デビルサバイバー 巫女と共に歩む男   作:北河静

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ちょっとばかりの戦闘シーンがあるので、ご了承を。
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Day before 3

悪魔について知り、ビシャモンテンの手により悪魔に対抗する為の力を手に入れて、はや三日。現在俺は、パソコンで、ここ最近で不可思議な事件が起こっていないかを調べている。

 

「………こうやって悪魔について知った状態で改めて目を通すと、不可解な事件が全部悪魔の仕業に見えてくるな……」

 

特に、目をひくのが、『連続吸血事件』だ。被害者は須らく首元に二つの小さな穴が空いており、干からびた状態で発見されている。この被害者の惨状から、ネット上では吸血鬼の仕業だと面白半分に騒いでいるが……正直、この事件だけはかなり高い確率で悪魔が関わっていると思う。もっとも確証なんぞは無く、ただの勘に過ぎないのだが。

 

「………この件に関してだけは、記憶に留めておくとして、そろそろ出掛けるとしますかねっと」

 

パソコンを閉じ、家を出る。現在時刻は夜の11時。以前までならこの時間にわざわざ出掛けるなんて、それこそコンビニに行くくらいだったのだが、今の俺はこの時間帯にこそ、やるべき事があるのだ。現在俺の服装は半袖のシャツにジャージといった動きやすい服装で、近くの広場に向かう。

 

 

歩くこと数分、街灯もろくに存在しない広場につく。ここならば多少派手に暴れても問題は無い。

 

「うっし、それじゃ今日も始めるとしますかねっと」

 

そう呟いた後、目を瞑り精神を集中する。……そしてほんの数秒もすれば、身体の内側からあの時と同じ感覚が身体を駆け巡る。それがある程度落ち着くのを待ってから、我流で身体を動かし始める。最初はネットで何かしらの武術の動きを真似ようかとも思ったのだが、どうせ付け焼刃にしかならないと考え直し、我流の喧嘩殺法で上昇した身体能力の慣らしを行うことにした。

身体能力に関しても、最初は上がりっぱなしかとも思っていたのだが、無意識に身体がセーブしているらしく、この身体を動かすのも、なるべく身体能力を高い状態で保つためにやっているというのも大きい。

 

「ふむ……我流で且つまだまだ粗があるが、素晴らしい素質があると見た。ふふ……偶には散歩というのも悪く無いものだ」

「ッ!!?だ、誰だッ!!?」

 

突然背後から聞こえてきた声に驚きつつも、その声の方向へ振り向く。そこにいたのは、金髪の老人。如何にも紳士というスーツ姿で、片手にステッキを握って体を支えていた。金髪はオールバックにしてあり、どこか凄みのある印象を感じさせる存在だった。

 

「おや、驚かせてしまったようだね。何、私はただの通りすがりの老人だ。気にしなくても良い」

「………生憎と、そんな禍々しい雰囲気を漂わせておきながらそんな事を言われても信用出来ねぇよ……」

 

老人へと言葉を返しながらも、戦闘態勢をとる。この老人、姿は人間にしか見えないが、その内側に渦巻く力の波動は人のそれを優に上回っている。………因みにこの気配察知も力の一端のようで、解放している間に限るが、相手の潜在的な力を感じ取ることが出来る。

 

「ふむ……?常人には全く感じ取れない程には力を隠していたのだが……ああ、成程。『覚醒』済みか。……それに微弱ではあるが、鬼神の加護も宿っているか。成程、面白い」

「………さっきから、何をブツブツと言ってやがる……?」

 

あまりにも不気味な老人の態度に思わず臨戦態勢を緩める。だが構えを解きかけた瞬間、老人が目の前まで近付いて来ていた。

 

「うぉおおぅ!?」

「そう素っ頓狂な声を上げることはないだろうに。君の稀有な才能を称えて、私からのプレゼントだ。喜んで受け取り給え」

「ぐっ…があああああッ!!?」

 

老人の手が俺の腕に添えられた瞬間、常軌を逸するような痛みが身体を駆け巡り、その場に蹲る。あまりの激痛に途切れそうになる意識を必死に繋ぎ止めながらも、老人を睨みつけるが、当の本人は微笑みながら、こちらの様子を観察しているように見える。

 

「ふむ、存外耐えるな。もうとっくに堕ちても可笑しくはないのだが」

 

目の前の老人が何か呟いているが、今の俺にはその内容を把握できる余裕が無かった。全身を駆け巡る激痛が更に激しくなってきているのだ。それこそ、自分の身体が作り替えられていると言われても容易く信じてしまいそうになるくらいには余裕が無い。

……こんなふうに思考を巡らせているのも、余計な事を考えて痛みを紛らわせる為の苦肉の策でしかない。

 

「このままでは埒が明かないな。折角の逸材を潰してしまうかも知れんが、まあその時はその時だろう」

「ガッ……アアアアアア!!?」

 

老人の手が再び触れると同時に、激痛が更に激しくなる。しかもそれだけではなく、精神まで何かに汚染サれテ来てイル。こうヤって思考するコとすら難しクなっキテている。コのマま精神まで喰らイつクさレてしマイそうだ。

………そんな考えがふと頭を過ぎった瞬間、意識がハッキリして来る。今俺は何を考えた……?諦める?アマネを助ける為の力を手に入れておいて、この程度の痛みで屈するだと?

