【完結】元の体を取り戻すのです! by.電   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。今回からはエピローグということで、主に最終章を迎えた後の鎮守府の話をいくつかピックアップして描写していきます。ということで、まずは第伍鎮守府、響のエピローグです。でも、響が中心となるからといって、終始ギャグやカオス展開になると思ったら大間違いなのです。今回は割とシリアスもあるから、気を付けましょう。



エピローグ 終幕の帰艦
1話 第伍鎮守府のその後の話


 

 【システム】との戦いを終えた後。第伍鎮守府の艦娘たちは、自分たちの鎮守府から唐突に失踪し、知らぬ間に第零鎮守府なんてものを立ち上げやがっていた暁型駆逐艦二番艦・響、球磨型軽巡洋艦一番艦・球磨、陽炎型駆逐艦二番艦・不知火の問題児3名の首根っこを掴んで、第伍鎮守府へと有無を言わせず強制連行していた。その際、第零鎮守府にて建造された睦月型駆逐艦一番艦・睦月、巡潜乙型改二潜水艦三番艦・伊58、白露型駆逐艦二番艦・時雨をひとまず第伍鎮守府へ迎え入れることとした。

 

 そして、今。響は第伍鎮守府のメンタルの弱さに定評のある提督の仕事場たる執務室にいた。既にどうして自分たちが第伍鎮守府から姿を消したのかといった一切の経緯を仲間たちに話し終えた響。結局、非公式の第零鎮守府の存在を、人材も施設も全て第伍鎮守府が吸収する形に話が纏まり、そのような方針の下で提督が報告書を手掛けることとなった中。

 

 響は神妙な表情で、机上に積まれた報告書を相手取る提督を見つめる。まずは今回の【システム】戦を巡る一部始終をどのようにして報告書に記載したものかを、逐次他の鎮守府の提督と頻繁に連絡し合いながら決めていく提督を見上げて、おもむろに語り始める。

 

 

「司令官、私は思うんだ。一生において、過ちを犯さない人間はいない。人間が人間である限り、必ずどこかで失敗する。もちろん、失敗の回数に個人差はある。そして、失敗の数が少なければ少ないほど、一般的に『お前、天才かよ』と称されるようになり、失敗が多くなると『やーい、ドジっ子』と揶揄されるようになる。一度も失敗を経験せずに生涯を終えたと胸を張って宣言できるのは、それこそ生後数か月までの赤ちゃんぐらいのものだろう」

「ふむ」

「それは心を持った兵器たる艦娘も同じなんだ。艦娘は完全無欠の機械じゃないから、時には失敗する。ゆえに大事なことは、どんな些細な失敗だろうと絶対にするものかと神経を尖らせて精神をすり減らすことではなく、取り返しのつかない失敗だけを避けることなんじゃないかな」

「ほう」

「そこでだ、司令官。私は今回の己の行いを反省している。もう一生分反省しているのではないかと思えるほどに猛省している。このような失敗は二度としない。不死鳥の名に誓う」

「そうか」

「だから、そろそろ石抱きから解放してほしい。正直、凄く辛い。ヘルプミー、司令官」

「ダメだ」

 

 今現在、荒縄で後ろ手に縛られた上で正座させられ、太ももの上に重石を乗せられている響はプルプルと震えながら提督に助けを求めるも、提督は響の切なる願いをたった3文字で無下にする。

 

 

「む、そんな殺生な。司令官……」

「頼むからそのまるで今にも捨てられる飼い猫のような悲しげな目で僕を見るのはやめてくれ。ついでに、焼き五体投地じゃないだけマシだと思ってそのまま石抱きを甘受してくれ。……これでも怒り狂う神通から頑張って譲歩を引き出して響たちへの罰を甘くしてもらったんだぞ、僕は」

「……確かに、下に十露盤(そろばん)板も敷かれてないし鞭打ちもないから、焼き五体投地よりはまだこの石抱きの方がマシかもしれないね。そもそも比較対象がおかしい気がするが、そこは目を瞑ろう。で、仮に司令官の主張を全面的に受け入れるとして、なんで私だけ石抱き罰ゲームの時間が長いんだい? 球磨と不知火はさっき司令官が石抱きから解放していたのに私だけ継続とか、不平等じゃないか。早急な待遇の改善を要求するよ」

