【完結】元の体を取り戻すのです! by.電   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。サブタイトルから何となく展開を察している人もいるかもしれませんが……それ、正解です。具体的に言うとちょっと『シリアス艦これ』タグに詐欺疑惑がつくぐらいな感じになってます。また、今回は電と伊168の存在感が非常に薄いです。ですが、描写していないだけでその場にいないわけじゃないので、その辺は上手いこと脳内補完してください。



4話 ハチャメチャ第零鎮守府なのです!

 

 島の存在を知る者が手を握らない限り部外者には一切認知できないという、ぶっ飛んだ技術の産物によって秘匿された島。その一角に大規模に設置された第零鎮守府。暁型駆逐艦二番艦であり、第零鎮守府提督を自称する響は、暁型駆逐艦四番艦・電&海大Ⅵ型潜水艦一番艦・伊168と情報交換をするため、勝手についてくる奈落棲姫をも伴って、ひとまず応接室へ向かおうとする。

 

 そうして。響はいち早く港から上陸し、鎮守府内に一歩足を踏み入れる。が、その直後。響は横合いから猛スピードで突っ込んできた謎の物体とモロに衝突し、「ごふッ!?」と派手に吹っ飛ばされた。その勢いのあまり、響は鎮守府のレンガ造りの壁にドギャンと顔面から打ち付けられる。

 

 

「ヒ、響オ姉チャン!?」

「え、ちょっ、何事!?」

 

 一瞬にして響の体半分がレンガ造りの壁に埋まってしまったことに電と伊168が動揺の色濃い反応を見せる中。響は「痛たたた……これは一体何の騒ぎだい?」と、こんなのは日常茶飯事だと言わんばかりに自力で壁から抜け出して頭から落ちてしまった帽子を拾いながら、己に全力で体当たりをしてきた相手――巡潜乙型改二潜水艦三番艦・伊58――を見つめた。

 

 

「ご、ごめんなさい、提督! ちょっと無我夢中だったでち!」

 

 どうやらロクに前も見ずに必死に走っていたらしい伊58は中破レベルの怪我を負った響にペコペコと何度も頭を下げる。その後、キョロキョロと周囲を忙しなく見渡した後、鎮守府の建物内へダッシュで向かおうとした時。背後から届けられた声が、伊58の背筋を凍らせた。

 

 

「ゴーヤァ! ドーコ行ッチャッタノカナァ?」

「球磨たちと一緒に遊ぶクマー♪」

「ひぃぃいいいいいいい! 悪魔の歌声でちぃ! 頭のネジの外れたサイコパスどもが雁首そろえてやって来るでちぃぃいいいい! 提督、ゴーヤを助けてほしいです! 提督権限であいつらをボッコボコに撃退してほしいですぅぅううう!」

 

 もうここまで追いつかれた。響とぶつかり時間をロスした現状ではあの悪魔どもから逃げられない。そのことを悟った伊58は響の背中にしがみつき、泣きすがる。直後、響の前方にズザッと足音を鳴らして、球磨型軽巡洋艦一番艦・球磨と戦艦レ級が姿を現した。

 

 

「ふぅ、やっと追いついたクマ。ゴーヤの足は世界を狙える足だって、今日改めて実感したクマ」

「テコトデー、私タチト楽シイ楽シイ遊ビヲシヨウゼ! 追イカケッコモイイケドサァ♪」

「何が楽しい遊びでち! ゴーヤをエサに人食いザメを釣ろうとか、発想からして正気の沙汰じゃないよ! お前たちが楽しくてもゴーヤは涙目不可避でちぃ!」

「ダイジョブダイジョブ。コノ海域ニャソンナニサメイナイッポイシ。ムシロ、潜水カ級トカ潜水ソ級トカ潜水ヨ級トカ、ノコノコト食イツクノハソノ辺ジャネー?」

「全然大丈夫じゃないから! 身動きの利かない状態にされてあんなホラーの権化な深海棲艦どもに這い寄られるのもゴメンこうむるでち! 夢に出てきて眠れなくなるでち!」

 

 必至に逃げようとする伊58を追いかけたために少々体力を消耗した球磨が一息つく中。戦艦レ級はニタニタとした笑みで伊58を遊びという名の『釣りしようぜ、お前エサな』に誘おうとする。当然、伊58は響の背中に隠れつつ、全力で抵抗する。と、ここで。このままではいつまで経っても平行線だと、そして何より面白くないとの結論に至った戦艦レ級は「……ヤレヤレ、仕方ネェ。球磨先輩、説得オ願イシマス!」と、息を整え終えた球磨と選手交代する。

 

 

「ゴーヤ」

「な、何かな? 球磨さん? 言っておくけど、ゴーヤはいかなる説得にも屈しな――」

「――とりあえず、ト級の様子を見るクマ」

 

 戦艦レ級に代わって一歩前に踏み出した球磨は自分の背後にいる軽巡ト級の姿が見えるようにスッと身を横に退く。すると、ゴーヤの視界に、地味に期待に胸を躍らせる軽巡ト級の様子が入る。「釣リッテドンナ遊ビナンダロウ? 楽シミ、ダナァ……」と、平静を装いつつもワクワクを隠しきれていない軽巡ト級の姿がゴーヤの視界に映し出される。

