Fate/zero ~英雄大戦~   作:赤石なちる

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8話『黒のライダー ~砂漠の神王~』

 

「――貴様……余の敬愛する妻の墓を暴いたか? あぁ、だが私は寛容だ。遺言に言い訳を聴いてやろう。対価は貴様及び貴様の一族郎党の死だ。――老人」

 

 神王オジマンディアス――――古代エジプトにおいて最も偉大な王たる男が圧倒的な重圧と殺意を持って仮面を着けた老人に問い掛ける。

 

 ――――まぁただの死刑勧告だが……何せ何を言っても殺すと告げている。

 

 それに対し普通、理不尽だと考える者などなかなかいない。

 

 何せ怒っている理由は、自分の愛する妻の死を痛んで造り上げた墓を荒らし尚且つ遺品を盗みそれを持ってその妻の夫を呼びつけ挙げ句の果てには従え等と言われ呼び出されて怒りを覚えない愛妻家などいないだろう。

 

 何せこの男の逸話にも確りと妻を敬愛したと書いている……怒りは最もだ。

 

 だがそんな行いをした男は目の前の男に対し使い魔ごときが愛などと内心、吐き捨てその男が怒りを覚える行為に悪意と理不尽すら覚え仮面の下で怒りを堪えていた。

 

 何せ使い魔を従えられないなんて言う下らない理由で命を終える気など更々ないのだから…………。

 

 伊勢三家――――日本にある魔術大家の一つだ。

 だがその家は没落の危機に瀕していた。魔術回路が代を重ねる事に徐々に衰退しているのだ。

 このままではたかが四代しか代を積んでいない遠坂家や新興の下らぬ呪いに身を委ねる一族――――玲瓏館に負け家の威光が穢れてしまう。

 

 負ける訳にも古くから続く大家たる伊勢三家の威光を終わらせる訳にもいかない。

 その為ならば科学にも手をだそう病に伏せる人間からでも命を啜ろう歴史の浅い遠坂家が海外の魔術一族と造り上げた下らぬ儀式にも参加しよう……。

 

 伊勢三家を存続させるためならばどのような行いも辞さない。

 遠い冬木市に隠れて病院を建て魔術師の誇りまで失ってまで科学に手をだし金を作り病に伏せる人間の塵のような命から魔力を吸い上げてまで存続させているのだ。

 

 そこまで自らの誇りを傷つけているのだ。目の前の男の誇りなど安いにも程がある。

 

 たかが墓を一つを暴いたがごとき偉大なる伊勢三家の没落から見れば余りにも軽い――――。

 

 だがサーヴァント……黒のライダーこの男の実力はどうやら期待通り素晴らしい。

 あの男の背中から見える船は恐らくかなりのランクの宝具だろう。

 

 こやつならば我が家の没落を救う事ができる。

 

 故に…………。

 

「ライダーよ。貴様の妻の事など私は知らぬ。従え。魔力をくべたのは私だ。聖杯がほしいのなら言うことを聞け。貴様の力が私には必要なのだ。我が伊勢三一族の存続と誇りの為にその力をふるえ――――」

 

 その一言は黒のライダーの怒りを悪化させるのには充分であり殺意を通り越し悪意すら産み出し頭が冷えるのを感じる。

 

 黒のライダーは知る殺意と怒りの果てを…………。

 

 この悪辣な外道が…………!

 

「――――灼くか」

 

 そして余りにも冷徹にそして簡潔に船から圧倒的な熱の奔流が迸り始める。

 

 ――――そして

 

「余の妻の墓を暴き建てた理由がまさか浅ましい老人の一族の存命の為か……そんなに一族が大事か……ならば貴様の一族から灼き尽くしてやろう!」

 

 この男に最大の後悔と無惨な死を……この一族の魂全てを我が太陽の威光で灼き尽くそう。

 

 聖杯大戦など最早、構うものか……許さぬ。妻の寝所を汚した罪は――――王の妻を汚した罪は命よりも重いと知れ。

 

 そして退避を選びライダーの前から消えた愚かな老人を追い捕まえあの男の前であの男が積み上げた物全てを灼き尽くす。

 

 そして黒のライダーは自分が呼び出された科学が散りばめられた工房を自らの宝具――闇夜の太陽船(メセケテット)から放出される太陽の熱波で一瞬で粉砕した。

 

