どうも、ふぁもにかです。今回は約6500文字ほどかけて【システム】戦が描写されております。戦闘回となると途端に1話当たりの文字数が増加するのはふぁもにか作品の常ですので、例のごとく地の文がくどいと感じたなら時折読み飛ばしつつ楽しんでいってくださいませ。
~参考資料(現状判明している【システム】戦に参加中の艦娘の編成内容)~
主人公一行:電(中破)、伊168、奈落棲姫(中破→悪堕ち川内化→記憶復活)
第壱鎮守府:大和(大破)、陽炎(深海棲姫化)、木曾(大破)、白露(大破)、秋月(中破)、長良(小破)
第弐鎮守府:長門(轟沈寸前)、暁(中破)、比叡(大破)、夕立(深海棲姫化)、利根(中破)、深雪(小破)
第参鎮守府:天龍(大破)、雷(中破)、北上(深海棲姫化)、榛名(大破)、那珂(大破)、卯月(中破)
第肆鎮守府:ビスマルク(中破)、鳥海(大破)、蒼龍(小破)、弥生(中破)、U-511(深海棲姫化)、伊8(小破)
第伍鎮守府:扶桑(大破)、曙(大破)、吹雪(大破)、赤城(深海棲姫化)、那智(大破)、伊401(小破)
第陸鎮守府:叢雲(大破)、加古(中破)、大鳳(小破)、望月(深海棲姫化)、日向(大破)、龍田(中破)
第零鎮守府:響、球磨、不知火、睦月、伊58、時雨
※各鎮守府の一番先頭に名前の記された艦娘が旗艦となっています。
主に第弐鎮守府の長門型戦艦一番艦・長門の尽力により、【システム】に掌握され、艦娘側の敵と化した奈落棲姫は解放された。さらに、かつて第弐鎮守府に所属していた川内型軽巡洋艦一番艦・川内としての記憶が何の因果か奈落棲姫によみがえることとなった。
「川内さんが、川内さんが戻った!」
「比叡、感激です! 川内さん、おかえりなさい!」
「川内じゃ! 本物の川内なのじゃあ!」
「川内さん! ホントのホントに川内さんなんだよな!?」
「お姉ちゃん! お姉ちゃぁぁあああああああああん!」
もちろん、川内の帰投を祝福したのは長門だけではない。第弐鎮守府の暁型駆逐艦一番艦・暁が、金剛型戦艦二番艦・比叡が、利根型重巡洋艦一番艦・利根が、吹雪型駆逐艦四番艦・深雪が、プラスアルファとして第参鎮守府の川内型軽巡洋艦三番艦・那珂が。喜色に満ち満ちた笑顔を浮かべて奈落棲姫に飛びつこうとする。
「待ッタ。今ハ感動ノ再会ニ浸ッテル場合ジャナイカラ、ソウイウノハ後回シネ。今ハアノ【システム】ヲ何トカシヨウ」
が、当の奈落棲姫――【システム】に体を作り変えられたことで、肌の異様な白さ以外は川内そっくりとなっている――はひょいとその場にしゃがんで艦娘5隻の飛びつき行為をサラッと回避する。結果、バシャアアと顔面を海面に打ち付けることとなった5隻は「なんで!?」と言わんばかりに奈落棲姫を見上げるも、奈落棲姫の意見を聞くと、ぷくーと不満に頬を膨らませながら、憎々しげに【システム】を睨みつけた。
「ナッチャン! 記憶ガ戻ッタミタイデ良カッタノデス! ア、ジャアモウ『ナッチャン』ジャナクテ『川内サン』ッテ呼ンダ方ガ――」
「ノンノン、デンチャン。ソノママ『ナッチャン』呼ビデイイヨ。私、ソレ気ニ入ッテルカラサ。ソノ代ワリ、私モ今マデ通リ『デンチャン』ッテ呼バセテモラウカラ」
「ワカッタノデス、ナッチャン!」
と、ここで。奈落棲姫に派手に遠方まで殴り飛ばされていた暁型駆逐艦四番艦・電が戻り、奈落棲姫に祝福の言葉を送る。どうやら電も長門の力技による奈落棲姫の奪還の一連の流れをきちんと視界に捉えていたようだ。その際、奈落棲姫の呼び方を変えようとした電だったが、奈落棲姫は記憶を取り戻す前と何ら変わらないニッカリとした笑みとともに、電に『ナッちゃん』呼びのままでいるように要請した。
「ソウイウワケダカラ、『イムタン』モ改メテヨロシクネ☆」
