AC FA ~女性リンクスがヤンデレだったら~   作:トクサン

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 後悔はしていない(真顔)


もう一つの解体戦争

 【ラインアーク】

反企業勢力の集った自由主義者の街、民主主義を掲げた企業支配を肯定しない唯一の勢力、しかし「来る物は拒まず」という姿勢から企業を追放された亡命者やアウトローを大量に抱え込む事となり、結果として政治の腐敗を招いている。

そんな勢力が何故未だ存続しているのか、それは主にカラードランク9位、ネクスト【ホワイト・グリント】によるものである。

カラードランクこそ第9位ではあるが、それが政治的序列である事を皆が知っている、それこそ彼のホワイト・グリントが所属する非企業勢力であるラインアークが未だ存在する事自体が、彼の実力を物語っていた。これが単なる一ネクストであるのならば、企業連は構わず戦争を仕掛けるであろう。それだけの資源と資金が企業には存在している、戦場の尖兵となり下がったネクストに対しAF(アームズフォート)は正に天敵、百凡のネクストであるならば蹂躙されて終わる。しかし、そのAFさえも磨り潰す個、ネクストの中でも精鋭と呼ばれる怪物達、その中にホワイト・グリントは入っていた。

 

搭乗リンクスは不明、しかし国家解体戦争後の機体に同一の名前の機体が存在し、当時の搭乗者ジョシュア・オブライエンの縁者である事が疑われている。アクアビット社を単機で壊滅させた彼の英雄の戦闘能力は凄まじく、コロニーアナトリアにて【アナトリアの傭兵】に撃墜されるまで最強の一角を担っていた。

そのアナトリアの傭兵であるが、ジョシュア・オブライエンによるコロニー襲撃後に行方不明となっており、一説では彼の英雄と共倒れになったと言われている。しかしコロニーアナトリアが存在しない今、真相は闇の中である。また、当時アナトリアの傭兵専属オペレーターであったフィオナ・イェルネフェルトが現ホワイト・グリントのオペレーターを担っている事から、搭乗リンクスは【アナトリアの傭兵】ではないかと疑う者も居る、全ては憶測の域を出ないが……。

 

 なんて色々面倒な話ではあるが、真実は存外俗物的である。

 

 コロニーアナトリアが現在存在しないのは、結婚を反対されたフィオナが「彼との婚約を求めないならお父様なんて要らないッ!」と癇癪を起し、アナトリアの英雄こと彼に要請しワザとオーメルサイエンスの切り札「セロ」との戦闘時、大立ち回りをして復旧不可能な程の損傷を負わせたとか。

 現在のラインアークは「私達二人だけの世界を作りましょう……?」というフィオナの要望により作られ、現在は二人の愛の巣になっているとか。

 真実はいつも企業連の予想を超える。

 

 

 今回の例もそうだ、()から「……最近、フィオナが一日三回はしないと拗ねるんだ」とか惚気を聞かされた時、もっと真面目に耳を傾けておけば良かったと後悔する。いや、別に惚気を真面目に聞けばよかったとかそういう話ではない。ミッション中だと言うのに公開通信でふざけんなこの絶倫野郎と罵倒したくなった、良く耐えた俺、しなかったのは鋼の理性故である、これでも俺は仲間内でクールキャラで通っているんだ、それを今更崩したくない。

 兎に角彼は今回の事を、非常に悔しくはあるが彼は半ば予想していた。

「お前の僚機……ヴェーロノーク、メリーゲート、あの二機についてなんだが」

 

「フィオナと同じ匂いがする」

 そんな事をホワイト・グリントの搭乗者、【アナトリアの傭兵】こと()は口にした。

 

 何言ってやがるんだこの人外は、そう思った当時の俺をぶん殴ってやりたい。

メイ・グリンフィールドは俺の嫁とか、エイ=プールたんハァハァとか俺マジふざけんな。あの時彼の言葉を真摯に受け止め、こんな怪しいミッションをホイホイ受けなければこんな事態にはならなかった。

 

 考えてみれば今回の件は最初から怪しかったのだ。

 

『……ミッションを説明しよう、雇い主はいつものGA……いや、今回はインテリオルとの合同ミッション……という事になっている、多分』

 

