【完結】元の体を取り戻すのです! by.電   作:ふぁもにか

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Q.この作品で、重要な立ち位置なはずなのに出番に恵まれない空気キャラっていますか?
A.電の艤装に住まう黒妖精さんたちのこと、覚えています?

 どうも、ふぁもにかです。見切り発車なこの作品も今回で30話。そろそろ起承転結の転の部分を盛り上げていきたい所ですが、今話がダイジェスト風味な分、今のままだと数話で転が終わってしまいそうなのが怖いです。もっと転の内容を増量してボリュームを整えなければ!



1話 核心にじわじわと迫るのです!

 

 艦娘と深海棲艦との共存を目指す公式(※自称)の第零鎮守府。そこで元の体を取り戻す旅を始めてから久方ぶりに体と心を休めた暁型駆逐艦四番艦・電は翌朝、旅仲間の海大Ⅵ型潜水艦一番艦・伊168とともに旅を再開した。

 

 そして、奈落棲姫の案内の元で黒い歯車の機構――以前、電が訪れた場所とは違う位置に構築されている深海棲艦生産プラント――を目指す電と伊168。相変わらず奈落棲姫が姫級のスペックを全力で行使したダッシュで目的地へ向かわんとするため、電はいつものように伊168を脇に抱えて奈落棲姫の後を追いかける。

 

 ちなみに。奈落棲姫が目的地へ急行しようとしたのは、深海棲艦生産プラントの場所を忘れない内に電と伊168を案内したかったからである。が、案の定というべきか、奈落棲姫は何度も目的地の方向を間違えた。結果、奈落棲姫の脳内地図と現在の自分たちの居場所とが大いにズレたため、そこから先は奈落棲姫の直感頼りの旅となってしまった。結局。奈落棲姫が目的地に電たちを連れてこれたのは、第零鎮守府を旅立ってから2日後のことだった。

 

 

「ココダ! ココノ海底ダ! ヤット着イタ!」

 

 奈落棲姫はぴょんぴょんと海上を飛び跳ねながら己の真下を指差す。奈落棲姫の喜びと安堵の入り混じった表情からは、自分から深海棲艦生産プラントの案内役を買って出たのにきちんと電と伊168を案内できなかった申し訳なさと、でも何だかんだで深海棲艦生産プラントの元までたどり着けた喜びの念がありありとうかがえる。

 

 

「ウゥ、腕ガ痺レタノデス……」

 

 途中。近場の無人島で休息は取ったものの、ほぼ丸2日、伊168を腕に抱えて走り続けていた電はその場に伊168を下ろしつつ、深々とため息を吐く。いくら瞬発力、火力、耐久性に優れた電轟棲姫な電でも、艦娘一名をずっと抱え持ち続けられるほどの持久的な体力や筋力までは兼ね備えていなかったようだ。

 

 

「デンちゃんの腕が疲れるぐらい重くて悪かったわね」

「フェッ!? ア! チ、違ウノデス、イムヤサン! コレハ言葉ノ綾デ――」

「――ふふッ、冗談よ。ここまで運んでくれてありがと。本当にお疲れさま」

 

 伊168の拗ねた物言いに電は慌てて言い訳を用意しようとする。その慌てっぷりに癒された伊168は早々に電を弄るのをやめて、海中に視線を移す。今の艦娘な自分には思い思いに泳ぐ魚しか見えないが、奈落棲姫には例の深海棲艦生産プラントとやらが見えているのだろうと軽く推測を立てながら。

 

 

「「「……」」」

 

 何となく電たち3名は互いに視線を向け、沈黙する。その後。少しして、電が「行キマショウ!」と拳を握って号令をかけたのを契機に、電たちは海底へと潜水していく。この様子からして、物事の方針を決めるリーダー格は自然と電の役目だと定まっているらしい。

 

 そうして。迷いなく真下に潜りゆく電たちの前方に、はたして海底の深海棲艦生産プラントが姿を現す。いびつな形をした黒い歯車が幾重にも折り重なり、ガシャンガシャンと重厚な機械音を奏でる巨大施設は威容を誇り、軽い気持ちで来訪しようとする一切の存在を拒絶するかのように規則的な機械音を響かせる。

 

 

「到着シタノデス……!」

「これが深海棲艦生産プラント、ね」

「ヤッパリアノグルグル歯車ハ見テイテ楽シイナ! 動キガ独特ダ!」

 

 黒い歯車の巨大施設を前にした電たちの反応は三者三様だ。電はここでなら深海棲艦の生みの親と会えるかもしれないと期待を抱き、伊168は潜水棲姫だった頃も認知していなかった施設の存在に目を細めてある程度の警戒心を顕わにし、奈落棲姫は能天気にニコニコ笑う。

 

 

「デンちゃん。この膜はなに?」

「気ニシナクテ大丈夫ナノデス。コノ膜ハ無害デスカラ」

 

 まるで小学校の校舎のように横長な建物を覆うドーム状の薄く透明な膜にピタリと手を当てながら伊168は電に問いかける。電は膜に害がないことを身をもって証明するため、いち早く膜の内部へ入り込み、海底に着地する。その様子から、膜の役目が海水のシャットアウトであると速やかに悟った伊168は奈落棲姫と共に膜の内部へ侵入した。

