Charlotte ~時を超える想い~ -after story-   作:ナナシの新人

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生徒会活動日誌 final

 卒業までの二年の間は、いろいろな出来事がありました。

 それらの中でも、心に残った出来事をいくつか抜粋して記録していきます。

 

 まず最初は何と言っても、サプライズ・プロポーズ!

 婚約指輪が出来るのは、早くて年明けと聞いていましたが。まさか、新年当日とは思いもよらず、正に不意打ち。以前、ご馳走して欲しいと頼んだ、(しょう)くんの手料理をいただいた後、バラやかすみ草などの色鮮やかなブーケと一緒に、婚約指輪とプロポーズを受けました。プロポーズの台詞は――ん、やめておきます。忘れることなんて、決してありませんから......。

 

 さて続いては、バレンタインデー。

 甘すぎるものは苦手と前世で聞いていたので、甘さ控えめのガトーショコラ。柚咲(ゆさ)さんと歩未(あゆみ)ちゃんと一緒に、みんなに渡す分も一緒に作りました。

 ここでも、ちょっとしたサプライズ。メッセージカードが添えられた花束をいただきました。メッセージカードには、日頃の感謝の気持ちなどが直筆で綴られていました。海外では、日本とは逆の風習があると聞いたこともありますが。お礼を言いたいのは、あたしの方なんですけどね。

 そうそう、大切なことを忘れていました。新学期が始まってから、放課後勉強会がスタート。新年の神社で、卒業後は両親が営むお蕎麦屋さんの手伝いをすると言っていた美砂(みさ)さんでしたが、突然、進学に進路希望を変更。心変わりの理由は定かではありませんが。兎にも角にも今の学力では厳しいとのことで、勉強会を執り行うことが決定しました。

 

           * * *

 

 そして、季節は移り変わり、ひとつ上の学年に進級。

 進級してからはお互い、生徒会や先に話した勉強会で忙しくなって、帰りが遅くなることも増えました。ですが、帰る家は同じ。毎日一緒に居られるので寂しくはありません。これが、同棲の特権ですね。普段もお互い、学校で起きたことを話せるので会話にも困りませんし。再会の日、星ノ海学園への転校を止められた時はいろいろ思うところもありましたが、結果オーライどころか、ベストな選択だったのかもしれません。

 進級して最初の行事は、あたしの学校の文化祭。

 学校交流の一貫で、星ノ海学園の女子は制服を着ていれば参加オッケー。男性陣には、招待状を送りましたが、ここで予想外のことが......。

 (しょう)くんと、附属の校長先生が文化祭の場で対談することが急遽決まりました。突然の事態に緊張感を覚えましたが、何事もなく無事に閉幕したのでよかったです。後から聞くと、婚約したことは理事長先生経由で存じていたそうです。黙認してくれているので、裏切らないよう行動を律しようと改めて心に誓いました。

 初めての文化祭はふたりで見て回り、クラスの出し物「大正浪漫カフェ」から夕方の屋上へ場所を移動。この屋上は、お気に入りスポット。さすがに星ノ海学園は見えませんが、ふたりで暮らすマンションが見えるんです。

 その屋上で、興味本位に聞いてみました。再会した時もし、あたしに彼氏が居たら......答えは、奪う! まさかの過激発言に思わず聞き返してしまいました。もしそうなっていたらどうしていたか問われましたが、ノーコメント。ズルいのは百も承知です。実際、どうなっていたかは分かりませんし。でも、きっと――これは、不粋ですのでやめておきます。何より今が、一番大切ですから。

 

           * * *

 

 そして、再会した季節がやって来ました。

 今年の夏休みは、柚咲(ゆさ)さんの写真集撮影に合わせて、みんなで、沖縄の離島へ旅行。

 白い砂浜、透き通る海、採れたての海の幸はどれも絶品!

 夜は一転、昼とはまた別の顔を見せ、まだ少し暑さが籠もる砂浜に寝転がって手を繋いで、思わず息を飲むような満天の星空を一緒に眺めました。

 また来たいな、と星空を眺めながら無意識のうちに呟いたところ「今度は、二人だけで来よう」と微笑みながら、手を握り直してくれました。いつになるかは分かりませんが、またひとつ、楽しみが増えました。

 去年の春頃から、兄に指摘された敬語で話す機会も少し減ってきました。学校の友だち、お母さん、兄と話す時は普通に話せるんですけど。旧生徒会の面々と一緒の時もですが、どうにも慣れません。ですが、最初はお互い、ぎこちない感じだった言葉も徐々に慣れてきた気がします。少しだけ寂しい気もしますが、けど、前に進んでいる証拠とも取れますし。いい方向に捉えましょう。

