【完結】元の体を取り戻すのです! by.電   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。今さらながら、最近『絶体絶命都市』というゲームを知ったのですが……凄まじく面白いですね。ゴンさんとは別ジャンルでしょうが、あの作品も『シリアスな笑い』の極致へ至っているように思います。どうせならこの作品にもシリアスな笑い要素を設けてみたいと考える今日この頃ですが……やっぱり狙ってやるのはハードルが高すぎですね。



2話 友達を紹介するのです!

 

 空母ヲ級の暁型駆逐艦四番艦・電への好感度がダダ下がりした出来事の翌日。手頃な無人島で夜を明かした電は海大Ⅵ型潜水艦一番艦・伊168を連れて、今日も今日とてあてもなく周辺海域を旅しながら奈落棲姫を探していた。

 

 すると、電の姫級スペックな視力が海の一角の黒い一団を捉えた。軽く50は超えそうなほどの深海棲艦たち。その中心に、奈落棲姫が険しい顔でたたずんでいた。

 

 

「ア、ナッチャン! 見ツケタ!」

 

 ようやく探していた奈落棲姫を見つけられた。電は嬉しさのあまりすぐさま奈落棲姫の元へ駆けつける。「ちょっと、デンちゃん!?」と電を呼び止めようとする伊168をスルーし、電は海面を強く踏みつけて空高く跳び上がる。結果、電は奈落棲姫のすぐ目の前にバシャアアアと派手な着水音を響かせることとなった。

 

 

「ナッチャン!」

「オッ!? ォオオオオオオ!? デンチャン!? 無事ダッタノカ!?」

「ハイナノデス!」

「ソッカ、良カッタ……オイ! オ前タチ、作戦ハ中止ダ! モウ帰ッテイイゾ!」

 

 奈落棲姫は電を見るや険しい表情を綻ばせて喜びを顕わにする。その後、深海棲艦の一団に帰投を命令したため、海上には電と奈落棲姫だけが残された。

 

 

「ナッチャン。今ノハ何ノ集マリダッタノデス?」

「コレダ!」

 

 奈落棲姫は右手を持ち上げる。ここで初めて電が奈落棲姫の右手に視線を移し、すっかりズタボロになった電轟棲姫としてのごつい艤装の一部パーツを奈落棲姫が所持していることに気づいた。

 

 

(あ、もしかして――)

「アノ後、デンチャンガ艦娘ドモニ鹵獲サレタト思ッタカラ、奪還スルタメノ作戦会議ヲシテタンダ! 杞憂ダッタミタイダケドナ!」

 

 話によると、どうやら奈落棲姫は第弐鎮守府の連合艦隊から逃げた後、電のことが心配なあまり、時間を置いた上で戦場に戻ってきていたらしい。その際、ボロボロの電轟棲姫の艤装が海底に沈んでいるのを見つけたことで、電が鹵獲されたと考え、きっちり戦力を整えた上で第弐鎮守府への殴り込みを計画していたらしい。

 

 

「アリガトウナノデス、ナッチャン!」

「デンチャンハ友達ダカラナ! 当然ノコトヲシタマデダ!」

 

 自分の身を案じ、ここまで動いてくれた。電は奈落棲姫は今日も魚獲りに執心しているものと考えていたことを恥ずかしく思うと同時に、感謝のままに頭を下げる。奈落棲姫は電が無事であることに心底嬉しそうな笑みを浮かべながら言葉を返す。電轟棲姫と奈落棲姫。2名の深海棲姫の仲は今日も睦まじい様相を呈している。

 

 

「デ、デンちゃん……いきなり、置いて行かないでよ」

「ア、ゴメンナサイナノデス」

 

 この時。電と奈落棲姫のみの穏やかな空間に伊168が現れる。伊168はゼェゼェと荒く呼吸をしながら電の元へ駆け寄る。電は奈落棲姫との再会の嬉しさのあまり全速力で奈落棲姫の元へ向かったため、肉体的にはただの艦娘に過ぎない伊168を置き去りにしてしまったようだ。

 

 

「イムヤサン、紹介シマス! 私ノ友達、ナッチャンナノデス!」

「オ?」

「あぁ、貴女が『ナッチャン』ね。よろしく――って、待って! 『ナッチャン』って奈落棲姫のこと!? 何考えてるのよ、デンチャン! 昨日の今日で私たちが会ったらドンパチになるに決まってるじゃない!」

