【完結】元の体を取り戻すのです! by.電   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。電の第弐鎮守府の連合艦隊との戦い、後半戦です。今回は少々キャラ視点移動が激しいかもしれません。いっぱいキャラが出てくると、主人公以外の立場にスポットライトを当てたくなるのは私の悪い癖かもしれませんね。

 ~参考資料(現状判明している第弐鎮守府の連合艦隊計12隻の編成内容)~

 第一艦隊:長門、比叡、翔鶴(大破)、島風(中破)、夕立、伊19(大破)
 第二艦隊:武蔵、大井、利根、雪風(大破)、初春、??

※小破艦は戦闘に影響ないので特に記載していません。



3話 理由なんていらないのです!

 

 深海棲艦を沈めるためなら手段を選ばない第弐鎮守府の連合艦隊により、大破にまで追い詰められた暁型駆逐艦四番艦・電。己の艤装が使い物にならなくなった今、電が取るべき選択肢は自然と限られてくる。要するに、自分の艤装がないのなら、相手から奪うしかない。

 

 電は強く海面を踏みしめ、一息に連合艦隊との距離をゼロにする。あっという間に連合艦隊の陣形の中心地に入り込んだ電はククッと膝を曲げて跳び上がり、白露型駆逐艦四番艦・夕立の脳天に「ハァッ!」とかかと落としをお見舞いする。大破状態のはずなのに全くスピードの衰えない電。彼女の動きに全く反応できなかった夕立は為すすべもなく、「にゃあっ!?」と、襲いかかる重圧とともに海面に頭を叩きつけられる。

 

 電は夕立の艤装を彼女から引きちぎるようにして奪い取る。電が夕立の艤装を標的にした理由は簡単だ。夕立の火力が駆逐艦にしては破格だから。先ほど翔鶴型正規空母一番艦・翔鶴を大破に追いやった際、己の速さに全然対応できていなかったから。

 

 

(まだこれほど動けるのか!? 何て奴だ!)

「このッ!」

 

 まるで超常の力を用いて瞬間移動でもしているかのような電の動き。長門型戦艦一番艦・長門は驚愕を禁じ得ない。すぐさま電の位置に砲門を向け砲弾を発射するも、その瞬間には電は別の位置へと移動を終えている。手に入れた夕立の艤装をもって金剛型戦艦二番艦・比叡へ瞬時に距離を詰め、比叡の腹部に砲門を突きつけ連続砲撃を浴びせていく。

 

 

「ひえぇぇええーッ!?」

 

 至近距離での連続砲撃の衝撃で体が軽く宙を舞い。後方へ吹っ飛ばされる中。いとも簡単に大破へと追い込められた比叡は己の無力さをひしひしと感じていた。私はまだまだ弱い。力不足だ。だから、私は電轟棲姫の動きを目で追えない。対応できない。その結果が、このザマ。己の弱さを認めないわけにはいかない。だけど。

 

 

(そろそろ電轟棲姫のスピードに目が慣れた頃じゃないですか? 島風さん?)

「見切ったよ、電轟棲姫!」

 

 敵艦隊のど真ん中にいつまでも留まっていては艦娘たちの集中砲火に遭ってしまう。そのため、比叡を大破にしたのを最後に一旦連合艦隊から距離を取ろうとした電に、島風型駆逐艦一番艦・島風が吠える。電が視線のみ島風へ向けると、島風の持つ連装砲の照準が確かに電を捉えていた。

 

 相手が駆逐艦ならモロに喰らっても問題ない。島風だけでなく、初春型駆逐艦一番艦・初春もまた電の動きを即座に捕捉して電へ砲門を向けている中、電は島風&初春の攻撃を無視しようとする。が、砲口が火を噴く刹那、二名は砲門の向きを微妙に切り替えた。

 

 

(しまったッ!?)

 

 二名の意図を電が悟った直後。電の右目に、電の艤装に砲弾が命中する。島風は考えた。駆逐艦の火力で電轟棲姫の装甲を貫けないのなら電轟棲姫が夕立から強奪した武器をダメにしちゃえばいいと。初春は考えた。駆逐艦の火力で電轟棲姫にまともなダメージを与えられないのなら装甲なんて関係なさそうな、例えば目なんかを狙撃すればいいと。

 

 

「「命中!」」

「ア、グゥ……!」

 

