どうも、ふぁもにかです。電、伊168、奈落棲姫の3人パーティーだと奈落棲姫が空気になりがちな件について。電が主人公担当、伊168が知略担当、奈落棲姫が天然担当となると、所詮天然担当では存在感が薄れてしまうのは仕方ないんですかねぇ? ま、今後の展開を考えると、空気化しそうなのはむしろ伊168の方なんですけど。
奈落棲姫が偶然見つけた、深海棲艦生産プラント内の隠し階段。暁型駆逐艦四番艦・電たち3名は壁に打ち付けられた梯子を用いて下へ下へと降りていく。そして、10分後。電たちは地下トンネルに降り立った。
「ココハ……?」
電は周囲をキョロキョロと見渡して呟く。地下トンネルには薄暗いながらも照明装置が一定の距離で並べられており、仄かなオレンジの光が地下トンネルを包む中。電の視界には特に変わったものは何も映り込んでこない。警戒の必要性のない、ただの地下トンネルだ。
「誰もいないみたいね。何のためにこんなものが……」
「オ! 何ダコレ!? エイッ!」
視力で姫級スペックに劣る海大Ⅵ型潜水艦一番艦・伊168は気配を頼りに地下トンネルを探りつつ、思索にふけろうとする。が、ここで。奈落棲姫がポチッと何かを押した。そのコミカルなスイッチ音に電と伊168が振り向く。そこには側壁に備え付けられた、赤一色に白いドクロマークの描かれた、見るからに怪しさ満点のスイッチを見事なまでに押し込んだ奈落棲姫の姿があった。
「ナ、ナナナナナナッチャン!?」
「何しでかしてくれちゃってるのよ!?」
「アレ? マズカッタ?」
今ならまだ間に合うかもしれない。電と伊168は急いで奈落棲姫の元へ駆け寄り、目に見えてヤバそうなスイッチを押す奈落棲姫の右手をどかそうとする。しかし、電と伊168の行動よりも早く、地下トンネルがゴゴゴゴゴッと鳴動を始めた。
「ミャッ!?」
「オワッ!?」
まるで地下トンネルが崩落するのではないかとの不安を抱かせるほどの強い振動。上下左右に不規則に切り替わる揺れに対応できずに電と奈落棲姫の姫級コンビが転び、ゴスッと盛大に額を床に打ち付ける。一方。揺れをいち早く察知しその場にしゃがむことで転倒を回避した伊168だが、その表情は蒼白そのものだった。
(マズいマズいマズいマズい! 何が起こってるの、これ!? どうしたらいいの!? 仮にトンネルが崩壊でもしたら生き埋めは避けられないわよ!? でも、逃げるにしたってどこにも非常口らしきものはないしこんな揺れの中でまた梯子を上れるわけないし――ぁぁああああああああああああもう! ナッちゃんのバカッ! バカァーッ!!)
伊168が焦りのあまり脳内で奈落棲姫への直球の罵倒を始める中も状況は動く。地響きを轟かせる地下トンネル。その中央部分の床がガコッと数メートルほど凹み、すかさずその凹みにどこからか調達された海水が通され、水路が構築される。その後、海水がウォータースライダーのごとく一直線に進み始めたのを最後に、地下トンネルを襲う強烈な揺れは収まった。
「イタタタタ……」
「ウゥ、今ノハ一体何ナノデス?」
「少なくとも、あれは自爆ボタンの類いじゃなかったみたいね」
額を盛大に床にぶつけた姫級組がよろよろと起き上がる中、冷静さを取り戻した伊168は安堵の息を零しつつ、できあがった水路をジィーっと見つめる。この水路が何のためのものなのかや、この水路を生み出すスイッチが地下トンネルの側壁にあったことを踏まえ、伊168は推論した。
「これ、もしかしたら深海棲艦が移動の際に利用するものなのかもね」
「ソウナノデス?」
「うん。ほら。見た感じ、動く歩道の海水バージョンって感じがしない?」
「……確カニ。トイウコトハ、コノ先ニ――」
「多分、施設があるわね。それも深海棲艦生産プラントと同じぐらい重要なものがね」
伊168の提示した推測を受けて、電は海水の流れ行く方向を見つめる。トンネル自体が薄暗いため、先を見通そうにも真っ暗だ。でも、深海棲艦の生みの親の手掛かりを見つけるために危険を承知で隠し階段を下りてこの場にたどり着いた以上、ここで退いては意味がない。
