狼少女の夢日記 〜ぼくらはあの時同じ月を見ていたんだ〜   作:三月時雨

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第8話

「そうだよね………。部活とか、ヤになっちゃうことってあるもんね。あたしの所だって、1年が生意気でイラッとするんだけど」

「部活の後輩が?」

「そう。ハードルを片付けないわ、ストップウォッチで他の子のタイムを計らず遊んでるわでホント何とかして欲しいんだよね」

 部活での出来事を思い出してかしよりはイラだった調子で言う。心なしかしよりのローファーが地面を蹴る音が荒々しかった。

 

「大変そうだね」

「それはどこの部活も同じでしょ。夕佳も美術部大変なんじゃないの?」

 しよりはそういう風に言うが、そんなことはなかった。わたしの所属する美術部はよく言えば自由でマイペース、悪く言えば個人主義で協調性のない部だった。部活の曜日は決まっているが、全員が揃ったためしがない。わたしはきちんと毎回行っているが、もう1ヶ月近く来ていない部員もいる。行っても作品を作っている部員がいたり、他の部員と楽しく話している部員がいたりとやることは人それぞれ。作品に打ち込んでいる側が話している側にうるさいと言うこともなく、話すのを止めて何かつくりなさいと促すこともない。そんな部活なのだ。

 

「しよりの陸上部に比べたらぜんぜん。先輩後輩間の接点があまりないし、今大変なのはコンクールに出す作品の制作だけど、それはしよりが大会に向けて練習するのとおんなじだから」

「コンクールかぁ。調子はどう?」

「ぼちぼちってところ。下書きが今月の終わりまでなんだけど、まだ思いついてなくて……」

「ガンバ」

「でも、しよりと比べたら全然楽だよ。部活で気に病むこともないし、休みも多いし。……ところで、週末のことなんだけど、沙菜(さな)は来れそう?」

 

 沙菜というのはわたしとしよりの中学校時の知り合いである。よく3人で放課後に寄り道したり休日に遊んだりした。海に行ったこともある。それくらい親しかった。高校が別になってからはそういうことも随分なくなったが今でもしよりを中心に時々会わないかという話になるのだ。

 

 わたしが尋ねるとしよりは残念そうな顏をする。

「……無理みたい。急に部活の練習が入っちゃったみたいで………」

「ひさびさに会えると思ったのに。前回はわたしは行けなかったし」

「あれ、そうだっけ?」

「家の用事で。たしかその時しよりは結局沙菜と2人で遊んだはずだよ」

「あぁ、そうだった。じゃあ、夕佳って卒業式以来一度も会えてないってこと?」

「そんなことはないんだけど、高校に入学する前が最後なの……」

 

 春休みや冬休みはお互いの都合がつかず、文化祭は開催日がまったく同じになり、夏休みは会う計画を立てたがわたしは会えずじまい。ここまでさかのぼるともう高校の入学式と中学の卒業式は目と鼻の先。思えば、わたしが1年の時に同じクラスだったのが沙菜で、しよりと知り合ったのは2年になってからだった。だから中学の時、しよりとよりもわたしは沙菜と仲が良かった。でも、気付かぬ内に学校帰りに駅前のスーパーの小物用品店に立ち寄り、そこで笑い合った日々は過去のものになっていた。あの頃が遠くに行ってしまったのかと思うと何だか切ない。

 今回は長期休暇以外の日も視野にいれたら会えるんじゃないかってしよりが計画してくれたのに……………。

 

「そっか……。そういえば沙菜が言ってたよ。『夕佳もたまには連絡してよ〜』だって」

「う〜ん、時々連絡しようかなとは思うけど、沙菜が今忙しそうだったらって思うとつい‥‥‥‥」

「何遠慮しいてるの! 沙菜だって寂しがってるんだから」

「そういうもんかな」

「そういうもんなの」

 しよりは力強く言う。まるでそれ以外はあり得ないと言っているようだった。

 

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