狼少女の夢日記 〜ぼくらはあの時同じ月を見ていたんだ〜   作:三月時雨

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第13話

 ザァァァ……。

 

 風が吹き木々を揺らしながら森の中を抜けていった。汗をかいた体に風がぶつかって気持ちよい。

 視界の先に広がる緑はずっと遠くまで続いている。最初にいたのがどこらへんかは分からないが、もう随分と歩いてきたのだろう。その上の空を大小さまざまの雲が横切っていく。

 

 ぼくは手を地面につく。すると、カシャリと森の中には似つかわしくない音がした。見るとそれはお菓子を包装していた小さなプラスチックであった。

 

 そう言えば、ぼくらが森を歩いていくにつれて変化してきたものがもう一つあった。それがこのゴミなのだ。進むに連れてゴミの数は増え、また大きな物も目につくようになった。捨ててあるのも様々でゴミから可愛らしい小物や教室の椅子、果ては電車の吊り革みたいなよく分からない物まであった。ぼくはプラスチックを手にとって見ながらどうしてこれがあるのだろうと思った。現実世界の山では最近ゴミ捨てや不法投棄に悩まされている所も多いと聞くが、ここには人の姿はおろか、住んでいる気配すらない。

 

 風が強く、見えていた雲があっという間に木の葉の間に消えてしまう。けれど、きっと見えなくなっても雲は相変わらずどこかへ流されていくのだろう。

 

「一体ここは何なんだろう……」

 

 夢というには感覚がリアルすぎる。それに昼の学校の記憶だって朧げながら残ってるし、そもそも2人が全く同じ夢を見るなんてこと聞いたこともない。

 何かによって作られた場所であることは間違いないだろう。考えられるのは3つ。篠宮さんかぼくか、はたまた天地創造の主を含むぼくらではない第三者かだ。しかしぼくにはどれが正しいのだという確信もなければ、決定的な証拠もない。

 

 けれど、この一面の緑を見ている内に、このずっと先にぼくらが暮す現実世界の街並みが見えてくるような気がした。それはぼくらがこの森の出口を探そうと歩き回っているせいなのかな?

 頭をひねって考えるがちっとも分からない。

 

 その時、遠くで落ち葉を踏む音がした。それも2つ。

 ぼくはすぐにまた剣に手をかける。息を殺し、耳を澄ます。

 

「アル……ヒトノ、ニオイ」

「デモ、フルイ」

「モウ………ココ、イナイ。ニオイ、フルイ」

「モット、トオク………ソコ、イル」

 

 ぎこちない会話が聞こえると二つの足音はだんだんと遠ざかっていく。ぼくは胸を撫で下ろし、剣から手を離す。

 隣の篠宮さんは化け物が近くにいたことを知らず、穏やかな顏をしていた。いい気なもんだと思いつつ、高校1年の時からの顔見知りなのに、こんな可愛い顏をしていたのかと今更になって思った。

 

 この夢を見るようになってから随分になるけど、あの頃と比べると篠宮さんもぼくにあまり文句を言わなくなったよなぁ……。ぼくはしみじみと思った。

 思い返せば、ぼくがこの夢を見出した最初の晩、ぼくは出くわした篠宮さんを助けただけでも言ってきたのだ。

 

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