 黒のライダーは知らないがこの工房は核戦争を念頭に置いた科学と魔術が混合された魔術師殺し――――衛宮切嗣が見れば本気で両手を上げて攻略不可と呆れる魔術的にも科学的にも強力な工房だったのだ。その工房はサーヴァントでさえ数分は押さえ込める物だ。

 

 それを軽い一撃で吹き飛ばした。なんと凄まじい一撃か――――。まさに最強のライダーである。

 

 そしてライダーは工房に開いた穴を通りどうやら何処かの深い地下であるとふみ階段を登る――――すると病院だった。

 

 そしてライダーは不穏な空気を感じとりそれが強い方に向かう。腹が立つ事にあの魔術師はそこそこやるらしい。

 

 何せサーヴァントとマスターの関係でラインを辿れば場所がわかるはずが深く掴めない。

 

 一瞬、辺り一体を吹き飛ばしてやろうかと……考えたが何か気配が妙だ。病院だろうに患者の面倒を見る人間が居ないのはどういうことだ?

 

 そして歩きナースがいるであろう部屋が無人なのを見て怪しさを募らせる。

 

 ライダーはキョロキョロと憤怒の形相のまま病院内を歩く。

 

 そして病室の一つを開き病室の床に巧妙に隠された魔方陣を見て更に激怒する。

 

「――――そうか。魂食いか。浅ましい老人よ。貴様は屍肉を貪るカラスにも劣る卑劣漢よ……」

 

 頭にきすぎて死にそうだ。――――どうやらあの老人は自分を召喚するのに病に伏せる人間を使ったらしい。

 

 これで誇りを語るか…………正に悪辣であり傲慢だ。

 

 これ程の愚か者がこの世におろうとは…………。

 

 どこだ。あの老人は……どこだ。ライダーは病院内を歩き、歩き、歩き、そして

 

 ――――――――そして古き友と同じ光を見た…………。

 

「――――貴方が……長がいった太陽の王オジマンディアス様ですか?」

 

 その少年は生気もなく身体も今にも砕けそうなほど弱かった。

 

 ライダーは思う。これで生きていると言えるのだろうか? と――――。

 

 だが瞳は暖かく気高さを感じる強き聖者の無垢な瞳だった。

 

 それはライダーの怒りを収め話を聞くにたる存在であると感じさせた。

 

「――その通りだ。私が太陽の王オジマンディアスだ。貴様は何者だ?」

 

「僕は伊勢三の一族の魔術師――――いや役に立てない死の病に伏せる僕に名乗る名も誇りもありません。太陽の王よ――僕の事は卑しい魔術師と御呼びください」

 

「――――――そうか。だが王に対する礼を知るものを卑しい者とは言わぬ。――伊勢三少年」

 

 長――あの老人だろう。その一族の者とは思えない聖者のような少年。

 

 まるで古き友――モーセの再臨とすら思えた。

 

 それは彼の心を一時とはいえ押さえるには足りる存在だった。

 

「――そうですか。ありがとうございます。王よ……ありがとうございます」

 

「よい。気にするでない。……が聞いていいだろうか? なに簡単な質問だ。余の為に時間を貸せ。――――伊勢三少年」

 

 ライダーは小さな子供に対し最大限の優しさを見せながらベットに横たわる少年の横のイスに座る。

 

「――何でしょうか?」

 

 伊勢少年は誠実な人格のようだ。ライダーの威圧感の中に覇気のある苛烈な瞳を人を裁定する絶対者の瞳を恐れず見つめている。

 

 常人であればできまい。そこに会ったのは魔術師として世界を平和に導く真理を心を持った気高い無垢な少年だからこそだ。

 

「うむ。問おう。貴様は伊勢三の家がこの聖杯大戦に勝利したらどのような願いを掲げると思う?」

 

 意味のない質問のようだが彼には重要だった。彼の気持ちを聞きたかった。

 

「はい。世界の平和を望むのです。魔術は弱き者や誰かが目をそらす悲しみや痛みを少しでも救うためにあるものです。だから聖杯を手に入れると長は言っておりました」

 

 ああ。憐れな――あの長はそのような事など考えていないだろう。

 

 だがこの少年は信じていた。魔術が世界を平和にすると自分の家の誇りを無垢に信じていた。

 

 

