戦姫絶唱シンフォギアGinga S&GX    作:ベンジャー

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2Eve 『その名はビクトリー』

地底世界……ビクトリアン、その遥か昔、かつて「ビクトリーランサー」と呼ばれる神秘のアイテムを巡ってそれを代々受け継ぐ正式な所持者がいたにも関わらず同族間での争いが勃発したことがあった。

 

なぜそんなことになったのかは不明だがその時のビクトリーランサーの所持者はビクトリーランサーを渡さないため、また自分の子が争いに巻きこまれないようにビクトリアンの女王に頼みビクトリーランサーとその子を未来の世界へと送るように頼んだのだ。

 

その「子」とは「諸星 零無」その人であり、彼は女王の伝言とビクトリーランサーと共に未来の世界に送られそこでナスターシャに引き取られたのである。

 

そして今、零無は夢の中で黒い巨人とシェパードンが戦う夢を見るようになり、それは近い将来ビクトリーランサーを使うことになることを物語っているのだと……マリアは零無に説明した。

 

「まぁ、元々はマムが私に預けていたんだけど……生憎今は彼等に渡してるからあなたに渡すことはできないけどれどね。 でもその内返してくれると思うわ。 その時にビクトリーランサーはあなたに渡すわ」

「……」

 

マリアの話を聞いた零無は目を丸くして唖然としており、切歌と調もこの話は始めて聞いたのかどこか驚いたような表情を見せていた。

 

「……えっ、なに? じゃあ俺、地底人なの?」

 

零無の問いかけに対し、マリアは静かにコクッと頷いた。

 

「……マリア……」

「なに?」

 

どこか暗そうな表情を浮かべる零無に対し、マリアは「まぁ、こんなこと言われても困惑するでしょうね」と思い、できる限りフォローはしようと思う彼女だったのだが……。

 

「俺、目にバンソウコなんて張ってないぞ!!」

「はっ?」

「前にあのグレイって奴に聞いたことあるんだよ……地底人って目にバンソウコみたいなの張ってるって」

「零無、それ多分違う地底人デス」

 

そこで調から「っていうか気にするところそこなの?」とツッコミを入れられると零無は「いや、だって覚えてないし……地底人っていうのは受け入れるけどそこまで気にすることじゃない」と言いきり、マリア、切歌、調の3人から「割り切るの早いな!!」というツッコミを受けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから3か月後、超常災害対策機動タスクフォース『S.O.N.G.』の本部となる潜水艦にて2人のオペレーターである「藤尭 朔也」と「友里 あおい」はコーヒーを飲みながらまったりとした様子で話をしていた。

 

ちなみにコウマは一度海外にいる両親の元に一度帰り、事情を話してしばらくの間は日本にいることになった。

 

尚、コウマの両親はウルトラマンのことについてはコウマが既に話しているため知っている模様だった。

 

「あのシャトルの一件以来、怪獣も出現しないし……ランくんが言っていたエタルガーって言うのも一向に現れない。 はぁ、このまま定年まで給料貰えればいいんだけどな……」

 

なんてフラグまっしぐらな台詞を朔也が言っていると突然のアラートが鳴り、調べて見ると横浜付近に謎の反応を感知……しかし反応はすぐにロストしてしまい、2人はすぐに司令である弦十郎に連絡を入れるのだった。

 

そして同じころ……黒いフードを被った少女らしき人物が何者かから必死になって逃げており、彼女は電話ボックスに身を隠すと手に持っている箱を大事そうに握りしめた。

 

(ドヴェルグ・ダインの遺産……全てが手遅れになる前に、この遺産を届けることが僕ができる償い……)

 

少女は急いでそこから逃げだそうとしたその時、彼女の目の前に突然鳥の頭を持った宇宙人……ガッツ星人 ボルストが姿を現し、少女は「わっ!?」という声をあげてその場に尻もちをついてしまう。

 

『ったく、エクセラーの奴、自分が弱いスパークドールズを俺様に渡した癖に文句垂れやがって!! まあいい、この鬱憤は貴様を痛めつけて晴らさせて貰うとしよう。 勿論そいつを奪ってからだがな』

 

ボルストは両手からビーム状の鞭のようなものを放つと少女を拘束して動きを封じ、少女「くあっ!?」と苦しそうな声をあげるが……それでも少女はドヴェルグ・ダインの遺産と呼ばれる箱を決して手放そうとはしなかった。