「……はぁ。別に『イムヤ』のままでよかったのに、またあのアホ丸出しって感じのあだ名に戻っちゃった。こんなことならナッちゃんが記憶を取り戻さない方がありがたかったかしらね」
「相変ワラズノ毒ノ吐キップリ。コレゾイムタンダヨネ!」
海大Ⅵ型潜水艦一番艦・伊168は奈落棲姫が自分のことを『イムたん』呼びに切り替えてきたことにさも不愉快ですと言わんばかりに眉を寄せる。しかし、口では悪態をつきながらも、伊168の表情は嬉しさを隠しきれていないようだった。
「サーテ! 選手交代ダヨ、ナガモン! 第弐鎮守府ノ旗艦ハ私ガ代行スルカラ、ナガモンハ後ロニ下ガッテ私ノ勇姿ヲ観戦シテテヨ! ンジャ、イックヨォォオオオオオオオ!」
奈落棲姫はグググッと両手を真上に掲げると、何とも頼もしい晴れ晴れとした笑みを貼りつけて、改めて【システム】戦への意気込みを見せる。
◇◇◇
一方。【システム】は焦っていた。目の前の敵は、艦娘は誰もかれもが希望に満ちている。一部の存在の精神的働きのおかげでのしかかる絶望を振り払うことに成功した艦娘どもは、大体がほんのきっかけで轟沈しそうなほどにボロボロなくせに、燃料や弾薬の関係でもう大して長くは戦えないくせに、随時増援を持ち込める【システム】を圧倒していく。
こんなはずじゃなかった。採用した戦略は上手く運ぶはずだった。なのに、肝心の戦略はどれもこれも裏目に出てしまっている。30隻もの深海棲艦の犠牲の元に艦娘を深海棲姫化させる漆黒の槍6本を作り放ったことは、結局は数の優位を自ら捨ててしまっただけとなった。艦娘側の戦力としてかなりの貢献をしていた奈落棲姫を強制的に自らの戦力に組み込んだことは、結局は深海棲姫化した艦娘を元に戻せる可能性を提示し、無駄に艦娘どもに希望を与えただけとなった。
こんなはずじゃなかった。そのような戦略の狂いが積み重なり、気づけば敗北の2文字がもう眼前にまで突きつけられている。【システム】を保ち、動かすだけの負の感情が残りわずかとなり、枯渇しつつあるからだ。世界中の人類の負の感情をかき集めるにも時間が足りなすぎる。なぜだ。なぜだ。おかしい。どうしてこうなった。少し前までは確かに勝てる戦いだったはずなのに。
認めない。認めてなるものか。
こんな所で、負けてなるものか。復讐は終わらせない。
◇◇◇
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■!」
「皆、しゃがんで!」
直径3メートルほどの宙に浮かぶ漆黒の球体こと【システム】は空気をビリビリと震わせる形で咆哮する。鼓動を刻み、全艦娘を標的として黒い何かを放射線状にビュンと解き放つ例の全体攻撃を繰り出すも、さすがに電の助力なしでも【システム】の全体攻撃を読めるようになった伊168がすかさず指示を出したため、誰も全体攻撃の被害に遭わなかった。
「■■■■■■! ■■■■■■■■■■■■!」
だが、この程度で攻撃を一旦休止するほど、今の【システム】に余裕はない。【システム】は足りない負の感情を補うためにそれぞれ黒い触手を伸ばし、近場の深海棲艦5隻の体に突き刺す。そこからギュイイイインと深海棲艦5隻から負の感情を補充すると、負の感情を失った深海棲艦がただの資材に変わり果てる中、【システム】は己の上部に巨大な漆黒の手を構築する。
「■■■■■■■■■■■■■■!!」
巨大な漆黒の手はギュッと拳を作ると、ゴウッと唸りを上げる風を纏った上で艦娘側へと振り下ろされる。多大な質量を抱え込んだにしては猛スピードで打ち出されるバカでかい拳は隕石のごとく落下した。その際、隕石の落下地点に運悪く存在していた第陸鎮守府の5名の艦娘が漆黒の拳に為すすべもなく潰される――ことはなかった。
「オ、オフッ!? セッカク何カ上手イコト中破カラ無傷ニ戻ッテタッテノニ、一瞬デ大破ニナッャッタジャナイカ!」
