【完結】元の体を取り戻すのです! by.電   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。以前の作品を完結させた時に絶筆を宣言したくせに何を血迷ったのか次回作を投稿しやがった有限不実行野郎です。次回作を投稿する時はあらかじめ最終話まで仕上げてから隔日更新するとか言っていたくせにストックを全然溜めてない状態での見切り発車をやりやがった野郎です。リアル生活の忙しさが拍車をかけていますのでどこまで連載できるかわかりませんが、だからこそ行けるまで連載していこうと思います。連載は不定期更新、できるなら週一更新としたい所存です。それでは、シリアスまみれの艦これをどうぞ!



プロローグ 歪んだ再誕
1話 鎮守府に帰るのです!


 

 深海棲艦。それは、文字通り深海からの襲撃者である。

 いつからだろうか。深海を制覇し、太平洋を起点に、次は地上だと言わんばかりに兵を差し向けた者たち。既存の兵器では深海棲艦を倒せない。ならば少しでも被害を減らそうと交渉しようとも、深海棲艦は人間を酷く恨んでいるために実現できない。人間に深海棲艦への対抗手段はなく、ただただ制海権は奪われゆくばかり。思わぬ外敵の出現に世界は1つになるも、いくら世界が結束しようと抵抗手段がなければ全くの無為だった。

 

 あくまでも深海棲艦による一方的な蹂躙で。どこまでも人間は奪われる側で。打開策を見失った人間は絶望の一歩手前まで追いやられた。だが、ここで。絶望しかけた人類側に希望が生まれた。深海棲艦と対抗できる存在が唐突に現れたのだ。

 

 艦娘。かつて製造された船の魂が人間ベースの体とともにこの世に蘇った存在だ。

 妖精という、なぜか人間に味方する全く謎の存在により生成される艦娘は深海棲艦の支配を少しずつ押し返し。現状。人間と深海棲艦との戦争は均衡状態が続いている。

 

 深海棲艦はなぜ生まれたのか。深海棲艦はなぜ侵略を、人類への復讐を望むのか。

 艦娘はなぜ生まれたのか。なぜ妖精は人間に手を差し伸べてくれるのか。

 

 根本的な謎は何も解けぬまま、長い戦争は今もなお継続している。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 沈む。沈む。体が沈んでいく。

 体が終わりを感じている。感じるのは、痛み。沈んでいく、恐怖。

 海底へと進むにつれ、闇が広がり、光が消え、己の体が闇に呑まれていく恐怖。孤独。

 

 しかし、艦娘たる少女は満足していた。

 己の身と引き換えに、大切な存在を守ることができたからだ。

 無駄死にではなく。誰かのための死。

 このような手段しか取れなかったことに、大切な存在に悲しい思いをさせてしまうことに罪悪感を感じる一方、少女の心は満たされていた。

 

 少女は沈んでいく。垂直に沈み、かと思えば海流に流され。

 海中を漂いつつも、少しずつ。少しずつ沈んでいく。

 

 1秒1秒が酷くゆっくりと流れているような不思議な感覚の中。少女は自身の意識がいよいよなくなっていくのを感じた。当然だ。海中で平然といつまでも生きていられる存在は、海洋生物か、深海棲艦か、艦娘の中でも潜水艦ぐらいなものなのだから。

 

 

(次に生まれてくるときは……平和な世界だといいな……)

 

 少女は願う。ポツリと。心の中で。

 少女の切なる願いは泡と消え。少女はわずかに開いていた目を閉じようとした。

 が、少女はふと気づく。自身の真下に。海底に、何か機械的なものがガシャンガシャンと音を立てて蠢いていることに。

 

 

(あれは、なに……?)

 

 いびつな形をした黒い歯車が幾重にも折り重なり、ガシャンガシャンと重厚な機械音を奏でている。怖い。まるで巨大な魚にでも呑み込まれてしまいそうな感覚に少女は体をブルリと震わせる。しかし、少女の体はピクリとも動かない。ゆえに、逃げられない。少女の体はただただ黒い歯車の機構の中に吸い込まれゆくだけだ。

 

 助けて。心の怯えのままに放つ願望は、当然ながら誰も聞き入れることはない。

 謎の機構への恐怖を最後に、少女の意識はここで途切れる。

 

 その後、海底に音が1つ、響いた。

 その音を少女が拾うことはなかった。

 

 

