どうも、ふぁもにかです。今回は説明回です。この作品の背景設定の7割ほどが今回までで明らかとなります。矛盾がないように設定を組んだつもりですが、どっかしらから設定が崩壊しそうで怖い所ですな。にしても、どの設定をどの辺で開示するかの管理って結構大変ですね。私の場合、無意識の内に前倒しで色んな設定を出しまくってないか心配です。
「金剛サンノ
激しい戦闘の末にすっかりボロボロに壊れ果てた管理室にて。魂甲棲姫の体を抱える金剛との死闘に辛勝した暁型駆逐艦四番艦・電は、力なく仰向けに倒れる金剛に真意を問いかける。が、金剛は電が何を考えているのかが読めず、「……ン?」と困惑の声を上げる。
「電? 私ノ目的ハモウ話シ終エタネー。私ハ彼女ノ味方ヲ、理解者ヲ増ヤシタカッタ。ソノタメニ轟沈シタ電ニ目ヲツケテ、敢エテ遊撃ノ立場ヲ与エテ電ガ自由ニ動キ回レルヨウニシタ。デモ、結局電ハ彼女ノ味方ニナッテクレナカッタ。ダカラ私ハ、情報隠蔽ノタメニ殺スト決メテ――」
「――ソレ、嘘デスヨネ? ダッテ。金剛サンハ私タチヲ殺ス気、ナカッタジャナイデスカ」
「電? サッキマデノ私トノ戦イヲ忘レタデース? 私ハドンナニ卑劣ナ手段ダロウト構ワズニ使ッテ、全力デ殺ソウトシタネー。ナノニ、私ニ殺意ガナカッタ? 何ノジョークデース?」
「ット、ソウデスネ。今ノ言イ方ハ語弊ガアルノデス。確カニ金剛サンハ私タチヲ本気デ殺ソウトシマシタ。デモ、ソレニシテハ全然殺気ガナカッタ。ムシロ、何カヲ見極メルタメニ敢エテ私タチヲ本気ニサセテ、強大ナ壁トシテ私タチノ前ニ立チ塞ガッテイルヨウナ、ソンナ気ガシタノデス」
「……」
「モシモドンナ手段ダロウト関係ナシニ使ッテ、私タチヲ殺ソウトシテイタノナラ……ドウシテ援軍ヲ呼バナカッタノデスカ?」
「ッ!!」
電の考察に適宜言葉を挿入する金剛だったが、電の静かな指摘に目を見開く。金剛の変化を感じ取った電は畳みかけるように考察を提示する。
「天井カラアレダケ沢山ノ砲弾ヲ一斉ニ発射スル。ココデノ戦闘ヲ見据エテ、アノヨウナ大ガカリナ仕掛ケヲ事前ニ用意デキル金剛サンナラ、例エバココニ深海棲艦ヲ速ヤカニ集結サセル警報装置モ用意デキタノデハナイデスカ? 深海棲艦側ニトッテ都合ノ悪イ情報ヲ知リスギタ私タチヲ確実ニ殺シタイノナラ、ワザワザ1対3ナンテ不利ナ状況ノママ戦ワナイデ、ココニ深海棲艦ヲイッパイ呼ビ寄セテ、数ノ暴力デ確実ニ私タチヲ叩キ潰セバヨカッタハズナノデス。ヲ級サンガココニイタノナラ、他ノ深海棲艦ダッテココニ一定数イタハズデスヨネ?」
「……」
「モウ一度言ウノデス。金剛サンノ本当ノ目的ハ何デスカ? ドウシテ金剛サンハ1人デ私タチト戦ッタノデスカ?」
電からの再度の問いかけ。対する金剛はしばし沈黙する。だが。やがて観念したと言わんばかりにため息を吐くと、「降参デース」と軽く両手を上げておどけてみせた。
「マサカココマデ見抜カレルトハ……私ハ電ノ成長ヲ過小評価シテタデース。本当ニ、本当ニ成長シマシタネー。……コレナラ安心シテ頼メルデース」
「金剛サン?」
「電。貴女ニ、イヤ貴女タチヲ見込ンデ、オ願イガアリマース。デモ、ソノ前ニ。サッキハ意図的ニ伏セテイタコトヲ話ソウト思ウデース」
まるで憑き物が落ちたかのような安らかな笑みを浮かべつつ、金剛は語り始める。
先ほど、電たちを彼女こと深海棲艦の生みの親の味方に取り込もうとしていた時には敢えて話さなかった話題にガッツリ触れ始める。
そもそも【システム】はただ深海棲艦を生み出す深海棲艦生産プラントを継続的に稼働させるためだけに存在するものではない。深海棲艦の主原料である負の感情が資材で構築された深海棲艦の体に定着し続けるために、深海棲艦の存続にとって都合のいい形に世界を歪ませて作り変える役目を【システム】は担っているのだ。
そのため、【システム】が壊れれば深海棲艦から負の感情は剥がれていく。普通の深海棲艦なら、負の感情がなくなった時点で消滅する。普通の深海棲艦は負の感情を核にして後は資材のみで体を作られている以上、核がなくなれば元の意思なき資材へと姿を変えることになる。でも。姫級を筆頭とした、強大な力を持つ深海棲艦は違う。深海棲艦生産プラントで深海棲姫を作るには、負の感情と資材以外にさらに材料が必要となっているからだ。それは、かつての戦争で沈んだ、艦の魂。艦の魂と負の感情とを融合させ、その相乗効果で強い深海棲姫ができあがっているのだ。
つまり。イムヤが粗方察していた通り、【システム】さえ壊してしまえば。深海棲姫からは負の感情が抜き取られ、後には艦の魂と資材が残るのみ。すなわち、電轟棲姫から負の感情が消え去れば電は元の艦娘の体を取り戻せるし、イムヤは艦娘の体から深海棲艦の本能を取り除ける。もしも奈落が元艦娘であれば電と同様の結末を辿ることとなる。