 

「ふざ…けろボケがッ…!!アイツ助ける為にはよォ、ここで諦メる訳には……いカねぇだろォが!!」

 

 

そう吠え、気合を入れ直す。……ようやく気付いたが、この激痛の正体は、俺の身体の耐久力を超える力をあのジジイに流し込まれたせいだ。なら後はこの力を俺の支配下におけば、この激痛も止むはずだ。

 

 

 

「フフフ……見込み通りというべきか?まさかこの短時間で私の流し込んだ力を制御してしまうとはな」

「ハァ…ハァ…巫山戯ろ、クソジジイが……」

 

力を押さえ込もうとする事数十分。漸く身体から痛みが引いていった。目の前のジジイの言いぶりから、力の制御は出来ているようだ。

 

「ハァ……で?わざわざこんな事をしでかしたテメェは何なんだ?どうせ悪魔だろうが……」

「御名答。本来なら名を明かすことなど無いのだが、私の『洗礼』を乗り越えたのだ、教えてやろう」

 

そう言うなり、老人の背後にうっすらと像が現れる。その姿はまさしく『悪魔』としか言えない姿であった。

 

「『我が名は魔王ルシファー。魔界にて王の名を持つものなり』」

「……………マジ、かよ…」

 

正直あまりのビッグネームに声が出ない。つい最近まで神話なぞにひと欠片の興味も持っていなかった俺ですら知っている存在。そんな奴が接触してきた事に驚くと共に、何故接触してきたかが分からない。

 

「とはいえ、この姿ではルイ・サイファーと呼んでくれたまえ。親しみを込めて閣下でも構わないがな」

「あ、アハハ……」

 

背後に浮き出た幻像を消しながら、そんなふざけた事をほざくルシファー……いや、ルイ・サイファーだったが、正直俺からすれば苦笑いしか出来ない。

 

「それで?ルイ・サイファー閣下はなんでこんな所で何を?さっきは散歩だとか言ってましたけど」

 

………今更感が半端ないが、一応敬語で話し掛ける。少なくとも何でこんな所に居るかは聞き出しておきたいのだが……

 

「おや、律儀に私の言う事を実行に移すとは、随分と従順だな。……いや、生き残る為に私の機嫌を損ねないようにしているのか……益々興味深いな。……ああ済まない、何故此処に居るかだったかね?君の目の前に現れたのは全くの偶然なのだが、人間界に居る理由としては、近々面白い祭りが始まるのでな。その見学といったところだ」

「祭り……ですか」

「そう、祭りだ。何せこの東京、山手線の中で新たな魔王が産まれるのだから!!」

「……魔王、だって?」

 

ルイ・サイファーが発した《魔王》という言葉から想起されるのは、つい先日垣間見た悪魔同士の闘い。ジゴクテンを倒したあの薔薇の悪魔だった。……もし翔門会がこのことについて知っていたとすれば、彼等の崇める《主上》とやらも悪魔、下手をすれば山手線の中で産まれる魔王ということも考えられる。

 

「そう、その魔王の名は《ベルの王》。神によって、今はいくつかの存在に分かたれているが元は一つだった存在が、この場所で再び集結する。互いの力を求めてな」

「………それが、祭りの詳細ですか」

「その通りだ。あまり先の事を明かすのはよくは無いのだが、どうにも口が滑ってしまうな」

 

そう言いながら苦笑するルイ・サイファーだが、聞かされているこっちからすれば堪ったものじゃない。自分の住んでいる場所が悪魔達の王位争いの戦場になる、巫山戯るなと叫びたい所だが、目の前の存在に対してその様なことを言える程、肝は据わっていない。

それよりも重要なのは、翔門会の教祖は、間違いなくこの事実を知っているという事だ。しかも、ベルの王位争いに助力までしているのだろう。そうでなければ、わざわざ鬼神の1柱を倒してまで結界を不安定にさせる理由が見当たらない。恐らくではあるが、アマネの中に宿っている悪魔、もしくは翔門会が《主上》と崇められている存在がベルの王位争いに関係している悪魔である事はほぼ確実。そうでは無いとしても、何かしら関与する事は間違いない。……でもその前に一つ、目の前の存在に聞いておくべきことがある。