 ――ようこそ、暁型駆逐艦四番艦・電。私とともに憎きニンゲンに復讐をしましょう。醜く愚かなニンゲンに、死の鉄槌を。ふふッ。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「くそッ!」

 

 旗艦たる天龍は悪態をついた。天龍は第参鎮守府に所属する艦娘である。少しでも深海棲艦に奪われた海域を取り戻すための厳しい戦いに身を落とし、本日は連戦の果てに艦娘の犠牲なしにまた1つ、海域の奪取に成功していた。編成を組んだ艦娘6隻。内、小破2隻。中破1隻。大破なし。轟沈なし。文句なしの素晴らしい戦績を引っさげて、天龍は第参鎮守府に帰る予定だったのだ。

 

 が、そこで新たな1隻の深海棲艦と出くわした。深海棲艦の量産型のような、人間とかけ離れた異形の姿ではない。肌が病的なまでに白いことさえ除けば、艦娘だと言っても通じそうな容姿。駆逐艦の艦娘たちと同程度に小柄で幼い容姿を引っさげた1隻の深海棲艦。しかし。天龍は直感で悟った。眼前の存在が、姫級であると。

 

 深海棲艦には人類側によって階級付けされている。その中でも姫級の深海棲艦は危険度が段違いであり、艦娘単騎ではまず勝てない。きちんと部隊を編成して、数の暴力を頼りに集中攻撃しなければ、姫級を撃破できないのだ。有象無象の雑魚深海棲艦とは明らかに一線を画す強さはまさしく『姫』。姫の名の通り、配下に大量の深海棲艦を従えさせうるだけの実力を持っているのだ。

 

 ゆえに。姫級は決して任務を終えた『ついで』で倒せるような存在じゃない。いくら艦娘たちへのダメージが微小だろうと、ダメージが存在するのであれば想定外な姫級との戦闘を行うべきではない。だというのに、本日は運悪く第参鎮守府への帰還ルート上で姫級の深海棲艦とエンカウントしてしまったのだ。舌打ちの1つもしたくなるし、悪態もつきたくなるというものだ。

 

 

(駆逐棲姫に似てるけど、同じじゃない。新種の姫級って所か!)

「撃てぇぇええええええ!」

 

 天龍は旗艦として指示を下し、姫級へ砲撃を集中砲火させる。ズダダダダダァァァンと爆音が連続して天龍たちの鼓膜を打ち付ける中、天龍の眼は確かに砲撃が姫級に全弾命中したことを捉えた。しかし姫級の周囲を包む黒煙が晴れると、そこには無傷の姫級の姿。姫級は砲撃なんてなかったと言わんばかりに一歩一歩海面を歩き、天龍たちとの距離を詰めていく。

 

 天龍たちは決死の覚悟で再び一斉砲撃を開始する。天龍たちに撤退するつもりは一切ない。なぜなら、眼前の姫級は一心不乱に一直線に歩いているからだ。その方向の先に天龍たちがいる。天龍たちの所属する第参鎮守府が鎮座している。退くわけにはいかなかった。

 

 

(こいつは多分、鎮守府の場所をわかってる。このままじゃヤベェ、ここで絶対に息の根を止めてやる!)

 

 天龍は砲撃がまるで通じていない様子な姫級を前にそれでも砲撃指示を止めない。姫級の装甲の硬さは筋金入りであり、例え傍目からしたらノーダメージっぽくても根気よく攻撃を続けることこそが姫級攻略の大事な要素だからだ。

 

 だが、ここで。天龍たちは徐々に違和感に気づいた。姫級が一切の攻撃をしないのだ。小柄な体にごつい艤装を積んでいるというのにたった一度も攻撃せず、天龍たちの繰り出す砲撃を避けもせず、迫りくる全ての攻撃をただ無防備に喰らうのみなのだ。

 

 

「余裕だって言いたいのかよ、ふざけんなッ!」

「ちょっと、天龍!?」

 

 舐められている。姫級の態度をそう捉えた天龍は己の視界が真っ赤に染まった錯覚とともに、姫級へと駆け出す。砲撃が効かないのなら斬り殺してやると己の愛刀を壊れんばかりに握りしめ、北上の動揺の声を無視してまっすぐに姫級へと接近しようとした。その時――。

 

 

「支援艦隊! 来たわよ!」

「おお! 良いタイミングだ。助かるぜ、雷!」

 

