8:30 AM 表参道
周りの騒々しさに目を覚ます。昨日先輩達が言っていたシャワーが設置してあるとか言っていた場所から、谷川先輩の悲鳴にも似た金切り声が聞こえてくる。……大方、峯岸先輩達がうっかり女性陣の着替えでも覗いたんだろう。この状況下でラッキースケベが発生するとは、流石峯岸先輩と言う他無いな。
「先輩達は放っておいても解決するだろうし、今日はどうしようかね……」
先輩達と共に行動するのも良いが、宛もなくフラフラするのも良いだろう。俺の余命は今日の時点で1、先輩達も昨日ヴェンディゴを倒した事で余命が延び、昨日の時点で2、日を跨いだ現在では俺と同じ1になっているとの事だった。………こうまで余命が重なっていることを鑑みるに、明日は余程の出来事が待ち受けて居るのだろうが、先ずは今日1日を生き延びなければ話にならない。余命を変えることが出来るということは自分の行動次第で余命が減るということも有り得るのだ。
これからの行動には細心の注意を払わねば、思わぬ所で命を落とす事も考えられる。
「痛って〜……ソデコの奴、何も思いっきりぶん殴る事無いだろうが……確かにコッチが悪かったとはいえよ〜」
「おはようございます、アツロウ先輩。朝っぱらから災難でしたね」
「ん?ハヤトか。おはよ、しっかしお前は神経太いな〜。俺は悪魔が夢にまで出てきて殆ど寝れなかったのに、お前毛布にくるまって十秒くらいで寝付いてたぞ?」
「まあ昔から寝付きはいい方なんで。それに先輩達よりは悪魔との付き合い長いですし」
右頬を赤く腫らして戻ってきたアツロウ先輩とたわいない話を続ける。峯岸先輩が戻って来てないが、谷川先輩のご機嫌取りでもしているんだろう。御苦労な事だとは思うが、あの人が原因でラッキースケベが発動しているのだろうから、自業自得なのだが、それは言わぬが花というものだ。
「そういやアツロウ先輩。今日の分のラプラスメールってもう届いているんですか?」
「……ああ。ちょっとアレな内容だから、見るなら覚悟決めてくれ」
そう言いながらCOMPをこちらに手渡してくる。その画面にはすでにラプラスメールが表示されており、その内容は、アツロウ先輩が言っていた通り衝撃的な内容だった。
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From:時の観測者
Subject:ラプラスメール
おはヨうごザいます。
本日のニュースをぉ伝えしマす。
①17時頃 港区 芝公園 にて
怪物 が 【出現】
翔門会 の 活躍 で 犠牲者 ゼロ
②18時頃 豊島区 池袋 にて
怪物 による 【死傷事件】
犠牲者 は 50名 以上
③全日 怪物 の 目撃 が 多数
【悪魔】 と 暫定的 に 呼称
みなサマ良い1日■
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「………これはまた、随分と落差がある内容だことで」
片や犠牲者ゼロ、片や50名以上の犠牲者が出るとは、なんともまあ世紀末染みて来ていないか?まあ翔門会が関わっているという事はつまり、アマネが出張るという事だ。鬼神を打ち倒すような悪魔を内に宿している以上、そこらの木っ端悪魔程度なら歯牙にも欠けないだろう。
それよりも気になるのは、ラプラスメールの最後の項目。怪物の呼称が悪魔になるということだった。呼称が暫定的だとしてもそれが決まるという事は、【悪魔】という呼称を使う者が一定数以上存在するという事である。それはつまり、悪魔について知る人物が増えた………そう、【悪魔使い】が増え始めていることを示唆しているように思える。
……これからは悪魔だけではなく、悪魔使いや一般人の目も気にしながら動く必要があるかも知れないな。