 あの自信満々に、男気溢れるGAミッション仲介人が珍しく、そう、珍しく意気消沈した声でミッションを説明して来たのだ。これだけで俺の危機管理ボルテージは一気に上昇した、ネクスト乘りは傭兵だが自分の身の丈に合わないミッションは基本受けない、金も確かに大事だが死んでは元も子もない。

 だからミッション説明は一言も聞き逃さない気で聞くし、状況に合わせた機体構成も真剣に行う、だから今回の様な妙に歯切れの悪いミッション説明は危険を感知するには十二分だった。

 

『目標は……あー‥‥ネクスト【サベージビースト】の撃破だ、お前ならば容易な仕事だろう? 場所は旧チャイニーズ海域……それと、今回は僚機として【メリーゲート】、【ヴェーロノーク】の二機を付ける』

 

 これも明らかにおかしかった、サベージビーストと言えばカラードランク22の弱小ネクストだ、言っては何だが俺の相手では無い。彼の水没王子と共闘してホワイト・グリントを撃破した俺は現在名実ともにカラードランク1の称号を受け取っている。

 死んだふりをして今現在フィオナと束の間の休暇をエンジョイしている英雄野郎と、水没したフリをしてウィン・D・ファンションと夫婦喧嘩している黒幕野郎はさておき、明らかにバランスの取れない戦力だ。

 俺単機ならまだしも、それに僚機二機を付ける……安くは無い出費だ、インテリオルとの合同ミッションともなればその背後で動く金銭は莫大な量となるだろう。それほどの価値がサベージビースト撃破にあるとは思えない、彼は独立傭兵であるし企業お抱えのネクスト撃破による戦力減退も狙えない、企業同士が手を組んでフリーランスの傭兵を狙うなど稀だ。ホワイト・グリントやステイシスの様な単機でパワーバランスを崩すネクストならまだしも、相手はランク相応の実力しか持たない、言っては何だが百凡のネクストでしかなかった、企業側は明らかに何かを隠している。

 しかし報酬は破格、少なくとも通常ミッションの三倍近い金額が支払われる。更に難易度はお察し、本当にサベージビースト単機の撃破だけならばこれ程楽な仕事も無かった。

 

 それに当時の俺は、やっほいメリーちゃんとヴェーロちゃん二人のハーレムだぺろぺろとか考えていたから結局ホイホイミッションを受けて、今に至る。

 

『……作戦エリアに侵入、妙だな、ネクストの反応が無い』

 

 念には念を入れて一応対ネクスト戦用の装備で固めて来た俺を待っていたのは、空っぽの作戦エリアだった。旧チャイニーズ海域は嘗て繁栄を誇った中国のビル街が海面上昇によって放棄され出来上がったエリア、その中央に侵入した俺はネクストの索敵機能を最大にして上空待機するが、無情にもMAPに表示される敵性勢力は無し。

 

『GAからの情報では現時刻に目標ネクストを当エリアまで誘導するとの事だったが……何をやっているんだ』

 

 愛しのお姉さまであるオペーレーター【セレン・ヘイズ】が苛立った声を上げる。元々このミッションには乗り気ではなかった彼女だ、そこに企業側の不手際が重なって更に機嫌を悪くしていた。基本的に依頼を持ってくるのは彼女の仕事だが、そこから何を受けるかと言う話は俺が決める。しかし今回の依頼は珍しくセレンが口を出し、「余り気乗りしない」と言う言葉を頂いていた。

 まぁ、確かに見るからに怪しい依頼だ、もし俺単機のみであったら断っていた事だろう。

 

『こちらメリーゲートよ、作戦エリアに侵入したわ……敵ネクスト反応が無いけれど、もしかしてもう撃墜したのかしら?』

 

 嫁キター! とはしゃぎはしない、内面で喜び表情筋は微塵も動かさない。その緑色の機体色とニッコリマークは俺の心のオアシス、重量機だから上手く盾にしろって? ふざけんな嫁に攻撃当てさせるわけねぇだろ敵は残らずぬっころす。