 

『往生際が悪いぞ小娘!! ってんっ? こいつ小娘で合ってんのか? まあいいかなんでも。 さっさとそれを手放せ!!』

「い、嫌だ……!?」

 

そんな時のことだ、突然ボルストの右方向から誰かが強烈な跳び蹴りを喰らわせて、蹴りを喰らったボルストは少女の拘束を解き、ボルストは地面を転がって倒れこむ。

 

『ぐっ、誰だァ!!?』

「お前こそなんだ! こんな小さな子供に……!! それでも男か!!」

『なんだと?』

 

ボルストを蹴り飛ばしたのは1人の青年であり、ボルストは先ほどの青年の言葉が癪に触ったのか苛立った様子で青年に向かって殴り掛かって来るが青年はボルストの拳を受け止めてボルストの腹部に「これでもか!」と言うくらい何度も何度もパンチを喰らわせる。

 

「オラオラオラオラ!! ウォラァ!!」

『ぐはああああ!!!?』

 

最後に強烈なパンチをボルストは顔面に喰らって大きく吹き飛ばされ、青年は倒れこんでいる少女の手を掴むと「行くぞ!!」と言ってその場から素早く走り去ってしまう。

 

『ぐっ、クソが!! この宇宙最強のボルストがあんな小僧に遅れを取るとは……許さん!! ってもういないだとぉ!?』

 

ボルストが立ち上がった時には既に周りには誰もおらず、ボルストは苛立ちのあまり手から光弾を幾つも放って「くそぉ!!」と叫びながら周りにあるものを八つ当たりで手あたり次第破壊するのだった。

 

それからボルストから逃げることに成功した青年と少女はというと……青年はボルストが追いかけて来ていないことを確認すると青年は少女の恰好を見て少し戸惑ったが「怪我ねえか?」と尋ねた。

 

「あっ、はい、助けて頂きありがとうございました!」

「あぁ、気にしなくていい。 最近は変なのが多いからな、気をつけて帰れよ」

「えっと、あの……なにかお礼を!」

「それは遠慮させて貰う、ただ子供を痛めつけてるあの焼き鳥野郎がウザかったからぶっ飛ばしただけだし」

 

そう言って青年はその場から立ち去ろうとするが少女はせめて名前だけでも教えて欲しいと言い、青年は「まぁ、それくらいなら」と言って少女に向かって自分の名前を教えた。

 

「俺の名前はカイト……。 早橋(はやばし) カイトだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、リディアン音楽院の通学路にて……。

 

「お前、何時の間にバイクの免許なんて取ったんだよ」

「良いだろー? 彼女をバイクで学校に送り届ける彼氏って♪」

 

コウマが「バイクで学校の校門前まで送って行く」と言ってクリスを後ろに乗せてバイクを走らせており、クリスは少し頬を赤くして「誰が彼女だ!」とコウマに向かって怒鳴りあげる。

 

「いや、彼女だろ……一応俺たち付き合ってんだし……。 それに昨日の夜だって……」

「だぁー!! 朝から変なこと言うなぁ!!////」

 

顔を真っ赤にしてコウマの頭を軽くポカポカ叩くクリスだが、コウマはクスクスと笑みを浮かべるのだった。

 

そんな時、コウマが響達が通学している姿が目に止まり、挨拶をしようと思い彼女たちの元へと一度バイクを停めると「よぉ!」と響達に声をかけた。

 

「あっ! コウマくん! それにクリースちゃーん♪」

 

するといきなり響がクリスに向かって抱きつこうとしたが、クリスは鞄を響に叩き付けて彼女が抱きついてくるのを阻止。

 

そしてクリスは不満そうな顔で「あたしは年上でそれに先輩!!」と響に向かって注意し、響や未来の後ろの方にいる制服を着た切歌や調を見ながら「こいつ等の前に示しがつかねえだろ」と不満を口にする。

 

また切歌や調も響達とは今丁度合流したらしく、未来は2人に向かって「おはよう、切歌ちゃん、調ちゃん」と挨拶し切歌は元気よく「おはようございますデス!!」と挨拶し、調はどこかぎこちない感じで「おはよう、ございます」と頭をペコリと下げて挨拶した。

 

「熱いのに相変わらずね」

 