 

「………ここまで話してもらっておいて、何なんですが……何故貴方は俺の前に姿を見せたんですか?散歩とか言ってましたけど……それ、嘘ですよね?いや、もっと正確に言うのなら、散歩をしていたというのはたぶん真実。けれど通りすがりというのは嘘、おそらくですが俺のこのチカラを感じ取って近付いた………違いますかね?」

 

「フフフ……フハハハハハハハッ!!!素晴らしいなッ!!鬼神に見込まれる素質といい、私の魔力を御し切る事といい……本当に人間かね、君は?」

「……生憎と、正真正銘ただの人間ですよ。悪魔について知ってからまだ1週間も経っていないので」

「何だと……?これまで幾度となく目の当たりにしているが、やはり人の意志というのは侮れないものだ……」

「それで?まだ質問に答えてもらって無いんですが?」

「フフ、そう焦るな。……ああ、確かにそうだ。人の身で有りながら鬼神の加護や絶大な魔力を持ち合わせた君に興味が出てな、つい手を出してしまったのだ」

 

予想以上にあっさりと自白したルイ・サイファー。まあそんな愉快犯じみた考えだったのは、何となく予想出来ていたが、それ以上に気になったのが、ルイ・サイファーがもらした、俺の状態だった。鬼神の加護はまあビシャモンテンに力を解放してもらったことから、ある程度納得出来る。だが、目の前の存在が目をつけるほどの力が宿っていた事には、正直な所、驚きを隠せなかった。

 

「だが、そうだな……折角だ。君にこの祭りの行く末を見届けてもらうとしようか。あまり長居すると、良くない影響を与えかねない」

 

ま、それもまた一興ではあるがなどと呟いたルイ・サイファーは、懐から手の平に収まるサイズの箱型の何かを取り出し、こちらへと投げ渡してくる。

 

「うぉっと……これは、COMP?」

 

慌てて掴み調べると、それはCommunication Player、通称COMPと呼ばれているものだった。ゲーム機でありながらブラウザやメール機能等が備わっており、現代の学生なら、携帯の次ぐらいに持っている奴が多い代物だが、目の前の存在がこのような玩具を持っていることは、どう考えても可笑しい。

 

「なあ、こんなものを渡されて、どうしろって……」

[………プロテクトの解除を確認。《悪魔召喚プログラム》起動します]

「……は?」

 

COMPに向けていた視線をルイ・サイファーへと向け直した瞬間、COMPから音声が聞こえてきた。……悪魔召喚、プログラム……だと!!?

 

「では、これより祭りの前夜祭を始めよう。……私を失望させてくれるなよ?」

 

たった一言、ルイ・サイファーが言葉を残し、陽炎の如く姿を消す。

おそらく何処を探しても俺如きでは見つけられはしないので、仕方なくCOMPを開き、その画面へと目を落とす。

 

そこに書かれていたのは至極簡素な言葉だった。

 

[Peaceful days dead(平和な日々は終わりを告げた).Let's Survive(さぁ、生き残れ)]

 

その文を俺が読み上げると同時に、目の前の空間から()()()が現れる。

 

『ヨウヤク出テコレタ!!人間!!オレ、オマエ倒シテ自由ニナル!!』

 

目の前に現れたのは巨大な犬だった。赤い体毛、鋭い牙、そして人の言葉を話すことから、まさしく《怪物》と表現するに相応しい存在だった。

 

「いや、《悪魔》だったな……ったく、あのクソジジイ、何を考えていやがるんだか……」

 

……だが、その様な存在を目の前にしても、俺の心に一切の恐怖や動揺は存在しなかった。感覚が麻痺していると言えるのかも知れないが、そんな感覚じゃあ無い。……そう、目の前のこいつからは()()()()()()()()()()()。ビシャモンテンや薔薇の悪魔、ルイ・サイファーに比べてると、目の前の悪魔が少し大きな犬くらいにしか見えない。それに加えて、体の内側から力が湧いてくるのを感じる。それも、先ほどまで制御しようとしていた規模を遥かに上回るものがだ。しかしながら、それは特に気負うこともなく制御出来る。……これなら行けるか?