 さてさて。二学期最初のイベントは、星ノ海学園との二度目の学校交流会! なのですが。前年は初年度だったため先延ばしにされた生徒会の引き継ぎは例年通り行われ、前会長からの推薦もあり、附属の生徒会長に選ばれたあたしは、交換留学に参加することが出来ませんでした。参加できなかったことは残念ではありますが。それ以上に、現在進行形で校則違反している身なので、生徒会長を務めることもいかがなものかと自分自身で感じてしまいます。ですが、選ばれた以上は責任を持って務めます。

 少しだけ物悲しい気分になる秋が過ぎ、季節は冬。

 冬といえば、クリスマス! と大手を振って言いたいところですが、今冬は、もっと重要なイベントがあります。そう、美砂(みさ)さんの受験です。この一年、毎日のように勉強会を開きました。そのうち、乙坂(おとさか)さんたちも参加するようになり、切りのいいところまでと終電を逃した時は、黒羽(くろばね)姉妹の部屋で寝泊まりをしたこともしばしば。

 クリスマスも、お正月も返上して臨んだ試験結果は――見事、合格! 晴れて、隼翼(しゅんすけ)さんたちと同じ学校への進学が決まりました。まぁ、当の美砂(みさ)さんは燃え尽きて、しばらく堕落の限りを尽くしていましたけど。

 そんなこんなで、今年度も終盤。あたしにはもう一つ大きなイベントがあります。修学旅行です。附属は進学校ということもあって、三学期に修学旅行の予定が組み込まれています。旅行先は選択制、留学を視野に入れている生徒もいることから海外も選択肢にあります。

 あたしは、留学するつもりは一切ないので無難に国内を選ぼうと考えていたのですが。「行っておいで」と、(しょう)くんが背中を押してくれて、思い切って、海外旅行を選択しました。行き先は、ZHIEND(ジエンド)の聖地イギリス! 観光もさることながら、日本ではライブの物販ブースでしか手に入らない数量限定の「スマホケース」をショップで見つけて、ゲット! 洗礼されたデザイン、バッテリー内蔵、高音質リニアPCMレコーダー搭載の高機能スマホケース! う~んっ、これだけでも来た価値充分っすね! これからは、ビデオカメラとは別途で会話も録音出来るようになります。記録の幅も拡がることになるでしょう。

 その機会は、さっそく訪れました。

 ここからは、記録した会話も交えて流します。あ、本人には許可をもらっていますので問題はありませーん、では、どうぞ。

 

「それで、あたしにお話しとは?」

「うん、それなんだけど......」

 

 それは、美砂(みさ)さんの卒業式後の出来事。余談ですが、美砂(みさ)さんの制服のボタンは、袖付きの予備も含めて全滅しました。後輩からの人気が高いというのは伊達ではありませんね。

 では、話を戻しまして。うちを尋ねて来たのは、目時(めどき)さん。何やらとても神妙な面持ちをして緊張していることが手に取るようにわかります。

 

「洗濯って、どうしてるっ?」

「洗濯ですか?」

 

 主語が抜けていて理由がよく分かりません。詳しく聞いていくと、理由が判明しました。目時(めどき)さんが借りている部屋に重大な施工不良が見つかり、工事が済むまでの間、部屋を離れなければならない事情が出来てしまった。用意された代替の部屋は若干通学に不便なこともあり、実家に戻ることも考えていたそうですが――。

 

「なるほど。それで一時的に、隼翼(しゅんすけ)さんのお部屋にお邪魔することになった、と」

「そう、使ってない部屋があるからって。結構、軽い感じで言われた」

「照れ隠しでは?」

「......ま、それは置いておいて。通学も、買い物も便利だからいいのよ。でもね~」

 

 二、三日とはいえ、同棲生活。泊まるのは初めてではないとはいえ、急展開過ぎて戸惑っているご様子。気持ちは分かります。あたしの場合は、前世で背中の怪我の容態を看ながら生活していた経験があったので、すんなり受け入れられましたが。いろいろ心の準備も必要でしょう。

 

「あたしは、一緒に洗っています。二度手間になりますし、水道代もばかにならないですから。気になるようでしたら、コインランドリーを使うのもひとつの方法かと。ですが、洗濯物で狼狽えていては、これから先、寝食を共にするなんて無理では?」

「確かに、そうね。もうひとつだけいい? 掃除の時なんだけど、ベッドの下って――」

 

 考えることは一緒ですね。そこは、あまり触れない方がいい、とアドバイスしておきました。思いもよらない物が出てきたら戸惑ってしまいますので。といったことが、ありました。

 同級生の友人を安易に頼らなかったことを鑑みれば、着実に前進しているとみていいのかもしれませんね。

 

           * * *

 

