「問おう――――貴方が僕のマスターか?」
赤のセイバーのサーヴァントとして呼ばれたのは錬金術の大家たるアインツベルンが最強と呼んで憚らないサーヴァント。
騎士王―――アーサー・ペンドラゴン
聖剣エクスカリバーを持った騎士。
ステータスも宝具も正に最強と言っても過言ではなかった。
性格も善良で真面目……そして気高く誇り高い理想の騎士たる最強の男。
掲げる願いは祖国の救済であり聖杯に対するモチベーションも高かった。
アインツベルンもアインツベルンの小聖杯の女性――――アイリスフィール・アインツベルンもこのサーヴァントに不満などなかった。
少なからず最強の聖剣と触媒に使われた持ち主に不死身にする聖なる鞘『
衛宮切嗣――――魔術師殺しと呼ばれた男以外は。
…………衛宮切嗣は英雄を憎んでいた。戦場という地獄に理想や誇りを持ってくる醜悪さに吐き気や悪意すら覚えていた。
それ故にこの誇り高く美しい理想の体現者たる騎士王に怒りと悪意すら覚えていた。
だがそれ以上に怒りを覚えるのはこの騎士王は自分の考えを見抜きくみ取っていたのだ。
それ故に感情の行き場もなく向け所もなく燻っていた。
彼は自分に対し貴方と僕は同じだ……と真摯な目で言ったのだ。
彼は内心で否定していたが…………。
実際の所似た者同士だった。互いに理想の為に戦おうとしていたのだから。
だがあいにく、衛宮切嗣にそんな余裕などなく赤のセイバーと共に行動することなど出来ようもなく赤のセイバーは衛宮切嗣の妻――――アイリスフィールと行動を共にしていた。
それは衛宮切嗣の計画でもあったが…………。アイリスフィールと赤のセイバーをオトリにして近付いてくるマスターを隠れて狙撃する。
彼、衛宮切嗣からすれば極めて合理的な計画であった。
赤のセイバーはたとえ衛宮切嗣の内心を理解しようとも彼の外道な行いをみて何も思わない理由もなく側におく理由などなかった。
それならばアインツベルンの姫たるアイリスフィールを側においた方が騎士のアーサー王の実力をより発揮できるという算段でもあった。
まぁ赤のセイバーは自分の妻を犠牲にしようとすることに内心、思うところもあったが彼女が聖杯だとアインツベルンの長に聞いてしまいどうしようもなく迷っていた。
彼は英雄だった。
アイリスフィールは自分の夫の盾であり剣である自分を信頼していた。
そして自分の犠牲を良しとしていた。自分の娘の為に――――。
それを見て何も思わない訳もない英雄な彼は自分の願いと彼女の命を天秤に乗せ悩んでいた。
だが何を考えるのもまずは勝ってからだと……敵を誘うために初めての街を楽しげに歩く白銀の美女の背中を見て聖剣を握る筈の手を強く握り締め考えていた。
「ねぇ……セイバー?」
「僕がどうかしましたか? アイリスフィール?」
「ううん。何か思い悩んでいそう顔をしていたから」
どうやら顔に出ていたらしい。
赤のセイバーは気を取り直すように咳き込み笑いかける。
せめて命の少ないであろう彼女が……せめて短いであろう命を謳歌できるように。
もしも叶うのならば正義を尊ぶ悲しき男とこの無垢な女性が……何も知らないであろう娘と幸せになる道を考えながら…………。
そして始まる。
気高き騎士と悲しき暗殺者の聖杯大戦が……………。
これプロトセイバーです
鞘持ちになりました