 

『ナニヲ笑ッテイル!!気ニイラナイ!!死ネ、人間!!』

「……悪いが、俺はこんな所で死ぬわけにはいかないのでな。圧倒させて貰うぞ……!!」

 

飛び掛って来た悪魔の噛み付きを横に動く事で避け、左手にCOMPを持ち、右で殴れるような体制を整える。だが、その瞬間、COMPから音声が流れてくる。

 

[ハーモナイザー、並びにアナライズ起動。アナライズ結果を画面へ表示します]

「は……?うぉっと!?アナライズ…って確か解析って意味だったよな?っていうことは…」

 

再び迫ってきた悪魔の牙を、今度はしゃがんで避けて、立ち上がる勢いを利用して後ろに飛び退き、COMPを開く。COMPの画面には、目の前の怪物と、それに関する情報の様なものが映されていた。

 

「魔獣ガルム……それがこいつの名前か?その横のは……って考えるのは後でいいっての。今の俺に出来るのはあの悪魔をぶん殴るだけだ!!」

 

改めて目の前の悪魔、ガルムに向き合う。ガルムは動かずに俺の方をじっと睨んでくる。……先程までの荒々しい行動とは打って変わって、こちらを観察するような仕草を見せている……やっぱりただの犬畜生じゃあないって事か。

 

『グルル……ニンゲン、オ前生意気ダ!!大人シク喰ワレロ!!』

「知るかよボケ。御託ほざいてないで掛かって来い、悪魔風情が。……それとも、ビビってんのか?」

 

右手でこっちに来るような仕草を加えて挑発する。目の前の悪魔は決して知能が高くはないだろう。そんな奴が挑発なんかされれば……

『フザケルナ、人間風情ガ!!』

 

当然、こうして我武者羅に飛び掛ってくる。こうして思考を放棄した相手なら、たとえ化物であっても相手にするのは容易い……ッ!!

 

「思考できる知性があっても所詮は犬畜生だな、こんな簡単に挑発に乗るとはな!!」

 

こっちに突っ込んでくるガルムに合わせて、右手に力を込める。その際、脳裏に技のイメージが浮かんでくる。これなら、いける……ッ!!

 

「《ライジングッ…アッパーァァァ!!》」

 

飛び込んで来るガルムの更に懐に飛び込み、跳躍しながらアッパーと膝蹴りを同時に繰り出す。その勢いは、まさしく弾丸と表現するに相応しい速度を持って、ガルムへと炸裂する。

 

『ギャアアアアアアア!!?』

 

ガルムからすれば、まさしく不意を突かれた一撃だろう。俺にしても、ここまでの打撃を悪魔であるガルムに与えられるとは思っていなかった。……もしかすると、これが《ハーモナイザー》の効力かも知れないが……倒せればそれでいいッ。

 

「……どうだ?犬っころ。俺の拳は?そこそこ効いたろ?」

『グ、グウウウ。仕方ナイ、コレモ《契約》ダ。我ガ名ハ魔獣ガルム。コンゴトモヨロシク……』

 

そんな言葉を残して、ガルムはその姿を消した。《契約》だのなんだの、よく分からないが取り敢えず何とかなったみたいで何よりだ。

 

「ふむ、あの程度の悪魔なら一撃で仕留めるか。予想より随分と優秀だな」

「うおっ!?お前……またいきなり現れやがって……いい加減にしろよ……!」

 

姿を消したと思っていたルイ・サイファーが再び現れ、俺の持っていたCOMPを操作している。……てかいつの間に抜き取りやがったこいつ。

 

「随分と遠慮が無くなったようで何よりだ。……ふむ、これで良し。では改めて受け取り給え、コレはもう君のものだ」

「……おう」

 

作業が終わったのか、再びCOMPを差し出してくる。……正直、不安しかないが、貰えるものは貰っておくとしよう。アナライズ機能などは悪魔と相対した際には役に立つだろうし。

 

「では、私はこれで失礼するとしよう。COMPの扱いに関しては、COMP内に保存してあるメールで確認したまえ」

「……一体貴方は何を考えているんだ?俺なんか、貴方にとっては路傍の石ころ同然だろうに」

「ふふふ……何故、か。そうだな……あるにはあるが、今の君には知る資格は無い」

「ハァ?」

 

その言葉と共にルイ・サイファーは姿を消し、声だけが辺りに響く。

 

『それを知りたければ、この祭りを生き延びることだ。そうすれば、また私達が出会う事も有るだろう』

 

………随分と勝手な事ばかり言うな。とはいえ、アマネに巣食う悪魔はほぼ確実に祭りとやらに絡んでくるだろう。ならば、嫌が応にも首を突っ込むしか無いということだ。

 

「……上等だ。どうせ踏み込まざるを得ないんだ。あの野郎をぶん殴ることも目標の一つにしておくか」

 

 

そう呟きながら、手元のCOMPに目を落とす。……取り敢えず、このCOMPについて調べる事から始めるとするか。




主人公、更なる強化と共に、閣下に目をつけられました。
次回は使役悪魔の軽い紹介とか諸々。
本格的に原作に入るのはあと2話位になると思います。
ではでは。
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