 援軍として戦場に現れた雷たちの姿に天龍は事態が好転したと表情を喜色に綻ばせる。一方。支援艦隊の艦娘5隻を引き連れて戦場へやってきた雷は砲撃の弾幕をお見舞いする対象としてどこまでも敵意の存在しない姫級を見据え、愕然と目を見開いた。

 

 

「え――」

「雷? どうした、大丈夫か?」

 

 まるでこの世に存在するはずのない物を見てしまったかのような反応を見せ、その場に硬直する雷に支援艦隊の菊月が怪訝な眼差しとともに問いかける。直後、雷は駆け出した。支援艦隊の旗艦として一斉砲撃の指示を飛ばすことなく、艤装を構えることもなく、「あんたまさか――!!」と声を荒らげながら一直線に姫級の元へと接近し始めた。

 

 

「なぁ!? 雷、お前何やってんだ!?」

「電! ねぇ、電! 電なんでしょ、ねぇ!」

「雷、しっかりしろ!? なんでここで電の名前が出てくるんだ!? お前の目の前にいるのは深海棲艦だぞ!」

「違う! あれは電よ! 私にはわかる!」

「ッ!?」

 

 天龍が雷の暴挙を防ごうと雷の右手を掴んで正気に戻そうとするも、雷の鬼気迫る表情に思わず気圧される。結果、右手を掴む天龍の握力が弱まった隙をついて天龍の手から逃れた雷は一目散に姫級の元まで迫っていく。

 

 

「電! あんたなんでしょう!?」

「……」

「答えなさい、電ぁぁああああああああ!」

 

 雷は吠える。雷が近づいてきてもあくまで無防備な姫級の両肩をガシリと力強く掴み、前後に揺らしながら問い詰める。が、それでも沈黙と無表情でしか返事をしない姫級に雷はブチ切れた。艦娘になってから一番怒っているのではないかと思えるほどの怒声を姫級にぶつけた。雷の怒りは凄まじく、雷の小さい両手は姫級の両肩を握り潰してしまいそうなイメージを抱けるほどである。

 

 

「……雷、オ姉チャン?」

 

 雷の問いを最後に周囲が静寂に包まれる中。やや経過した後、両目に理性的な光を灯した姫級が答えた。確かに雷の名前を口にしたのだ。深海棲艦が知るはずのない雷の名前が飛び出たことに天龍たちが「まさか……」と目を見開く中、雷は喜色に満ちあふれた笑みを形作った。

 

 

「ッ! やっぱり、やっぱり電なのね! 帰ってきてくれたのね!」

「ウン」

 

 見た目は違う。声も違う。でも、姉だからか、雷にはわかった。目の前の姫級が、電なのだと。1か月前、自分を庇って轟沈してしまった妹が、帰ってきたのだと。そして、当の姫級も雷に答えてくれた。これで目の前の姫級が電だという事実は揺るぎないものとなった。

 

 

「ヨカッタ。帰ッテ、コレタノデス」

 

 姫級――もとい電は、さっきまでの無表情っぷりは何だったのかと問いかけたくなるような安堵の表情とともに、力なくその場に倒れ伏せる。電の体を支えてくれる姉の雷に全てを委ねてゆっくりと目を閉じる。かくして。1か月前に轟沈した暁型駆逐艦四番艦・電は艦娘とは変わり果てた姿となってかつて彼女の所属していた第参鎮守府に帰還するのだった。

 

 




電→第参鎮守府に所属していたものの、1か月前に轟沈した暁型駆逐艦四番艦。1か月の時を経て、姫級のハイスペックな体を引っさげて第参鎮守府に帰ることとなった。
雷→第参鎮守府所属の暁型駆逐艦三番艦。今回はやけに男前だった印象。どれだけ姿が変わろうと、電だと即座に悟る辺りがお姉ちゃんの鏡。
天龍→第参鎮守府所属の天龍型軽巡洋艦一番艦。第参鎮守府では古株であり、古株相当の実力を有している。
北上→第参鎮守府所属の球磨型軽巡洋艦三番艦。天龍のストッパー的役割を担っているが、あんまり役割を果たせていない模様。
菊月→第参鎮守府所属の睦月型駆逐艦九番艦。色々と個性的な艦娘の中では比較的落ち着いた性格をしている。

 というわけで、プロローグ1話が終了です。まずはテンプレ深海棲艦化な展開で始まる物語。段々と他作品との差異を表出するつもりですが、まだ先のこととなりそうです。にしても、艦娘同士の名前の呼び方が間違ってそうで激しく不安でござる。
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