ガラガラガラと、教室らしき扉を開けると大学の講義室のように階段状に机が並んでいた。
「ふう、何とか間に合いましたわ。」
ユーン達は教卓に先生が居ないのを確認すると席に着いた。それに続いて隣に朧も座る。
「あの、俺はここに座ってていいのか?ユーンの使い魔ではあるが、ここの生徒と言うわけではないし。」と、申し訳なさそうに言った。
「それなら大丈夫ですわ。後で教師に言っておきますから。」
「あ、ああ。とりあえず今日は一緒に受けさせてもらうよ。」
そこまで言い終わると教室前方の扉が開いて教師が入って来た。長めの黒髪に黒いマントを羽織った若い男性教員である。朧は内心いい歳こいて中二病か?こいつ?と大変失礼な事を思っていた。そして、教師を見たユーンはと言うと凄く嫌そうな顔をしている。
「では、授業を始める。私の名前はギドー。二つ名は疾風だ。」
みんながシーンとしているなか朧は下を向き、笑いを
「では、この世に存在する最強の系統は知っているかね?ミス・ツェルプストー」
「虚無では?」といきなり振られるキュルケはすぐに答えた。
「伝説の話ではなく、現実的な答えだ。」
「それならそうと、始めから言ってくださればいいのに。火に決まっていますわ」少し苛立ちながら答える。そんなやり取りの中朧はと言うとユーンと話していた
「なあ、ユーン。系統って何だ?魔法の属性的な奴のことか?」聞きなれない言葉の意味をユーンに聞いていた。
「ええ、その通りですわ。『火』『水』『風』『土』の4系統が存在しています。そして、失われた系統である『虚無』を合わせ5系統ですわ。」と丁寧に説明してくれた。
「へえ、だからペンタゴンが紋章になってるのか。そして、話を聞いてる感じ、あのギドーって教師は風の至上主義者と言うわけなんだ。」
「その通りですわ。だからみんなあんな感じで―」そう言っている最中周りの生徒たちが一斉に机の下に隠れた。どうしたのかと周りを見渡すとキュルケが火の球を発生させ、ギドーに向け放つ時だった。
「すごい、一体どんな原理で火の球体が燃えているんだ?」とその様子を見ていた朧は興奮した。
そして、キュルケがギドーに火の球を放った。しかし、ギドーは慌てることなく腰に手を伸ばし杖を手に取った。そして、そのまま薙ぎ払う。すると強烈な風が吹き荒れ、火の玉もろともキュルケをも吹き飛ばした。その様子に朧は「おお!」と声を漏らし、生徒たちは火の玉が風によって掻き消えた事に驚いていた。ギドーはふっとその様子に笑うとこう続ける。
「諸君、『風』が最強たる
「風が最強ね...。でもそれは色々な条件次第だな。環境や状態に左右されるならそれは最強とは言えないな。」と残念そうに呟いた。
「え?」
「あ、ああごめん。声に出してしまった。気にしないでくれ。」と申し訳なさそうに朧は言った。
「それは無理な相談です。どういう事かすごく気になりますわ。」ユーンは朧が呟いた事に興味津々な様で食い下がって聞いてくる。そこで、会話をやめれば良かったのだが、気が付いていなかった。ギドーが話を止めてこちらを見ている事を。
「わかったよ。そこまで言うなら時間がある時に話すよ。」とそこで朧は教室が静かになっていることに気が付いた。ユーンも視線に気が付いた。ギドーが口を開く。
「私の話を聞かないで随分と楽しそうですねえ、何がそんなに楽しいのですか?ミス・ユーン」鋭い視線をユーンに向ける。
「え、あ...」と言葉に詰まっているユーンを見て、前の席にいたマリコルヌがおどけた調子で
「ユーンの使い魔が風が最強の系統では無いと言っていました。」と要らぬ告げ口をした。その言葉を聞いてギドーは目を鋭くし、ユーンの隣に居る朧を睨み付けた。
「ほう、ミス・ユーンの使い魔。名は知りませんが良い度胸ですね。見たところ平民の様ですが、平民はミス・ヴァリエールの所の様に、貴族に一々喧嘩を売らないと気が済まないのですか?」
嘲笑するように言う。その様子に朧はため息を吐くと、ギドーを無視してユーンに「どうしたらいいかな?」と困った様子で聞いてきた。それを見たギドーは
「貴様!私を愚弄するのか?貴様がそこまでするならいいだろう!貴様の最強とやら私の『風』で吹き飛ばしてくれる!」と手にもっていた杖を朧に向けた。一触即発の緊張した空気が流れる。