「それで、アツロウ先輩達は今日はどう動くつもりなんですか?」
「昨日と同じように出口を探すつもりだけど、それと並行して、この封鎖を解く方法も模索していくつもりだ」
「封鎖を……ですか?」
……確かに、出口が見つからない以上、根本的な原因を排除するしか、封鎖を終わらせる方法は無い。………だが、それは難しいと言わざるを得ないだろう。
俺はこの事実を先輩達に伝えるつもりは無いし、この封鎖内にいる以上、いつかは先輩達の耳に入ることだろう。それまでに魔王候補の悪魔とも渡り合える力をつけなければ……
「──────成程、分かりました。俺も先輩達に付き合います。ラプラスメールを見る限り、人手があって困る事は無いでしょうし」
「ホントか!!?いや〜お前が居れば百人力だぜ!!」
「あんまり頼りにし過ぎないでくださいでくださいよ?俺も無敵って訳じゃ無いんですから」
……実際今の構成だと、物理属性と氷結属性を無効化する悪魔が出てきたら手も足も出ないからな。悪魔を倒すことで新たなスキルが目覚めるという可能性も無い。先輩達は悪魔を倒す事で新たなスキルを入手出来る『スキルクラック』というものがCOMPの機能の一つにあるらしい。………こう考えると、先輩達のCOMPの方が性能が良いんじゃないか?余命機能しかり、悪魔オークションしかり、スキルクラックしかり。あのクソジジイ、型落ち品を押し付けたんじゃないだろうな………?強力な悪魔と契約出来ているから、それの代償と言われれば、まだ納得出来るのだが。
「わーってるって!!じゃあカズヤ達にその事伝えてくるから、ハヤトはここ出る準備しといてくれ!!」
そう言うなり、風の様に峯岸先輩の方へと向かっていったアツロウ先輩。……相変わらず元気満点な人だ。準備としては、バイクを一度自宅に置いてくるのと、その際にカ○リーメイトの様なお手軽に栄養補給出来る携行食と水。後は怪我などに備えて応急キットでも用意すれば安心だろう。
11:30 AM 池袋
バイクを自宅に置いた後、強化された身体能力にモノをいわせ、行きよりも短時間で戻ってきた俺は、ジンさんとハルさんに別れを告げ、出口を探すこと凡そ3時間。谷川先輩の提案でお寺なら悪魔も寄り付かないだろうからそこで少し休憩しようと提案があったので、現在地から1番近い衛国寺に向かうことになったのが凡そ10分前。現在俺達の目の前に広がっているのは、悪魔で溢れかえっている衛国寺の境内であった。……まあそもそも神も天使も仏もすべて呼び方が違うだけで悪魔とそう変わらないらしいから、この光景を見ても大して驚きはしないが。
「うわ〜……悪魔だらけじゃん。神社やお寺って神聖な場所だから悪魔は入って来れないと思ってたのに〜………」
「まあ、神様も悪魔も人の身じゃあ理解出来ない存在ですし、案外本質はそう変わらないんじゃ無いですか?……そんなことより、こっちの存在に気付かれてますよ、先輩方。さっさと戦う準備取ってください……!!」
谷川先輩の心底嫌そうな声に答えつつもCOMPを起動させてフロストエースを喚び出す。集まっている悪魔たちはそこそこの数が集まっており、先輩達だけでは処理しきれないだろう。
先輩達もそれぞれCOMPを起動させて、それぞれ悪魔を召喚している。峯岸先輩はフレイミーズを、アツロウ先輩はジャックランタン、谷川先輩はシルキーを喚び出し、戦闘準備を整えていた。
そんな事を考えていると、俺達の反対側からスーツ姿の男性とジャージ姿の青年が境内へと入ってくるのが見えた。……悪魔に対して怯えているようには見えないので、ほぼ間違いなく悪魔を知っている人物、もっと穿った言い方をすれば、【悪魔使い】なのだろう。
「あれは──カイドーに……ホンダさん!?どうしてここに……!?」