「大丈夫ナノデス。ナッチャンハ、話セバワカッテクレルノデス」

「だと良いけど……」

 

 電が自身に紹介したがっていた『ナッちゃん』が奈落棲姫のことだと知った伊168は、想定外な事態に電を問い詰める。が、電は伊168からすれば非常に楽観的すぎる切り返しをするのみ。先行きの不安さに伊168は沈鬱なため息を吐いた。

 

 

「オ前、昨日私ト戦ッタ艦娘ノ群レニイタ奴ダナ?」

(う、見破られちゃったか。まぁ見破るわよねぇ……)

「えぇ、そうよ。私は伊168。イムヤって呼ぶといいわ。今は成り行きでデンちゃんと一緒に旅をしているから、貴女と戦うつもりはないわよ」

「……」

 

 伊168は奈落棲姫が実力行使に出てこない内にと、手短に自身の名前と敵意がないことをアピールするも、当の奈落棲姫は無言で懐疑的な視線を伊168へぶつけるだけ。そこで、奈落棲姫の伊168への印象を良くするために、電はフォローを入れることにした。

 

 

「ナッチャン。イムヤサンハデスネ、第弐鎮守府ニ鹵獲サレテ危ナカッタ私ヲ助ケテクレタ艦娘ナノデス。ダカラ、イムヤサントモ仲良クシテホシイノデス」

「ソウナノカ!?」

「ソウナノデス」

「ソノ艦娘ハモウ私ニ痛イコトヲシナイカ!?」

「シナイノデス」

「デンチャンハソノ艦娘ト友達ナノカ!?」

「友達ナノデス」

 

 奈落棲姫の積極性のあふれた問いかけに電は、イムヤさんは友達というよりは旅仲間かな、と考えながらも首肯とともに即答する。すると、奈落棲姫は伊168の元へ一瞬で距離を詰めると、伊168の右手を己の両手で握った。

 

 

「電ノ友達ハ私ノ友達ダ! イムヤト言ッタカ!? ヨロシクナ!」

「……あ、うん。よろしくね。えーと、ナッちゃんって呼べばいいの?」

「アァ!」

 

 奈落棲姫はあっという間に伊168への警戒心を解き払い、ニッコリと笑みを浮かべる。一方、大して説得していないのにこうも易々と信用を得られると思わなかったためにすっかり拍子抜けした伊168は半眼な眼差しで奈落棲姫を見つめ返し、両手で握手し返す。

 

 

「トコロデ、ナッチャン。1ツ聞キタイノデスガ――」

 

 元々対立していた伊168と奈落棲姫との対面が平穏に終わったため、電はこのタイミングで奈落棲姫に黒い歯車の機構――深海棲艦生産プラント――のことを簡潔に話し、場所を知っているかどうか尋ねる。奈落棲姫に会った理由の1つだからだ。

 

 以前、『魚トノ戦イハ楽シイ! 真ッ黒ナグルグル歯車ヲ見ルノモ楽シイ!』と発言していただけのことはあり、奈落棲姫は「知ッテル!」と即答する。その後、奈落棲姫は黒い歯車の機構の場所を擬音語と擬態語を多彩に加えながら詳細に語る。が、残念なことに奈落棲姫の教えてくれた場所は以前電が訪れた場所だった。

 

 

「ドウダ!? 場所、覚エラレタカ!?」

「……ゴメンナサイ。ソコニハ私モ行ッタコトガアルノデス。他ノ場所ヲ知リマセンカ?」

「ムゥー。……ゴメン、私ハ知ラナイゾ!」

 

 どうやら奈落棲姫は他の黒い歯車の機構の場所を知らないようだ。そうなると、電がまだ訪れていない黒い歯車の機構の場所は地道に探すしかないだろう。前回と違い、ヒントなしの状態で黒い歯車の巨大施設を見つけ出すのは大変そうだと思いつつ、電は奈落棲姫に頭を下げる。

 

 

「ソウナノデスカ。情報、アリガトウナノデス」

「――待テ、デンチャン。確カニ私ハ知ラナイガ、私ノ友達ナラ知ッテルカモシレナイ!」

「エッ?」

「デンチャンガイムヤヲ紹介シテクレタカラ、今度ハ私ノ番ダ! コッチニ来テクレ!」

 