「――そうか。ならばあと一つ問おう。余が聖杯を手に入れ貴様にこう問うたとする。

 己の死に伏せる命の救済と世界の平和どちらを選ぶ?――と貴様はどう答える?」

 

「――――世界の平和を……」

 

「――――」

 

 ――――古き友よ。

 

 彼の頭に尊敬し恐れすら抱いた気高き聖者の背中が映った。

 そしてその答えが彼を戦場えと駆り立てた。

 

「そうか。そうか。気高き少年よ。貴様は――貴殿は聖者だ。

 貴殿の死に絶える命は余が聖杯を持って救おう。そして世界の真の平和は余の復活をもって成そう。

 喜べ少年――――この戦い伊勢三の勝利だ。伊勢三の誇りは貴殿の誇りは余が守ろう。それまで眠れ少年」

 

「――ああ。ありがとうございます。太陽の王よ。貴方の言葉が嬉しい。ありがとうございます――――」

 

 彼の為だ。あの老人の悪辣さには頭にくるが彼の為ならば我慢しよう。

 

 聖杯を掴もう。ここには余の威光を……余の神の光を与えるに相応しい少年がいる。

 

 さぁ。聖杯よ。余を待て。すぐいこう。

 

 ――――そして。マスターのラインを持って念話を行う。

 

(老人よ。……不愉快だが貴様をマスターと認めよう。共に戦おうではないか)

 

 そして老人の言葉が帰ってくる。

 

(いいだろう。契約はなった。聖杯を掴め。ライダー)

 

 当然だ。貴様の死はその後だ。

 

 そして黒のライダー陣営はなった。

 

 

 その後、己の威光の一欠片を冬木の町に放ちすぐ町の中に幾つもの全てを賭けなければ負けかねない猛者の気配と太陽の威光を持つものたちと王の気配があった。

 

 成る程。悪くはない。聖杯を賭けるに相応しい者達だ。

 

 先ずは……。

 

「貴様だ。――赤のライダーよ」

 

 初戦は同じライダーだ。

 

 そして――――。

 

「はははははっ! 赤のライダーよ。貴様は余の本気を見せるに相応しい英雄よ」

 

「貴様もな。黒のライダー。その覇気と王気さぞや名のある王に違いない」

 

 道路をぐちゃぐちゃに打ち砕き作られていた結界の端に来た瞬間、二人のライダーは立ち止まった。

 

 まぁ結界なんて気にする二人ではないが……このままでは埒があかないと踏んだのだ。

 

闇夜の太陽船(メセケテット)よ! あの男を屠れ!」

 

 最大の一撃で吹き飛ばす。

 

「はっ! 屠る? 言うじゃねーか! ならば!」

 

 赤のライダーは戦車から飛び下り槍を逆手に持ち振りかぶる投擲か――――そして恐らくあれはランサーのクラスで呼ばれていれば強い神秘を帯びた一撃になるに違いない。

 

 ――――そして

 

宙駆ける星の穂先(ディアトレコーン・アステール・ロンケーイ)!!!!」

 

 星の穂先と太陽の威光が空で激突し相討った。

 

「ほぅ。今のを相討ったか。赤のライダーよ。褒めてやろう」

 

「はっ! ぬかせ! 互いに本気でもないだろうに」

 

 その通りだ。全力ではあるが共に全開でもなかった。

 互いに殺す気で攻撃はしたが。

 

 これにより地味にウェイバー失神しオジマンディアスの獅子は余波で死んだ。

 

 互いにまだ全てを出していない。

 

 それは黒のライダーを喜ばせた。

 

「ここで全てをとして殺し会うのも悪くはないがまだ序盤……全てを出しきるには速かろう。なぁアキレウスよ……」

 

 星の穂先……その槍を使う大英雄など彼しかない。

 

「有名すぎるのも考えものだな……俺はお前がエジプトの王だとわかるぐらいなのに……これ程の力だとクフ王か? だがな…………いや、まぁいい良いぜ。見逃してやる」

 

「――――ふっ。不遜な……だがその逸話の通りならば仕方ない。今日は許そう。ではな」

 

 そして二人は戦いを止めた。多くの破壊の爪痕を残しながら――――。

 

 これは太陽の王の聖杯大戦――――その果てにあるものとは――――




まぁ序盤からクライマックスは嫌だしまぁ軽く戦ったってことにしたい。

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