狼少女の夢日記 〜ぼくらはあの時同じ月を見ていたんだ〜 作:三月時雨
第11話
「ねぇ、本当にこっちで合ってるの?」
「大丈夫、合ってるよ」
篠宮さんは自信たっぷりに答える。
「登ってるつもりでも実は降りてましたみたいな疑いはないの?」
「ぜんぜん。仮にそうだとしても、わたしはこっちに出口がある気がするの。わたしの勘は結構間違わないと思うよ。山を越えた先にあるなとわたしの勘が言ってれば出口はそこにあるとし、山を登ってるんだと言ってれば絶対に下ったりしてないはずだよ。……多分」
最後の一言は聞き捨てならないんだけど……。
「本当なのかなぁ」
「信じてくれないんだ。いいよ。じゃあ、わたしについて来なくていいから」
篠宮さんはへそを曲げる。
「分かった、分かった。信じる。信じるから」
正直、信用はしきれないけど、ぼくだってわらにもすがる思いなのだ。
「いいよ、信じなくて」
「だから信じるって」
篠宮さんが完全に拗ねてしまってぼくはやっちゃったとため息をつく。こうなったらしばらくは機嫌が元に戻らないだろう。
たしかに、篠宮さんの勘に頼り続けた結果、襲って来る化け物に変化があったのは事実だった。最初の頃は動物のように吠えたりすることくらいしか出来なかったが、最近は片言ではあるが、人間の言葉を喋れるようになってきている。それを人は進歩というのだが、ゲームのようにダンジョンの後半にいく程敵が強くなっているのだとしたら、篠宮さんの勘は正しいことにある。いずれにしろ、篠宮さんの勘が見当違いな方向へと導いてないとことを祈るばかりである。
「はぁ、歩き疲れた……」
篠宮さんの息は不規則に乱れていた。
「なら、ここで少し休む?」
「いい! わたしはさっさとこの森を抜けたいの!」
結構根に持っているようで、篠宮さんはムキになって歩くペースを速めた。
「ちょっと、待ってよ」
本当はぼくもここら辺で休みたかったんだけど……。篠宮さんを追いかけぼくも早歩きになる。
ぼくらは木々の隙間を縫うように進んでいった。地面には落ち葉が溜まっていて一歩脚を前に出す度にしゃりしゃりと音がした。
森の中は薄暗く、所々に差し込む木漏れ日が眩しく感じた。その度に見上げると青い空がいつもあった。
生い茂る木々が視界の横を流れていく。木はどれも似たり寄ったりでこの世界の森はどこか殺風景だった。現実世界のもそうなのだろうか。
ぼくはそんなことを思っていると視界の隅に黒い物が写った。
「ふせて!」
ぼくは鋭く叫んで膝を地面につけて体を小さくする。篠宮さんもぼくに続いてふせた。土は湿っていて冷たかった。