【完結】元の体を取り戻すのです! by.電   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。今回、初めてハーメルンの誤字報告機能を利用させてもらいました。どうやら『電轟棲姫』が『轟電棲姫』と表記されていた模様です。誤字を教えてくれた読者さま、ありがとうございます。いやはや、この機能、すっごく便利ですね。これであまり誤字のこととか気にせずに、推敲なしで最新話を投稿できるってものですぜ☆(←他力本願、ダメ。ゼッタイ)

 さて。今回は伏線回収回・前編となります。今回と次回とでこの作品で用意した伏線の大体は回収されるかと思われますが……回収忘れがあったらごめんなさい。



10話 まだ終わっていないのです!

 

 長い激闘の末。ようやく【システム】に打ち勝つことができた艦娘たち。いつ轟沈してもおかしくなかったにもかかわらず結局誰も轟沈しなかったことも相まって、誰も彼もが心の底から湧き上がる衝動のままに完成の声を轟かせる。

 

 そんな中。逃走を目論んだ【システム】を逃がさないために、奈落棲姫の力を借りて上空1000メートルまで到達していた暁型駆逐艦四番艦・電は、今。

 

 

「ミャァァアアアアアアアアアアア゛――ッ!!」

 

 絶叫しながら海面へ向けて顔面ダイブを決め込もうとしていた。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「ウゥ、痛イノデス……」

 

 ザッバーンと派手に着水音を響かせて墜落した電。重力が無駄に落下スピードを跳ね上げてきたせいで轟沈寸前のダメージを負ってしまった電は海面に浮上すると、涙目で小さく呟く。

 

 しかし、今の電に顔を中心にほとばしる痛みに悶絶している暇はない。理由は2つある。1つは、せっかくの艦娘たちの歓喜に満ち満ちた雰囲気を白けさせたくないから。もう1つは、電にはまだやるべきことがあるから。

 

 

「い、電!? 今凄い音立てて落ちてきたけど、大丈夫なの!?」

「ア、雷オ姉チャン。少シ怪我シタケド、私ハ平気ナノデス」

「そ、そう? 電轟棲姫の体って本当に頑丈なのね!」

 

 真っ先に電の元へ駆け寄り、電に不安そうな眼差しを向ける第参鎮守府の暁型駆逐艦三番艦・雷。雷を安心させようと少々無理をして電が笑みを形作ると、雷は素直に電の主張を受け入れて電轟棲姫のスペックを称賛した。少しばかり雷のテンションがおかしいように見受けられるのは、きっと雷が【システム】の破壊を全力で喜ぶ艦娘たちの雰囲気に当てられているからだろう。

 

 

「ねぇ、電。あの元凶を倒せたってことは、もう深海棲艦は出てこないのよね? 深海棲姫化した艦娘が、電が元の艦娘の姿に戻れるのよね?」

「ハイ。デモ、マダ終ワッテイナイノデス。少シ、待ッテテクダサイ」

 

 雷は期待と不安とをないまぜにした声色でまくし立てるように電に問いを投げかけ、電は即答する。が、その後。電は海面へと目線を落とすと、そのまま海中へと潜っていった。誰よりも必死に戦っていたにもかかわらず、いざ【システム】が破壊されても一切喜ばず、唐突に潜水し始めた電に「え、ちょっ、電!?」と困惑する雷を残して。

 

 

「皆、盛り上がっている所悪いけど、少し私に注目してくれないだろうか?」

 

 と、ここで。【システム】に勝利したと同時に深海棲艦化した艦娘6隻の敵対意思が消失したがために、ひとまず時間稼ぎをする必要がなくなった、第零鎮守府提督たる暁型駆逐艦二番艦・響がパンパンと手を叩いて艦娘たちの注意を引く。

 

 

「急にどうしたの、響?」

「この子たちが、私たち艦娘に折り入って話したいことがあるそうだ」

 

 第弐鎮守府の暁型駆逐艦一番艦・暁がコテンと首を傾けて問いかけると、響はトントンと己の艤装を指で軽く叩く。すると、響の艤装から妖精と黒妖精がひょっこりと顔を出すのだった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

(このまま終わるのは、絶対にダメなのです!)

