【完結】元の体を取り戻すのです! by.電   作:ふぁもにか

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Q.どうして新連載に艦隊これくしょんを選んだんですか?
A.「暁型四姉妹の日常」っていう艦これ二次創作動画シリーズ、知ってる?

 どうも、ふぁもにかです。何だか気分がノッたので早速次話更新です。にしても、ひっさびさに連載を始めると1000字書くのにも非常に労力を使っちゃいますね。困ったものです。



2話 状況を理解するのです!

 

 姫級な見た目となった暁型駆逐艦四番艦・電が第参鎮守府に帰還してから翌日のこと。医務室にて。清潔な白いベッドの上で電は目を覚ます。パチパチと瞬きを何度か繰り返していると、電は頭上に仄かな温かみを感じる。見上げると、電の姉である暁型駆逐艦三番艦・雷がよしよしと電を撫でている姿が両眼に映った。

 

 

「雷オ姉チャン……」

「おはよう、電。今日はお寝坊さんね、珍しいこともあったものね」

「オ寝坊? 今何時ナノ?」

「ちょうどヒトヒトマルマルよ」

「フェッ!? モウソンナ時間!? アワワ、司令官サンニ怒ラレチャウ! 早ク支度シナイト……!」

「大丈夫よ。今日は電の代わりに北上さんに頼んでいるから」

「エ? ソウナノ?」

「そッ。だから電はそこに座ってて。話があるから」

「ハ、ハイナノデス」

 

 かつて第参鎮守府の提督の側に寄り添って包括的なサポートを行う秘書艦を担当していた電は現在時刻が朝の11時だと知ると、自分が大遅刻をやらかしたことに顔を青ざめさせ、慌ててベッドから飛び出ようとする。が、雷は秘書艦を代わりの艦娘が担当していることを伝え、ひとまず電を医務室に留めた。

 

 

(本当に電が帰ってきたのね……)

 

 雷の胸には懐かしさが去来していた。電との何の変哲もない、日常会話。これを雷がどれだけ望んでいたことか。望みはしても、叶わないと考えていた電の帰還。第参鎮守府での思い出を抱えたまま電が奇跡的に第参鎮守府に舞い戻ってきたことで、1か月前に電が自分を庇って轟沈してから止まっていた雷の時計の針は動き出した。これで1か月前までと変わらぬ日々が再び始まる。何も変わらない、電との鎮守府ライフが始まるのだ。

 

 

(でも……)

 

 喜ばしい展開のはずなのに雷は素直に喜べない。何せ、今の電は深海棲艦の体をしている以上、事はそう簡単なことではないと理解しているからだ。

 

 

「ねぇ電」

「ドウシタノ、雷オ姉チャン? 元気ナイノデス」

「……」

「オ姉チャン?」

「電、鏡を見てほしいの。何が映っても、落ち着いて。気をしっかり持ってね」

「?」

 

 電は雷から渡された手鏡を覗き込み、「ヒッ!?」と悲鳴を漏らした。鏡に映ったのは、姫級の深海棲艦特有の病的に白い肌に白と黒とグレーの3色しか存在しないと言わんばかりの顔。これまで幾度もなく電に苦戦を強いてきた強敵の姿につい手鏡を落とす。

 

 電の反応を想定していた雷がとっさに手鏡を空中で拾う中、なんで深海棲艦が、と考えて電は気づいた。鏡に深海棲艦が映ったということは、つまり――そういうことだ。

 

 

「ドウ、シテ……」

「状況は理解したみたいだね」

 

 艦娘であるはずの自分が深海棲艦の姿をしている。わけのわからない状況にただただ瞠目する電に医務室の入り口の方から男性の声がかかる。電と雷が声の元を見やると、その先に第参鎮守府の艦娘を率いる若者の提督が医務室に足を踏み入れる姿が見て取れた。

 

 

「……司令官サン。コレカラ、私ハドウナルノデスカ?」

「普通なら、大本営に事情を話して引き渡す所だね。今の電は傍から見れば、深海棲姫の体に艦娘の心が宿った特異例だ。前例がない以上、深海棲艦の秘密を暴くための実験体として扱われるのが妥当な所だろう」

「――ッ」

 

 提督がためらいを見せつつもごまかすことなく今後の電に待ち受けているであろう順当な状況を伝えると、電はビクリと肩を震わせた。予想はしていた。が、いざ現実を突きつけられると堪えるものがある。

 

 

「し・れ・い・か・ん? もちろん、わかってるわよね?」

「あぁ。心配しなくていいぞ、雷。そんなことをするつもりは毛頭ない。だから殺気ダダ漏れ状態で私を見ないでくれないか? 腰を抜かしてしまいそうだ」

「エ、エット……?」

「要するに、私は電を大本営に引き渡すつもりはないから安心してくれってことだ」

 

 第参鎮守府で電を匿う。雷の鋭い眼光に晒された提督は冷や汗を流しながらも、迷うことなく己の方針を電に伝えた。それは電にとって非常にありがたい話だった。しかし、電の存在が外部にバレた時のリスクを考えると、電は提督の意向に素直に賛同できなかった。電の存在がバレた時、第参鎮守府は人類の敵たる深海棲艦を抱え込んだ裏切り者の鎮守府となってしまいかねないからだ。

 

 

「デモ……」

「言いたいことはわかる。確かに、今の電を抱え込むのはリスクが大きいだろう。加えて、リスクに見合った見返りも期待できない。ハイリスクローリターンのふざけた選択だ。だが、第参鎮守府で共に生きてきた仲間を売ることは私にはできない。ただそれだけのことだ」

「司令官サン……!」

「言うのが遅くなってしまったな。……おかえり、電。よく戻ってきてくれた」

 