唯一【システム】の意図を察することに成功した奈落棲姫が漆黒の拳の繰り出される地点に入り込み、両手を掲げて体全身で漆黒の拳を受け止めたからだ。奈落棲姫が一撃で大破に追い込まれたことを踏まえれば、もし奈落棲姫が振り下ろされる漆黒の拳を止めなければ、第陸鎮守府の艦娘5名の轟沈は避けられなかっただろう。
(ナイス、ナッちゃん。助かったわ。にしても、ただでさえ少なくなった深海棲艦の取り巻きを犠牲に据える辺り、なりふり構わずって印象ね。……これは攻め時かもしれない)
「皆、総攻撃よ! 【システム】は追い詰められている! ここで攻撃を畳みかければ、勝利を掴み取れるわ!」
今まであまり積極的に攻撃を仕掛けず、取り巻きの深海棲艦たちに任せていた【システム】が、ここにきて積極的に攻撃に転じたことを受けた伊168は【システム】が窮地に立たされていると推測し、艦娘全体に指示を発する。
「っと、命拾いしたわ。ありがとう」
「ニャハハ、ドウイタシマシテ」
奈落棲姫が右足を振り上げて、真上で受け止めていた漆黒の拳を蹴り飛ばした後。奈落棲姫がいなければどうなっていたかをここで理解した第陸鎮守府の吹雪型駆逐艦五番艦・叢雲は、第陸鎮守府を代表して奈落棲姫に感謝の意を告げる。
「加古! 日向さん!」
「よっしゃあ!」
「うむ!」
叢雲はすぐにでも動けそうな第陸鎮守府の古鷹型重巡洋艦二番艦・加古と伊勢型戦艦二番艦・日向の2名を呼ぶと、一斉に【システム】に砲撃を仕掛ける。【システム】は特に戦艦たる日向の強烈な一撃が存外突き刺さったらしく、球体を構成する漆黒の一部が一瞬だけ霧散しそうになる。
「効いてる効いてる! これならいけるわ!」
「■■■■■■■■■■■■■■■■■!」
第参鎮守府の暁型駆逐艦三番艦・雷が嬉しさを思いっきり表出する中、球体を構成し直した【システム】はまたもドクンと鼓動を打ち込む。すると、奈落棲姫が真上に蹴り飛ばした漆黒の巨大な拳の中から全方向へと漆黒の矢が射出された。まるでウニのように、漆黒の拳の内部をプチプチと突き破って発射された軽く100本は越えるであろう矢は、下手な鉄砲も数撃ちゃ当たると言わんばかりに次々と艦娘たちを貫いていく。
「あぅ、やってくれたね。怒ってなんかないけど……」
「これくらいの傷……なんてことは、ない」
「む、こっちにも飛び火するとは少々想定外だな」
第肆鎮守府の睦月型駆逐艦三番艦・弥生や第伍鎮守府の妙高型重巡洋艦二番艦・那智、第零鎮守府提督の暁型駆逐艦二番艦・響など、計9名の艦娘がダメージを負い、中には轟沈寸前の苦境に陥る艦娘も現れる。が、だからといって。【システム】を倒しきる好機が巡っている以上、攻撃の手を緩めるような艦娘側ではない。
「よくもやりましたね!」
「よーく狙ってぇぇええ、撃つ!」
「次から次へと! うざったいのよ!」
第壱鎮守府の秋月型駆逐艦一番艦・秋月、第肆鎮守府の高雄型重巡洋艦四番艦・鳥海、第伍鎮守府の綾波型駆逐艦八番艦・曙を筆頭に、降りかかる漆黒の矢をかわすことのできた面々がお返しだとの気持ちを込めて【システム】を砲撃する。もう【システム】の盾となってくれる深海棲艦はわずかであり、それゆえに【システム】は大量の砲撃の弾幕の半分以上の直撃を回避できなかった。
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!」
グシャリ。【システム】の球体で不快な音が響く。【システム】は今にも崩壊してしまいそうな球体の形を咆哮とともに無理やり維持すると、これまで戦場に生き残っていた残る7隻の深海棲艦全てに黒い触手を突き刺して負の感情を吸収する。結果、【システム】に味方する深海棲艦が全滅する中、【システム】は遥か上空へと飛翔する。空へ空へと急上昇する。
(空に向かって、一体何を――まさか逃げるつもり!?)