 この相談を受けてから数日後、光坂高校を訪れました。長い、長い坂道に咲き誇る桜。噂されていた伐採計画は規模を縮小し、学校周りの桜は保存されることが決まったそうです。

 そして今日、ここへ来た理由は、(なぎさ)さんの卒業を祝うため。岡崎(おかざき)さんから連絡をいただき、病気がちで卒業式に出席出来ず終いだった(なぎさ)さんに、サプライズで卒業式を開催。古河ベイカーズの面々、あたしたちの知らない友人たち、交流のあった隼翼(しゅんすけ)さんたちも含めて、ささやかな門出のお祝い。

 桜が咲き誇る中、送辞のない、(なぎさ)さんの心からの答辞。そして、お二人は籍を入れました。

 ああ~、先越されちゃったなー。でも全然、気になりません。むしろ、本当に心からお祝いの気持ちでいっぱいでした。にしも、甲斐性あるんですね。

 

           * * *

 

 凍えるような寒さの冬が過ぎ去り、いよいよ最終学年。

 この年は、本当にものすごい速さで時間が過ぎ去って行きました。一番の理由は他でもなく、受験モードに本格的に突入したため。毎週のように模擬試験を受け、苦手な科目を見直し、再度模試を受ける。

 そんな日々が続く中。夏休みを利用して、家族水入らずで旅行へ出かけました。

 今年は、友利(ともり)の姓でいる最後の年。兄も、忙しい時間の合間を縫って都合を合わせてくれました。久しぶりに親子三人で過ごす時間は、とても穏やかで、とても特別な時間で――。

 あの日、全てが変わってしまった日常を取り戻せた気がします。結婚を前にマリッジブルーになってしまう気持ちも納得。ですが、あたしはそうなりません。なぜなら、この素敵な時間を与えてくれた人が、すぐ側にいてくれるのですから......。

 焦がすような日差しの夏が過ぎ、深まる秋を越えて、新しい年を迎えた。受験生は、ここからが最後の追い込み。もう、何かに気を取られている場合ではありません。というのが普通なのですが、推薦で一足先に進学が決まりました。生徒会に所属していたことが考慮されて素行面は問題なし。成績の方も、美砂(みさ)さんの勉強会に一緒に参加していたことで向上し、全国上位をキープ出来ていたことが大きかったようです。

 特待枠で上へ上がれる、と附属の学校からも最高の評価をしていただけましたが。みんなと同じ進学先を選びました。偏差値も、ほぼほぼ同じですし。何はともあれ、これで後は卒業式を迎えるだけ......と思っていましたが、重要なことが残っていました。むしろ、これが一番大事です。

 そう、それは――結婚式の打ち合わせ。

 早いと思われるかもですが。日程から逆算すると、式場を押さえたり、衣装合わせだったり、招待状の準備だったり、今のうちに準備をしておかなければ到底間に合いません。休日も返上で、プランナーの方と何度も連絡を取り合って話を進めています。

 さらには、以前から計画していた卒業旅行も同時進行。旅行先は、高城(たかじょう)たっての希望で黒羽(くろばね)姉妹の実家がある、長野県。今回の卒業旅行には、美砂(みさ)さんと歩未(あゆみ)ちゃんも同伴。姉妹が育った町を案内してもらい、姉妹の実家でお世話になりました。ちなみに男性陣は、最寄り駅ほど近くのビジネスホテルです。

 この旅行で一番残ったのは、姉妹が幼少期を過ごした町を見て回っていた時のこと。美砂(みさ)さんの友人(ダチ)と偶然、遭遇。ニット帽を被ったコータさんと、髪を赤く染めたショウさん......て、同じ名前じゃないっすか! まぁ、おかげで美砂(みさ)さんは、バイク事故を回避出来たそうです。偶然も重なれば、“縁”ということなのでしょうか。

 この時、ふと疑問に思いました。美砂(みさ)さんのバイク事故は、柚咲(ゆさ)さんを発見した半年前の出来事、一年近いズレが生じていることです。なので、聞いてみました。

 

「そうだね。ニケツをしない選択が、流れを変えたんだと思う。詳しいことは、ニールに聞いてみるといいよ」

 

 そうでした。アメリカから、(しょう)くんの親友お二人と恩師が参列してくれるんでした。その時に聞いてみましょう。

 

           * * *

 

 長くなってきたので、次でいったん区切りとします。

 お互い無事に卒業を迎え、籍を入れ、名前を新たにして迎える新生活が始まります。宮瀬(みやせ)奈緒(なお)――うん、語呂は悪くありません。それに、同じ苗字になると本当に家族になったんだと実感が湧きますね。ですがしばらくの間は、苗字を書き間違えないように気をつけなければなりません。

