【完結】元の体を取り戻すのです! by.電   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。久々にアットノベルスを検索してみたらホームページにはアクセスできたので「何か復活してる!?」と喜んだのもつかの間、ホームページに飛べたのはアーカイブのおかげであり、結局ホームページ以外の部分にはアクセスできなくてしょんぼりした件。アットノベルスで連載されていた大好きな作品たちはもう私のおぼろげな脳内妄想でしか楽しむことができないと、いい加減諦める頃合いなのでしょうか……。



3話 魂甲棲姫の軌跡なのです!

 

「久シブリネー、イナヅマァーッ!」

 

 深海棲艦用の艤装を手掛ける海底工廠の管理室にて。

 魂甲棲姫の体をした金剛型戦艦一番艦・金剛は艦娘だった頃と何ら変わらないテンションでにこやかに暁型駆逐艦四番艦・電の名前を呼んでくる。

 

 一方、電はまさかの事態に愕然としていた。同時に電は納得もしていた。轟沈してからかれこれ1年もの間、金剛が鎮守府の工廠で建造されなかったのは、既に深海棲艦としてプラントで再誕したからなのだとわかったからだ。しかし、わからないこともある。どうして艦娘の記憶を持ち、人類への復讐なんて望んでいないはずの金剛さんが深海棲艦側の組織の上官にまで登り詰めているのか。どうして人類への復讐を求めつつも電を遊撃の立場に置き、自由に行動させたのか。

 

 

「ドウ、シテ……?」

「私も色々と気になるわね。貴女があの第参鎮守府の金剛だとして、轟沈したのは確か1年前よね? たった1年で幹部にスピード昇進できるほど、深海棲艦の組織形態は甘くないはずよ?」

「知リタイデース? ナラ、チョット準備スルカラココデ待ツネー!」

「「「?」」」

 

 あまりに衝撃的な展開にただ金剛に疑問を投げかけることしかできない電に代わり、海大Ⅵ型潜水艦一番艦・伊168が鋭い視線を突きつける。対する金剛は別室へ突入し、ガーデンテーブルセットとティーセットを器用に両手に抱え持ちつつ駆け戻ってくる。あの時。電が金剛に相談を持ち掛けた時と同様に。金剛は白を基調とした丸テーブルと椅子4脚を床に置き、「ササ、皆座ルネー! ティーパーティーヲ始メルデース!」と手招いた。

 

 

「ティーパーティー、ナノデス?」

「イエス! 前ニオ互イノ考エヲ打チ明ケタ時ノヨウニ、フェアニ語リ合イマショウ!」

「ワカッタ!」

「あ、ちょっとナッちゃん! ったく、少しは魂甲棲姫を警戒しなさいよ……」

 

 魂甲棲姫と化した金剛からのお茶会の誘い。電と伊168は素直に応じるべきか迷いを見せるも、奈落棲姫が考えなしに即断し椅子にストンと座ったことで、断ると言う選択肢を失ってしまう。かくして。電と伊168がそれぞれ椅子に座り、3名が座ったのを確認した金剛が最後に着席したのを契機に、姫級3名(※元艦娘2名、元艦娘の疑いが強い者1名)に艦娘1名(※元潜水棲姫)による奇妙なお茶会が始まった。

 

 

「……」

「ヲッチャンハ例ノ業務(・・・・)ニ戻ッテOKデース! ココマデノ案内、ゴ苦労様デース!」

 

 管理室の天井部分が透明な素材で作られているため、海のプラネタリウムのような神秘さが醸造されている中。ここまで話の流れを見守っていた空母ヲ級が『お茶汲みを私が担当しましょうか?』との視線を金剛に投げかける。目線のみで空母ヲ級の言いたいことをつぶさに読み取った金剛は、空母ヲ級を退出させた。

 

 

「ゴメンナサイデース! ココハ深海棲艦ト黒妖精シカイナイカラ、艦娘用ノ紅茶ハ用意シテナイデース!」

「気にしなくていいわよ、別に」

「ソレハ良カッタデース! 全ク、深海棲艦ハツクヅク不憫デース。美味シイ紅茶ヲ嗜メラレナイナンテ、深海棲艦ハ一生ノ8割ヲ損シテマース!」

「ソウナノカ!? 私ハソンナニ損ヲシテイルノカ!? ナンテコトダ!」

「真に受けるなくていいからね、ナッちゃん。今のは魂甲棲姫の妄言だから」

 

 深海棲艦はあらゆる食べ物や飲み物を拒絶する体質なため、金剛はティーポットから紅茶の代わりにティーカップに燃料を注いで電たちに渡しつつ、伊168に謝罪する。伊168のそっけない返事に金剛は顔を綻ばせたかと思うと、ぷくーとむくれっ面を浮かべる。どこまでも平常運転で、艦娘だった頃と大して変わりない金剛。金剛の言葉を疑いなく受け入れる奈落棲姫とやれやれと指摘する伊168をよそに、気づかぬ内に電から金剛への警戒心は消失しつつあった。

 

 

(よかった、金剛さんは変わっていないのです! 私たちの、人類の味方なのです!)