 奈落棲姫は思い立ったが吉日と言わんばかりにその場から駆け出す。バシャバシャと水音を響かせながら走り、「コッチダ!」と手を振る姿から、奈落棲姫は彼女の友達のいる場所へと案内する気満々のようだ。ナッちゃんの友達なら自分がまだ訪れていない、黒い歯車の機構の場所を知っているかもしれない。もし知らなくても、純粋にナッちゃんの友達に興味がある。電が奈落棲姫の案内についていかない理由はなかった。

 

 

「今行クノデ――」

「――待って、デンチャン。お願い、私を運んでくれない?」

「イムヤサン? ソレハドウシテ――アッ」

 

 電の肩をガシッと掴んで必死の形相で頼み事をする伊168の意図を尋ねようとして、電は察する。先ほど、伊168は奈落棲姫の元へ駆け寄る自分の速さについていけず、追いつくのに時間がかかった。ゆえに。1秒でも早く自分の友達を紹介したいと考えていそうな奈落棲姫の案内スピードに同じ姫級な電はついていけても所詮艦娘スペックな伊168はついていけない。奈落棲姫の案内先が遠ければ遠いほど、伊168が電とはぐれてしまうかもしれないのだ。

 

 

「ワカッタノデス!」

「悪いわね」

 

 電は第弐鎮守府を脱走した時のように伊168を脇に抱え持つと、電や伊168のことを欠片も気にせず全速力で目的地へ向かわんとダダダダッと走し出す奈落棲姫の後を追う。その道中。伊168は改めて電に問いを投げかける。

 

 

「で? 結局、どうして私とナッちゃんを引き合わせたの? 何か意図があったんでしょ?」

「ハイナノデス。……実ハ、ナッチャンガ元第弐鎮守府ノ川内サンカモシレナイノデス」

「……エ? ウソ、でしょ?」

「確証ハナイノデス。デモ前ニ会ッタ時、『夜戦ガ楽シイ』ト言ッテ、私ヲ夜戦ニ誘ッテキタノデス。一刻モ早ク人類ヘノ復讐ヲ望ム深海棲艦ガ、夜戦ヲ魚獲リト同列ニ並ベテ楽シイトハ考エナイト思ウカラ、ナッチャンハ私ト同ジ状況ナ可能性ガアルノデス」

「……仮にそれが本当だとすると、ナッちゃんは記憶を失ってるってことになるのよね」

「ソウナリマス。ダカラ、第弐鎮守府所属ノイムヤサント話ヲスレバ艦娘ダッタ頃ノ記憶ヲ思イ出スカモト期待シタノデスガ、ソウ都合ヨクハイカナイミタイナノデス」

「……わかったわ。本気でナッちゃんを沈めようとした手前、あんまり『ナッちゃん=川内さん』説は信じたくはないけど、私もそのつもりでナッちゃんと接してみる」

 

 当初、伊168は電の言葉に狼狽した様子を見せた。だが、その後の電の主張を前に、ここは私情を挟んで『ナッちゃん=川内さん』を頑強に否定すべきではないとした上で、奈落棲姫の状態把握に努め、奈落棲姫との関わり方の方針を決める。

 

 かくして。電は奈落棲姫の雑な案内に従い、伊168を運びながら海域を駆けていく。目的地に到着し奈落棲姫の案内が終わるのは、数時間後。海をサンサンと照らす日光が弱まり、夕日に切り替わる頃合いのこととなるのだった。

 

 




電→深海棲艦の体に艦娘の心を宿した暁型駆逐艦四番艦。奈落棲姫をナチュラルに説き伏せ、伊168への好感度を大幅に上昇させてみせた。
伊168→前世が潜水棲姫だった海大Ⅵ型潜水艦一番艦。奈落棲姫が第弐鎮守府の川内かも知れないことに動揺するも、すぐに表面だけでも平静を取り戻す辺りがハイスペック。スピードの面では早くも電たちの足手まといになっているが、気にしてはいけない。
奈落棲姫→元々は第弐鎮守府の艦娘だった深海棲姫。が、今は記憶がないっぽい。電に伊168を紹介されたので、自分も友達を紹介し返そうと考えている模様。

 というわけで、第3章2話は終了です。奈落棲姫が登場する話は幕間とか戦闘シーンとかを除けばこの作品の雰囲気を緩やかムードに変えてくれるので個人的にありがたいです。もしかしたら今の所、私は奈落棲姫が1番好きなキャラになっているかもしれませぬ。
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