 

 電は両眼に、心に強い意志を宿してグングン潜っていく。電の向かう先にあるのは、【システム】が取り込んだものの最終的に解放した、深海棲艦の生みの親たる全裸の黒髪女性――シン(仮称)――の収められた筒状の透明な容器である。【システム】が散々攻撃を受けまくった影響で、筒状の容器にはいくつものヒビが入っており、容器が砕け散るのも時間の問題のようだった。

 

 

「待ッテクダサイ!」

『……どうして、追ってきたの?』

 

 静かに沈んでいく容器の元まで徐々に近づき、追いついた際の電の呼びかけに、容器内に収められたシンが煩わしそうに疑問を投げかける。相変わらずシンは両目を瞑ったまま眠っているようであり、直接口を動かすことなく直接電の脳内に思念を飛ばしていく。電は答えた。端的に、嘘偽りのない本心からの理由を、ニッコリと笑いながら口にした。

 

 

「――沈ンダ敵モ、デキレバ助ケタイノデス。ダカラ、来マシタ」

 

 電の発した理由が想定外極まりなかったのか、シンは『え?』と呆然とした反応を見せる。電の言葉を理解するためにシンはしばし時間を費やし、おずおずといった口ぶりで電に質問した。

 

 

『それは、何かしらの高度な皮肉かしら? 生憎、私は世俗の情報を断ち切って生きてきたから、そういうのはよくわからないわ』

「ヒ、皮肉ジャナイノデス! 私ハ本気ナノデス!」

『正気?』

「ハイ。私ハ至ッテ正常ナノデス!」

『何が目的なの? 【システム】が壊れ、後は死を待つのみの私ごときを助けた所で、貴女に得はないはずだけれど?』

「……金剛サンニオ願イサレマシタカラ」

 

 ――電、オ願イデース。ドウカ彼女ヲ、貴女ラシイ方法デ救ッテホシイネー。私ハ独リボッチノ彼女ニ寄リ添ウコトシカデキナカッタケド、キット電ナラ彼女ヲ真ノ意味デ救エルカラ。

 

 電の脳裏で金剛の切実な願いが再生される。誰よりもシンのことを案じていて。シンを最優先にして、ずっと寄り添い続けてきた金剛の願い。それが今の電を突き動かす一因なのである。だが、それだけではない。電自身も、シンを救いたいと考えていた。

 

 

「ソレニ、私モシンサンノコトヲ救イタイノデス。ダッテ、貴女モ私ト同ジデ、大切ナモノヲ、日本ヲ守ロウト頑張ッタ人ナノデス。ナノニ、コノママ終ワッタラ虚シイノデス」

『……』

「貴女ノ話ヲ聞カセテクダサイ。貴女ノ歩ンダ人生ノコト、私ハ知リタイノデス」

『……その様子じゃ、私の手記を見たのでしょう? なら、話すまでもないと思うけど?』

「ソレデモ、貴女ノ口カラ直接聞キタイノデス。全テノ手記ヲ見タワケジャナイデスシ」

『……』

「ドウ、デショウカ?」

『……』

 

 電はシンの顔色を伺いつつ問いかけるも、当のシンは沈黙を貫いたまま。話す気はないと拒否られたのではないかとの予測を電が視野に入れ始めた所で。シンは語り出した。

 

 

『これも一興かしらね……』

 

 

 ◇◇◇

 

 

 今は昔。日本のとある都市で一人の女の子が生まれた。

 彼女はごく一般の家庭で生まれたにしては、何をするにも天才的だった。

 天才的頭脳、天才的感性、天才的運動神経。

 彼女は常人の費やす努力の約10分の1から100分の1で、すこぶる良い結果を確保できた。

 彼女に苦手分野は一切存在せず、どのような分野でも凄まじい成績を叩き出せた。

 