未来が切歌と調を見てそう呟くと響は切歌と調の2人が手を繋いでいることに気付くと響も未来と同じように「いやぁー、熱いのに相変わらずだね」と言われ、それを指摘されると切歌が言うには「調の手はひんやりしていて気持ちがいいからついつい繋ぎたくなるんデスよ」とのこと。

 

「そう言う切ちゃんだってプニっとした二の腕もひんやりしてて癖になる。 ちなみにこれの第一発見者は零無」

 

コウマはその話を聞いて「あいつが切歌の二の腕プニプニしてんのか」と思うと笑いを堪えずにはいられず、口元を手で押さえこむ。

 

「あいつ最初の頃クールキャラっぽかったのになぁ……」

「零無は元々ポンコツデスよ」

 

切歌からも零無に対してのこの言われよう……、まあ、フォローできないのでどうしうようもないのだが。

 

「っていうかそれ、本当なの!?」

 

すると未来が響の二の腕をプニっと握り始め、響は「やぁー!! やめて止めてやめて止めてやめて止めて!」と叫びながらもどこか嬉しそうにしており、それを見たクリスは顔を真っ赤にして鞄で横一閃に振るって響を吹き飛ばしたのだった。

 

「そういうことは家でやれ……////」

「じゃあ帰ったら楽しみにしとけよクリス」

 

ニヤっとした笑みを浮かべるコウマに気づいたクリスは彼の言った言葉の意味を瞬時に理解し、またもはや顔を真っ赤にして「このバカ……///」と顔を俯かせるのだった。

 

「こっちも朝から熱いデスね」

「クリスもあながち嫌そうではないのがね……」

「うるせえぞお前等2人!!」

 

クリスは切歌と未来に怒鳴り、彼女は「もうここで降ろしてくれ」とコウマに言った後、彼女はそそくさとその場から逃げるように学校へと向かって行くのだった。

 

「んじゃ、俺も行くかな」

「うん、じゃあまったねー! コウマくん!」

 

コウマはバイクを走らせてその場を去って行った。

 

一方同じころ……零無はというとランと一緒に2人で公園のベンチに座っており、零無はかつて共に戦ったウルトラマンゼロであるランと色んなことを話しあっていた。

 

「へぇ、お前が本当は地底人とはね……」

「あぁ、それでこれがマリアから渡された物なんだが……」

 

零無は服の内ポケットにしまってあったビクトリーランサーと……ビクトリウムの石で作られたというペンダントを取り出してそれをランに見せるとランは「確かになにか強いエネルギーを感じる」と答え、零無はやはりこれを使うことで恐らくはあの黒いウルトラマンに変身することができるのだと思い、ジッとビクトリーランサーを見つめた。

 

「そう言えば、俺はスパークドールズになりながらも、お前がダークライブしてた時……お前は心を失うようなことが無かったのを覚えてる。 子供や響を助けようとしたりしてたしな。 あれはお前がビクトリアンだったからなのか?」

「さぁ、俺には分からないけど……そう言えばべリアルも元気なのか?」

 

零無からそう尋ねられたランはどことなく困ったかのような表情を浮かべたが……ランはすぐにべリアルは本来、自分の宿敵であることを零無に話した。

 

「えっ、でも……べリアルもウルトラマンなんだろ?」

「あいつは俺の故郷……光の国で唯一、悪に堕ちたウルトラマンだ。 今はなんか別の世界で怪獣ハントやってるらしいがな」

「そうなのか……なんか、少し残念だな」

 

零無は一度死にかけて……命をゼロとセレナ……そしてべリアルにも救われ、マリア達を止めるために力を貸してくれた。

 

そのため零無はゼロは勿論、べリアルにも恩義を感じており、そのためランから本来べリアルが敵であることを知った零無は少し複雑な心情だったのだ。

 

しかし、零無は何気に公園の時計をふっと見てみると既に夕方の5時……それを見た零無は「やばい、そろそろ行かないと!!」と言ってベンチから立ち上がってランに別れの挨拶をした後、急いでその場から走り去ろうとする。

 

「なんかあんのか?」

「今日、マリアと風鳴 翼のコラボユニットが復活するんだよ! それをみんなで応援する約束してるんだ!」

「そうか。 んじゃぁ気をつけて帰れよ」

 

零無は「あぁ」とランに返事をした後、彼はそのまま約束の場所へと急いで走って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんでもってその約束の場所=コウマとクリスが住んでる家。

 