 狙い通りに事が運んだと、島風&初春がそろって歓喜の声を上げる中。右目を潰され、艤装を壊された電はあまりの痛みにその場でフラフラとよろめく。艦娘は人間じゃない。例え目を潰された所で入渠すれば元の体を取り戻せる。深海棲艦だってきっと似たような仕組みだろう。だけど、痛いものは痛い。そのため、これまで目を潰された経験なんてない電は未知の激痛に思わずその場に踏みとどまる。連合艦隊の中心地で。これが致命的な悪手だった。

 

 

「これで終わらせるわ!」

「戦果を上げてらっしゃい、魚雷さん!」

 

 電の足元に複数の魚雷が着弾する。海上の球磨型軽巡洋艦四番艦・大井と海中の海大Ⅵ型潜水艦一番艦・伊168が同時に放ったものだ。いくら電の速さにほとんどの艦娘たちがついていけなくとも、電が動かないのなら速やかに対応できてしまうのだ。

 

 

「~~~ッ!?」

 

 目の痛みに加えて両足からほとばしる別の激痛。電の思考回路は激痛によりまるで機能しなくなり、電は立ち尽くす。その場から動けなくなってしまう。

 

 

「今だ、撃てぇぇええええええええええ!!」

 

 電轟棲姫が棒立ちになっている。その隙を逃す長門ではない。長門は号令を放つ。そして放たれる、長門、島風、大和型戦艦二番艦・武蔵、大井、利根型重巡洋艦一番艦・利根、初春、伊168の砲撃&雷撃。大破してしまった比叡、翔鶴、伊19、陽炎型駆逐艦八番艦・雪風及び艤装を電に奪われ何もできない夕立を除く連合艦隊総員による総攻撃が繰り出される。

 

 電は次々と被弾する。何一つかわせぬまま、その身に全ての攻撃をただただ喰らってしまう。この時、電轟棲姫と第弐鎮守府の連合艦隊との戦いの勝敗は完全に決した。

 

 

「……終わったな」

 

 電の周囲を煙が包み込む中。長門は一言、口にする。自分たちが放った砲撃には確かな感触があった。手ごたえがあった。あれだけの砲弾を浴びた以上、もはや電轟棲姫の轟沈は確実だ。そのはずなのだ。しかし。長門の想定は、またも覆された。

 

 

「なにッ!?」

 

 長門は絶句する。煙が晴れた先。長門の眼前に映ったのは、未だ両の足で海面をしかと踏みしめる電の姿だった。その身は酷くボロボロで、轟沈レベルを既に超えている。そのはずなのに。電は沈まない。それどころか、ギンと向けられた電の両眼はあくまで自分達との戦いを継続しようとの気概にあふれていて、どこまでも不屈だった。

 

 

「なぜ、だ」

 

 気づけば、長門は問いかけていた。

 

 

「なぜだ。まだ、戦うつもりのか? 勝敗は決した。もう、貴様に勝ち目はないのだぞ?」

 

 連合艦隊を代表した長門の問いかけに、電は答えない。ガクッと膝からくずおれ、海面に膝をつく。その様から、もう電轟棲姫に戦う力が残っていないのは明らかだ。なのに、電はすぐに立ち上がろうとする。「ウ、ク……」と苦しそうに呻き声を漏らしながらも震える両足で体を支え、体勢を立て直す。あくまで長門たちに立ち塞がる姿勢を見せる。

 

 

 

「……友達ヲ守ルノニ、理由ナンテ、イラナイノデスッ!」

 

 電はスゥゥとゆっくり息を吸い、長門の質問にありったけの声量で答える。実の所、これまでの電の頑張りにより、奈落棲姫は十分遠い所まで逃げることができていた。これ以上、電は時間稼ぎをしなくていいのだ。しかし、今の電はもうわかっていない。多量の容赦ない砲撃&雷撃で吹っ飛んでしまったため、今の電に理性は残っていない。もはや正常な思考能力は残っていないのだ。だからこそ、電は奈落棲姫を沈ませないためにボロボロな体を酷使して長門たちに立ちはだかる。

 

 今の電を突き動かすのは、意地。何もかも優先し、全てを得ようと欲張ったがゆえに、譲れない。意思の塊。その意地が、今もなお電を突き動かしているのだ。

 

 

「……敵ながら天晴、というべきか。ならば、完膚なきまでに沈めてやる」

 

 一歩一歩。ゆっくりと長門たち連合艦隊へと歩みを進める電。もう電轟棲姫は戦えない。それでも自分たちに歯向かおうとする。どこまでも憎らしい。どこまでも愚かしい。それでも。長門は眼前の深海棲姫を、これまで出会った深海棲艦とは一線を画した存在だと認めた。認めたからこそ、ここで容赦なく沈めるべきだ。長門は方向の標準を電に固定する。が、長門が砲撃することはなかった。砲撃するまでもなく、電轟棲姫が瓦解したのだ。