 それとこれからは、制服ではなく私服での登校になるので大変ですが。堂々と指輪を身に付けて生活できます。柚咲(ゆさ)さんと、キャンパスを歩いているとさっそく、チャラい二人組の男性に声を掛けられました。どうやら、サークル勧誘のようですが。

 ひくなっ! 下心丸見え。どーみても不埒なサークル勧誘。だから、左の薬指の指輪を見せ付けて言ってやりました。

 

「あたし、結婚してますので。彼女には、彼氏がいます。他を当たってください。行きましょう」

「あ、はーい。ではでは~」

 

 固まっている二人を無視して行くと、「今のギャク最高!」とか言って、しつこく追ってきました。どうしようか考えていると、カフェスペースでくつろいでいる(しょう)くんと、乙坂(おとさか)さんをはっけ~ん。鬱陶しいんで助けを求めました。

 話の流れで、二人を恋人設定にして追っ払いました。乙坂(おとさか)さんは、気遣いながらも面倒くさそうに。柚咲(ゆさ)さんの方は、あまり気にしてない様子でデザートドリンクを堪能していました。それに、そういうことにしておけば今後、変な虫が近寄らないでしょう。何せ、二人の周りは視線が常に集まっていますし。

 

「彼女、作んないんすか?」

「何だよ? 藪から棒に」

「だって、モテるんでしょ?」

「それは、もう。俺が知っているだけでも両手でも数えきれないよ」

「また、余計なことを......」

「ふむふむ、それでも作らないってことは~。まさか、男色ですか?」

「えっ、そうなんですかっ?」

「違うから。柚咲(ゆさ)も、目を輝かせるな!』

「じゃーあ、何で作んないんすかー?」

「妙に食い下がるな......。ハァ、僕が今、付き合っていいと思えるのは、お前たちと美砂(みさ)くらいだよ』

 

 はい、と言うことでーす。言質いただきました、と。

 いきなりの告白。まあ、言わせたんすけど。白柳(しらやなぎ)さんとも、あれから進展はなかったみたいですし、何か訳があるみたいです。モテる男は罪深いっすねーと、さて、続きをどうぞー。

 

「美人姉妹と人妻っすか? なかなか特殊っすね」

「違う。変な憶測で話さないでくれ。僕が本音で話せるのは、お前たちだけだからだよ」

「はぁ? なんすか、それ?」

「仕方ないだろ。忙しくて、お前たち以外の女子と出掛ける余裕なんてなかったんだよ」

 

 一年の始業式の放課後から生徒会に所属、同年秋には、生徒会長に就任。三年の秋に引退、即受験の準備。確かに、一理ありますね。なら、とりあえず姉妹と出掛けてみたらどうかと提案してみました。「いきなりだな」と、最初は渋っていましたけど、今度、柚咲(ゆさ)さんと出掛けることになりました。

 あたしのお節介はここまで、あとは、乙坂(おとさか)さん次第ですね。

 あっ、そうだ。柚咲(ゆさ)さんは現在、高三の春から芸能活動を休止しています。一緒に勉強して成績は上がったんですが、さすがに厳しく、高校受験の時と同様に一旦受験専念していたんです。今のところ、復帰時期は未定。高城(たかじょう)歩未(あゆみ)ちゃんは、いつ復帰ライブをするのかと心待ちにしています。

 少しだけ進んで初夏、新生活にも慣れて、近々大きなイベントを控えています。そのイベントの件で、古河(ふるかわ)家を訪ねました。すると、生後数ヶ月の赤ちゃんを預かっていました。この子は数ヵ月前に、岡崎(おかざき)さんと(なぎさ)さんの間に産まれた赤ちゃん。名前は、岡崎(おかざき) (うしお)ちゃん! 今日は、二人がデートに出掛けるためお二人が預かっているそうです。

 ちょうど、ミルクの時間。あたしは、手伝いを申し出ました。附属には、花嫁修業のような特別授業があって、子育てのことも習いました。ミルクも習った通り、ちゃんと人肌に冷ましてから口に運ぶと飲んでくれました。

 それがもう、かわいすぎ! これが、母性本能っていうやつなんすかね? このまま連れて帰りたくなっちゃいました。子どもか~、好きな人との赤ちゃんなら、きっともっとすごい(いと)おしいんだろうなー。

 そして今日は、ちょっとしたパーティーが開かれます。少し長居しすぎてしまい、開始時間に少し遅れてしまいました。

 帰り道で(しょう)くんは久しぶりに敬語で、あたしを「さん」付けで呼んでくれました。兄に指摘されてから少しずつ敬語の割合を減らしていったんですけど。結局、この時から敬語に戻りました。やっぱり、不自然に変えるよりも、この方があたしたち()()()ですので!

 

 それでは、今回はこの辺りで終わりにしようと思います。

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