 彼女を取り巻く故郷の子供や大人たちは、神童たる彼女と接し、なんと受け入れた。

 出る杭は打たれる、なんてことはなく。人々は彼女を地域の宝として愛したのだ。

 

 天才的頭脳の元、彼女は己が一般的な子供とあまりに違うことを把握していた。

 そのため、人々に疎まれる、嫌われるものと考えていた彼女は驚いた。

 ゆえに、当初は彼女に好意ばかり向けてくる人々を気味悪がっていた。

 が、段々とそのような負の感情は消えていった。

 

 彼女は、故郷の皆が大好きになった。

 こんな何でもできてしまう私を好きでいてくれる皆が愛おしくなった。

 今は子供だからいくら天才だろうとできることは限られている。

 だけど、大人になったら盛大に恩返しがしたいと考えるようになった。

 故郷の皆は、思い出は彼女にとって大切なモノとなっていた。

 

 彼女の万能的な才能は大人になっても一向に衰えなかった。

 政治、経済、教育など。あらゆる分野で彼女の天才的発想は冴え渡った。

 いつしか彼女は国や地域が何らかの問題にぶち当たり、行き詰った時に画期的なアイディアを示すご意見番として、その名を徐々に全国に知られるようになった。

 彼女自身は故郷で単なる訓導(小学校の教諭)を務めていただけなのにも関わらず、地位に釣り合わない知名度を得た。

 

 段々と世界がきな臭い方向へ進み始める中。彼女は異例の抜擢をされた。

 彼女の頭脳をぜひ軍事で活用するべきだと、上の命令でいきなり一師団の長を任されたのだ。

 命令に逆らうことは不可能ゆえに選択肢はないのだが、彼女は上の命令を進んで受け入れた。

 彼女の大切なモノを守る。大切なモノがいっぱいある日本を守り抜く刃となる。

 大好きな故郷の皆へ恩返しできる良い機会だと捉えたのだ。

 

 ゆえに、ぽっと出の非軍人。それも女が師団長となった。

 当初、部下たちには不満が立ち込めていた。が、彼女の才は。的確極まりない指示、指導は。部下たちの彼女に対する偏見だらけの印象を払拭するのに十分なもので。

 いつしか部下たちは彼女を心から支持するようになった。

 

 彼女も段々と好意を抱いてくれるようになった部下たちに、好意を返した。

 結果、練度に優れ、だが異様に家族的な雰囲気を持つ師団ができあがっていた。

 ここにおいて。彼女の大切なモノが増えたのだ。

 

 が、そのような天才的な彼女を酷く気にくわない者がいた。

 男尊女卑の考えにどこまでも傾倒した者が軍の幹部に一部、存在したのだ。

 その者は、年下で、女性で、それなのに物凄く有能な彼女が目障りだった。

 彼女の存在を認識すればするほど、自らがちっぽけに思えて。

 情けなく思えて。どす黒くて醜くてもはや取り返しのつかない生きる価値のない愚図に思えて。

 出しゃばりすぎた杭を打ち抜きたいと心の底から願い、彼女を嵌める時を狙っていた。

 

 そんな最中、戦争が始まった。後に、第二次世界大戦と称される戦争だ。

 日本もまた戦争の参加者となる中、彼女は部下とともに戦場を駆け抜け、功績を積み上げた。

 彼女にとって、思想なんてどうでもよかった。正義だ悪だは関係なかった。

 彼女の信条はただ1つ。大切なモノのため。彼女は己に宿った才能を存分に利用した。

 

 ある時、彼女は他のいくつかの師団とともに中国に派遣された。

 が、それこそが彼女を貶める罠。彼女は栄えある日本の勝利のための捨て石とされたのだ。

 圧倒的な戦力差を前に、彼女の担当した師団は壊滅に追い込まれた。

 部下たちは散り散りとなり、彼女は部下を一人でも生かすために無茶をして、敵軍に囚われた。

 