「サテ、オ茶代ワリノ準備モ終ワッタシ……マズハ電ノコト、聞カセテホシイデース!」

「ワカリマシタ」

 

 金剛からの要請に応じ、電は話し始める。己が轟沈し、深海棲艦化してからの日々だけでなく、金剛が轟沈した後の1年間についても触れていく。金剛がここぞというタイミングで巧みに相槌を打ってくれるため、電は思いの外スルスルと様々な話をすることができた。

 

 

「コノ1年デ大キク成長シタミタイデ、私トッテモ嬉シイネー!」

「ソ、ソウデスカ? 私ハソンナニ成長シタ気ガシナイノデスガ……」

「ノープログレムデース! 電ハスッゴク成長シテル! コノ私ガ保障スルカラ、モット誇リト自信ヲ持ツデース!」

「金剛、サン……」

 

 話に飽きた奈落棲姫が丸テーブルに頭を乗せてスヤスヤとお寝んねモードに突入した中。ドンと己の胸に拳を叩きつけつつ、金剛は電を褒める。その真正面からのウソ偽りない褒め言葉に電が喜びと幾分かの恥ずかしさにプルプルと震えていると、電と金剛が醸成する二人きりの雰囲気を切り裂くようにして、伊168が口を挟んだ。

 

 

「ほら、次は貴女の番よ、魂甲棲姫。色々聞かせてもらうからね?」

「了解デース! ジャア、マズハ私ガ轟沈シテカラノコトヲ一通リ話スデース。疑問点ハソノ後ニ纏メテ聞イテホシイデース!」

「わかったわ」

「ハイナノデス!」

 

 金剛は電と伊168の了承を取りつけた上で己の過去について語り始める。

 いつになく真剣そうな表情に切り替え、己の辿った軌跡について語り始める。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「……ン、ココハ?」

 

 1年前。金剛は第壱、第参、第伍鎮守府合同の大規模作戦により轟沈した。そして、2週間が経過して。次に金剛が目覚めた時、そこは海上だった。脳が覚醒するまではただぼんやりと一定の方向へ歩いていた金剛だったが、意識がハッキリしてきたのを機に立ち止まり、グルリと周囲を見渡してみる。が、どこを見ても海しか見えず、己が陸地には程遠い地点で独りぼっちとなっていることしかわからなかった。

 

 

「ドウシテ? 私ハ沈ンダハズナノニ……」

 

 腑に落ちない事態に金剛は頭を悩ませる。と、ここで。ふと海面に視線を移した金剛は、驚愕に目を見開いた。そこに、自分自身の姿が映っていなかったのだ。血の気のない真っ白な肌、漆黒の髪、背丈から目の色まで、何から何まで別の存在が海面に映し出されていたのだ。

 

 

「ッ!? ナゼ深海棲艦ノ姿ガ――ッテ、声モオカシイデース!?」

 

 発した声すら聞き覚えのない別の声だということも相まって、金剛は狼狽する。何がどうなっている。うんうん唸っていると、金剛の魂甲棲姫としての優れた視力が、遥か前方からゆっくり近づいてくる何者かの影を捉えた。

 

 

(あれは、鎮守府の皆! 榛名もいるデース!)

 

 金剛は遥か前方に第参鎮守府の仲間がいることに気づき、喜び勇んで近づこうとして――踏みとどまった。先ほど海面に映った深海棲艦の姿が金剛の脳裏をよぎる。もう一度海面を見て、相変わらず真っ白な深海棲艦の顔をまじまじと見て、金剛は悟った。私はなぜか深海棲艦になっている。こうなってしまった以上、私は元の居場所には帰れないと。

 

 

「……」

 

 金剛は後ろ髪を引かれる思いに駆られつつも、いらぬ混乱を生まないために、第参鎮守府の皆に見つからない内に海中に潜り、姿を消した。その後、魂甲棲姫と命名された金剛は、体は深海棲艦ながら、それでも人知れず艦娘たちのサポートに徹した。

 

 例えば、練度の高くなさそうな艦娘艦隊にフラグシップ級の強力な深海棲艦が向かおうとしていたのを見つければ、他の海域をサポートしてほしいなどとテキトーに理由をつけて両者がバッティングして艦娘が殲滅されないように誘導したり。中破、大破と状況が危なそうな艦娘艦隊を見つけたら、こっそり彼女たちの加勢をして深海棲艦を沈めたり。金剛は実に巧みに立ち回り、艦娘の被害を緩和するように努めていった。

 

 今や艦娘と体は違えど、しかし志は一緒。人類を守りたいとの願いは一緒。何の因果かわからないけれど、轟沈してなお人類の味方として動ける。まだ私は役に立てる。活躍できる。深海棲艦に己の利敵行為を悟られてはいけないため、実践できるサポートには限度があったが、金剛には十分だった。例え第参鎮守府の仲間と、愛する妹たちにもう二度と会えないのだとしても、心に艦娘だった頃の思い出が鮮明に残る限り、金剛は寂しくなんてなかった。

 