メリーゲートはそのまま俺の着地したビルに降り立ち、俺は平静を装い直接通信で状況を伝えた。作戦エリアに最初から反応が無かった事、GAからも未だ何の報告が無い事、それらを告げるとメリーゲートも困惑の声を返して来た。困惑する嫁かわいい。

 

『……依頼の伝達ミス、もしくは別動隊の不手際かしら? どちらにせよ、良い状況では無いわね、作戦開始時刻は既に経過しているわ』

 

『GAにコンタクトを送っているが、一向に通信が繋がらない、コジマ粒子の濃度、通信障害共に問題は無い筈だが……むっ、作戦エリアに接近する機影アリ!』

 

 セレンの言葉に俺は素早く反応する、AMSによって神経接続された俺の意思を機体が素早く読み取り一瞬のラグも無く機体を上昇させブレードを形成する。続く様にしてメリーゲートが肩部ミサイルのハッチを解放するが、FCS(火器管制装置)がロックオンを行う前に通信が飛んできた。

 

『こちらヴェーロノーク、ごめんなさい、遅れてしまいました、目標が確認できないのですが……もしかして、既に撃破されてしまいましたか?』

 

 申し訳無さそうな声と共に接近する機影、その特徴的な形は間違いない、ヴェーロノークのモノ。一拍遅れて届く味方の識別信号にFCSが自動でロックを外した、背後でメリーゲートの銃口が下がるのが分かった。

 

『作戦開始時刻に遅れるなんて、良いご身分ね……と言いたいけれど、まだ作戦は始まっていないわ』

 

 少し棘のある言葉を吐く嫁、じゃない、メリーゲート。やっほいヴェロたんだ今日も可愛いよハァハァ、じゃない、ヴェロたんをいじめないで! という意味も含めて、まだ敵ネクストが姿を見せていないことを伝える。すると安心したのか、息を吐き出す音が通信越しに聞こえた、何かエロい、ヴェロたんエロい。

 

『良かった……敵ネクストの姿が確認出来ないのですが、まだ作戦エリアへの誘導が完了されていないのでしょうか』

 

『そのようだ、GAからの連絡も無い、最悪、サベージビーストの誘導に失敗したという事態も有り得る』

 

 マジで? マッハでハチの巣にされちゃったの? GA弱い、凄く弱い。

なんて事は流石に無いと思う、ミッション詳細で聞かされていたがGAの別動隊は作戦エリア近隣に展開した実弾防御に優れたハイエンド水上機動部隊だ、ネクストを撃破する事は難しいだろうが誘導程度ならば容易だろう。サベージビーストには偽りの依頼としてGA水上機動部隊の撃破、及び近隣に展開する本隊の襲撃という依頼が飛ばされている。

言わずもがな、この本隊の襲撃というのが俺達の事だ。故に最悪、水上機動部隊を壊滅させたとしても、そのままUターンして帰還するなどと言う事は無い筈だ。

 

 誘導経路は作戦エリアから然程離れていない、更に加えて言えば敵ネクストも火力は貧弱、それこそ有澤重工の有澤隆文、【雷電】の様な機体と比べれば数発、数十発の被弾など有って無い様なモノだろう、彼の機体は実弾武装で固められている。GAは元々実弾防御に優れたパーツを開発する企業だ、それはハイエンドノーマルだとしても同じことが言える。

 総評として、誘導失敗となる事はまずありえない、余程のヘマをしない限りは。

 問題は、GAがその余程のヘマをしたという可能性が出て来た訳で……。

 

『……仕方ない、兎に角GAとの通信が回復するまで作戦エリア内に留ま……』

 

『こちらGA所属、ハイエンド水上機動部隊』

 

 セレンが作戦エリア内残留の指示を出そうとした瞬間、横合いから通信が入った。発信源は付近の海上、主は渦中の水上機動部隊。

 

『…作戦開始時刻は既に回っている、どうなっているんだ?』

 

 指示を遮られた上、GAの不手際で不機嫌だったセレンの不満は爆発寸前だった。結果、一段と低い声で水上機動部隊の通信者を問い詰める。だが、()の通信者は「すまない」とだけ謝罪し、それから俺には理解出来ない言葉を吐いた。

 

『目標ネクストの誘導完了だ、メリーゲート、ヴェーロノーク……周囲の封鎖も完了した』

 

