Fate/zero ~英雄大戦~   作:赤石なちる

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4話『黒のランサー ~人ならぬ泥の獣~』

「君は……その身に自らを滅ぼす呪いを受けたんだね……僕と同じように――――」

 

 美しい女性にも男性にも聞こえる奏でるような声と中性的でありながら男性にも女性にも見えるしなやかで品のある体に淡い緑色の美しい髪に簡素な装いを身に付けた人間離れした美しい容貌をした彼がまるで自分を重ねるように語る。

 

 だがそんな彼に対してマスターたる彼女――――玲瓏館美沙夜(れいろうかんみさや)は自分の内心の僅かな動揺を悟られまいと自分が用意した冬木市の工房内に備え付けていたソファに脚を組み座り優雅さと淫靡さと気品を感じる美しい姿を見せながら自分に話し掛ける存在を見る。

 

 エルキドゥ――――世界最古の英雄譚に出てくる神が作り上げた泥の獣。人と神の楔たれと神に造り上げられた存在。

 

 神の願いとは裏腹に神に友情の為に歯向かった人形。

 

 今回は黒のランサーとして現界した。

 

 恐らく最強の英雄だろう。

 

 いや人の血など流れてもいないだろうから英雄とは違うかも知れないが――――。

 

 槍を持っていないのにランサーなのは驚きだがエルキドゥならば充分勝ち残れるだろう。

 

 何せこれと戦える英雄などそれこそギルガメッシュくらいだろう。

 まぁヘラクレスやベーオウルフなら何とかしそうだが……。

 

「なぜ私(わたくし)の体が呪いを受けている事が解ったのかしら? 泥の獣よ――――」

 

 そうだ。彼女が気になるのは一族の魂そのものにかけられた死の呪いをエルキドゥが一目見ただけで理解したことだ。

 

「それは僕が生前、呪いで死んだからだよ。獣の勘だよ」

 

 嘘だろう? と一瞬思ったが嘘ではないと令呪のラインから彼の落ち着いた感情を感じる。

 どうやら自分がこのままでは死を待つ身でであると生前の経験から見抜いたようだ。

 

 故に聖杯を欲し生涯を自分の未来の為に費やした誇り高き父の願いを守り抜くこうとしていることを。

 

 この鋭さを喜べばいいのか? 本当はクー・フーリンを呼ぶ予定だったのだが……触媒を運悪く手に入れられず手に入れられた触媒は古く凄まじい神秘を感じる謎の土だけだった。

 

 確実に英雄の何かであったので大地に何かできる英雄なのだろうと踏んで呼んだが本当に大当たりのようだ。

 

 そして自分をマスターと認めるらしく機嫌もいい。

 考えてみれば彼の友は世界の全てを手に入れ賢君となり暴君になった世界の王。

 

 そんな人間と友情を育む以上、器は相当なのだろう。

 

 だが何故だろうか? それ以上に彼が嬉しげなのは…………?

 

 美沙夜は彼のその不自然な様子に疑問を覚える。

 そんな姿にエルキドゥは気付いたのだろう。嬉しげに笑う。

 

「ああ。君の命の事もある僕は君を救う為に戦おう。だけどね…………」

 

「だけど?」

 

「やっぱりギルに逢えるのが嬉しくてね。まさか彼までいるなんて……きっと彼も気付いてると思う。彼ともう一度会えるなんて縁だね…………きっと――――――だから」

 

「――――ッ!」

 

 冬木市の外れの洋館の自分の工房――――隠蔽や防御に全力を尽くした工房に何かがやって来るのが解る玄関が破壊がされたからだ。

 

「――――――君は予備に用意していた工房に必要な者を持って逃げるんだ。番犬を連れてね。可愛いあの子達が傷付くのは忍びない…………」

 

 ここは消えてなくなるから……………。

 

 その言葉に嘘はないと知りそして相手は彼の知古の存在であると理解する。美沙夜は言われた通りに行動に移す。

 

 何故なら…………。

 

「ハハハハハハハハハッ!!! いるのだろう! 出てこい! 我が朋友よ! 出てこぬのならここを吹き飛ばしてでも見合おうぞ!」

 

 彼は壁を吹き飛ばし外にでる。そして…………笑いかける。

 

「久しぶりだね。ギル――――懐かしいよ」

 

 それは彼の王位であり彼の財―――赤のアーチャー――――英雄王ギルガメッシュの乗る黄金の船の背中に何百の光が灯る。

 

 それは全てが彼の宝具であり威光である。その光景に黒のランサーは過去を思い返す。自らの美しい思い出を……………

 

「あぁ。久しぶりだな。エルキドゥよ。久しぶりがてらにあのときの遊びの続きでも少ししないか? 我を久しぶりに楽しませてくれ…………」

 

 エルキドゥは自分のマスターが下がったことを知覚し自分の立つ大地に己の力を通す。

 

 大地の槍が地面から吹き上がりそして空から黄金が降り注ぐ――――世界に轟音が響き続ける。

 

 始まる。泥の獣と呪いの少女の聖杯大戦そしてこの戦いは始まりの号砲。

 

 そして終末の光景――――。

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