとは思わなかった。そうなると他の八相たちも能力を再現している可能性がある。

どの八相も厄介な能力を持っているけど、特にアイツがウィルスバグによって再現させられていたらこの異世界がマズイことになる。

 

「ラプコーブ。ラプコーマ。ラプボーブ。ラプボーマ。ラプドゥ!!」

 

ボクたちの物理や魔法攻撃値に防御値。速度にブーストが掛かった。

ミストラルによる補助系スペルが発動した。スケィス相手に補助系スペルは必要だ。

なぜならスケィスは圧倒的な攻撃力とスピードで敵を殲滅する。まさに死の恐怖を感じさせる死神だ。

 

「ったくアイツはトチ狂った破壊力がとんでもないのよ!!」

 

ブラックローズの意見に大きく賛同する。スケィスと決戦を繰り広げた時は大変だった。正直どの八相よりもある意味強敵だったから。

 

「でも弱音は言ってられない。いくよブラックローズ!!」

「ええ!!」

 

2人同時に突撃する。まずはデータドレインが通用する状態にしないといけない。プロテクトを解除しないと!!

 

「疾風双刃!!」

「ハープーン!!」

 

逆袈裟からの連続攻撃。次にブラックローズが空中に飛び上がって斜め下に急降下しながら剣で突き刺した。

オリジナル程では無いがやはり防御が硬い。援護としてミストラルが攻撃魔法を撃ってくれる。

 

「はああああああああああああ!!」

 

黒い十字架が暴力の化身のように振るわれる。攻撃を受けたら最後、HPを半分以上は削られる。スケィスはそれほどの火力を持っている。

最善は避けること。それがダメなら絶対に防御するべきだ。

 

「く、このお!!」

 

連続で斬りつける。ボクがもっとも使う双剣の技で高速で大量に斬りつける乱舞攻撃。

 

「夢幻操武!!」

 

手を休めるな。ボクもブラックローズもミストラルも攻撃を止めない。

 

「夢幻操武!!」

「初伝・鎧断!!」

「オルパクドーン!!」

 

連続で休まず攻撃しているけどプロテクトは解除されない。まだなのか!?

黒い十字架が地面に振り下ろさせる。あのモーションは「死の波動」だ。スケィスの範囲物理攻撃。衝撃波が墓地を無慈悲に吹き飛ばす。

劣化しているとはいえ、威力が高い。墓地が吹き飛んで新地になっている。

 

「ったく効くわね……」

「次に備えるんだ。全体氷魔法がくる!!」

「ラウリプス!!」

 

回復魔法で傷を癒す。だが次にはもっと危険な魔法がくる。

「Judgement」。スケィスが使うエリア全範囲の全体氷魔法。威力が極悪すぎる。

発動した瞬間に新地が氷河の世界となった。身体が凍って動かない。状態異常回復を急がないとマズイ。

ミストラルも分かっているのかすぐに回復スペルを発動する。回復したらすぐに動く。黒い十字架が目の前に近づいているからだ。

 

「危ないよ~!?」

 

冷酷に凍った氷河がコナゴナに砕ける。

 

「夢幻操武!!」

 

ついにプロテクトが解除される。これでスケィスにデーダドレインが放てる。黎明の腕輪を発動させる。

右手を前に突き出し、黎明の腕輪のが華のように広がる。ロックオンして放ちたいがやはり速くて狙いが定まらない。

残像を伴うほどの高速移動をする相手に狙いを定めるのは厳しい。

 

「速い……!!」

 

グズグズしているとプロテクトが修復してしまう。狙いを定めろ。冷静に集中しろ。必ずデータドレインを当てる。

データドレインを放とうとした瞬間にスケィスに紫色のエネルギー弾が当たり、動きが鈍る。

 

「……グラビティメイルシュトローム!!」

 

さっきまで黒い十字架に磔にされていた黒いローブを着た人が魔法を撃ってくれた。よく見ると人じゃなくてガイコツだったけど今は驚いている場合じゃない。

今がチャンスだ。これで決める。

 

「データドレイン!!」

 

データを吸収、改竄する閃光をスケィスに放った。オリジナルのスケィスでなくウィルスバグだからか、石碑のようにならずに完全に消滅した。

八相の破片データを取り込んだウィルスバグは残り7種類。




読んでくれてありがとうございました。

アインズ様たちが敵わなかった理由はもちろんあります。それは後々語られます。
分かる人は分かりますがね。
カイトたちもスケィスには良い思いではありませんね。

補足ですがウィルスバグの形は「ドットハック セカイの向こうに」に登場するウィルスバグをイメージしています。

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