「そんなもんあの2人の態度見れば分かるでしょ──あの目は、間違いなく獲物を狩りに来てる目です。……悪魔使いですよ、あの2人」
目線の先の2人も悪魔を喚び出し、近くにいる悪魔を次々に倒していっている。カイドーという青年は俺に似たタイプの様で、仲魔であるゴズキと共に悪魔に殴りかかっている。そんな彼をサポートしているのがホンダと呼ばれた男性がキクリヒメの力によって悪魔の中に突っ込んでいくカイドーをサポートしている。その連携は、何処か拙いながらもなかなか様になっていた。
「おっと、俺もそろそろ動かねぇとな……ッとォ!!」
近付いてきたガスキンの首を手刀で刎ね飛ばし、離れたところにいたトウビョウをナイフを投げて殺す。そうして俺が悪魔を処理している間に、フロストエースはカイドーが暴れている中心地近くで悪魔を殴り飛ばしている。……アナライズ結果をみるにカイドーの
先輩達も拙いながらも互いに攻撃の隙を補うように悪魔との戦闘を行っている。峯岸先輩が先陣を切り、アツロウ先輩が峯岸先輩が倒し漏らした悪魔を倒し、谷川先輩が2人の傷を癒す。あっちの2人ほど個々の
それなりの力がある悪魔使い6人の前では、数十体もいる悪魔もあっという間に姿を消していき、30分も経たないうちに境内にいた悪魔の大群は跡形も無く消え去ってしまった。
カイドーもホンダも悪魔が居なくなるとさっさと居なくなり、境内には俺達4人とそれぞれが使役している悪魔しか居なくなった。
「あ、あ〜ビックリした〜!!境内に悪魔が居たのにも驚いたけど、カイドーやホンダさんが悪魔使いになってたなんて知らなかったよ~!!!」
「そういや、気になってたんですけど、あの2人知り合いですか?カイドーとかいう奴はまだしもホンダ……でしたっけ?あんな人と先輩達の接点が見えないんですけど」
先ほどから少しばかり気になっていたことについて先輩達に尋ねる。カイドーだかは卒業した先輩だとかで納得出来ないこともないが、流石にホンダとかいうサラリーマンとの繋がりが一切見えない。もしかすると、峯岸先輩の従兄弟であるナオヤの知り合いという線もあるにはあるが、その可能性は限りなく低いだろう。あの浮世離れした雰囲気を漂わせていたあの男と、どう見たって一般のサラリーマンだと思われるホンダとに共通点が見えない。
「ホンダさんは俺達と同じ封鎖に巻き込まれた人だよ。首都高から脱出しようと思っていた時に出会ったんだ。なかなか気の良い人だったよ」
「カイドーは【渋谷ダイモンズ】っていうチームのトップで、ナオヤさんを探してもらうようにに頼んでたんだ………正直、悪魔使いになっているなんて思わなかったけどな」
俺の疑問に峯岸先輩とアツロウ先輩が順番に答えてくれた。要はこの封鎖が始まってから出会った人達だという事か。ならあのようなサラリーマンと知り合いだというのも納得出来る。
「成程……それで、この後どうします?悪魔共を追い払ったから、暫くは休めそうですけど、時間が経つにつれてまた集まってくると思いますよ?」
「それはイヤー!!カズヤ、さっさとここ離れよ!ね!?」
「お、おいユズ?!ちょ、まっ……!!」
有無を言わさず谷川先輩に連れて行かれる峯岸先輩。そしてそれを眺める俺とアツロウ先輩。……あれ?置いてかれた?
「はは……谷川先輩、あれ無意識でやってるんですかね?」
「……多分な、後2、3分もすれば自分が何してるか気付いて慌ててカズヤから離れるだろ」
そんな事を言ってるそばから、谷川先輩の短い悲鳴が聞こえて来た。
……やれやれだぜ、とでも言うべきかね?
「……苦労してますね、アツロウ先輩」
「言うなよ……悲しくなってくるだろ……」
男2人で奇妙な敗北感に打ちひしがれつつも、先行した2人を追いかけるのであった。
遅くなった理由は色々あるのですが、ここでは割愛。なるべく更新速度を上げて、早めに終わらせたい。