テーブルにはお菓子やらなんやらと食べ物が並べられており、クリスは不機嫌そうな顔をして「どうしてあたし達んとこなんだ!?」と若干不満げに響達に向かって叫ぶ。

 

「すいません、急に押しかけてしまいました」

 

響や未来のクラスメートの1人である詩織がいきなり家に押しかけて来てしまったことを謝罪し、 同じく響や未来と同じクラスメートの創世も「キャリティドッグフェスの中継をみんなで楽しむにはこうするしかない訳でして……」と同じくクリスに向かって謝罪する。

 

「まぁ、コウマとクリスの愛の巣に勝手に押しかけたんだからそりゃ怒るのも当z……」

 

とそこで零無が言いきる前にクリスに顔面パンチを喰らい、拳を叩き込まれた零無は両手で顔を押さえて「うぐおおおおお!!?」と苦痛の声をあげその場に倒れこんで転がりまわった。

 

「だ、だ、誰の家が愛の巣だコラァ!! 変なこと言うんならぶん殴るぞ!!」

「もう殴ってるじゃねえか」

 

顔を赤くして怒鳴るクリスに対し、痛みでまともに声をあげられない零無に代わってツッコミを入れるコウマ。

 

そんなクリスに響は「まぁまぁ落ち着いて」とクリスを一度落ち着かせる。

 

「まぁ、頼れる先輩ってことで! それにやっと自分の夢を追いかけられるようになった翼さんのステージだよ!」

「……みんなで応援、しない訳にはいかないよな!」

 

響の話を聞き、クリスも快くみんながここにいることを承諾し、未来も響に続くように「そしてもう1人」と呟くと切歌と調もどこかウキウキした様子でテレビ画面を見つめる。

 

「マリア……」

「歌姫のコラボユニット、復活デス!」

 

しかし、それもそうだが先ず1つ、それよりも気になることが1つだけ零無とコウマにはあった……それは……。

 

「俺たち、場違いじゃね?」

「周り女ばっかだし、目のやり場に困るんだよな……」

「「主にクリスと切歌のな」」

 

コウマや零無の言う通り、この中だと確かに切歌とクリスが1番露出度は高めであり、切歌に至っては若干ブラらしき物まで見えており、正直言って少しばかり居心地が悪いと感じてしまう2人。

 

しかしクリスも切歌もあんまり気にした様子がないのはなぜだろうか……多分2人ともワザとやっているのではないだろうが……というか他のみんなもなぜそのことにツッコまないのか謎で仕方がなかった。

 

だがこのまま考えても仕方がないし……ここは大人しくみんなと一緒にテレビを見て翼とマリアを応援しようと思ったのだが……コウマも零無も、一応は釘は刺しておこうと思い互いに胸倉を掴み合い……。

 

「「……手ぇ出したらブチのめすぞ」」

 

とお互い睨み合って言い放つと2人は互いの手を離して椅子に座ってテレビ画面を見つめる。

 

「零無~。 どうせなら膝枕してあげてもいいデスよ~?」

 

そんな零無の様子に気づいてか切歌がニシシっと笑みを浮かべ、てっきり零無は慌てるかなにかのリアクションを見してくれると期待したのだが……切歌は予想は大きく外れ、零無は切歌の右隣に座るとそのままスポンっと切歌の方に倒れて来て頭を彼女の膝の上に乗せたのだ。

 

「なっ……!? なにしてるデスか零無!?」

 

顔を真っ赤にして慌てふためく切歌だが零無は「お前が膝枕してもいいって言ったんだろ?」と悪戯っ子のような笑みを浮かべ、まさか自分が慌てふためく結果になるとは思ってもいなかった彼女は悔しそうに顔を俯かせるのだった。

 

「あっ、これ良いな……なんな眠くなりそう」

「どれどれ」

 

零無が切歌の膝枕の感想を言うとそれを聞いて気になった調が左側が空いていたため彼女もまた零無と同じように切歌の方へと倒れて頭を切歌の膝に置くと彼女は目を輝かせて「これは癖になりそう」と零無と調は2人揃ってウトウトし始める。

 

「わぁ!? ちょっと調まで!? くすぐったいデスよぉ!?」

「ってちょっと! 2人とも寝ちゃダメよ」

「切歌ちゃんモテモテね、まるでハーレムアニメの主人公じゃない」

 

