どうも、ふぁもにかです。ついに今まで続いた隔日更新縛りが崩壊した件。まぁ私自身、遅筆属性を保持していることでお馴染みのふぁもにかさんなので、ストックのない状態で27話分も続けて隔日更新できたことがそもそも奇跡って感じなので、ここからは不定期更新の方針となります。この作品を連載し始めた当初の宣言通り、最低でも週1更新縛りで行かせてもらいます。この作品の隔日更新っぷりを盲信していた熱心な読者の方々には特に本当に申し訳ありません。
※申し訳ないついでで、1つ訂正入れます。以前『この作品は第4章で最終章』と言いましたが、思ったより第零鎮守府編が長引いたので、章を1つ増やして、第5章で最終章とします。その関係で、第3章のサブタイトルを変更して第4章の方へ割り当てますので、あしからずなのです。
暁型駆逐艦四番艦・電が己の心の弱さを意図せず海大Ⅵ型潜水艦一番艦・伊168に打ち明けた件を通して、電と伊168との関係が深まった翌日。電と伊168は早朝にて、第零鎮守府の港へ足を運んでいた。そんな二人を見送るべく、得意でない早起きを頑張って成し遂げたのは、第零鎮守府の提督たる暁型駆逐艦二番艦・響である。
「意思は変わらないのかい? 急ぐ旅じゃないわけだし、できればもう何日か滞在してくれると個人的に凄く嬉しいんだけどね。皆、二人のことを気に入ったようだからね」
響は名残惜しそうに電と伊168を見つめる。響は発言自体には電と伊168を第零鎮守府に引き留めようとする感情はそこまで見受けられず、電たちの意思を尊重しようとの意思が伺える。しかし、響の両眼は明らかに電たちがたった1日で第零鎮守府から立ち去ろうとすることを寂しく思っているようだった。目は口程に物を言うとはこのことか。
「私モ、デキレバモットココデ過ゴシタイデス。第零鎮守府ノ皆ヲモット知ッテ、友達ニナリタイノデス」
「なら、どうして……」
「デモ、駄目ナノデス。コレ以上ココニイルトアマリニ心地ヨクテ、元ノ体ヲ取リ戻スッテ目標ヲ忘レチャイソウデ怖イノデス。ダカラ、行キマス」
「……そうか。なら、もう止めないよ」
「アリガトウナノデス」
伊168が空気を読んで電と響から一歩離れた場所へ身を引く中。電は早々に第零鎮守府から旅立つ理由を響に告げる。その後、響が己の思いを重んじてくれたことに感謝を込めて、電はペコリとお辞儀をする。
「さて。二人の目的とする深海棲艦生産プラントの場所への道案内役なんだが――」
「――デンチャン! イムヤ! 私ガ全力デ案内スルゾッ!」
「え?」
「ナッチャンガ、ナノデス!?」
「本来は深海棲艦生産プラントを直に発見したらしいゴーヤを二人の案内に付けるつもりで話を詰めていたのだが……奈落がどうしても電たちについていきたいと頑強に主張してきてね。だから、奈落に場所をしっかり覚えさせて案内人の役割を任せることにしたんだ。二人も、昨日出会ったばかりのゴーヤよりは奈落の方が親しみやすいだろう?」
響の発言を遮る形で響の背後から尋常でない跳躍力で飛び上がり、電のすぐ隣に着地してきた奈落棲姫。その奈落棲姫が次なる深海棲艦生産プラントへの案内役を務めるらしいことが想定外な電と伊168が困惑する中、響が事情を簡潔に説明する。
「デンチャンハ私ヲ艦娘ドモカラ助ケテクレタ! イムヤハデンチャンヲ鎮守府カラ助ケテクレタ! 二人ニハ恩返シガシタインダ! 私ヲ一緒ニ連レテ行ッテクレ!」
「ソウイウコトナラ、喜ンデナノデス!」