 彼女は執拗に拷問を受けた。

 それはもう人権を容赦なく蹂躙されるような、非人道的で惨い仕打ちを受けた。

 だが、彼女はどれだけ凄惨な仕打ちを受けようとも、一切情報を吐かなかった。

 たかが一師団長でしかない自身が持っている情報は大したものではない。

 しかし、そのほんの些細な情報のせいで日本が不利に追いやられるかもしれない。

 大切なモノを、失ってしまうかもしれない。

 その可能性が得体の知れない恐怖としてのしかかり、彼女の口を一貫してつぐませた。

 

 彼女は脱出の機会を待っていた。

 冷静に、冷静に。思考を沈めて。虎視眈々と機会を狙っていた。

 壊れそうになっても。砕けそうになっても。腐りそうになっても。心だけは保つ。

 大切なモノを守る。彼女は呪文のように幾度も頭の中で唱えた。

 

 どれだけの時間が経った後だろうか。

 天が哀れな彼女に味方したらしく、奇跡的に敵軍の拘束から脱出できる好機が訪れた。

 彼女は好機を無駄にすることなく、どうにか脱出を成功させた。

 

 彼女はまず、情報を集めた。

 あらゆる筋から貪欲に情報をかき集め、戦争の状況への判断材料をかき集めた。

 その際、彼女は知った。部下が全員、一人残らず殺されていたと。

 体を張ってでも守ろうとした大切なモノが、既に失われていた。

 彼女の頭は絶望の白で染め上げられた。

 

 長きにわたる拷問と、大切な部下たちの死。

 もはや心も体もボロボロで。しかし、彼女は立ち止まっている状況ではなかった。

 戦争は日本の敗北という形で終止符を打とうとしている。

 このままでは、故郷に戦火が及び、故郷の皆まで失ってしまうかもしれない。

 異常な彼女に愛を注いでくれた家族を。異質な彼女とともに歩んでくれた友を。

 手段なんて忘れてしまった。が、彼女は何らかの手段で故郷にあと一歩の所までたどり着いた。

 

 

 その時、彼女は見た。見てしまった。

 彼女の視界の遥か遠くで、小さく立ち上るキノコ雲を。

 

 

 酷く嫌な予感がした。

 走って。走って。何度か転ぼうと構わずにただひたすらに前進して。

 故郷に戻った時、そこには何もなかった。

 家もない。家族もいない。友人も、知人もいない。故郷ごと消し飛んだ。

 広島は人類史上最凶の兵器で焼き滅ぼされたのだ。

 もう、何もない。大切なモノが何もない。消えた。失った。奪われた。

 私には、何も残っていない。

 

 

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 凄惨な現実を受け入れられず。彼女のヒビだらけの心は壊れた。

 

 




電→深海棲艦の体に艦娘の心を宿した暁型駆逐艦四番艦。シンを真の意味で救うため、上空1000メートルからの墜落で轟沈寸前になった体を酷使して海中に潜っていった。
雷→第参鎮守府所属の暁型駆逐艦三番艦。【システム】を倒したことで本当に全てが終わるのかについて確証を持っていないため、テンションが高いながらも不安を抱いている。
響→第伍鎮守府から失踪し、第零鎮守府の提督となった暁型駆逐艦二番艦。一緒に連れてきていた妖精と黒妖精から皆に聞かせたい話があるとの要請があったので、皆を注目させた。
暁→第弐鎮守府所属の暁型駆逐艦一番艦。皆の抱く疑問を真っ先に口にする役。
シン→深海棲艦を生み出した見た目中年女性の存在。元々天才だったが、完璧超人とは程遠く、人間味にあふれていた。ゆえに隙もあり、出る杭を打つ存在の暗躍に上手く対処できなかった。

 というわけで、最終章10話は終了です。電がベストなタイミングで己の決め台詞を炸裂させたことを起因として、シンの過去にクローズアップする話でしたね。

 にしても、上の登場キャラの一覧の所で暁型四姉妹が連続して表示されているのを見ると何だか感慨深い気持ちにさせられます。何だかんだセットでいるのが普通って印象な暁型四姉妹ですが、この作品では全然4名が集結していませんでしたからね。
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