 

 その後。黒い歯車の機構の入り口に電たちが立つと、軽く全長3メートルはありそうな鉄製な扉が自動ドアのごとく左右に開かれる。黒い歯車の巨大施設の構造は前回電が訪れた場所と全く同じらしく、電はあっという間に4階の黒い歯車の巨大機構の設置された大部屋にたどり着く。

 

 

「誰モイナイミタイナノデス」

「下カラ見上ゲルト、コンナ感ジナノカ! 凄イ迫力ダナ!」

 

 電は周囲に視線を移し、深海棲艦の生みの親らしき存在がいないことを把握する。一方、奈落棲姫はこれまで海中から黒い歯車を見下ろすのみだったため、上方を仰ぐ形で見た黒い歯車の威圧感に興奮する。まるで巨体タイプのヒーローと出くわした時の純真な子供のような興奮っぷりだ。

 

 と、そうこうしている内に。黒い歯車の機構の中心地点に徐々に黒い霧のようなものが集結し、禍々しさの高まりとともに凝縮され、増長される。それに応じて黒い歯車は回転速度を跳ね上げ、淡いエメラルドグリーンの光を放出し、周囲一帯を緑一色に染め上げる。

 

 

「「「ッ!」」」

 

 あまりに強烈な光に電たちがつい目を細める中、緑光は段々と収まり、黒い歯車の加速的な回転も落ち着きを取り戻す。一連の工程を終えた時、黒い歯車の中心地点には戦艦ル級が誕生していた。危なげなく床に着地した戦艦ル級は電たちの姿を捉えると会釈をして、深海棲艦生産プラントから深海へと出発した。

 

 

「……なるほど。こうやって深海棲艦は生まれるのね」

「生命ノ神秘ッテ奴ダナ!」

(いつ見ても凄まじいのです……)

「ねぇ、デンちゃん。貴女の電轟棲姫としての最初の記憶はどの辺から始まってる?」

「エ? エット、第参鎮守府ノ皆ト海上デ出会ッテ、雷オ姉チャンニ名前ヲ呼バレタ時ダケド……」

「少なくとも深海棲艦生産プラント(ここ)じゃなかったわけね」

「ハイ。ソレガドウカシタノデス?」

「……いえ。大したことじゃないわ」

「??」

 

 伊168の質問の意図がわからず、電は頭に疑問符を浮かべて首を傾げる。一方。伊168は口元に手を添えて思案にふける。

 

 

(私が潜水棲姫として意識を持った時も艦娘と出くわした時だった。デンちゃんは第参鎮守府の艦娘と出くわした時に自我を取り戻した。だから深海棲艦生産プラントの存在を知らなかった。この奇妙な一致は偶然で片づけていいものなのかしらね。さっきの戦艦ル級が艦娘の私に敵意を抱かずに会釈をしてきたことも鑑みて、何かしら仕向けられているようで気持ち悪いわね)

 

 己が疑問に感じた点を元に、伊168が推測を広げていく中。己の興味の赴くままに奈落棲姫があちこちを走り回る中。手持ち無沙汰となった電は前の時と同様に深海棲艦の生みの親の手掛かりとなる材料はないかと周囲に視線を配る。すると。はたして電の視界に大部屋の隅の机と、その上に何気なく置かれた一冊のノートが映し出された。

 

 

「……」

 

 相変わらず劣化の激しく、やたらと難解な数式でビッシリ埋められているノート。電はパラパラとページをめくり手記の部分を探し、日本語で書かれた手記部分を見つけ出す。前回覗いた手記部分の強烈さを思い出し緊張にゴクッと唾を呑む電だが、中身を閲覧しないことには始まらないと覚悟を決め、手記部分を読み始めた。

 

 

『気づいた時、私は全てを失っていた。何もかもをなくしていた。なのに、なぜだ。なぜ世界は回っている? 私は何もかも失ったのに、なぜ世界は何事もなかったかのように前に進もうとしている? あの戦争は日本に深い傷跡を残した。家族を、友を、同僚を。誇りを、絆を、灯火を。大切なものを壊され、失った者は多いはずだ。なのに、なぜ。なぜ。勝者も敗者も、どいつもこいつも過去を振り返るまいとする? あの戦争なんてなかったと言わんばかりに前を向こうとする? やるせない感情のぶつけ先すら失い、生きる意味をなくした私のような少数派を切り捨てて、未来にばかり目を向け、新時代を築こうとする? ふざけるな。認めるものか。私がこんなにも不幸なのに、他の人間どもが幸せでいるなんて許されるものか。大切なものを守るために戦争であれだけ日本に貢献し、どのような辛酸にも耐え抜き生き残った私が報われず、奪われ失い見捨てられて忘れられるなんて許容してなるものか。ふざけるなよ、ニンゲンども。貴様らがその気なら、私にだって考えがある。壊してやる。壊して壊して、未来や希望に目を向けられなくなるほどに絶望させて、私と同じ気持ちを味わわせてやる。必ず、いかなる手段を用いようとも、貴様らのお花場畑思考をぶっ壊してやる。思い知らせてやる。私はこのふざけた世界を許さない』