 

 

「ゴーヤ。君はト級の楽しみを奪うつもりクマ? いつからゴーヤはそんなに冷たい艦娘になっちゃったクマ?」

「あ、いや、ゴーヤはそんなつもりじゃ――って、ト級に釣りを教えたいならゴーヤをエサにする必要なんてないよね!? 普通のエサを使えばいいよね!?」

「惜しいクマ、後もう一歩だったのに」

「危うく騙される所だったよ! なんて悪辣な手口でち!」

「チッ」

「そこッ! 露骨に舌打ちするなでち、レ級! 提督、お願いです! 早くこの血も涙もない無茶ぶり鬼畜ドS悪魔どもを追い払ってほしいです! 後生だから!」

 

 自分を釣りのエサにしたがる球磨と戦艦レ級に対処するにはもはや提督たる響に頼る他はないとした伊58は、ウルウルと涙を溜めて響にお願いする。伊58の懇願を受けた『中破状態の』響は沈黙し、しばし思索し――伊58の襟首を掴んで球磨たちに差し出した。

 

 

「え、ちょっ、提督?」

「――もう日没も近い。ほどほどに、な」

「提督ぅぅうううううう!?」

「ありがとう、響。さ、ゴーヤ。こっちに来るクマ」

「サンキュー提督。オラ、無駄ナ抵抗ハヤメルンダナ!」

「うわあああああああああああんでちぃいいいいいいいいいい!!」

 

 己のお願いを却下されるだけでなく、悪魔どもに身柄を回収されることになった伊58は、ズルズルと球磨と戦艦レ級に引きずられながら断末魔を上げる。かくして、球磨・戦艦レ級・伊58・軽巡ト級は港から去っていく。

 

 

「ア、奈落! オカエリ! オ前モコッチデ遊ボウゼ!」

「イイノカ! ジャア私モ参戦スルゼ!」

 

 と、この時。奈落棲姫の姿に気づいた戦艦レ級が遊びに誘い、それを承諾した奈落棲姫があっさりと電たちから離れたため、結果的にその場に取り残される形となった電・伊168・響の3名。

 

 

「今ノ、凄カッタノデス……」

「ツッコミ所は多々あったけど、言っても疲れるだけだしやめておくわ」

「ア、響オ姉チャン。サッキ体ヲ強クレンガノ壁ニブツケテタケド、大丈夫ナノデス?」

「あぁ、心配ない。この程度の怪我はいつものことさ。さて、思わぬハプニングがあったが……気を取り直して、鎮守府に入ろうか」

 

 騒がしい面々がいなくなり、第零鎮守府に静けさが戻る中。響は改めて、電と伊168を第零鎮守府の建物内に招き入れるのだった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「しっかし……この鎮守府、ホント広いわねぇ」

「ここは無人島だから、土地は有り余っていた。で、どうせ鎮守府を作るのなら大きいものにしたいと考えた結果がこれというわけだ」

 

 第零鎮守府の廊下にて。中々響の目的とする応接室に辿り着かないことを踏まえた伊168の感想に響はちょっとした第零鎮守府の裏事情を公表する。と、ここで。ふと響の被る帽子の上に、黒光りする体躯が特徴的な一匹のカブトムシがピタリと飛びついた。

 

 

「響オ姉チャン。頭ニカブトムシガ止マッテマスヨ?」

「む?」

 

 電の指摘に、響が頭上に止まっているらしいカブトムシを掴もうと手を伸ばす。その刹那。響はまたも「ごふッ!?」と派手に吹っ飛ばされ、ドゴンと鎮守府の壁に体の右半分を埋めることとなった。カブトムシを一刻も早く捕まえんと響の元へダッシュしてきた何者かがカブトムシを素手で掴もうとジャンプした際、その何者かの膝が響の鳩尾にクリティカルヒットしたのだ。

 

 

「アレ? 何カ蹴ッタ? ットト、今ハソレヨリ、アイツ! ドコ行ッタ!?」

 

 意図せず響に強烈な膝蹴りをお見舞いした北方棲姫は見失ったカブトムシをその両眼で捉えるためにしきりに周囲に視線を配る。そのような北方棲姫の後を追う形で電&伊168の元に姿を現したのは、陽炎型駆逐艦二番艦・不知火。睦月型駆逐艦一番艦・睦月。でもって重巡リ級。

 

 

「見つけました。あちらの方向に逃走中です。往生際が悪いですね」

「好事家の間で最低価格5000万円から取引されていると名高いらしい、ヌィクワガヴァルフェトゥリオオカブトムシ(※出典:信憑性に凄まじく定評のある『ぬいぬいペディア』)を絶対に逃がすなにゃしい!」

「アイサー!」

 