 ベッド上の電と視線を合わせて柔らかく微笑む提督に電は一瞬呆然と固まるも、「ハ、ハイ! タダイマナノデス!」と遅れて返事をする。電の両眼から零れた涙は電の心中がいかに歓喜で満たされているかの表れに違いなかった。

 

 

(これで一安心ね。さすがは司令官)

 

 提督と電とが他者の介入しづらいいい感じの雰囲気を無意識ながら構築する中、雷は不安の陰りの消え去った電の表情を確認すると、ホッと安堵のため息を吐く。その様はまるで電の母親のようだったとか。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 その後、提督は仕事があるからと病室を去った。どうやら提督は仕事の合間にわざわざ医務室まで足を運んでくれていたようだ。第参鎮守府の管轄する海域は比較的平穏で、そこまで頻繁に深海棲艦との激戦を繰り広げているわけではない。しかし、提督の仕事が軽いかと言われれば当然そんなことはない。ゆえに、自分の様子を見るためだけに時間を割いてくれたことに電は感謝と申し訳なさを感じつつ、医務室のベッド上に腰かけ、隣に座る雷と何気ない会話を続けていた。ふと掛け時計を見やると、午後6時を過ぎた頃合いだった。

 

 

「よし、そろそろ時間かな」

「時間?」

「電、もう平気?」

「ウン」

 

 電は短い言葉で確認を取る雷に一つうなずく。雷や提督がそれとなく電を医務室に隔離しているのが、電が現状について心の整理をするための時間を確保しているためだとわかっていたからだ。

 

 

(大丈夫、大丈夫。私はこれから、深海棲艦の体と向き合っていくんだ……)

「ソレデ時間ッテ――」

「それじゃ食堂に行くわよ。お腹すいたでしょ?」

「……ペコペコナノデス」

 

 雷が自身の質問に答える気がないことを読み取った電は自身のお腹の調子を確かめ、返答する。今日はまだ何も食べていなかったせいか、今ならどんなにマズい料理だろうとペロリと平らげられるような気がした。

 

 

「じゃあ、出発!」

「ナノデス!」

 

 医務室を出発し、雷の先導の元、電は移動する。雷に手を引かれるままにテクテク食堂を目指していた電はここで、ふわふわと宙を漂う小人たちの姿を捉えた。

 

 妖精。ある時突然人類の味方として姿を現した手の平サイズの彼女たちは新たな艦娘を生み出したり、艦娘の艤装の管理や操作を担当したりと、様々な形で人類に貢献してくれている。目的は不明だが確かに人類側に立つ妖精は、艦娘や人間が敬意を払う対象としての地位を確立していた。

 

 

「皆サン、久シブリナノデス」

 

 電の姿を発見した妖精たちがピシリと、まるで時間を停止させられたかのように硬直する中、電は見知った妖精たちにペコリと頭を下げる。見た目が変わった以上、自分が電だと認識してくれないかなと思い至り、改めて自己紹介をしようと顔を上げた時。

 

 

『キャー』

『いやぁー』

『怖いぃー』

『来ないでぇー』

『ポアはやめてぇー』

『コロコロしないでぇー』

『ボク悪い妖精じゃないよぉー』

『私を食べても美味しくないよぉー』

 

 妖精たちは若干間延びした声ながらも、蜘蛛の子を散らすように一斉に電から逃げていった。「ア……」と電は思わず妖精たちへと手を伸ばす。電を拒否した妖精の中には、電が艦娘の時に親睦を深めた仲の良い妖精も混じっていた。

 

 

「い、電! 大丈夫よ、今のはちょっと驚いただけ。すぐに妖精さんたちも今の電に慣れてくれるわ、妖精さんの人懐っこさは電もよく知ってるでしょ?」

「ソウ、デスネ……」

 

 妖精の思わぬ反応にショックを受けて立ちつくす電に、雷は慌ててフォローを入れる。雷の励ましに、電は曖昧な作り笑いを浮かべることしかできなかった。

 

 今の自分は深海棲艦の体になっている。雷お姉ちゃんは、司令官さんは自分を全面的に受け入れてくれている。だけど、他の第参鎮守府の仲間はどうなのか。彼女たちは私を許容してくれるのか、それとも私は拒絶されてしまうのか。さっきの妖精さんたちみたいに。

 

 

「……」

 

 急に、電は怖くなった。食堂へ行きたくなくなった。

 誰とも出くわさないであろう医務室に逃げ込みたくなった。

 

 

「ほら、行こう?」

「ヤ、ヤッパリ私……」

「いいから、行くわよ」

「……ハイナノデス」

 

 雷の有無を言わせぬ物言いに電はうなずくしかなかった。電が逃走しないよう、少々強めに電の手を握って食堂まで連れていく雷。逃げる手段を封じられた今の電の心境は、あたかも絞首台への階段を上る死刑囚のようだった。

 

 




電→深海棲艦の体に艦娘の心を宿した暁型駆逐艦四番艦。語尾に「なのです」がくっつくのがデフォルト。提督に恋愛感情一歩手前の親愛の念を抱いている。
雷→第参鎮守府所属の暁型駆逐艦三番艦。「お艦」として母性あふれる言動をするのがデフォルト。電が帰ってきたことで元気を取り戻したが、それまでは思いっきり鬱モードだった。
提督→第参鎮守府所属の艦娘たちを率いる立場の若い男性。今後そこまで出番がないとの理由で名前をつけられなかった哀れなオリキャラでもある。
妖精→各鎮守府に所属し、深海棲艦と敵対する人間や艦娘を全面的に支援する謎の存在。深海棲艦化した電のことを嫌ってこそいないが、怖がっている。

 というわけで、プロローグ2話は終了です。プロローグは『許容と拒絶』がテーマとなっていますので、あと数話は今回のような展開が続くかと思われます。
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