ウトウトし始めた零無と調に声をかけて注意する未来、そしてそんな今の切歌の状態をハーレムアニメの主人公に例えるのは未来や響と同じクラスメートの弓美であり、そんな弓美の発言にコウマが「どこに男と女にモテる主人公がいる」とツッコミを入れた。

 

そしてそんな2人を切歌は叩き起こして起き上がらせ、テレビ画面を見ると丁度翼とマリアがデュエット曲である「星天ギャラクシィクロス」を歌い、歌い終わった頃には弓美が大はしゃぎしていた。

 

「うははは~!! こんな2人と友達が世界を救ったなんてまるでアニメだねぇ!」

「あぁ、うん……ホントだよ」

 

弓美の言葉に対し響は苦笑い地味に言うが……。

 

「月の落下とフロンティアの浮上に関する事件を収束させるため、マリアは生贄とされてしまったデス」

「大人たちの体裁を守るためにアイドルを……文字通り偶像を強いられるなんて……」

 

しかし、今のマリアの現状を見てみると改めて今彼女が置かれている状況に調と切歌は辛そうな表情を見せるが……そんな時、未来が2人に向かって「そうじゃないよ」と言ってきたのだ。

 

「マリアさんが守ってるのはきっと誰もが笑っていられる日常なんだと思う……」

 

笑みを浮かべて語る未来の言葉に、切歌と調は顔を見合わせる。

 

「そうデスね」

「だからこそ、私たちがマリアを応援しないと!」

「そうだな……よし、じゃあマリアを応援するために、勿論翼も応援するためにお前等これ付けろ!」

 

零無がそう言って立ち上がり、調と切歌にある物を渡して身に着けさせたのだが……その渡した物というのが……。

 

「いやぁー、すっかりこれ持ってきたの忘れてたよ。 まだあの2人出番あるんだよな?」

「なんデスか、零無……コレ」

 

マリアや翼がプリントされたうちわにTシャツにタオル、さらにはペンライトに「翼もマリアも頑張れ!」と書かれた鉢巻、その上2人をデフォルメしたかのようなキーホルダーといったアイドル応援グッズだったのだ。

 

しかも切歌と調だけでなく人数分ある上にこれ全部零無の手作りらしい。

 

「起用だなオイ!!」

「ここまでしたら翼さんもマリアさんも喜ぶと思うぞ」

 

クリスが最初にツッコミを入れ、コウマも苦笑しながらだが割と出来がいいので翼もマリアも零無がここまでしてくれて応援してくれるなら嬉しいだろうと思い、取りあえずうちわだけ貰っておくことにした。

 

その頃……別の場所では黄色い服を着た女性……「レイア・ダラーヒム」がチブルスパークと1体のスパークドールズを手に持っており、チブルスパークにスパークドールズをリードさせる。

 

「私に地味は似合わない……。 だから派手にやらせて貰う」

『モンスライブ! キングジョー!』

 

するとレイアは「両腕」が銃になっている金色のロボット、「宇宙ロボット キングジョー ダブルカスタム」へと変身した。

 

本来、このキングジョーはダブルカスタムではなく右腕に銃「ペタ二ウムランチャー」を装備した「キングジョー カスタム」なのだがレイアの戦い方の性質上、ダブルカスタムへと変化したのである。

 

そしてキングジョーは両腕のペタ二ウムランチャーから「コイン」の弾丸を幾つも発射して街を破壊し、大火事を起こす。

 

その時点で既に派手にやったのだから当然S.O.N.G.がすぐに感知しない訳がなく、すぐに弦十郎やランからクリスや響、コウマに零無へと連絡が入った。

 

『第七区域に大規模な火災がロボットによって発生している! 消防活動が困難なため君たちに応援要請がかかっている』

『その間、あのロボット……キングジョーはコウマか零無のどちらか1人がどうにかして足止めしろ。 もう1人はライブしてる奴が現れたら拘束、尋問して敵の正体を探るんだ』

「分かりました!」

「「ガレット!!」」

 

響と零無とコウマが返事をし、クリスは無言で頷くと4人は立ち上がって現場に行こうとする。

 

「響……」

「大丈夫! 人助けだから!!」

 

不安そうな未来に対して響はそう言い放ち、そこで調と切歌も立ち上がる「私たちも!」と2人は言うがクリスは「2人は留守番だ!」と引き止められてしまう。

 

「リンカーも無いのに2人に出撃なんてさせないからな!」

 

