走る。荒れ果てて草木も生えていないこうや全力で。空からは日の光では無く直径が1センチはあろう弾丸が雨の如く降り注いでいる。さらにそれだけでは無く時折砲丸まで落ちてきている上にそれら全てが面を意識しての物量押しで来ているので逃げ場が無い。クラウスほどのタフネスであるなら兎も角一発でも食らって仕舞えば動きが鈍り、そして弾丸で蜂の巣になるのは目に見えて分かっている。なら、
砲丸ならば兎も角、弾丸は小さく素早いので見てから反応しても間に合わない。なのでーーーこれまで培ってきた経験則から成る直感に身を任せる。走りながら向かってくる弾幕の薄い所を無意識のうちに把握して突っ切る。もはやこれはなんと無くとしか言えない感覚であるがこれのお陰でこうして隙間の殆どない弾幕の中を無傷で走り抜く事が出来、敵兵の眼前に現れる事ができた。
敵の数は銃兵が300、砲兵が200、大砲を背負った人型の魔導兵器が20、指揮官が乗っているであろう戦艦が2。それを確認して頬が緩む。
あの弾幕を抜けられると思っていなかったのか僅かながらも混乱が見られるものの部隊長らしき人間の罵声に従ってこちらに銃口を向けている辺り練度の高さが伺える。だがその間に出来た隙は無くならない。一気に距離を詰めて銃兵を飛び越え、敵兵の中に潜り込む。こうなって仕舞えば飛び道具は使えない。使おうとしても同士討ちになってしまうという躊躇いから動作が遅くなるから。
その僅かな隙に部隊長らしき人間の喉に貫手を叩き込んで仕止める。そして予め用意しておいた手榴弾のピンを抜いて部隊長の服の中に忍ばせて次の砲兵の元に向かう。
砲兵の元に辿り着いたのと同時に背後からディー特性手榴弾の爆発音が聞こえた。なんでも従来の物とサイズは変わらないのに威力は三倍になっているらしい。巻き込まれない様にいつもよりも距離を取ったというのに爆発の熱を感じられるのが証拠だろう。帰ったら酒でも奢ってやるかと考えながら砲兵からもぎ取った大砲に細工をして投げ返し、その数秒後に暴発させる。
それを二、三度繰り返せば自然と銃兵と砲兵は壊滅状態になり、残るのは魔導兵器と戦艦。流石に兵器ともなれば人間相手の時の様にはいかない。クラウスの様なパワーでゴリ押せる人種ならば兎も角こちらは小技でどうにかするテクニックタイプの人間だ。故に、出し惜しみ無しで挑む。
「人世界に語られる英雄譚ーーー」
魔導兵器が放つ魔力弾と実弾の混合の弾幕を避けながら接近する。流石にここまで来ると同士討ちに躊躇いがなくなっている。魔導兵器同士が対角線上にある様に陣取りながらーーー
「
黒金を展開し、幕引きの一撃を振り下ろす。崩れ落ちる魔導兵器から操縦者が現れるのが見えるが数秒もすれば魔導兵器の残骸で押し潰されるか弾幕でミンチになるのが分かっているので放置して次の魔導兵器に拳をぶつける。
そうやって1分で魔導兵器の数を数を半分にまで減らした時ーーー直感が全力で打ち鳴らしている警鐘に従ってその場から逃げ出した。時間にすれば1秒ほどの時間で稼げた距離は100メートルそこら、そしてさっきまでいた場所に戦艦からの砲撃が降り注いだ。
魔導兵器は逃げられなかったのか、それとも道連れをしようとしていたのかは定かでは無いがその砲撃でスクラップとなる。あれでは操縦者が助かる見込みは無い。随分と思いっきりが良いことだと感心する。確かにあの場面では味方もろとも殲滅という手段は有効だった。なまじ情をかけて勝機を逃すよりも遥かに良いだろう。だがまぁ、相手が悪かったとしか言えない。
戦艦は一機が上空200メートル程、もう一機がその上に守られる様な形で陣形を成している。恐らくは守られている一機の方に指揮官か重要人物がいるのだろう。戦艦から放たれる砲撃を黒金で迎撃し、自壊させながら対空魔法を発動させる。
「焦熱世界の痛みを味わえーーー」
現れたのは小さな炎。それを砲撃を続けている戦艦に向かって投げつける。戦艦を落とすのにその程度の火力では足りないのでは無いかと思われるだろうが、これで良い。
「ーーー
戦艦まで辿り着いた炎が一気に燃え広がり、小型の太陽となって戦艦を飲み込んだ。飛行している敵への攻撃として考え出した広域殲滅魔法が
火球の温度は詳しくは知らないが鉄が蒸発するのでかなりのものだ。事実、火球に飲み込まれた戦艦は火球が無くなるのと同時にチリも残さずに消えて無くなっていた。これを見て、こちらに戦艦を落とせるだけの戦力があると理解したもう一機の戦艦が撤退を始める。
それは火の鳥。大気を切り裂きながら飛翔する鳥は真っ直ぐに戦艦に向かっていき、戦艦を展開されていた障壁ごと貫いた。操縦室と動力源を同時に撃ち抜いたのか戦艦はゆっくりと落ちていき、地面に衝突して爆発した。生き残りは居ないだろう。
「ファルケンか、相変わらず良い腕してるな。シグナム」
「そちらの焦熱世界こそ馬鹿げた威力だな。小型とはいえ戦艦をチリも残さずに燃やすとは」
俺の呟きに律儀に返事をしてくれたのはシグナム。彼女のアームドデバイスのレヴァンティンは剣の形態をしていたはずだが今は弓の状態になっている。
敵兵は見えなくなった物の周囲の警戒をしながらシグナムに話しかける。
「ここは俺が任されてたはずだけど?」
「そうだ、敵兵が降伏したと殿下から報告があった。生き残りがいれば捕縛してきてほしいとのことだったが……見る限り居ないようだな」
「終わったのね、思いの外粘ったな〜……そだ、被害は聞いてる?」
「今のところは重傷者はいふものの死者は0だそうだ。重傷者も退役する程では無いとシャマルから聞いている」
「そかそか、それは良かった」
怪我人や死者が出ることは戦争をしているので当たり前だと感じているがそれでも味方で死者が出なかったことは嬉しい。例え怪我をして退役したとしても生きていればどうにでもなるのだから。
「んじゃ、帰って飯にするか。腹が減って仕方が無い」
殺した敵兵に向かってほんの少しだけ祈りを捧げてからクラウスたちがいるであろう拠点にむかってシグナムと歩き出す。
人が当たり前のように死んでいる世界だけど、今日も生きています。
戦争=ベルカの日常風景。質量兵器も割と使っています。てか
使用度で行ったら、
魔法=質量兵器〉〉〉〉〉〉〉
くらい。