 そうして。深海棲艦側に入り込みつつも艦娘の支援を続ける金剛は、ある時思い出した。過去に悩める電に己が放った言葉のことを。

 

 

――深海棲艦が数に物を言わせたごり押しを続け、人類が質に物を言わせた艦娘で対抗する……このような衝突をいくら続けても、フィニッシュは来ない。人類が奪われた海域を取り戻し深海棲艦を滅ぼす未来もなければ、深海棲艦が艦娘を滅ぼし海を制圧し人類への復讐を遂げる未来もない。そう、思えるデース。いつまで経っても艦娘の全滅はあり得ない。逆に深海棲艦の全滅もあり得ない。直感がネー、私の耳元で囁くデース。

 

 そう、終わらないのだ。これまでは艦娘がなるべく私みたいに轟沈しないように上手に立ち回ることにしか考えが向かなかった。しかし今、私がやっていることは単なる艦娘の轟沈という悲劇の先延ばしに過ぎないのだ。己の信頼できる直感によれば、どれだけ私が艦娘に利する行為を実行した所で、戦争はまず終わらないのだから。

 

 

――そろそろ別の道を模索すべきだと私は思っているデース。これまで常識と考えられてきた概念を粉々に打ち壊すような、斬新で革新的なアイディアが必要なのかもしれないデース。

 

 なら、どうするのか。簡単だ、私がイノベーションを起こせばいいのだ。艦娘の記憶を持つくせに体は深海棲艦という、特殊極まりない状況下に置かれている私が、私にしかできないことをやらかしてしまえばいいのだ。

 

 

 思い立ったが吉日。金剛は艦娘にさえ注意を払っておけば海中を自由に探索できるという深海棲艦の利点を利用して世界を探索し始めた。偶然の産物で初めて海底の深海棲艦生産プラントを訪れ、深海棲艦の生みの親らしき存在の恨み辛みの綴られた手記を見つけてからは、30を越える深海棲艦生産プラントを次々に訪問した。

 

 調べていく内に、金剛は段々と深海棲艦の仕組みを知っていった。【システム】が存在するのだ。人間が大気中に無尽蔵に放つ負の感情を主原料に用いて、深海棲艦生産プラントの黒い歯車を介して深海棲艦を無限湧きさせる凶悪な【システム】が存在するのだ。それこそが艦娘と深海棲艦との長い長い戦争の元凶だったのだ。

 

 

(なるほど。道理でどんなに深海棲艦を倒しても数が減らないわけネー)

 

 負の感情を抱かない人間なんていない。そして、嫉妬、憤怒、憎悪、絶望といった負の感情は愛、感謝、喜び、安心といった正の感情と比べて尾を引きやすく、強弱が極端で、コントロールの困難なものだ。いくら負の感情が深海棲艦の材料になるからといって、そう簡単に全人類が負の感情を消せるわけがない。深海棲艦の脅威を身近に感じれば感じるほど、人類の恐怖という名の負の感情が膨れ上がり、それが深海棲艦の増加と強化をもたらしてしまい、悪循環が形成されてしまう。なんて性質の悪い【システム】だろうか。

 

 

(一刻も早く壊さないとデース!)

 

 【システム】を壊せば、深海棲艦生産プラントは稼働をやめる。これ以上深海棲艦をこの世に生み出させないために、【システム】を破壊しなければ。金剛は深海棲艦生産プラントの探検により入手した手掛かりを元に【システム】が深海棲艦用の艤装を手掛ける工廠に存在することを突き止めた金剛は、早速乗り込んだ。そして。ノリと勢いと言葉巧みさで黒妖精を言いくるめて【システム】の元へ案内させ、はたして金剛は【システム】と対面した。

 




電→深海棲艦の体に艦娘の心を宿した暁型駆逐艦四番艦。いつも通りな金剛の姿を見て、魂甲棲姫としての金剛への警戒心は解けた模様。
伊168→前世が潜水棲姫だった海大Ⅵ型潜水艦一番艦。電や奈落棲姫が疑わない分、意識的に魂甲棲姫へ懐疑的な眼差しを向けている。電一行の良いバランサーである。
奈落棲姫→元々は第弐鎮守府の艦娘だった深海棲姫。長い話を聞くとつい睡魔に襲われ、ウトウトと眠っちゃう性質だったりする。
空母ヲ級→電への補給関係の任務を担う深海棲艦。ここでは無口キャラとなっている。お茶汲みスキルが意外に高い。尤も、深海棲艦ゆえに注ぐのはお茶でなく燃料だが。
魂甲棲姫→深海棲艦側の偉い地位に就いている深海棲姫。元金剛。己の状況をすぐさま理解し、第参鎮守府の仲間との戦闘を未然に回避した辺り、かなり頭が回る。深海棲艦化したことを活かして水面下で色々と動き回っていた。

 というわけで、第4章3話は終了です。後半から金剛の立場から過去編が始まりましたね。とはいえ、あんまり過去の話を引っ張るつもりはないので(※電が登場しないと「なのです!」とサブタイトルを統一できず、サブタイトルのアイディアを考えるのがちょっと厄介なので)、おそらく次回で過去編は終了するものと思われますぜ。
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