「進ミマショウ」
「りょーかい」
「オウ!」
電たちは水の上に立てるという艦娘&深海棲艦の特徴を生かし、動く歩道の海水バージョンを利用して奥へ奥へと進んでいく。道中、何が待ち受けているかわからないために電と伊168はある程度の警戒心を保ったままな一方、奈落棲姫は敢えて海水の流れに逆らって動く歩道の逆走を試してみたり、後ろ歩きで動く歩道を利用してみたりと自由奔放だ。
そうして。2時間ほど経過した後。電たちは地下トンネルの終着点に到達した。思いの外、水路を走る海水のスピードが速かったため、動く歩道が途切れると同時に慣性の影響で前方へ体を投げ出された電たち。どこか出口がないかと探っていると、上層へ繋がる梯子を発見した。
梯子を上り始めて、これまた10分後。電は天井の点検口らしき部分に手を当てて、真上に押し上げる。ギギギッとの鈍い音を立てて点検口が持ち上がった時、地下トンネルの薄暗さにすっかり慣れきった3名にとっては強烈な光が差しかかる。その眩しさに目を細めつつ、電は点検口を横にズラして置き、地下トンネルから脱出する。
深海棲艦生産プラントから地下トンネルを経由してたどり着いた場所。それは、工廠だった。幾多の黒妖精たちが忙しなく動き、備え付けられた巨大かつ数多の機械や己の技術を用いて次々と艤装を作っている。
「何、コレ……」
「ず、随分と大規模な工廠ね。深海棲艦用の艤装はここで作られてるのかしら?」
「凄イ! ココ凄イゾ!」
その光景に、電たちは圧倒された。何せ、規模が大本営側の鎮守府の工廠とケタ違いだったからだ。周囲を見渡しても側壁の見えないほどの広大な空間に、騒音を鳴らしながら駆動する数々の設備。軽く3ケタはいそうなほどにたくさんいる黒妖精。雰囲気に飲まれないわけがなかった。尤も、奈落棲姫は目をキラキラと輝かせているだけなのだが。
『何だ、お前ら。ここに何の用だ?』
「フェッ!? ア、エト……」
『どうした? 艤装の不具合でもあったか?』
と、ここで。工廠で黒妖精たちに指示を送っていた工廠長らしき黒妖精が電たちの存在に気づき、ふわふわ飛びながら近づいてくる。不意打ちな接触にハッと我を取り戻した電がつい調子の外れた声を漏らしていると、伊168が背後から耳打ちしてきた。
(デンちゃん。それっぽい理由をつけてここで最も偉い奴に会いたいって頼んでみて?)
(イムヤさん? わかりました、やってみるのです)
「ハイ、ソウナノデス。デモ、ソレダケジャナクテ、チョットコノ艤装ガ私ニ合ワナイ気ガスルカラ上司ト相談シタイノデス。案内ヲオ願イデキマスカ?」
『……んぅー』
(もう一押しって所かしらね。頑張って、デンちゃん)
(任せてください)
「ソレト、私ガ鹵獲シタコノ艦娘ガ気ニナル情報ヲ吐イタノデ、私ノ口カラ直接伝エタイノデス。駄目、デスカ?」
『いや。俺の一存じゃ決めらんねぇから、ちょっと待ってろ』
伊168にこっそりお願いされた電はとりあえず即興で理由をでっちあげ、平然と工廠長にお願いをする。電轟棲姫の頼みを受けて、工廠長が上司への打診のためにその場を離れようとした時、とある深海棲艦がテクテクと電たちに歩み寄ってきた。
「ア、ヲ級サン!」
「……」
空母ヲ級は例のごとく無言のまま工廠長の進路に立ち塞がり、牙剥き出しの趣味の悪い帽子らしきものの口から一枚の紙を取り出し、工廠長と電たちに見せる。当の紙には殴り書きで『この者たちを案内するよう、仰せつかった。後は私に任せて』とのみ記されていた。
『了解だぜ。なら、俺の案内は必要ねえな。こいつについていきな』
「ヨ、ヨロシクオ願イスルノデス」
「……」
工廠長が空母ヲ級を指差し、電はおずおずとした口調で頭を下げる。以前、伊168が与えた誤解の件の影響で今回も絶対零度の眼差しを向けてくるのではないかと内心でビクビクしていた電だったが、当の空母ヲ級は特に電に拒絶の念を見せなかった。おそらくしばらく時間が経過したことで電への底辺な好感度が幾分か改善されたのだろう。