 

 

「ア、アレ? ナンデ? オカシイ、ノデス……」

 

 前へ前へと踏み出す電の足が、ふと水面を貫いたのだ。沈む右足。バランスを崩した電は左足で水面を強く踏みつけて、沈みかけた右足を海上へ戻そうとする。しかし、左足でも海面を踏むことができない。電は沈むことしかできない。もがき、どうにかして海上に体を持ち上げようとしても、電はただ溺れていく。彼女の体は逃れようもなく、ただ海中へ沈んでいく。そして、電の力ない抵抗虚しく、彼女の体は海中へ呑み込まれた。

 

 沈む。沈む。体が海に沈んでいく。体が終わりを感じている。薄れゆく意識。脳内を走り去っていくのは、走馬燈。艦娘として二度目の生を受け、第参鎮守府で過ごした日々。深海棲艦としてよみがえってからの激動の日々。ふと、電の脳裏に暁型駆逐艦参番艦・雷の言葉が蘇る。

 

 

――貴女が艦娘の体を取り戻せたとしても、そうでなくとも、私たちには電が生きて戻ってくることが一番重要なの! そのことを絶対に忘れないで! 無茶やって轟沈でもしたら承知しないんだから!

 

 

(ごめんなさい、雷お姉ちゃん。私、約束を守れなかったのです……)

 

 ツゥと目尻に浮かんだ涙を勝手に海が拭ってしまう中。

 目を開いていることすら辛くなって、電はスゥと目を瞑る。

 そうして。電の意識はプツリと途絶えるのだった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

(電轟棲姫、奴は強敵だったな……)

 

 電が轟沈し、海中に没したのをしかと確認した長門は戦闘体勢を解除する。脳裏に浮かぶは、先まで戦っていた電轟棲姫の姿。電轟棲姫は強かった。装甲の頑丈さ。艤装の火力。電轟棲姫の素早さ。巧みな戦術。どれも脅威だった。電轟棲姫の発言通り、奈落棲姫とは確かに格が違った。だが、何より厄介極まりなかったのは。

 

 

――友達ヲ助ケルノニ、理由ナンテ、イラナイノデスッ!

 

 

 あの気迫。あの強く気高い意志だ。あの雄叫びが、今も己の鼓膜を反響させている。体を震わせている。そう。この私が、戦艦長門が、奴に震えているのだ。これを脅威と言わず、厄介と評せずにいられようか。

 

 

(ここで倒せてよかった)

 

 もしも今回で倒せていなければ、電轟棲姫はさらなる脅威へ変貌し人類に牙を剥いたことだろう。長門はホッと安堵の息を吐く。その後、視線を奈落棲姫が逃げ去った方向へ注ぐ。電轟棲姫に随分と時間を稼がれてしまった。これでは大破艦のみ帰投させ、残りのメンバーで追撃をかけようにも、奈落棲姫に追いつけはしないだろう。

 

 

(まぁいい。次で仕留めるまでだ)

 

 長門が連合艦隊に帰投指示を出そうとした時、海中の伊168がサバァッと海水をかき分けるようにして海上へ姿を現す。「ふぅ、何気にここまで持ち上げるのって苦労するわね」と軽くため息をつく伊168が両手に抱えているのは――電轟棲姫。

 

 

「……何のつもりだ、イムヤ?」

「え、何よ? もしかして、私が深海棲艦なんかを助けたとでも思ってるの?」

「違うのか?」

「違うわよ。だからそんな殺気込めて睨まないでよね」

 

 先ほど沈めた電轟棲姫を水上までわざわざ持ち上げてきた伊168。彼女の意図が読めず、長門は睨む。が、当の伊168は熟練の戦艦に睨みつけられているというのに、いつもと何ら変わらない態度で電轟棲姫を放置しなかった理由を口にする。

 

 

「この電轟棲姫は凄まじく強かった。装甲、火力、素早さ、そして戦術。どれも目を見張るものがあった。それに奈落棲姫や他の深海棲艦へのあの態度……まず何よりも人類への復讐心から動く深海棲艦として、電轟棲姫はあまりに異質だと思わない?」

「……だからどうした?」

「一旦、電轟棲姫を鎮守府に回収するべきよ。大本営に渡して解析してもらえば、得られるものがあると思うしね」

「なッ、ふざけるな! 私たちの第弐鎮守府に敵を入れるというのか!?」

「冷静になってよ、長門さん。人類の勝利のために、深海棲艦についてわかっていないことを暴こうと考えるのは別におかしなことじゃない。気持ちはわからなくないけど、私情に囚われすぎて目の前に転がる利を逃すのはさすがに視野狭窄だわ。もっと大局を見て、何が最善か考えてよ」