「却下。だって、響たち3人が鎮守府からいきなり失踪したのって響が主犯だって話じゃないか。それに書き置きの中で『ハラショーハラショー』って、ぶっちぎりでふざけていたのも響だし、自業自得だよ」

 

 提督は何が何でも響、球磨、不知火に焼き五体投地というおぞましい罰を押し通そうとしていた秘書艦こと川内型軽巡洋艦二番艦・神通をどうにか説得した時の精神的疲労を思い出し、グッタリと机に顔を突っ伏す。提督の発言を受けて、響は己の残した書き置きと、球磨&不知火が残した書き置きを比べるために脳裏に思い起こしてみる。

 

 

不知火『しばらく鎮守府を留守にしますが、何か不知火に落ち度でも?( ・´ー・`)』

球磨『心配ないから捜さないでほしいクマーヽ( ・(ェ)・ )ノ』

響『ハラショー、ハラショーショー(*´ω`*)』

 

 確かに。響は球磨や不知火と比べて、より第伍鎮守府の仲間たちへの配慮が欠片も感じられないメッセージを残していた。所詮、五十歩百歩のような気もするが、この書き置きの内容が響たちの石抱きの時間に差異を設けるという神通の判断の決定打となったのなら、上手く提督を言いくるめれば石抱きタイムを今すぐ終了に持ち込めるかもしれない。響はやる気になった。

 

 

「失敬な。あれはハ・ラショー語だ。ハ・ラショー語とは、遥か6000年前の太古よりあまり形を変えずに細々と伝承されてきた気位の高い崇高な言語でね。ヴェールヌイ族の1人が唐突にハラショーしか話せなくなる『ハラ症』を発症したことが起源で発展したんだ。主な特徴としては『ハ』『ラ』『ショ』『ー(伸ばし棒)』の4つを口調と合わせて巧みに組み合わせることで少ないながらも意思伝達を可能にし、さらにヴェールヌイ族以外の者は容易に翻訳できないことから、会話の意図を悟られない暗号の面でも優秀で――」

「――言っておくけど、どれだけ理論武装しても無駄だからな。僕は今の激昂中の神通の指示には逆らいたくない。下手したら、僕まで石を抱かないといけなくなるかもしれないだろう?」

「……司令官の薄情者」

「何とでも言え、僕はまだ死にたくないんだ」

 

 秘書艦たる神通から響への石抱きの罰の監視を任されている提督は、どうにか巧みな話術で提督を説き伏せようとする響の行為を一蹴する。神通から指示された石抱きの時間を短めに繰り上げるつもりのないらしい提督に響がジト目を送るも、提督には通じない。ちなみに。響たちに石抱きを施した神通は今、睦月、伊58、時雨の第零鎮守府で建造された艦娘3名に第伍鎮守府の案内を行っているため、執務室にいない。

 

 

「……反省しているのは本当だ。すまない、司令官」

「響?」

「心配、かけたくなかったんだ。皆には、司令官には『あー、あの問題児がまーた何かしやがったよ。ま、いつものことだろ。放っておこうぜ(笑)』程度の認識でいてほしかったんだ。でも、私の行為は完全に裏目になった。……正直、ずっと私たちを捜索してくれるとは思わなかった。あんまり関わりのなかった曙にまで泣かれそうになるとは思わなかった。私の見込み違いで皆を心配させて、司令官を苦しませて、本当にごめんなさい」

 

 

――なにサラッと登場してるのよ、アンタたち!

――いきなりふざけた書き置きを残して失踪して、あたしたちがどれだけ心配したと思ってるのよ!?

――アンタたちが空気の読めないバカ丸出しな書き置きを残したせいで、クソ提督の胃薬依存度がどれだけ上がったと思ってるのよ!

