1話 召喚の儀
朝、そう...朝である
ユーン・ヘスティア・ジ・ノーツ・レ・フェブリ(以下より ユーン)の朝は大忙しだった。
二年生の進級過程である、サモン・サーバントを学院に無理を言って遅らせてもらっていたのだ。
進級前に突然ユーンの家から「大変な事が起きた、すぐに帰ってきてくれ。」と、言われたのだ。
当然帰らない訳にもいかず、かといって進級に必要なサモン・サーバントをやらないという訳にもいかず、迷った末に学院に相談することにしたのだ。学院からの返事は召喚の儀は後ででもいいから家に帰って用事を済ませて来なさい。というものだった。
そして、実家に帰ったユーンは憤慨することとなる、ただでさえわざわざ遠い実家まで帰ってきたのに用事が進級祝いの品(それも、よくわからないネックレス)を渡されうんざりしていたのだ。
もちろん、両親が話していたがスルーした。そして、学院に帰って来てすぐさま、サモン・サーバントをする事となったのだ。
ルイズは才人を引きずって教室へ向かっていると、広場に人だかりが出来ているのを見つけた。
何事かと見ているとその中に一人の少女と教師がいた。
「あれ?フェブリの家の娘帰って来たんだ。」
「みたいね」と、後ろから突然声がした。
ルイズは驚き、そのまま距離を取る。もちろん、声の主はキュルケであった。
「あんたね、急に真後ろで話しかけないでよ!」と、すぐに突っかかる。
「いいでしょ、別に...ほら、始まるわ。」とサラッとあしらって話を逸らす。
「ぐぬぬぬ....」と、仕方なしにユーンの方に向いたのだった。
ちなみに、サイトは一言も言葉を発してないが、お仕置きの真っ最中で言葉を発す事が出来ないのである。
一方のユーンは、ため息をついていた。
「人はいっぱい集まって来ましたし、注目されるのは嫌なのですが...」
「では、人が更に集まってくる前に始めようか。」とコルベールは苦笑い。
すると、ユーンは「それも、そうですわね。」と了承して、サモン・サーバントの詠唱を始めた。
(私の使い魔、いい子が来ると良いのですが。まあ、贅沢を言っても仕方ありませんわ。覚悟を決めましょう。)
ユーンは意外にも謙虚だった。譲れないものはあるが...
「我名はユーン・ヘスティア・ジ・ノーツ・レ・フェブリ、五つの力を司るペンタゴン、我運命に従えし使い魔を召喚せよ!」と、呪文を詠唱し終わる。
ユーンの杖の指し示す先が光ったかと思うと人が出てきたのだ。この使い魔は誰も予想していなかったのか、その場にいた全員が驚いていた。無論、こっそり水晶で見ていたオールドオスマンも同様である。
「え?人?え、ええええええええ!?」とユーンは驚きのあまり上げてしまった。
朧はどすんという衝撃で意識が覚醒した。
「いてて、どこだ?こ、こ――」言葉を失った。自分が起きたら人が周りに一杯いるのだ。
朧は研究所から逃げ出してきたものだから、追手が既に自分を取り囲んでいる物と考えたのだ。
そう判断した朧の行動は早かった。すぐに荷物を置き、跳躍する。
相手の出方がわからない以上距離を置き事にしたのだ。
そして、相手の出方を....ん?そこで、朧は違和感に気が付く。
まず、自分のすぐ近くに居たのは自分と歳もそう変わらない女の子だったこと、そして、周りを取り囲むように居たのはその女の子と同じ制服を着ていたからだった。
ここは、一応相手の出方を見ようと相手を観察することにした。
え?っと誰かか言った。それもそのはず。ユーンが召喚した人間はいきなり荷物を手放したかと思うと大跳躍して自分たちから離れたのだから。ユーンは少し考えていた。
(え?私、人を召喚...したの?使い魔って人でなれる物なの?)
「ちょっと、ちょっとユーン、大丈夫?」と声を掛けてきた者がいた。
「え?ルイズ?」声の主はルイズだった。
「貴方も使い魔が人間なんてね」と苦笑いしながら言う。
「貴方もって...え?ルイズ使い魔召喚出来たの!?」本日二度目の衝撃が走る。
「出来たのって...酷いわね!私だって本気になれば使い魔なんて簡単よ!」と猛抗議。
「あのう...」
「「何よ!」」二人とも答える。
「あいつ、こっちをすげえ見てるんだけど。」とサイトは朧を指さしながら恐る恐る言った。
「え?ルイズこの人だれ?見た感じ平民見たいだけど。まさか...」
「...こいつが私の使い魔よ...」苦虫を噛み潰したようにルイズが答えた。
「まあ、後で話を聞きましょ、まずはあの方と話をしないと」と言い朧に近づいていった。
すると、朧は一瞬身構えるがすぐに警戒を解いた。
「あの...貴方は?」ユーンは当り障りのない所から会話を始めようとした。
しかし、朧は首を傾げる...「君は何を言っているんだ?」日本語で聞いた。
が、今度はユーンが首を傾げる。
二人が首を傾げていると、ルイズとサイトがやってきた。
「さっきから、どうしたの?」と尋ねる。
「えーと、どうにも彼、私たちの言葉が分からないみたいなの。」とユーンは先程らのやり取りを説明する。
「さっきから、一体何を」ともう一度朧が言うと、サイトが反応したのだ。
「え?もしかして、日本人」とサイトは朧に話しかける。
「あ、やっと話が通じた。うん、生粋の日本人だね。」
「あ、もしかして、鏡みたいな光を見たか?」と決定的な現象を聞いた。
すると、朧は驚いたようにサイトの肩を掴むと
「え!?君も見たのかい、あれを」と興奮気味に聞いた。
そこで、ルイズに耳を掴まれたサイトは
「ちょっとあんた、もしかしなくても会話できるの?」とサイトに聞いた。
「ああ、話が出来るみたいだ。」と肯定する。
「うーん、一体どうして...」と頭を悩ませていると
「あれじゃないか?ほら、会話出来なかった時に、ルイズが俺に向けて放ったやつ。」とつい最近自身に向けて放たれた魔法を思いだす。
「それよ!!」急に大声を上げて肯定した。
「え?どういうことですの?」
「こいつもね、初めの頃言葉が通じなかったのよ...」
「え?そうなのですか?今普通に会話が成立していますが...(あれ、ルイズが魔法を使った?)」
「実は、最初の頃余りにも訳の分からない言葉で喚いていたから沈黙の呪文を唱えたのよ。そしたら、会話が出来るようになったのよ。」
「それってただ単に失敗したn――」
「それより、試してみるのがいいんじゃないかしら?」と言葉を遮ったルイズは提案する。
「はあ、わかりましたわ。他に方法も思いつきませんし。」と気が進まないながらも同意する。
「と言うわけでそこの貴方、名前は存じませんがそこに居る方に伝えてくれませんか?」
才人に伝言を頼むユーン
「え?俺が...?」と、自らを指さし問い返す。
「ええ、だって彼と今言葉が通じるのは貴方しか居ないでしょう?さ、早く。」
と言って急かすユーンは才人に任せるのであった。
果たしてルイズが一度才人に掛けた魔法は朧にも通用するのか?
次回もよろしければご覧ください。