「……」

 

 伊168の呆れの入った説得に長門は押し黙る。確かに、己は少々熱くなりすぎていた。長門は内心で反省する。そして改めて伊168がもたらした提案を吟味する。

 

 よくよく考えれば、電轟棲姫を大本営に引き渡すのは悪くない選択肢だ。電轟棲姫は今まで出会った姫級の深海棲艦とは確実に違う。その異質な部分が、深海棲艦を殲滅できる要素になり得るかもしれない。可能性がゼロでないなら、わざわざドブに捨ててやることはない。

 

 

「全艦、これより帰投する! 電轟棲姫は……イムヤ、いいか?」

「まぁ、私が言い出したことだしね。わかったわ、私が運ぶ」

「任せた」

 

 かくして。連合艦隊12隻は第弐鎮守府へ帰還する。

 結果。艦娘を誰も轟沈させずに奈落棲姫が逃げる時間の確保に成功したものの、連合艦隊相手に敗れてしまった電は、鹵獲された。

 

 




電→深海棲艦の体に艦娘の心を宿した暁型駆逐艦四番艦。さすがに大破状態からの大逆転はできなかった模様。今回は結構イケメン主人公補正がかかっていた。
夕立→第弐鎮守府所属の白露型駆逐艦四番艦。速攻で電から艤装をはぎ取られる不遇ぽいぬ。
長門→第弐鎮守府所属の長門型戦艦一番艦。電個人にそれなりに敬意を抱いたが、深海棲艦へのヘイトはこれっぽっちも晴れてはいない。
比叡→第弐鎮守府所属の金剛型戦艦二番艦。今回の「バカな、早すぎる……!」ポジション。
島風→第弐鎮守府所属の島風型駆逐艦一番艦。今回の勝利MVPを獲得したキャラ。電の速さについていける辺り、普段から己の速さを主張しまくっているだけのことはある。
初春→第弐鎮守府所属の初春型駆逐艦一番艦。今回の勝利MVPを獲得したキャラ・その2。普通に砲撃しても通じないからって電の目を狙おうというアイディアがすぐ浮かぶ辺りがヤバい。
大井→第弐鎮守府所属の球磨型軽巡洋艦四番艦。ここの大井さんはまだクリーンです(当社比)。
伊168→第弐鎮守府所属の海大Ⅵ型潜水艦一番艦。つっけんどんな物言いながらも何かと面倒見のいいのがデフォルト。電轟棲姫実験体ルートを真っ先に長門へ提示した。
武蔵→第弐鎮守府所属の大和型戦艦二番艦。あんまり目立つことができなかった。
利根→第弐鎮守府所属の利根型重巡洋艦一番艦。吾輩っ娘という強烈な個性があるのに、あんまり目立つことができなかった。

 というわけで、第2章3話は終了です。電は敗北、でもって第弐鎮守府へ鹵獲されちゃいました。まぁいくら電のスペックが高くとも、練度の高い連合艦隊相手に縛りプレイを所望したのは無理があったということですね。はてさて、電の行く末やいかに。


 ~参考資料(最終的な第弐鎮守府の連合艦隊計12隻の編成内容)~

 第一艦隊:長門、比叡(大破)、翔鶴(大破)、島風(中破)、夕立(中破)、伊19(大破)
 第二艦隊:武蔵、大井、利根、雪風(大破)、初春、伊168

※小破艦は戦闘に影響ないので特に記載していません。


 ~おまけ(もしもシリアス極まりない前話が途中で急にギャグ時空になったら)~

伊19「イクの悩殺☆だいしゅきホールドなのね! 相手は死ぬのね!」

 伊19の豊満な胸がむぎゅーっと押し付けられる!
 電の、深海棲艦の体になってなお艦娘の頃と変わらない貧相な胸に押し付けられる!

電「……」

 何を思ったか。電は右手を持ち上げ、拳を握り、伊19の頭を殴りつける。
 ドゴォッと響く重低音。「みぎゃッ!?」と悲鳴を上げ、気絶し、海中に沈む伊19。

長門(ちッ、作戦は失敗か。にしても、電轟棲姫の様子が変わったような……?)
電「……気ガ変ワッタノデス。コレカラハ、私ヨリ胸ノ大キイ艦娘ハ皆ジェノサイドナノデス」
長門たち「「「「ッ!?」」」」

 ぷらずまちゃん、爆誕☆
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