狼少女の夢日記 〜ぼくらはあの時同じ月を見ていたんだ〜   作:三月時雨

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第32話

 お昼を食べ終えた辺りで、じゃあ放課後教室に残ってねと約束して、周りの女の子はワラワラと帰っていく。見送るわたしは良かったと内心安心した。それは一緒にクレープを食べに行けるのと彼女達が戻っていったことの両方で。ただ、目の前にしよりがいるのを思い出してわたしは顏を見られまいと机の側面にあるフックにかけた鞄の中を見る仕草をする。

 

「何か探してるの?」

「えっ? ちょっと、本の延長手続きしないとなぁって思って」

 

 わたしはしよりに鞄の中にあった図書館の本を見せて辻褄を合わせる。実際返却日は今日になっている。次の絵の下書きの為に借りたのに、肝心の下書きはさっぱり進んでいない。

 

 桐原君のせいだ。桐原君のことが気にかかって全く集中出来ないし、やる気になれない。

 

「すぐ戻ってくるから図書館行って来るね」

 本当は昼休みに行くつもりなんてなかった。でも丁度いい。

 

「期限なんて無視しちゃってもいい問題ないのに。あたしも付いて行ってもいい?」

「しよりはさっさとノートを写す」

「は~い」

 

 しよりは諦めてシャーペンのお尻をカチカチと押して芯を出す。わたしの真意に気付いているのだろうか? わたしは本を片手に教室を出る。朝学校に行くと机の上に督促状が置いてあるなんて状況にはなりたくない。

 

 図書室は階段で3階に降り、そのまま直進すると右手にある。途中でパタパタと廊下を駆けている女子とすれ違う。急ぎの用事でもあるのだろうか。それとも、行く先に楽しみにしてるものでもあるのかな?

 

 中学の頃、昼休みはよく沙菜ととしよりと追いかけっこをしていた。校庭の時もあったけど、多くは校舎内で、お互い下に体操着の短パンを穿いて制服のまま走り回っていた。逃げる二人のブレザーとスカートがはためいていて、それがとても可愛くて、捕まえる瞬間は決まって後ろから抱きついていたっけ?

 

 高校生になって以来別の学校に通っている沙菜とはあの日に電話をして以来画面上でも喋っていない。もうすぐ試合があって忙しいらしく、電話をするのははばかられ、かといって画面上に表示される沙菜の言葉は活字でしかなくて、それがわたしと沙菜の距離を示しているみたいでやる気になれなかった。

 

 もし、沙菜が明日転校してきたらと想像する時がある。でもそれは自分の頭の中の妄想であって、実際に転校してきたとしてもあの頃に戻れるはずはない。わたしが中学時代に戻れたら話は別だけど。もしくは同じ高校になったのがしよりじゃなくて沙菜だったら…………。

 ってわたし、何考えるんだろう。

 

 嫌悪感が込み上がって来てわたしは頭を振って否定する。ただ、そのもしもが夏の蚊のように寄って来る。すると。

「ね、ねぇ、篠宮さん」

 

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