どうも、ふぁもにかです。つい先日この作品の感想欄を見返してみて知ったのですが、ハーメルンでキャラにセリフを喋らせる会話形式の感想はダメになっているみたいですね。検閲され、一部感想が見られなくなっていたので非常に驚きました。私自身、感想返信で時々自作品キャラでの会話形式を利用させてもらっているのですが、これってセーフなのでしょうか。ちょっとばかり不安を抱えつつ、最新話投稿なのです!
P.S.一部感想が見られなくなってるとなると、前のように感想文字数をカウントしてランキングする際、正確な結果が得られなくなっちゃうでは……いえ、何でもありません。
時は少々さかのぼる。
「――ねぇ。1つ提案があるんだけど、聞いてくれない?」
ズタボロ状態のまま第弐鎮守府の営倉に放り込まれた、ただいま絶体絶命な暁型駆逐艦四番艦・電の元を訪れた海大Ⅵ型潜水艦一番艦・伊168。「提案、ナノデス?」と電が訝しげに伊168を見つめると、彼女は電の想定の遥か埒外なことをあっさりと口にした。
「もしも貴女がここから脱出するつもりなら、牢から出してあげる。だから、その代わりに……私も一緒にここから連れていってくれない?」
「……エ?」
伊168のまさかの提案に電は理解が追いつかず、少々絶句した後に驚きの声を漏らす。目をパチクリとする電。無理もない。第弐鎮守府は深海棲艦へ酷く憎しみを抱えている。なのに、その第弐鎮守府所属の艦娘が深海棲艦の利益になる申し出をしてきたのだから。
「ドウシテ? 何ガ狙イナノデス?」
「今は詳しく話すつもりはないわ。時間の無駄だしね。それに、貴女だってこのまま大本営の実験体になるのはお断りでしょ? だったら、私の意図を気にしてる場合かしら? バッドエンドを迎えたくないのなら、私の提案を断る余地なんかないと思うけど?」
「ウ……」
「私は第弐鎮守府から一時的に離脱したい。でも、この鎮守府の異常さは貴女もよくわかってるでしょ? 今の第弐鎮守府から一人こっそり抜け出したら、どう書き置きで釈明しても『深海棲艦との戦争から逃げ出した腰抜け女』の烙印を押されちゃって、私の帰る場所がなくなっちゃうの。最悪、裏切り者って決めつけられて次に出会ったら轟沈させられかねないわね」
「ナッ!?」
「だからこそ。貴女には私を拉致しつつ逃げ出してほしいの。そうしたら、私は『深海棲艦との戦争から逃げ出した腰抜け女』から『深海棲艦に連れさらわれた悲劇のヒロイン』の立ち位置を確保できるからね」
「……」
「で、どうするの? 私の提案に従う? それとも突っぱねる? あんまり時間に余裕はないから、1分で決めて」
時間の無駄と言いつつも簡潔に電にやってほしいことを伝えてきた伊168。彼女は電に長考させないようにあまりに短い時間制限を設けてきたが、電は悩まなかった。第弐鎮守府からの一時的な離脱を求める伊168の意図はわからない。でも、大本営に引き渡される時に抵抗するより、今このタイミングで営倉から逃げ出した方が脱走できるチャンスは高くなる。悩むまでもなかった。
「要スルニ、私ハ貴女ヲ人質トシテ誘拐シタヨウニ見セカケレバイイノデスネ?」
「そういうこと」
「ワカリマシタ。ソノ提案、乗ラセテモラウノデス」
「貴女ならそう言ってくれると思ったわ」
電は伊168の提案の内容を今一度確認し、受け入れる。電の即決具合に伊168が満足そうに口角を吊り上げる中、電は「デモ」と言葉を続ける。伊168の提案を実行に移すにあたって、別の深刻な問題が浮上したからだ。
「コノ体デハ脱走ノ成功確率ハゼロニ近イノデス。艤装モナイデスシ、ソノ辺ハドウスルツモリナノデスカ?」
伊168を誘拐したと第弐鎮守府の面々に誤解させるには、こっそり第弐鎮守府を逃げ出すわけにはいかない。『電轟棲姫が伊168を人質に脱走しようとしている』ことを第弐鎮守府側に認識させ、その上で第弐鎮守府の包囲網を突破して派手に脱走しないといけないのだ。だが、今の電は轟沈一歩手前の状態で放置されている。加えて艤装もない。こんな状態では第弐鎮守府の練度の高い艦娘たちを強行突破して脱出なんてできるわけがないのだ。
「だいじょーぶ。ちゃんと高速修復材をくすねてきたから。深海棲艦に効くかどうかわからないけど……ま、心配ないでしょ」
伊168は電の心配事に待ってましたと言わんばかりに後ろ手に持っていた緑色のバケツを見せつける。その後、電と伊168とを物理的に隔てる鉄格子の鍵を開けてスタスタと電との距離を詰めた伊168は、「それッ」とバケツ内の液体を電の全身にぶちまけた。
「ワプッ!?」
事前の声かけなしに急に高速修復材を浴びせられた電は可愛らしい悲鳴を上げる。ギュッと反射的に目を瞑る電のズタボロな体は見る見るうちに回復し、ほんの十数秒で、瞬く間に完治する。