クリスはそれだけを言うと響やコウマと一緒に外へと飛び出し、2人は頬を膨らませて拗ねるがそれを見た零無が頭にポンっと手を置く。

 

「俺がお前等2人の分まで頑張ってくるから、ここで待っててくれ。 いいな?」

「……はい、デス……」

「うん……」

 

零無に言われてもまだ不満げな表情を崩さない調と切歌だが、取りあえず零無も急いで家を出て現場へと向かって行くことに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じころ、マリアが護衛の男性2人と一緒に様々な衣装がマネキンに着せられている部屋を歩いていると窓や隙間などがないにも関わらずなぜか風が吹き抜けてきたのだ。

 

「風……? 誰かいるの!?」

 

マリアと護衛の2人は辺りを警戒体制を取る。

 

「司法取引と情報操作によって仕立て上げられたフロンティア事変の汚れた英雄。 マリア・カデンツァヴナ・イヴ」

「何者だ!?」

 

するとその時、護衛の1人の目の前に突然緑の服を着た女性……「ファラ・スユーフ」が現れ、なんといきなり護衛に向かって口付けをしたのだ。

 

だが、口付けをされた護衛は何かを吸い取られるようにもがき苦しみ、もう1人の護衛が銃を取り出して「離れろ!!」とファラに向けるが……。

 

既に口付けをされた護衛は肌や髪の色が白くなって倒れ……死亡した。

 

それを見たもう1人の護衛はファラに向かって発砲するがスカートをなびかせて緑の風を起こすと銃弾を弾き、銃弾はその護衛に全て直撃し、最後の一発が頭に直撃して死亡した。

 

「纏うべきシンフォギアを持たぬお前に用はない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、第七区域ではキングジョーが街を破壊しながらもあの時、ボルストが襲った少女をキングジョーに搭載された追跡機能を使い追いかけていた。

 

『見つけたぞ。 踊れ、踊らされるがままに』

 

その頃、コウマ達の乗ったヘリでは現場の状況が弦十郎によって伝えられており、付近一帯の避難はほぼ完了しているのだがあるマンションで多数の人間が閉じ込められているらしく、防火壁の向こう側に閉じ込められているそうだった。

 

『響くんは人命救助に、クリスくんは被害状況の確認を』

「了解です!」

 

外を見ると少し遠目ではあるがキングジョーの姿が確認でき、零無はマリアから託されたビクトリーランサーを取り出し、それをジッと見つめる。

 

「……コウマ」

「んっ?」

「ここは……俺に行かせてくれ。 罪を犯したのは、俺も同じだから。 その償いとして……平和を乱すあいつを倒す!!」

 

零無の言葉に、コウマは笑みを浮かべて無言で頷くと零無も同じように笑みを浮かべて頷いた。

 

「零無、こいつ持って行っとけ」

 

そしてコウマは零無に向かってEXレッドキングのスパークドールズを投げると彼はそれを受け取り、零無はヘリの扉を開くとそのままそこから飛び降りたのだ。

 

「その為に……力を貸してくれ!! ビクトリー!!」

 

零無は「ビクトリーランサー・ランサーモード」に変形させて構えると黒いウルトラマンのスパークドールズが現れ、それを掴み取って中央部分にリードさせると先端の矢尻部分が開きビクトリーの顔を象った彫刻が現れる。

 

『ウルトライブ! ウルトラマンビクトリー!』

 

すると1人のウルトラマンがビクトリーランサーから飛び出し、零無が光に包まれるとその光はそのウルトラマンの胸部にあるカラータイマーの中へと入り、零無は黒い巨人……「ウルトラマンビクトリー」へと変身を完了させた。

 

そしてキングジョーはあの少女に向かって銃口を向け、コインの弾丸を放とうとした時……キングジョーの頭部に向かってビクトリーが跳び蹴りを喰らわし、キングジョーは吹き飛ばされてその場に転がって倒れこんだ。

 

『ぐっ、貴様……何者だ?』

 

すぐさまキングジョーが尋ねると……彼は答える。

 

『俺は……ウルトラマンビクトリー……!』

 

挿入歌「ウルトラマンビクトリーの歌」

 

「あれは……ウルトラマン、ビクトリー……」

 

さらに少女が自分を助けてくれたウルトラマンを見てそう呟くが、ビクトリーはそれには気づかずキングジョーに向かって駆け出す。

 

『ツェア!!』

 