伊168は【システム】の狙いに速やかに推測し、【システム】をきつく睨みつける。実際、【システム】の目的は伊168の推測通りだった。今回の戦いではもはや勝利は望めない。ならば、逃げればいいのだ。そもそも【システム】は直接人類を滅ぼしたいわけではない。深海棲艦を通してじわじわと人類を絶望させて滅ぼしたいのだ。ゆえに、【システム】にこの場にいる艦娘を全滅させるなどの手段を介して、直接手を下す必然性はない。一旦『逃走』の選択肢が思い浮かんだのなら、もう【システム】に迷いはなかった。もちろん、これは負け惜しみなんかではない。
「【システム】の動きを止めて! 逃げられるわ!」
(この機会を逃がせば、次はいつ【システム】を壊す機会に恵まれるかわかったものじゃない。これが最初で最後のチャンスってこともあり得る。逃がしてたまるか……!)
「このまま逃げさせやしませんよ!」
「ビビって逃げてんじゃねぇぞ! オラァ!」
「お願い! 当たってください!」
伊168が切迫した声を上げ、伊168に呼応して第壱鎮守府の長良型軽巡洋艦一番艦・長良が。第参鎮守府の天龍型軽巡洋艦一番艦・天龍が。第伍鎮守府の吹雪型駆逐艦一番艦・吹雪が。速攻で砲撃する。が、グングン高度を上げていく【システム】に直弾させることは難しく、3名の放った砲弾は虚しく空を切るのみだった。
「■■■■!? ■■■■■■■!?」
この分なら逃げきれる。【システム】が全力で戦線離脱しようとしたその時、【システム】はコンクリート壁にぶち当たったかのような衝撃をその身に受けた。直後、【システム】が目指していた上空の【システム】が衝突した場所にのみ、淡い藍色の光をほのかに放出する結界が現出する。
「――逃がさないよ?」
この己の逃亡を阻止する結界は一体何なのか。【システム】が困惑に揺れ動く中、海上の響が深海棲艦化した赤城の砲撃を華麗にかわしながら、【システム】を見上げてニコリと笑う。【システム】は理解した。確実に成功したであろう逃亡を阻止しやがったのは響だと。
「その反応からして、これだけ距離が離れているのに私の声が聞こえているようだね。なら特別に説明するとしよう。結論から言うと、今しがた結界を張らせてもらったよ。私を中心に、半径1キロ程度の球状の結界をね。この結界はいかなる存在の通過をも拒絶する。結界の外側からの艦娘の支援艦隊も深海棲艦の増援もシャットアウトするし、結界の内側からの艦娘や深海棲艦の脱出も受け付けない。物体、と表現するには少しばかり微妙な君――【システム】であろうと、この結界に例外はない。結界をすり抜けて逃げることは叶わないよ」
響は結界の効果を説明し、【システム】に逃亡は無駄だとの事実を突きつける。ちなみに、このトンデモ技術の結集された結界は当然、第零鎮守府の妖精と黒妖精が作ったものである。
「■■■■■■■■■■■■■■■■■!!」
【システム】は鼓動を脈動させて雄叫びを上げることで黒い触手を形成し、響に放とうとする。結界を張ったのが響であれば、響を轟沈させれば結界が解除されるのではないかと考えたからだ。
「いいのかい? 私に気を取られすぎだと思うけど?」
が、響の問いかけに、【システム】は胸騒ぎを感じて響への攻撃をキャンセルする。刹那、【システム】の眼前に、電がいた。艦娘や深海棲艦が飛べない以上、両者が上空1000メートルの世界に生身で到達することなどあり得ない。なのに、なぜか電が目の前にいる。わけがわからないまま、【システム】は電の渾身のかかと落としで真下に突き落とされた。
「 ニ ガ サ ナ イ ノ デ ス ! 」