「……」

 

 相変わらずこの世の恨み辛みのありったけを詰めこみましたと言わんばかりの殺意の高い文字列。しかし、電は恐怖から無意識にノートを手放すような真似はしなかった。以前に見た手記よりはまだ幾分か狂気具合が弱い&以前の手記のおかげで電に少しだけ狂気耐性がついていたからだろう。電は机の上にノートを置く。

 

 

(凄く、虚しいのです……)

 

 代わりに、電の心に宿ったのは深い哀しみの念。今回の手記から、深海棲艦の生みの親がかつては日本のために奮闘した存在だと察せられたからだ。今の艦娘のように何かを守ろうと頑張っていたはずの存在が、今は自ら人類を滅ぼそうとしている。今、深海棲艦の生みの親が何を考えているのか。電は心の底から知りたくなった。

 

 

「デンちゃん、ちょっとこっちに来て」

「イ、イムヤサン!? ドウシタノデス!?」

 

 と、ここで。伊168が電の手を掴んで引っ張り始める。ズンズンと歩む伊168に電が慌てて問いかけると、伊168がピタリと立ち止まる。伊168の視線を追うように電が下に視線を向けた時、そこには2メートル平方の空洞があった。

 

 

「コ、コレハ?」

「隠し階段よ。さっきナッちゃんが偶然見つけたみたい」

「エッヘン! 凄イダロ!」

「はいはい凄い凄い。で、どこに繋がっているかはわからないけど、踏み込むべきだと私は考えているわ。デンちゃんはどう思う?」

 

 伊168の問いに電はしばし思案する。見た所、梯子の備えつけられた空洞は深く、どこまで通じているかはわからない。一度進んでしまえば、またここまで戻って来られる保証もない。事前情報が何もない以上、安全を考慮するなら踏み込まないのが正解だ。

 

 だが。2か所目の深海棲艦生産プラントにも深海棲艦の生みの親がいないことを考えると、他の深海棲艦生産プラントに向かおうにも期待はできないだろう。となると、アプローチを変える必要があり、奈落棲姫が見つけ出した隠し通路は電にとって渡りに船と言えた。

 

 

「危険ハ承知デ、デモ進ムベキダト思ウノデス」

「デンちゃんならそう言ってくれると思ったわ」

「二人ガ行クナラ私モ行クゾ!」

 

 電の返答に伊168はニィと口角を吊り上げ、奈落棲姫もすかさず同調する。かくして。電たちは深海棲艦生産プラントの隠し階段を通じて深層へ向かうこととなるのだった。

 

 




電→深海棲艦の体に艦娘の心を宿した暁型駆逐艦四番艦。手記を通して、深海棲艦の生みの親への印象が結構変わってきた。
伊168→前世が潜水棲姫だった海大Ⅵ型潜水艦一番艦。独自の視点から艦娘と深海棲艦との関係性の真実に向けて迫っている模様。
奈落棲姫→元々は第弐鎮守府の艦娘だった深海棲姫。深海棲艦生産プラントへの案内がスムーズにいかなかった失敗を、この度隠し階段を見つけたことで帳消しにできたっぽい?

 というわけで、第4章1話は終了です。1話だから本筋から外れた話を用意しても良かったのですが、第4章は真面目に行きたいので早速本題に入らせてもらいました。今後はふざけたくなったらおまけとして繰り出す形になるのでしょうね。


 ~おまけ(赤城さんは見た!)~

 電一行が深海棲艦生産プラントの元へ向かう道中。
 無人島で休息を取る彼女たちを上空からこっそり捉える艦載機の姿があった。

赤城(……どうやら私はとんでもないものを見つけたようですね。なんで奈落棲姫と電轟棲姫がワンセットでいるんですか!? しかもどうして第弐鎮守府の伊168も一緒なんですか!? あ、いや。不思議な話じゃないですね。確か、伊168は電轟棲姫により誘拐されたとの話でしたから。しかし、これはどうしたものでしょう。助けられるものなら助けたいですが、奈落棲姫と電轟棲姫の2隻相手じゃ生半可な戦力では厳しいでしょう。……二兎を追う者は一兎をも得ず。ここは見なかったことにして、本来の響さんたちの捜索に戻りましょう)
吹雪「赤城さん、何か見つかりましたか?」
赤城「いえ、収穫はありません。ですが、この辺は嫌な予感がします。早々に他の場所へ移動しましょう」
吹雪「嫌な予感、ですか? わかりました」

赤城→第伍鎮守府所属の赤城型正規空母一番艦。あんまり他の艦娘との関わり合いが見えてこないのがデフォルト。大食艦の立場から第伍鎮守府の胃痛提督を苦しめている。本人に悪気はない。
吹雪→第伍鎮守府所属の吹雪型駆逐艦一番艦。アニメで主人公を頑張ったのがデフォルト。ここの吹雪がはまぐりにだけ『さん』付けするかはまだ未定。
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