そんな中静寂を破った物が居た。その者は引き戸の扉を勢いよく開け放ち教室に入って来た。
「失礼しますぞ!」と入って来たのはコルベールであった。格好は滑稽なものになっていたが。
「ミスタ!授業中です!」と怒りが収まらないギドーは更なる邪魔者に一層不機嫌になる。
「申し訳ない。ですが、これは最優先事項です。えー、本日の授業は全て中止です。」
と教室にいた皆がポカンとした。あの緊張感の中からこの珍事である。無理もなかった。
しかし、事情を呑み込んだ学生が一斉に沸き立った。
「皆さん!話の途中ですぞ。静かに!」その剣幕に教室が静かになる。ギドーもその様子に押し黙った。
「では、おほん。皆さん、本日はトリステイン魔法学院にとって、良き日です。そして、なんと本日ゲルマニアご訪問からのお帰りに、学院にご訪問されるとの事。急遽、歓迎式典を行う事となりました。そのため、本日の授業は中止。生徒は至急正装をし、門に整列すること!」
そう言うとコルベールは急ぐのですぞ!と言い残し、別の教室に向かって行った。コルベールが出て行った教室は一瞬の静寂の後、我先にと生徒達は教室を出て行った。
もちろん、ユーン達も例外ではない。
――――――――
校門の方へ向かうと、既に校門には何人かが並んでいた。そして、時間が経つにつれ続々と生徒たちが集まる。さらに、大勢が整列していき最後に学院長のオスマンが一番真正面に出てきた。
その時正面に向かう学院長と朧は目が合った気がした。朧は少しの時間首を捻っていたが、ユーンに呼ばれその場を後にする。そして、魔法学院の正門の方に馬車が来た。それに合わせたかのように、衛兵が絨毯の間にきれいな列を作る。
「トリステイン王国王女、アンリエッタ姫殿下のおなーりー!」
馬車の扉が開く、みんなが期待の眼差しでアンリエッタの姿を見ようと釘づけになっている。
しかし、先に出てきたのは初老の男性が出てきた。予想外の人物にみんな顔を曇らせる。
そして、初老の男性が馬車の横に立ち、続いて降りてくる王女の手を取る。待ちに待った王女の登場に学生たちは皆歓喜し、歓声があがる。その様子に王女は微笑みを浮かべると、生徒に向け手を振った。その様子を見て朧はユーンに話しかける。
「へえ、あれ王女様か。凄く若いな」
「ええ、何せまだ17歳ですもの。と、何かあるみたいですわ」会話を中断する。すると、オスマンが一歩前に出て口を開いた。
「えー、今回事前に通達をしていたとは思うが少しばかり予定を変更して、明日使い魔お披露目会を開催する事となった。君たちの名を広めるチャンスでもある。頑張りたまえ。」と言った。
「へえ、そんなのあるんだ。そう言えばユーン――」と朧が声を掛けようとしたが
「そんなの、そんなの聞いてませんわ。」と顔を真っ青にしながら呟いていた。すると、近くに居たルイズも口をあんぐりと開けたまま固まっている。そして、そのルイズに追い打ちを掛ける者がいた。
「ユーンは昨日まで学校に居なかったから仕方がないとしても、ルイズは知っていたし、準備くらいはしていて当然よね?」とキュルケが”かいしんのいちげき”をニヤニヤしながら言う。
「と、当然よ!一番は私が貰ったわ!」と直ぐに体勢を立て直しキュルケに食って掛かる。
「あら~、そう。それだけ威勢が良ければさぞいいお披露目が出来るでしょうね。」と笑ながら答えた。そのやり取りの間にオスマンの話は進んでいる。
「おほん。えー、最後に個別的な事で申し訳ないが、ミス・ユーンと使い魔はこれが終わったらすぐに学院長室に来るように。必ずじゃぞ!おっほん、では、みな明日に備え頑張ってくれ。」
そうオスマンは閉めアンリエッタ姫殿下の歓迎式典は終わった。
「あんた達が何で呼び出されるんだろ?」と言うルイズの疑問に、オスマンの言葉に朧とユーンは顔を見合わせたのであった。
4話へ続く...
如何でしたでしょうか?
今回投稿が遅れて申し訳ないです。
さて、次回はオスマン氏に呼び出されたユーン達その呼び出された訳とは?
感想や、意見もお待ちしております。
また、次回にお会いしましょう!