「これまた随分と賑やかな旅になりそうね。悪い気はしないけど」
切実さに満ち満ちた奈落棲姫のお願い。奈落棲姫と関わり、まるで悪い印象を抱いていない電と伊168は二人の旅に新たに奈落棲姫が参加することをすぐさま認める。素直に認める電。直接明言せずに遠回しにする伊168。相変わらずわかりやすい二人である。
「提督! 行ッテキマス!」
「あぁ。電、イムヤ、奈落。武運を祈る」
奈落棲姫がパタパタと手をブンブン振ると、響もヒラヒラと手を軽く振って、電たち3名の旅立ちを祝福する。そうして。響が電たちに背を向けて、鎮守府内にテクテク歩き始めた時。電は衝動的に「響オ姉チャン!」と、響を呼び止めた。
「ん? 何だい、電?」
「アノ、エト……響オ姉チャン! 響オ姉チャンハトッテモ凄イノデス!」
「……む? どうしたんだい、いきなり?」
「響オ姉チャンハ艦娘ト深海棲艦ノコト、イッパイ考エテ、コノ鎮守府ヲ作ッタノデス! 私モ凄ク迷ッテ、デモ怖クテ、結局何モデキナカッタノデス! ダカラ、頑張ッテクダサイ! ドウカ、艦娘ト深海棲艦トノ共存ノ道ヲ切リ開イテクダサイ!」
電は自身の胸の内を叫び声の形で精一杯表出させると、ペコリと頭を下げる。艦娘と深海棲艦との共存の道。艦娘と深海棲艦とがいつまでも戦争を続けずに済む道。それは、敵だからといって深海棲艦を沈めることを割り切れなかった電が一度は考えついた道だった。しかし、電にはその道を選べなかった。第参鎮守府の仲間から離れたくなかった。嫌われたくなかった。今、自分が持っているもの全てを捨ててまで、己の全てを捨ててまで、その道を選択できなかった。
特に第参鎮守府にしがらみが、思い出がなければ、おそらく電が選んでいたであろう道。それを響は選んだ。きちんと選んで、響の所属する第伍鎮守府から失踪までして第零鎮守府を設立してみせた。言ってしまえば、第零鎮守府の存在は、電にとって己の願望が明確な形になって登場したようなものなのだ。ゆえに、電は響を応援する。
「他ならぬ妹の頼みだ、善処するよ。でも、私よりも遥かに電の方が凄いと私は思っている」
「エ?」
「だって、そうだろう? 轟沈したと思ったらいつの間にか深海棲艦の体になっていて。戸惑うことも多かっただろうに、それでも電は己が何をすべきか目標をきっちり見定めて、単身で旅に出た。……私が共存の道を切り開こうと思えたのは、実際に第零鎮守府を作れたのは私の思想に賛同する、優秀で都合のいい同志がいたからだ。でも、電は独りで思い切った選択をしてみせた。怖かっただろう。不安だったろう。それでも安易な道に逃げ込み妥協という名の思考停止をすることなく、己が最善と考える道へ歩み出したんだ。これを称賛しないわけにはいかない」
「響、オ姉チャン……」
「強制はしないが、もっと胸を張って歩くといい。電が悩み抜いて選んだ道なら、それは絶対に正しい道だからね。姉の私が保証する。……一緒に頑張ろう。お互い、一般的な考えを持つ存在からはそう易々と受け入れられないであろう茨の道を進む者同士、頑張っていこう」
電の熱の入った激励。響は自身の型破りな取り組みを全面的に応援してくれる妹に対し、エールをし返す。自分の行いを全面肯定して褒めてくれるのは嬉しいが、電が自分自身をあまり評価していないような物言いが酷く気になったからだ。
――貴女は誰かを進んで傷つけられるような子じゃない! そんな優しい貴女のすることに間違いなんてないんだから!