キングジョーは接近を許すまいと両腕の銃口からコインの銃弾を発射……その速度はかなりの物だったがビクトリーはジャンプして回避し、手前にあったビルを踏み台にさらに高く飛び上がり跳び蹴りをキングジョーに叩き込む。

 

『デヤァ!!』

 

キングジョーは右腕の銃口をビクトリーに向けようとするがビクトリーは左足を振りあげて曲げるとキングジョーの右腕を拘束し、そのままキングジョーの頭部を蹴りつける。

 

『ツェアッ!』

『くっ……やるな。 だが!』

 

ビクトリーはそのままキングジョーに向かって殴り掛かろうとするがキングジョーは4機のメカに分離し、4機のメカそれぞれが光線をビクトリーに放つがビクトリーはバク転をして攻撃を回避したのだが分離したキングジョーの2機アルファー号とベーター号がビクトリーの背後に回り込み、挟み撃ちで4機の分離したキングジョーが光線を放ってビクトリーに直撃させ、ビクトリーは地面に倒れこむ。

 

『うぐっ!?』

 

するとキングジョーは再び合体し、両腕のペタ二ウムランチャーからコインの弾丸が雨のようにビクトリーに向かって降り注ぐ。

 

『ぐああああああっ!?』

 

ダメージを受け、倒れこんでいるビクトリーにキングジョーは掴み掛って立ち上がらせるが……。

 

『かかったな! ビクトリウムバーン!!』

 

頭部のVクリスタルから放つ光線「ビクトリウムバーン」をビクトリーはキングジョーに喰らわせて吹き飛ばし、ビクトリーの中にいる零無はビクトリーランサーでEXレッドキングをリードさせる。

 

『ウルトランス! EXレッドキング・ナックル!!』

 

ビクトリーは右腕がEXレッドキングの右腕に変化した「EXレッドキング・ナックル」に変化し、地面を殴りつけるとマグマが地面から湧きあがる「フレイムロード」を繰り出し、キングジョーは分離が間に合わず攻撃を喰らってしまう。

 

『ぐっ!?』

 

さらにそのままキングジョーに向かって行きEXレッドキング・ナックルによるアッパーカットを繰り出して殴り飛ばすと元の腕に戻し、両手で描いたV字型のエネルギーを右腕に集めてから両腕をL字に組み、右腕の甲にあるVクリスタルを正面に向けて放つ、V字型の必殺光線「ビクトリウムシュート」を放つ。

 

『ビクトリウムシュート!!』

 

ビクトリーの放ったビクトリウムシュートは見事キングジョーに直撃し、キングジョーは火花を散らして爆発……キングジョーはスパークドールズに戻り、ビクトリーは落ちてきたキングジョーのスパークドールズをカラータイマーから吸収した。

 

そしてライブしていたレイアはというと地面に着地し、ビクトリーをジッと見上げる。

 

「まぁいい。 私の目的は奴と戦うことではない」

 

レイアはそれだけを言い残すとその場を去り、ビクトリーは両手を合わせて両手の間から水を放ち、消火活動を開始する。

 

またヘリから降りてランに言われた通り、キングジョーにライブしていたと思われる人物を探していたコウマはというと……。

 

「んっ? ギンガ?」

 

コウマはギンガスパークを取り出し、中央のクリスタル部分が小さく光っていることに気付く。

 

するとコウマの頭の中に1つのイメージ映像のような物……翼が今、ファラと交戦している映像が流れ、それを見たコウマは瞬時に今、翼が謎の敵と戦っているのだということを理解した。

 

「翼さんが戦ってるのか!?」

 

コウマは急いで通信機である「UPG-G2 スマートシーバー」を取り出してランに連絡し、先ほど頭の中で流れた映像のことを説明する。

 

『……成程、向こうでなにかまずいことになってるのかもしれないな。 敵の捜索は消火活動が終わった零無に引き継がせる。 お前は翼達の元に行くんだ』

「ガレット!!」

 

コウマがランとの通信を終えると彼はギンガスパークを構え、両端のブレードを展開させた「変身モード」に変形させると先端からギンガのスパークドールズが現れそれを掴み取ると伸ばした両腕を8の字を描くように振ってからリードし、ギンガスパークを高く掲げる。

 

『ウルトライブ! ウルトラマンギンガ!』

「ギンガーーーー!!!!」

 

