どうも、ふぁもにかです。今回から第3章です。ちなみに、この作品は第4章で最終章となりますので、現時点で起承転結の転に差し掛かった感じになりますね。……あ、これもしかしたら50話どころか40話完結とかになりそうです。
1話 誤解が加速するのです!?
ボロボロの奈落棲姫を逃がしたものの自身が鹵獲される。が、何だかんだで第弐鎮守府から脱走し、存分に距離を離した暁型駆逐艦四番艦・電。海大Ⅵ型潜水艦一番艦・伊168という旅仲間を手に入れられた電は休息を取るため、近くの無人島で夜を明かした。そして、翌日。
「……さっきから水面ばっかり見てるけど、何してるの?」
「魚ノ群レヲ探シテイルノデス。群レノアル所ニナッチャン有リナノデス」
「ナッちゃん?」
「ハイ、私ノ友達ナノデス。イムヤサンニハナッチャント会ッテホシイノデス」
「友達、ねぇ」
(多分、そのナッちゃんって深海棲艦よね? 見た目艦娘の私が会って大丈夫なのかしら?)
電は奈落棲姫を探すために姫級スペックを誇る両眼で海面下に視線を注いで魚の群れ(特にイワシ)を探しつつ、テクテク海面上を歩く。一方。伊168は電の友達と自分との邂逅が何をもたらすか読めないため、不安に眉を寄せる。以前、電と戦うことになった際、電が庇い逃がした奈落棲姫のことを『ナッチャン』と呼んでいたことに伊168は気づいていないのだ。と、ここで。電は深海からの来訪者に気づき、「アッ」と声を上げる。直後、海面にザバァと空母ヲ級が顔を出す。
「く、空母ヲ級……?」
「オハヨウゴザイマス、ヲ級サン」
「……」
電が空母ヲ級に挨拶をすると、電轟棲姫の補給を担当しているらしい空母ヲ級は例のごとく無言で燃料入りのドラム缶を海上まで持ち上げ、電に押し付けようとして、ピシリと固まった。その視線は電の背後の伊168に固定され、空母ヲ級の両眼からは敵意がにじみ出ている。
「……」
「ヲ、ヲ級サン! イムヤサンハデスネ、エット――」
空母ヲ級の来訪が突然だったため、まだ電轟棲姫の自分が艦娘の伊168を連れ歩く建前を用意していなかった電は慌てて理由を考えようとする。が、ここで。伊168が動いた。こっそり艤装の中から黒い腕輪を取り出し右手首にガシャッと嵌めながら口を開いた。
「そんなに睨みつけなくても大丈夫、私に電轟棲姫
「エ、イムヤサン?」
「……?」
「――ほら、私の手首に腕輪があるでしょ? これが奴隷の証拠。電轟棲姫様の持つ鍵がないと腕輪を取れないし、電轟棲姫様の持つリモコンのボタンが押された時、腕輪の爆発で私は確実に轟沈しちゃう。電轟棲姫様に生殺与奪の全てを握られている以上、電轟棲姫様に歯向かって寿命を縮めようだなんてさすがに思わないわ」
「イムヤサン!?」
「……!」
「ホント、電轟棲姫様っていい趣味をしてるわよね。いっそ沈めてくれれば良かったのに敢えて鹵獲するわ、私が例え抵抗しても毛ほども痛くないからって私を拘束しない上に武器を奪わないわ、日夜問わずに艦娘の私をかわいがって肉体的にも精神的にも大破寸前まで追い込んでくるわ……っと、ごめん。脱線しちゃったわね。とにかく、私は電轟棲姫様の玩具に過ぎないから警戒しないでくれると嬉しいかな、ヲ級さん」
伊168のあまりに予想外な発言に電がただただ驚愕の声を上げることしかできず、終いにはピシリと硬直する中、伊168は空母ヲ級に今の己の立場(※ウソ)をさぞ真実であるかのように伝え、敵意を向けないでほしいとお願いする。すると、空母ヲ級は電に渡すつもりだったドラム缶を引っ込め、伊168の方へ差し出した。
「……」
「私にくれるの? ありがとう」
