「ねぇ、報告よりも虫の数が少なくないかしら?」
「さ、さぁ?共食いでもしたのではないでしょうか?」
「それは、餌のやり方が不十分だったということではないかしら?」
「いえいえ、そんなことは。恐らく、かなり無秩序に虫を入れていますから、狩猟本能のようなものが出たのでは・・・。」
・・・人の言葉を喋れないことが、こんなにもどかしいなんて。というか、言い訳が苦しくないか?まぁ、これならあの人も真実を追究してくれそうだから、僕としてはありがたいけど・・・。
「特にこのサソリなんて、クモやらムカデやらを片っ端から・・・。」
「ギギイ!?(はいぃ!?)」
ちょっとちょっと、何言ってんの!?クモもムカデも、サソリの天敵だよ!?確かに死体は食ったけど、僕がそいつらを襲えるわけ無いじゃん。ついでに、ムカデは滅茶苦茶たくさんいるけど、クモは一匹しかいなかったよ。
「私の記憶が正しければ、その二種はサソリの天敵のはずなのだけど?」
「うぐっ。そ、それは・・・、えぇっと、ですね・・・。」
はっきり言うけど、嘘下手すぎでしょ。まだ、横向いて口笛吹いたりしないだけマシだけど。
「正直に言いなさい。」
「・・・すみません。毒の分量を間違えたようで、四分の一ほどを殺してしまいました。」
今度は、そこそこに信憑性があるね。・・・実際に毒で死んだのは三分の一だし、注射のときにも何匹かは死んでたんだけど。
「そう。・・・これから暫くの間は、ここでの研究は私が担当するわ。」
「そ、そんな!?永琳様には、他にやるべき研究が・・・。」
「黙りなさい。自分達のために他の命を蔑ろにするなんて、許されることじゃないわ。」
・・・ふぅん、永琳っていうんだ、あの人。それにしても、優しい人だ。・・・けど、たぶんそれだけじゃないと思う。僕は見たことないけど、厳しさも持っているはずだ。だって、普通、優しい人間ほど騙され、利用されるこの世の中で、結構上位の地位にいる人なんだ。よほどの才能か、頭脳を持っていて、なおかつ現実も見れる人に決まっている。
「ここの研究は、私が担当します。あなたは、空席のある別の施設へ移動しなさい。」
「・・・はい。」
優しさを持ち、けれど、人を疑うことを知っている。あの人が飼い主になったなら、僕達の生活は安泰だろう。・・・毒と抗体の研究がなくなるわけではないだろうけど。