「……」
空母ヲ級は無言を貫いたまま、電たちを案内する。階段を上り、廊下を歩き、別の階段を下り、渡り廊下を通過し――といった感じで複雑な道のりを歩んだ末。電たちは凄まじく頑丈そうなオーラを放つ藍色の扉の前にたどり着いた。
「……」
『合言葉を叫んでください』
「……」
『合言葉を叫んでください』
「……」
「ヲ級サン? ドウシタノデス?」
「……」
空母ヲ級がノックをすると、空母ヲ級のすぐ目の前の扉の一部分が凹み、液晶画面が表示される。機械音声と液晶画面の双方から合言葉を求められるも、空母ヲ級はただただ沈黙するのみ。結局、空母ヲ級は電に心配そうな眼差しを注がれたのを契機に深々とため息を吐き、深呼吸をしてから、できることなら言いたくなかった合言葉を叫んだ。
「バアアアアニングゥ! ラアアアアブ!!」
「……エ?」
空母ヲ級の叫んだ合言葉が周囲に反響する中、電はビシリと硬直した。無理もない。なぜなら、その合言葉は。第参鎮守府に所属し、1年前に轟沈した金剛型戦艦一番艦・金剛の主にテンションが上がっている時の口癖だったからだ。
『合言葉を認証しました。どうぞお入りください』
電がギョッとした眼差しを空母ヲ級に注ぐ中、藍色の扉は無音で左右に開かれる。その先で、一隻の深海棲姫が腕を組んで待ち構えていた。その姿形はただの見慣れない新種の深海棲姫である。だが、その深海棲姫が纏う雰囲気は、瞳に宿る光は、間違いなく――。
「ア、ア……」
「来マシタネー? 私ハ魂甲棲姫。ゲストノ皆サンヲ歓迎スルデース!」
「……金剛サン? 金剛サンナノデスカ!?」
「イエス、ソノ金剛サンデース! 久シブリネー、イナヅマァーッ!」
己を
電→深海棲艦の体に艦娘の心を宿した暁型駆逐艦四番艦。咄嗟にそれっぽい理由を生み出して詰まることなく話せる辺り、話術の面もそつなくこなせる模様。
伊168→前世が潜水棲姫だった海大Ⅵ型潜水艦一番艦。焦った結果、語彙力がガバガバになって、バカって奈落棲姫に頭の中で言いまくるイムヤちゃん超かわいい。
奈落棲姫→元々は第弐鎮守府の艦娘だった深海棲姫。一人だけ完全にお遊び感覚で電たちと地下トンネルや深海棲艦の工廠の探検を行っている。
工廠長→深海棲艦のための艤装作りを効率よく行うために他の黒妖精に指示を行う黒妖精。仕切っているだけあって黒妖精の中でもトップクラスに優秀である。
空母ヲ級→電への補給関係の任務を担う深海棲艦。ここでは無口キャラとなっている。合言葉を言うのが恥ずかしくて抵抗していたが、最終的に諦めた。多分、今回の「バアアアアニングゥ! ラアアアアブ!!」が最初で最後のセリフ。
魂甲棲姫→深海棲艦側の偉い地位に就いている深海棲姫。その正体は1年前に轟沈した金剛だった模様。似すぎな名前が明かされた時点でお察し状態だったことは気にしてはいけない。
伊168「にしても、叫ばないといけない合言葉に意味なんてあるのかしら?」
魂甲棲姫「トイウト?」
伊168「誰かがここに入る度に毎回合言葉を叫んでたら嫌でも他の連中に聞こえるでしょ? 皆が知ってる合言葉なんてあるだけ無駄だと思うけど?」
魂甲棲姫「……テヘペロ(・ω<)」
というわけで、第4章2話は終了です。魂甲棲姫の名前が出るまではまるで出番が期待されていなかったであろう金剛がついに電たちと邂逅するお話でしたね。この物語は既に佳境、しかし金剛はギャグタイプの艦娘。……はたしてこの作品はシリアスを保ち続けられるのか。
お願い、死なないでください、シリアスさん! 貴方が今ここで倒れたらこの作品が30話もかけて構築してきたシリアスムードはどうなっちゃうのです? 第零鎮守府編で一時行方不明になった感はあるけど、『シリアス艦これ』のタグはまだ生きています。ここを耐えれば、作者ふぁもにかを無意識に蝕むギャグやカオスの呪いに勝てるのです!
次回『シリアス、死す』 元の体を取り戻すのです!