さらに電は追撃として真上から【システム】に砲撃する。何度も何度も何度も何度も砲撃を行い、確実に【システム】を海面へと吹っ飛ばす。なぜ、電が遥か上空1000メートルの領域にやってこれたのか。答えは単純、電が奈落棲姫にお願いをして、己の体を【システム】の元まで投げ飛ばしてもらったからだ。奈落棲姫の深海棲姫としてずば抜けたスペックが怪力部門でもいかんなく発揮されたがゆえの展開である。
「■■■■■■■■■■■■■■■■■!?」
電の電轟棲姫としての尋常でない火力を駆使した連続砲撃をモロに喰らい、【システム】は抵抗できぬままに墜落し、海面をザバンと突き抜ける。その後、バシャッと海面に浮上した【システム】が見たものは、己に正確に砲門を向ける艦娘たちの姿だった。
「撃てぇぇえええええええええええええ!!」
伊168の号令を皮切りに、艦娘たちは【システム】へ一斉攻撃を行う。第壱鎮守府が。第弐鎮守府が。第参鎮守府が。第肆鎮守府が。第伍鎮守府が。第陸鎮守府が。深海棲艦化した艦娘6名を除いた全ての第壱~第陸鎮守府の艦娘が加減なしの砲撃を、爆撃を、雷撃を繰り出していく。己の全てを注ぎ込むかのように、艦娘たちは絶え間なく全力の攻撃を畳みかけていく。
「■■■■■■■! ■■■■■■■■■!!」
【システム】に艦娘たちの一斉砲撃に対処する術は残っていない。艦娘たちの放った砲弾は次々と【システム】に着弾し、ダメージを刻み込む。先ほど上空1000メートルから突き落とされる際に電に何度も砲撃されたことも深く影響したのか、砲弾が【システム】に命中する度に【システム】は悲鳴を上げ、グリュリュと球体が歪んでいく。
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■――ッ!!」
どれだけの時間が経過した後だろうか。艦娘側の砲撃が終わった時。【システム】は叫び、ググッとどうにか球体の形状を保とうとするも、球体を構成する漆黒がもれなくドバンと爆ぜ散った。その際、【システム】が取り込んでいた、黒髪女性――深海棲艦の生みの親――の収められた筒状の透明な容器が解放され、重力に従って落下し、ボシャンとの水音を立てて海中へと沈んでいく。
「……やった。やった、やったぞ!」
艦娘たちの猛攻により、ついに【システム】が壊れ、沈んだ。その事実をいち早く把握した誰かが最初は呆然とした口ぶりで、しかし段々と確信を抱くように力強く言葉を紡ぐ。その声を聞いて、一拍置いてから、総司令艦として伊168は高らかに宣言した。
「――誇りなさい、私たちの勝利よ!」
刹那。周囲一帯を震わせるように、艦娘たちの歓喜の声が轟くのだった。
電→深海棲艦の体に艦娘の心を宿した暁型駆逐艦四番艦。実は空へ逃げた【システム】を追うために奈落棲姫に投げ飛ばしてもらった後のことは全然考えてなかったりする。
伊168→前世が潜水棲姫だった海大Ⅵ型潜水艦一番艦。最低限の指示しかしないと公言した割には今回は色々と指示を飛ばしていた印象。総合的には良い総司令艦だったと思われる。
奈落棲姫→元々は第弐鎮守府の川内だった深海棲姫。轟沈の危機に瀕した第陸鎮守府の艦娘を救ったり、電を空高く投げ飛ばしたりと随所で活躍した。以前、金剛の繰り出した砲弾の雨から体を張って伊168を守った辺り、庇う分野ではかなり優秀なのかもしれない。
長門→第弐鎮守府所属の長門型戦艦一番艦。轟沈寸前ゆえに奈落棲姫に第弐鎮守府の旗艦を任せて自分自身は最後の一斉砲撃にのみ参加した。
暁→第弐鎮守府所属の暁型駆逐艦一番艦。奈落棲姫が川内化した事実が嬉しい勢その1。
比叡→第弐鎮守府所属の金剛型戦艦二番艦。奈落棲姫が川内化した事実が嬉しい勢その2。
利根→第弐鎮守府所属の利根型重巡洋艦一番艦。奈落棲姫が川内化した事実が嬉しい勢その3。