伊168がドラム缶を受け取ったのを確認すると、空母ヲ級は同情の色濃い視線で伊168を見つめながら、頭の牙剥き出しの趣味の悪い帽子らしきものの口から高速修復材のバケツを引っ張り出し、伊168に目で許可を取った後に優しく高速修復材をかけた。
「ハッ!? イ、イムヤサン!? 何言ッテルノデス!? 違ウノデスヨ、ヲ級サン! 今ノハ誤解デ――」
「……!」
と、ここで。ようやく我に返り、伊168の発言内容を把握できた電は速やかに誤解を解かないといけないと言葉をまくし立てようとする。が、空母ヲ級は言い訳は聞きたくないと言わんばかりに再び海中から水揚げしたドラム缶を電の顔面に投げつけた。空母ヲ級からの予期せぬ不意打ちに対処しきれず、顔面にドラム缶がクリーンヒットした電の口から「――ホグッ!?」と、とても女性のそれとは思えない低い悲鳴が漏れる。
電轟棲姫の装甲スペックゆえにそんなに痛くなかったため、とりあえず宙をクルクル回るドラム缶が水没しないよう、ドラム缶の着地点に回り込んでキャッチする電。その後、電は空母ヲ級へ目線を移して――思わず後ずさった。
確かに艦娘は人間の肩を持つ敵だけど、ここまで艦娘の尊厳を奪うような酷い仕打ちをする必要はないんじゃないかとでも言わんばかりの侮蔑の眼差し。いかにも『失望しました。私の半径5メートル以内に入ってこないでください。空気が穢れます』とでも言わんばかりの拒絶の双眼。
(あ、もう手遅れっぽいのです。すっごく怒っているのです)
電が精神的に割と深いダメージを負う一方、ヲ級はテクテク歩きで電の背後に回り込むと乱暴に電の艤装(※伊168が夕立からくすねたもの)を回収し、代わりに電轟棲姫本来のごつい艤装を取り付ける。その後、帽子らしきものの口から取り出した緑バケツの高速修復材をバシャアっと雑に電に浴びせかけたのを最後に、空母ヲ級はとっとと海中へ姿を消した。
◇◇◇
「にしても、デンちゃんって深海棲艦が直々に補給してくれるのね。私が潜水棲姫の頃はそんな好待遇じゃなかったのに……それだけ深海棲艦側に戦力として期待されているってことかしら?」
伊168が先の出来事について考察しつつドラム缶を傾けて燃料をゴクゴクいただく。
一方、空母ヲ級が去ってもしばしその場から動くことのできなかった電は再起動した後、真っ先に伊168に詰め寄った。
「チョット、イムヤサン! ドウシテアンナ嘘ヲ言ッタンデスカ!? ヲ級サンニ思イッキリ嫌ワレタジャナイデスカ!?」
「いやぁー、デンちゃんをいじりたい感情が急にムクムク沸き上がってきたから、ね?」
「ネ? ジャナイノデス!」
「ま、もちろん今のは冗談よ。ヲ級に嘘をついたのは簡単な話、建前上のデンちゃんと私の関係を深海棲艦側に認識してもらうためよ。私が奴隷でデンちゃんをご主人様って関係性にしておけばデンちゃんが深海棲艦側に敵視されずに、これまで通り遊撃として自由に動き回れそうでしょ?」
「タ、確カニソレハソウデスケド……ウゥゥ」
伊168から真っ当な理由を示されたことで反論できなくなった電は複雑な表情を浮かべて下を向く。そもそも自分がちゃんと建前の理由を用意していれば問題なかった以上、自身の代わりに建前を考えてくれた伊168を責めることはできないのだ。
「別に完全に見放されたわけじゃないんだし、空母ヲ級との繋がりはまた1から作り直せばいいでしょ。深刻に考えることないわよ」
「ソウ、ナノデス……?」
「うんうん。あ、ちなみに腕輪については全部本当よ。この腕輪、第弐鎮守府で作られたものでね。もう轟沈以外道がないって時になるべく多くの深海棲艦を巻き添えにするための爆弾として、第弐鎮守府の艦娘は皆持っているわ」