「よし、ちゃんと効いたわね。高速修復材ってホント便利ね」
「チョット! 修復材ヲカケルナラ前モッテ言ッテホシイノデス!」
「あはは、ごめんごめん」
あっという間に轟沈一歩手前状態から無傷状態になった電はバッと立ち上がり、伊168に文句をぶつける。対する伊168は軽く謝るだけで、己の行いに思う所はないようだ。
「あと、はい。艤装。さすがに貴女が持ってた艤装は壊れちゃうわ沈んじゃうわで回収できそうになかったから、夕立の艤装で我慢してもらえるかしら? 前に戦った時は夕立の艤装を奪って平気そうに使ってたし、いけるでしょ?」
「ハイナノデス。デモ、コレマサカ――」
「――お察しの通り、これもこっそりくすねてきたわ……って、何よその目?」
「テ、手癖ガ悪イノデス……」
「何とでも言いなさい。私は合理的な手段を選んだまでよ」
伊168は電の呆れの感情が多分に含まれた視線を一切気にすることなく、いっそ清々しいほどに開き直る。その様は、完全に無防備。自身の目の前にいるのは第弐鎮守府の連合艦隊を半壊させた恐るべき存在だと言うのに、伊168は電をこれっぽっちも警戒していない。
「1ツ、聞イテモイイデスカ?」
「1つだけならね。なに?」
「ドウシテ、ココマデ私ヲ信用シテイルノデスカ? 第弐鎮守府ヲ離脱スルタメトハイエ、躊躇ナク私ニ高速修復材ヲ使ッテ、艤装マデ渡シテ……私ガ貴女ノ提案ヲ反故ニシテ、今ココデ貴女ヲ殺シテ、ソレカラ単騎デ脱走スルカモシレナイトカ、考エナイノデスカ?」
「当然、考えないわ」
「ドウシテ?」
「そんなの簡単よ。貴女、私たちを轟沈させないように意識して戦っていたでしょ?」
「ッ!?」
「潜水艦として海中から、少し離れた場所から戦場での貴女の動きを見ていたから、よくわかったの。貴女はあの時、大破までで攻撃を止めていた。いや、違うわね。艦娘を轟沈させたいという深海棲艦としての欲求を無理やり理性で抑え込もうとしていた。そうじゃなかったら、翔鶴さんや比叡さん辺りは絶対に轟沈していたわ。だから、貴女のことは信じられる。奈落棲姫を守るために現れて、私たちを轟沈させないように気を遣って……そんな、深海棲艦にも艦娘にも甘く優しい貴女だからこそ、信じられる」
「……」
「ま、仮に裏切られたとしたら私の見る目がなかっただけの話よ。そこはもう割り切るわ。でも、私がこれだけ信じてあげてるんだから、貴女にはぜひ応えてほしいわね?」
伊168は曇りなき両眼で電を見つめ、己が電を警戒しない理由を告げる。伊168から寄せられる全幅の信頼。電もまた、伊168を警戒することをやめて、伊168の問いかけに首肯する。伊168の行動の意図は相変わらずわからないままだが、ここまで純粋に100%の信用を向けられては、疑ってかかる方が失礼だ。
「あ、そうそう。私は伊168。呼びにくいでしょうし、イムヤって呼んで」
「ワカリマシタ。私モ電轟棲姫ジャ長イカラ『デンチャン』ッテ呼ンデホシイノデス」
「了解したわ。それじゃ今から私は気絶した風を装うから、デンちゃんには私を抱えて脱走してほしいんだけど……心の準備はいいかしら?」
「モチロンナノデス、イムヤサン!」
「頼もしい返事ね、その意気よ」
ここで。自己紹介がまだだとのことで伊168が己の名を告げ、電も奈落棲姫に付けてもらったあだ名を伊168に伝える。そうして、お互いの名を共有した後。伊168を形式的に人質に取ったと見せかけた上での電の第弐鎮守府脱出劇が幕を開けた。
「さて。茶番なプリズンブレイク(笑)を始めるわよ! 脱走ルートは随時教えるからよろしくね、デンちゃん! 失敗だけは絶対にしないでよね!」
「ハイナノデス!」
電→深海棲艦の体に艦娘の心を宿した暁型駆逐艦四番艦。夕立の艤装を装備し、伊168を抱えた状態での脱走に挑むこととなった。伊168を抱えるという縛りはあるが、伊168が逃走ルートを教えてくれるため、イージーなのかハードなのかわからない逃走劇となる模様。
伊168→第弐鎮守府所属の海大Ⅵ型潜水艦一番艦。何らかの思惑の元に第弐鎮守府からの一時的離脱を目論み、電に接触する。戦闘後、轟沈した電を回収したのは、電の言動から信用に値すると判断し、電の脱出の際に自分もついでに連れ出してもらうため。
というわけで、第2章6話は終了です。何か電への信頼度が最初から最大値っぽい伊168から、電にとって非常に助かる提案を持ちかけられる話でしたね。片や深海棲艦を憎みまくっている鎮守府所属の艦娘。片や元艦娘のメチャクチャ強い深海棲姫。異色の2人が組むことは、はたして今後どのような展開をもたらすのだろうか。