深雪→第弐鎮守府所属の吹雪型駆逐艦四番艦。奈落棲姫が川内化した事実が嬉しい勢その4。
那珂→第参鎮守府所属の川内型軽巡洋艦三番艦。奈落棲姫が川内化した事実が嬉しい勢その5。
叢雲→第陸鎮守府所属の吹雪型駆逐艦五番艦。奈落棲姫の『庇う』が発動しなければ、【システム】の形成した漆黒の巨大な拳に潰され轟沈していた勢その1。
加古→第陸鎮守府所属の古鷹型重巡洋艦二番艦。奈落棲姫の『庇う』が発動しなければ、【システム】の形成した漆黒の巨大な拳に潰され轟沈していた勢その2。
日向→第陸鎮守府所属の伊勢型戦艦二番艦。奈落棲姫の『庇う』が発動しなければ、【システム】の形成した漆黒の巨大な拳に潰され轟沈していた勢その3。
雷→第参鎮守府所属の暁型駆逐艦三番艦。抱えている感情が割とすぐに表に出ちゃうタイプ。
弥生→第肆鎮守府所属の睦月型駆逐艦三番艦。【システム】の暴れっぷりの被害艦その1。
那智→第伍鎮守府所属の妙高型重巡洋艦二番艦。【システム】の暴れっぷりの被害艦その2。
響→第伍鎮守府から失踪し、第零鎮守府の提督となった暁型駆逐艦二番艦。【システム】の暴れっぷりの被害艦その3。結界を張り、【システム】の逃亡を阻止したのは、艦娘と深海棲艦との共存を謳う立場の者として、なるべく艦娘と【システム】とがフェアな状況のままで戦い、決着をつけてほしかったから。
秋月→第壱鎮守府所属の秋月型駆逐艦一番艦。【システム】に苛烈な攻撃を叩き込む勢その1。
鳥海→第肆鎮守府所属の高雄型重巡洋艦四番艦。【システム】に苛烈な攻撃を叩き込む勢その2。
曙→第伍鎮守府所属の綾波型駆逐艦八番艦。【システム】に苛烈な攻撃を叩き込む勢その3。
長良→第壱鎮守府所属の長良型軽巡洋艦一番艦。【システム】の逃亡を防ごうとする勢その1。
天龍→第参鎮守府所属の天龍型軽巡洋艦一番艦。【システム】の逃亡を防ごうとする勢その2。
吹雪→第伍鎮守府所属の吹雪型駆逐艦一番艦。【システム】の逃亡を防ごうとする勢その3。
【システム】→深海棲艦の生みの親であるシン(仮名)を完全に取り込んだ、直径3メートルほどの漆黒の球体。負けたくない一心で様々な個性的な攻撃を仕掛けたり逃亡を画策したりするも、艦娘側の猛攻により壊れ、沈んだ模様。
というわけで、最終章9話は終了です。今回で【システム】戦がようやく終わりました。いやはや、こうもキャラをいっぱい登場させた中での長期戦&ラスボス戦は中々に新鮮だった一方で、描写がかなり大変でした。なるべく完全に地の文でしか存在しない、といった感じの艦娘がいないように気を遣っていたので余計に大変でしたぜ。が、【システム】戦が終わったからってまだ最終話とはなりません。もう少しだけ続くのです。
~参考資料(【システム】戦の戦果報告)~
主人公一行:電(中破)、伊168、奈落棲姫(中破→悪堕ち川内化→記憶復活→大破)
第壱鎮守府:大和(大破)、陽炎(深海棲姫化)、木曾(大破)、白露(轟沈寸前)、秋月(中破)、長良(小破)
第弐鎮守府:長門(轟沈寸前)、暁(中破)、比叡(大破)、夕立(深海棲姫化)、利根(中破)、深雪(大破)
第参鎮守府:天龍(大破)、雷(中破)、北上(深海棲姫化)、榛名(大破)、那珂(大破)、卯月(大破)
第肆鎮守府:ビスマルク(中破)、鳥海(大破)、蒼龍(中破)、弥生(中破)、U-511(深海棲姫化)、伊8(中破)
第伍鎮守府:扶桑(大破)、曙(大破)、吹雪(大破)、赤城(深海棲姫化)、那智(轟沈寸前)、伊401(大破)
第陸鎮守府:叢雲(大破)、加古(中破)、大鳳(小破)、望月(深海棲姫化)、日向(大破)、龍田(中破)
第零鎮守府:響(小破)、球磨、不知火、睦月、伊58、時雨(小破)
※各鎮守府の一番先頭に名前の記された艦娘が旗艦となっています。