狼少女の夢日記 〜ぼくらはあの時同じ月を見ていたんだ〜   作:三月時雨

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第34話

 桐原君が嫌味たっぷりに言ってきてわたしはじろりと睨み付けた。

「どういう意味?」

「よもや浅野さんからの助けは拒絶してるなんてことはないんだね。篠宮さん、浅野さんと仲良いしね」

 

『辛くてどうしようもなくなったらあたしにも言って。力になるから』

 

 あの時、わたしは嬉しいとも思っていなかった。ただただ、親友にさえ助けを求められない自分が恥ずかしくて、恥ずかしくて……。

 桐原君はしよりがわたしのことを心配していることを知っている。勿論わたしがそのことに気付いていることも。その上で桐原君はニッコリと笑った。

 

「良かった、浅野さんがいてくれて。1人で抱え込んでたらどうしようかと思っ……」

「五月蠅いっ!!」

 わたしは思わず声を張り上げてしまう。偶然通りかかった男子生徒が物珍しそうにわたし達を見ていく。サーカスの動物にされた気分だった。一刻も早く終わらせて、ここから立ち去りたい。

 

「とにかく! 桐原君の助けなんかいらない。そもそも桐原君には関係ないでしょ。この話はこれでおしまい。これ以上こんな無駄なことに時間を割きたくないの。帰るからね」

「そんなの認めない!」

「どうして!」

 

 わたしはしまったと顔をしかめる。ここは廊下。それに一度ではなく二度も大きな声を出してしまった。声の残滓が細長い廊下を抜けていき、わたしの体温がひんやりと冷えていく。

 

「どうして。わたしには話して欲しいことも、知りたいこともない!」

「ぼくにはある。篠宮さんだって聞いた方がいいんだ」

「その必要はない!!」

「ある!!」

 

 遠くで他の生徒がざわめいている声が聞こえてくる。すでにギャラリーがいる。この後もどんどん増えていくだろう。早く片付けないと。じゃないと、じゃないと……。

 だけど、お互い感情が高ぶっている。わたしもあの時見たいに自分を制御出来ないでいる。上手く思考が回らない。

 

「ないって言ってるでしょっ!! 何なの。わたしの意思を無視してまで言いたい訳? わたしの気持ちが分かるとでも言いたい訳!? 馬鹿にしないでっ! 桐原君なんかに何が分かるの? どこまで分かるの? わたしのことなんか知り尽くしてないくせにっ !!」

 

 わたしの声で周りは一層ざわざわとする。きっと止めに入った方がいいのかと言い合っているのだろう。……苦しい。体中が締め付けられる。耳の中で喚声が沸き起こる。屈辱。悔しい。それでも口は止まらない。

 なんて人間は愚かなのだろう。目先のことには実感が湧くのに、遠くのことになるとまるで実感がない。

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