でも、彼女は【システム】の破壊なんて絶対に認めない。一刻も早く。一秒でも早く人類を滅ぼしたいとの強い復讐心を抱える彼女には、いくら言葉を尽くして説得しようとも決して届かないだろう。それに、【システム】を壊せば、彼女は死んでしまう。
人類への復讐のために着々と準備を進める中、迫りくる寿命というタイムリミットを突きつけられた彼女は己の体を【システム】の一部に組み込んだのだ。人類滅亡の瞬間まで生き永らえるために、【システム】と同化することで寿命をなくして不老の存在となったのだ。そんな彼女が、【システム】を壊される形での己の死を受け入れる余地はない。【システム】の破壊に彼女が全力で抵抗するとなると、生半可な実力では【システム】を壊すことはできないだろう。
電が元の体を取り戻したいのなら。彼女ごと【システム】を壊すしか道はない。大切なものを全て失った彼女に、彼女自身が世界の害悪だからと死を突きつけるのはあまりにむごたらしくて救いのない結末だ。でも。電なら、甘さと優しさを抱えたまま強くなってくれた今の電なら。きっと。【システム】を壊すか、壊さないか。それに伴う結末を、望ましいものに改変した上で導いてくれるはずだ。私には決して導けない素晴らしい結末を、もたらしてくれるはずだ。
「……電、オ願イデース。ドウカ彼女ヲ、貴女ラシイ方法デ救ッテホシイネー。私ハ独リボッチノ彼女ニ寄リ添ウコトシカデキナカッタケド、キット電ナラ彼女ヲ真ノ意味デ救エルカラ」
「金剛、サン……」
金剛から語られた衝撃的な事実、そして願い。それら全てを頭をフル回転させてどうにか把握し終えた電は理解した。どうして金剛さんがそれっぽい理由をつけて私たちに勝負を仕掛けたのか。
(金剛さんは私たちを見定めていたんだ。中途半端な力じゃ、信念じゃ、深海棲艦の生みの親を救えない。それどころか、中途半端な救済は彼女に最悪な結末を突きつけかねない。だから、自分を指標にした試練を課して、私たちを見極めていたんだ。魂甲棲姫を越えられない奴に彼女は救えない。魂甲棲姫を倒せない奴に彼女を託すわけにはいかないって、私たちに立ち塞がったんだ)
「ワカッタノデス。彼女ヲ救ッテミセルノデス!」
「ソノ意気ネー。期待シテルデース」
金剛の試練に打ち勝った電は、確かな決意を胸に金剛のお願いを快諾する。電の返事に安心して微笑む金剛。その眼前に、電からスッと右手が差し出された。
「電?」
「金剛サン、一緒ニ行キマショウ。金剛サンガイレバ百人力ナノデス。一緒ニ協力シテ彼女ヲ救ウノデス!」
「……ソノ提案ハ、ノーセンキューデース」
「ドウシテデスカ?」
「私ハ彼女ニ愛着ガ湧キスギテマース。例エ彼女ノタメダトシテモ、彼女ヲ一時デモ傷ツケルヨウナ真似ハデキナイネー。ダカラ、私ハココデ今後ノ一部始終ヲ見守リマース。電、彼女ヲヨロシクオ願イシマース!」
電からの協力要請を、金剛はフルフルと首を軽く左右に振って断った。深海棲艦の生みの親に入れ込み過ぎている今の自分では、電の邪魔になりかねないと判断したからだ。
その後、電に改めて彼女のことを託した金剛は、「扉ノ先ニ小部屋ガアルデース。ソコニ高速修復材や弾薬、その他資材ヲイッパイ用意シタカラ皆デ補充スルデース。彼女ノ手記モ一部アルノデ、ソレモ見テホシイデース」と言葉を残し、これ以上は話すことはないと目を瞑るのだった。
電→深海棲艦の体に艦娘の心を宿した暁型駆逐艦四番艦。伊168が気絶している間に自分がいかに頭脳の面でも活躍できるかを主張しまくった模様。
魂甲棲姫→深海棲艦側の偉い地位に就いている深海棲姫。元金剛。電が電轟棲姫になったと知った時から電に深海棲艦の生みの親を救ってほしいと考えていたらしい。
というわけで、第4章7話は終了です。ついに電が元の艦娘の体を取り戻す方法を知ることとなりました。そして、元の体を取り戻す手段がわかった以上、この作品の終わりの時は近いです。あと10話程度を今は予定していますが……はてさて、どうなることやら。
~おまけ~(IFネタ)~
金剛が深海棲艦の援軍を呼ばなかったことに関して。
もしも管理室で何らかの異常が起こっていると空母ヲ級が直感的なアレで気づいたら。
ヲ級(管理室の様子がおかしい、行かないと)
ヲ級「……」
機械音声『合言葉を叫んでください』
ヲ級「……」
機械音声『合言葉を叫んでください』
ヲ級「バアアアアニングゥ! ラアアアアブ!!」
機械音声『合言葉が違います。正しい合言葉を叫んでください』
ヲ級「……ハ?(# ゚Д゚)」
金剛は万が一にも他の深海棲艦が管理室に入らないようにこっそりと合言葉を変更していた、という裏設定。ちなみに新しい合言葉は『目を離さないでって言ったのにぃ~!』だったりする。