狼少女の夢日記 〜ぼくらはあの時同じ月を見ていたんだ〜   作:三月時雨

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 遅かれ早かれそうなるだろうとは思っていましたが、ついに1万字越えの長文になってしまいました。「1章=1話」でやらなくて良かったです。便宜的に切っていなかったら、1話が一体どうなっていたことやら……。
 という訳で、第6章です。相変わらず森の中の話です。


6月22日夜、桐原正也の思案
第21話


 ぼくらは背中を合わせていた。そう言えば聞こえはいいが、ぼくらの周りには黒い人の形をした化け物。しかも手に太い木の棒を持って。

 

「……イカセ……ナイ」

「ダサセナイ……」

 

「あぁ、うるさいうるさい! 化け物のくせに片言で喋れる上に、手に武器って反則だろっ!」

 振りかぶって近付いてきた化け物をぼくは剣で切る。切る時に鈍い音がした。それでも化け物の全体数には大きな変化はない。もう既に何人倒したのだろうか。いつもよりも剣が重く感じられた。

 篠宮さんは風が吹いた時の木の枝のように疲れでふらついている。

 

「篠宮さん、しっかりして!」

「分かってるってば!」

 

 口ではそう言っているが体力の限界が来ているのは明白だった。そんな篠宮さんを守りながら戦い続けるのは困難だった。そうでなくてもこの化け物の数はぼくにも荷が重い。

 後はここから逃げるしかない。ただし、果たして篠宮さんをかばいながら周りを取り囲む化け物の壁を突破出来るのだろうか?

 

「篠宮さん、ここは逃げよう。勝ち目なんてない」

「無理に決まってんでしょ。まずこの囲まれている状況をどうするの?」

「篠宮さん1人かばうくらいなら、一点を攻撃して血路くらい…………」

「無理っ!」

 篠宮さんはきっぱりと否定する。

 

「そんなお気楽な状況じゃないでしょ! 桐原君はわたしのことなんか気にしないで逃げて」

「それこそ無理だよ。第一、自分はどうするのさ」

「わたしのことは自分で何とかするから!」

 

 そんなこと出来ないだろと怒鳴りたくなる。だいたいぼくがこの状況であっさり自分以外のことを考えなくなるような人間だったら、最初から化け物に囲まれていた篠宮さんを助けたりはしない。

 今度は篠宮さんに化け物が近付いてくる。篠宮さんはナイフを振るが、逆に化け物の持つ棒で弾かれてしまう。ナイフは宙を舞い地面に突き刺さり、篠宮さんは慌てて取りに行こうとした。それをぼくは腕を掴んで妨げる。そして篠宮さんの手を握り、躊躇なく引っ張った。

 

「ちょっとっ!」

「ちょっとじゃないでしょ!」

 

 向かう先には数人の化け物。ぼくはもう片方の手で持つ剣で化け物を力任せに切る。化け物はよろめいた。しめたとぼくは化け物に突進し突き飛ばすようにして化け物の壁を突破する。

 

「呆れた……」

「何が!」

「桐原君がこんなにバカだったんなんて」

 

 後ろを振り返ると、当然化け物がぼくらを追いかけているのが見えた。ここは一段と木が生い茂っていて、視界が悪い。だからぼくらを見失ってくれないかなと淡い期待があったが、そういうこともなかった。目の前を遮るように木の枝があるのに気付いてぼくは手でどかす。

 

「篠宮さんには言われたくない!」

「桐原君がバカなんだからしょうがないでしょ」

「ぼくはバカじゃない。それに上手く突破出来たのに一体何の文句があるのさ」

「あるよ! 大ありだよ。だって、わたしのことを見捨てない」

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