「ェウッ!? ジャアソノ腕輪、本当ニリモコン1ツデ爆発スルノデスカ!?」
「そういうこと。だから、はい。リモコンと鍵は渡しておくわね」
「ファッ!?」
伊168はさぞ当たり前のように電の手に腕輪状の爆弾のリモコンと、腕輪を外すための鍵を握らせる。これには電は焦らずにはいられない。当然だ、腕輪の鍵とリモコンを自身が所持することはすなわち、伊168の命を文字通り抱え込むことに他ならないのだから。
「ェェェエエエエエエエエエエ!? ナンデ私ニ渡スノデスカ!? イムヤサンガ持ツベキジャナインデスカ!?」
「ダメよ。私がリモコンを持っていたら、私がデンちゃんの奴隷って設定を疑われかねないわ。奴隷とご主人様な関係に説得力を与えるためにも、これはデンちゃんが持っているべきよ」
「デ、デモ……! イムヤサンハ不安ジャナインデスカ!? 昨日会ッタバカリノ存在ニ自分ノ命ヲ預ケルナンテ!」
「不安? そんなもの、抱くわけないじゃない。言ったでしょ? 深海棲艦にも艦娘にも甘く優しい貴女だからこそ信じられるって。裏切られたとしたら私の見る目がなかっただけの話だって」
「ッ!?」
第弐鎮守府の営倉で伊168が放った言葉と同じものを持ち出されたために、電は思わず言葉に詰まる。伊168からの全幅の信頼。それをいつの間にか過小評価していたのかもしれない。電は懐に腕輪の鍵とリモコンを仕舞い込む。
「……ワカッタノデス。コレハ私ガ預カルノデス。モシ必要ニナッタラ必ズ言ッテクダサイネ?」
「そうね。その時はよろしくね」
伊168の意見を汲み取った上で優しく語りかける電に、伊168は微笑みで返す。かくして。伊168が旅仲間に加わらければまず起きなかったであろう、空母ヲ級を交えたハチャメチャイベントが終焉を迎えるのだった。
電→深海棲艦の体に艦娘の心を宿した暁型駆逐艦四番艦。この度、奈落棲姫ほどではないがそれなりに仲の良かった空母ヲ級に嫌われてしまった哀れな主人公。
伊168→前世が潜水棲姫だった海大Ⅵ型潜水艦一番艦。元々深海棲艦だったせいか、原作よりも性格がねじ曲がっている感が否めない。自爆用の腕輪を装着し、爆弾を起動させるためのリモコンで腕輪を外すための鍵を電に託した辺り、相変わらず電への信頼度が最大値な模様。
空母ヲ級→電への補給関係の任務を担う深海棲艦。ここでは無口キャラとなっている。ちなみに、ヲ級の電へのイメージは『抵抗できない艦娘を心身ともに痛めつけることに愉悦を感じ、ねちっこいノリで艦娘を絶望へ叩き落そうとしている畜生クレイジーサイコレズ深海棲姫』って感じ。
というわけで、第3章1話は終了です。もう何話かは今回みたいなテンションでいかせてもらいます。今後電たちに立ちはばかるシリアスを際立たせるためにはほのぼの回とかギャグ回をきちんと挟むことが需要ですからね。
~おまけ(ネタ:唐突に電をポケモンにしてみるテスト)
No.974 いなづま かんむすポケモン(萌えもん?)
高さ:不明 重さ:体重計のメーター部分が黒く塗りつぶされているため、測定不能
タイプ:でんき、フェアリー 性格:ひかえめ、がんばりや
うみのはてから ひょっこり やってくる
ちんじゅふから けんぞうされることもある
こころやさしく てきをもたすけたいとかんがえている
ひょんなことから ざんにんなだいにじんかくへ きりかわる
のちの ぷらずまだんの うらぼすである
レベル30での技:とっしん、あまえる、マジカルシャイン、ボルテッカー
※いなづまのとっしんだけ、他のポケモンの2倍の威力になる