『遅かったじゃない』

 

『了解、ヴェーロノーク、目標を確認』

 

 瞬間、鳴り響くアラート。それは自機がロックオンされていると言う警告、思わず呆然とする俺の代わりにセレンが『何のつもりだ!?』と叫んだ。敵の接近を許した覚えはない、少なくとも周囲に俺をロックオンする様な敵性勢力は居ない筈だった。

 

 警告音は味方からー

 

目の前では未だ識別信号『僚機』である筈の二機から、メリーゲートからは銃口を、ヴェーロノークからはミサイル発射管を向けられている。おかしい、二機は今回味方の筈だろう、識別信号だってグリーンマークじゃないか。

 

『私達、相性が良すぎたのよ……怖いくらいに』

 

『最近弾幕が薄く感じてしまって……貴方が居ないと、満足出来ないんです』

 

 あれ、何かヤバい?

 そう感じた瞬間に俺は右方向へと燃費を考えない全力QBを敢行。その一拍後にメリーゲートの放った大口径の弾丸が遥か遠くのビルに着弾、倒壊させた。

 

『ッ、血迷ったか!』

 

 味方である筈の二機から放たれる弾頭、弾丸、その二機の猛攻から逃れるべくQBを繰り返し離脱を図る。しかし逃がさないとばかりにメリーゲートが距離を詰め、後方からヴェーロノークのミサイルシャワーが迫った。単機ならばやりようがあっただろう、だが火力重視である機体が二機、高速で迫り来る弾丸と追尾性を持つ弾頭を回避し続けるのは神経をすり減らす作業だった。一発でも被弾を許せば機体が硬直し、続けて弾丸と弾頭の雨に晒されるだろう、そうなれば如何に重量機と言えど装甲が破られる。

 加えて、未だ識別信号が僚機である二機をロックオン出来ず、碌な反撃すらままならない状況だった。

 

『識別信号を切り替える! 応戦しろっ、先程の言葉が本当ならば作戦エリアは包囲されている、離脱は困難だ!』

 

 機体の視界から緑アイコンが消え去り、代わりにレッドマークが表示される。ロック制限が解除され、自動的に武装が照準を定めた。やった! これでせめてミサイルの迎撃が出来るぞやっほい! と喜ぶ俺。しかし、それも一瞬の事で再び表示はグリーンマークへと変わってしまう。肩部で展開された速射砲の狙いが逸れ、ロックオンが解除される。

 

『何だこれは……何をした!?』

 

 セレンが切羽詰まった様に叫ぶ、実際俺自身もナニコレ状態だった。いや、別に嫁とヴェロたんを攻撃するつもりは無いけど、せめてミサイル迎撃位はさせて下さい死んでしまいます。

ロックオンが出来ない為発砲しようにも弾丸が明後日の方向に飛ぶのは分かり切っている、辛うじてブレードを使い牽制代わりの斬り込みは可能だが、飛び道具が封じされたのは致命的であった。

みるみると削られていくPA(プライマルアーマー)、被弾はせずとも展開したコジマ粒子の減衰が凄まじい。機体面積よりも広く展開しているPAに弾丸が撃ち込まれ、徐々にその量を減らしているのだ。まさにジリ貧、武装火薬庫の様な重火器満載の両機体からの猛攻は止まらない。

 

 ちょ、えっ、何、何が起こっているんです?

 俺の内面は混乱の極みにあった。

 

 そんな中、網膜投影された視界の端に文字が走る。

 それはGAと結んだ契約、依頼の目標変更について。小さなウィンドに綴られたそれらは、実に空気を読まない変更だった。

 こんなクソ忙しい時に何なんだよと思いながら目を走らせれば、しかし、その内容に思わず機体が傾く。

 

― ミッション内容の変更を確認

 ミッション目標 【ネクスト サベージビーストの撃破】

 

 目標変更― 【メイ・グリンフィールド エイ=プール 両名との永久婚姻契約】

 

― 永久婚約契約

 

 えっ、俺結婚するの?

 

 

 硬直した機体に、ヴェーロノークの誘導弾頭が突き刺さった。

 





だってこういう作品無いんだもん……自給自足するしかないじゃない(´・ω・`)
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