そして眩い光がコウマを包みこむとコウマは「ウルトラマンギンガ」へと変身を完了させるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、響はガングニールを纏ってマンションに取り残された人々を救出しており、同じ頃マリア達のいる場所では天羽々斬を纏った翼がマリアを助けに現れ、ファラと対峙していた。

 

「……待ち焦がれていましたわ」

「貴様は何者だ!?」

 

翼がファラに問いかけるとファラは静かに剣を構え答える。

 

「『オートスコアラー』……」

「オートスコアラー?」

「あなたの歌を聞きに来ましたわ」

 

ファラは剣を右手に持って翼に向かって行き、翼も迎え撃つように剣のアームドギアを振るい、2人は激しくぶつかり合う。

 

そして一度翼はファラと距離を取ると双剣へと変形させたアームドギアの柄を繋ぎ合わせ、炎を纏わせながら振り回し斬りかかる「風輪火斬」を繰り出す。

 

それを喰らったファラは大きく吹き飛ばされて壁に激突し、壁は崩れ舞い上がった煙の中に姿を消す。

 

「やり過ぎだ! 人を相手に……!」

「やり過ぎな物か! 手合わせして分かった、こいつはどうしようもなく……化け物だ!!」

 

翼がそう叫ぶと同時に崩れた壁の瓦礫を吹き飛ばしてファラが現れ、ファラはまるで何事もなかったかのようにケロリとしていた。

 

「聞いてたよりずっとショボい歌ねぇ。 確かにこんなのじゃ、やられてあげる訳には行きまs」

『ショボいのはお前だろ』

 

いつの間にか、ファラの目の前に「銀色の拳」が迫って来ており、ファラの顔面を殴りつけるとファラは大きく吹き飛ばされ床を転がり倒れこんだ。

 

「くっ……!? あなたは……!」

「ギンガ……! 来元!! 来てくれたのか!」

 

そう、そこに現れたのは等身大の「ウルトラマンギンガ」であり、ギンガは翼とマリアの方に振り返るとサムズアップして見せた。

 

「まさか……ウルトラマンが来るとは思っていませんでしたわ」

 

するとファラは黒い球体状の『チブロイドオーブ』を取り出してそれを投げると戦闘兵士であるアンドロイド「傀儡戦士 チブロイド」が複数召喚され一斉にギンガと翼に襲い掛かってくる。

 

「来るぞ来元!!」

『おう!!』

 

挿入歌「ウルトラマンギンガの歌」

 

翼は向かって来たチブロイドを大型化させたアームドギアを振るい、巨大な青いエネルギー刃を放ち標的を両断する「蒼ノ一閃」でチブロイド達を切り裂き、ギンガに向かって行ったチブロイド達は一斉にギンガに掴み掛るが……ギンガは全身のクリスタルを輝かせるとチブロイド達を一斉に吹き飛ばした。

 

『ギンガセイバー!!』

 

全身のクリスタルが白く輝くと右腕のクリスタルから剣が生成された「ギンガセイバー」を出現させ、ギンガは翼と共にチブロイドを一気に切り裂いて破壊するとそのまま2人同時に剣をファラに振りかざす。

 

しかしファラは剣でギンガと翼の剣を受け止め、剣に風を纏わせてそのまま振るうとギンガと翼を振り払う。

 

「ウルトラマンも相手にするのでしたら、それなりの力は必要ね」

 

ファラがそう呟くと彼女はチブルスパークとスパークドールズを取り出し、それをライブさせ侍のようなロット……「暗黒機靱 メカザム」へと変身した。

 

『モンスライブ! メカザム!』

 

メカザムはファラの時に使用していた剣を左手に、右腕に装備された剣を構え……2つの剣に風を纏わせてそれを振るって放つ斬撃をギンガと翼に向かって放つがギンガと翼は2人同時に剣を振るってそれを打ち消す。

 

『お前……ラン隊長が言ってた新しい敵か!?』

『さぁ、どうかしらね……?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、とある場所でコンビニで弁当を買って帰っている途中のカイトが歩いている時のことだった。

 

「お前が歌ったずんだらべぇの歌ぁ~♪」

 

おかしな歌を歌いながら歩いていると近くで突然「ズドン!!」という大きな音が聞こえ、カイトは何事かと思い慌てて音の方向へと走って行くとそこにはボロボロの状態で肩で息をした等身大の……「ウルトラマンマックス」がいたのだった……。


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