響の掛け値なしの褒め言葉を前に、電の脳裏には以前の暁型駆逐艦一番艦・暁の言葉がよぎる。響の言葉に暁の発言が不意に重なったことで電は嬉しさのあまり泣きそうになってしまったが、ギリギリの所で堪えて「ウン!」と元気いっぱいに返事をした。
「イッテクルノデス、響オ姉チャン!」
「いってらっしゃい。奈落のことはよろしく頼むよ」
響は今度こそ電たちに背を向けて、後ろ手にヒラヒラと手を振りながら港から去っていく。その去りゆく姿を幾分か見つめた後、電たち3名もまた第零鎮守府から出立する。かくして。電と伊168のパーティーに新たに奈落棲姫が少々唐突に加わるのだった。
◇◇◇
「――そろそろ、世界が本格的に脈動する頃かもしれないね。早くて今日、遅くて1週間後って所かな」
電、伊168、奈落棲姫。3名が第零鎮守府の位置する無人島から離れゆく中。第零鎮守府の執務室へ戻った響はふとした予感を感じて独り言を呟く。その横顔はいつになく真剣だ。少なくとも響を良く知る存在が今の響を見たら、『誰だお前!?』と真顔でツッコミを入れるぐらいには。
(今回の情報交換は非常に意義深いものだった。電、イムヤ、奈落、そして私。現状、私が知る限りでも、深海棲艦化した艦娘に艦娘化した深海棲艦が4名も存在する。私はまだ確定でないが……これは偶然か。こうもイレギュラーな存在が立て続けに生まれることがあるのか。いくら明るみに出にくいとはいえ、ここまでレアケースが同時発生することなどあるのか。いや、あり得ない。ゼロではないが、『偶然』を視野に入れるべきではない。……突拍子もないと今までは否定してきたあの可能性に関して、場合によっては認めざるを得なくなってきたな)
――艦娘は皆、記憶をなくした元深海棲艦であり、深海棲艦は皆、記憶をなくした元艦娘であるという可能性を。その一部例外として、電やイムヤのような、前世の記憶を抱え持った稀有な存在が生じている可能性を。
(だとしたら、もしもこれが真実なら、艦娘と深海棲艦の戦争は史上最大規模のとんだ茶番だ。ふざけるなと言いたいが、叫んだ所で何も変わらない。私は私にできることをするだけだ)
「この世界には今、明らかに異変が起こっている。……準備をしようか。これから何が起きても迅速に対処できるように」
脳内で方針を固めた響の両眼は自然と鋭くなっていた。
響の見通しが真実か否か。それは今は、神のみぞ知ることである。
電→深海棲艦の体に艦娘の心を宿した暁型駆逐艦四番艦。自分にできないことをやってのけた響お姉ちゃんに痺れて憧れた末に衝動的に応援に走った模様。
伊168→前世が潜水棲姫だった海大Ⅵ型潜水艦一番艦。電と響とのやり取りに出しゃばらないよう空気を読んだ子。ちなみに、電と響の話に平然と割り込もうとした奈落棲姫を事前に止めた影のMVPだったりもする。
奈落棲姫→元々は第弐鎮守府の艦娘だった深海棲姫。姫級だが、強さは電轟棲姫としての電より一段階ほど劣っている。電や伊168への恩返しのため、今回この物語の主要人物として躍り出た。
響→第伍鎮守府から失踪し、第零鎮守府の提督となった暁型駆逐艦二番艦。朝が苦手な奴が多い第零鎮守府勢にしては早起きな方である。この度、姉としての責務をしっかり果たしてみせた。
というわけで、第3章7話は終了です。そして伊168に続いて奈落棲姫もパーティーインした所で第3章もおしまいです。こうして仲間が増えていくのは冒険譚ならではですよね。しっかし、電一行の内訳が姫級2名(※ワンマンアーミー)に潜水艦娘1名(※知略特化)とか……怖ぇぇ。私が艦娘ならこんな連中にゃ絶対に出くわしたくないのです。