 いち早くカブトムシ――ヌィクワガヴァルフェトゥリオオカブトムシというらしい――が飛び去ろうとする姿を不知火が捉えると、虫取り網を装備済みの睦月と素手でカブトムシを捕まえる派の北方棲姫がいの一番にカブトムシとの距離を詰めようと走る。と、この時。睦月&不知火&北方棲姫の背後の重巡リ級が「ハァァアアアアアアアア!」と雄叫びを上げた。唐突な咆哮にビックリした睦月たちが振り返ると、その先に金色のオーラを身に纏った重巡リ級が爆誕していた。

 

 

「サァ、ソロソロ本気デ捕マエニカカルワヨ?」

「リ級さんが覚醒しました! これは頼もしいです!」

「これならいけるにゃしい! 行くよ、ほっぽちゃん!」

「ウン! 睦月チャン!」

 

 カブトムシを捕まえるためだけに無駄に覚醒し、戦闘力を大幅に跳ね上げた重巡リ級を中心に、睦月&不知火&北方棲姫&重巡リ級で構成された『ヌィクワガヴァルフェトゥリオオカブトムシを何が何でも捕まえ隊』は、必死に逃げ去ろうとするカブトムシの元へバタバタと走る形で電たちの前から姿を消す。後に残るは、睦月たちの様子を部外者目線で見つめることしかできなかった電&伊168と、未だに体半分が壁に埋まったままの響だった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「さて、まずは何から話そうか」

 

 結局、これまた自力で壁から抜け出した響は大破状態の体でありながら平然とした様子で電と伊168を応接室まで迎え入れてソファーに座らせると、自身もテーブルを挟んだ反対側に座る。だが、ズタボロになった響の姿は結構痛々しく、とてもではないが今の響の惨状を無視して会話を続けられるほど、電と伊168のスルースキルは高くない。

 

 

「その前に、ちゃっちゃと高速修復材でも被って回復してきたら? 少しぐらい時間がかかったって私たちは何とも思わないから。ね、デンちゃん?」

「ハイナノデス」

「……心遣い、感謝するよ」

 

 伊168の提案を素直に受けた響は「やれやれ、私に不運属性は実装されていないはずなのだが……なんで今日は立て続けに被害にあうのだろうか?」などと呟きつつも一旦席を外し、高速修復材をもって怪我を一瞬にして治療し終えてから戻ってくる。かくして。ようやく応接室にて、お互いの状況について情報交換が始まるのだった。

 

 




電→深海棲艦の体に艦娘の心を宿した暁型駆逐艦四番艦。第零鎮守府のドタバタっぷりのせいで存在感の薄れてしまった主要キャラその1。ギャグ展開の被害者たる姉の響の怪我が心配な様子。
伊168→前世が潜水棲姫だった海大Ⅵ型潜水艦一番艦。第零鎮守府のドタバタっぷりのせいで存在感の薄れてしまった主要キャラその2。過労回避のために意図的にツッコミを行わなかった。
奈落棲姫→元々は第弐鎮守府の艦娘だった深海棲姫。戦艦レ級とは悪友といった感じ。
響→第伍鎮守府から失踪し、第零鎮守府の提督となった暁型駆逐艦二番艦。今回は外部要因により壁に体半分を埋める、体を張った芸を披露してくれた。提督の威厳なんてものはない模様。
伊58→第零鎮守府所属の巡潜乙型改二潜水艦三番艦。第零鎮守府で建造された。最初はそんなに『でちでち』言ってなかったのに最近は何かと語尾が『でちでち』になっているのがデフォルト。ここではいじられキャラの立ち位置を盤石なものとしている。
球磨→第伍鎮守府から失踪し、第零鎮守府に所属している球磨型軽巡洋艦一番艦。今日はふとしたノリでゴーヤをエサに釣りをしようとの発想に至った。ゴーヤにとってはいい迷惑である。  
戦艦レ級→第零鎮守府所属の深海棲艦。なぜかいじめっ子キャラが結構似合う。  
軽巡ト級→第零鎮守府所属の深海棲艦。まだ生まれたてなため、知らないことが多いらしい。
睦月→第零鎮守府所属の睦月型駆逐艦一番艦。第零鎮守府で建造された。にゃしいキャラだったり魔王になったりと忙しいのがデフォルト。第零鎮守府のカオスなノリにしっかり馴染んでる。
不知火→第伍鎮守府から失踪し、第零鎮守府に所属している陽炎型駆逐艦二番艦。戦艦クラスの眼光をもって一部提督を震え上がらせているのがデフォルト。ここでは『ぬいぬいペディア』なるでっちあげの百科事典を作成し、疑うことを知らないピュアな艦娘や深海棲艦たちを巻き込んだ遊びをやっている。要するに、確信犯。
北方棲姫→第零鎮守府所属の深海棲艦。疑うことを知らない子供のイメージの代表格って感じ。
重巡リ級→第零鎮守府所属の深海棲艦。どんなにくだらないことにでも本気を出せるタイプ。

 というわけで、第3章4話は終了です。久しぶりにたくさんキャラが出てくる回となりました。艦これ二次創作の長所って要所要所で魅力的なキャラを大量放出できる点だと思う今日この頃。いやはや、カオスっていいものですね。
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