曰く、月影 朧は天才である。
幼い頃から大人たちに生活を制限される程度に天才である。
物心つく前から大人たちの指示に従い、様々な事をした。
初めは、人の役に立つ物を...
しばらく時が経つと、国の役に立つ物を...
そして最近は、人を
小学生の頃は友達がいた
中学生の頃は登校出来る日が少なくなっていた
高校生になると、学校にすら行けなくなった。
そんなある日、大人たちからこう言われた
「朧君、これが
と、眼鏡を掛け白衣を着た中年の男(所長)に、そう言われたのだ。
「そうですか、これが...最後の開発になるんですね。」
と、朧は答える。
所長は胡散臭い笑みを浮かべると
「ああ、長い間お世話になったね...最後まで頑張ろうじゃないか!」
そう言い、所長は去って行った。
朧は自室(と言っても
「...何が最後だ、自由だ。そんな事かけらも思ってないくせに。」
怒った声で静かに呟く。
この開発が終われば自分は処分されてしまうだろう、朧はその危険を察知していた。
故に、すぐさま脱出を計画、実行する。
「さて、ここにも随分いたが...随分と感傷的になるものだな...」
少しだけしんみりしてしまう。
元々、ここを出ようと計画は十分すぎるほど練っていた。
目を瞑り、よしと言うと
すぐさま研究所のセキュリティを全て切り、難なく研究所の外へ
監視カメラの映像には細工をしてきた。
これで、数時間~数日は問題ないだろう。ふと、研究所を振り返る。
開発を途中で投げ出すのは好きではないが、何分自分の命がかかっている。
「すまない」と、誰か言うべき人は居ないはずだが、そう呟き研究所を後にした。
研究所の敷地は広いが脱出するには簡単である。
セキュリティはシステムに頼った物が多く門以外は人がいない。
(人件費を削りすぎたのが仇となったな。)と、内心ほくそ笑んだ。
その道中で朧は不思議なものを見た。
「なんだ、これは?」と、未知の物を見た朧は声を上げた。
縦長の楕円の様な形をした光が浮いていたのだから...
「...ホログラムか?」と、知的好奇心が湧いた朧は観察しだした。
一通り観察し終えると、それに触れてみる事にした。
今思えば、それは正しかったのか、そうでなかったのか。
その光に触れた。(ん?触れられる――)
途端手が飲まれてゆく。
「な!?」咄嗟に手を引こうとするが遅かった。
ずぶずぶと光に体が飲み込まれていく。
そして、完全に体が飲まれたとき、朧は意識を失った。
※2016/3/8 中年の男を後の構成上主任から所長に訂正