 

 と、ここで。響は突如、顔を俯かせて提督に謝罪する。石抱きの痛みにより精神的に弱っている影響か、はたまた響の脳裏に曙の怒りの声がよみがえった影響か。響はいつになく真摯に、素直に提督に頭を下げた。すると、提督は響に近づき、ポンと頭に手を置く。

 

 

「……謝るなら僕もだね。すまない、響。僕は響の苦しみに気づいてやれなかった。響にだけ聞こえていたという、深海棲艦の声。僕にとって深海棲艦は言葉の通じないただの敵でしかなかったが、響にとっては言葉を尽くせば分かり合えるかもしれない同類のように感じていたことだろう。だけど、響はそれでも深海棲艦を攻撃しないといけなかった。僕が、響が頼りになるからと積極的に戦地に投入したからだ。ずっと一緒に戦ってきた仲間だ、気づける機会はいくらでもあったはずなのに。深海棲艦と戦うのが苦しいなら、別の役目を響に与えるべきだったのに。でも、僕は気づけなかった。響が鎮守府から失踪しようと考えるほどに追い詰められて、苦しんでいたはずなのに。……僕は提督失格だとつくづく思うよ。本当にすまなかった」

「違う! 違うよ、そんなことはないさ、司令官! 確かに司令官はメンタルが弱くて、頭もあんまり回らなくて、艦娘の尻に敷かれることも多くて、情けないし、頼りないし、何か最近白髪も目立ちつつあるけど――でも、司令官は優秀だ! 自分なりに私たち艦娘が最善の状態でいられるようにしっかり気にかけて、裏で手を回して、頑張ってくれた! 司令官自身がどう思うかは私には決められないけど、少なくとも私にとって、司令官は貴方以外にあり得ない!」

 

 提督は膝をついて響と目線を合わせ、心の底から謝罪の言葉を吐き出す。その提督の発言に響は意外そうに目を見開き、その後すぐに提督の発言を否定しにかかる。今の提督をこのまま放置してしまえば、今後ずっと自信を失ったままという未来が透けて見えたからだ。響が必死に紡ぐ言葉に、提督は「そうか。嬉しいことを言ってくれるな」と微笑むと、おもむろに響の膝の上に乗せられている重石を1つずつ取り除いていった。

 

 

「え、いいのかい? 神通さんに怒られるよ?」

「そうかもしれないな。……けど、神通の指示を曲解するなら、響に一定時間、厳しい罰を与えさえすればいいんだ。なら、僕が石抱きの代わりの罰を提示する。……響。今、この執務室の雰囲気は僕たちのせいで中々に暗い。だから、今から僕を楽しませる話をしてくれ」

「……え?」

「第零鎮守府なんて愉快なものを作ったんだ。土産話のストックは、当然溜まってるよね? なら、それを面白おかしく僕に話して執務室の雰囲気を良くしてくれ。それが僕からの罰だ」

「あぁ!」

 

 提督は響の両手を拘束する荒縄を解きながら、響に笑いかける。響はそれはもう嬉しそうに何度も何度もうなずく。どうやら石抱きが肉体的にも精神的にも相当きつかったらしい。と、ここで。

 

 

『あ、提督ぅー』

『いたいたぁ』

 

 ふわふわと飛びながら執務室に入ってきた妖精たちが響の元にやってくる。「私はもう提督じゃないんだけどね」と呟きつつ、耳打ちしてくる妖精たちの言葉を響は聞いた。その際、響が「ほう」と目を丸くしていたことに関して、提督は少々気になった。

 

 

「そうか。第零鎮守府の留守番を任せていた皆も無事、到着したみたいだね。報告、ありがとう。もう下がっていいよ」

『『あい』』

「どうかしたのか、響?」

「司令官。楽しい話かどうかはわからないが、司令官へのサプライズを用意したよ」

「サプライズ? ……え、あれ? 何か胃をキリキリと絞めつける感覚が――」

 

 響が妖精たちとの対応を終え、提督がそこはかとなく嫌な予感をヒシヒシと感じた、その時。「私はこの茶色の扉から入るぜ!」との威勢のいい声とともに、バーンと執務室の扉が派手に開かれた。その後、執務室の入り口からドタバタと突入してきたのは、艦娘4名。誰も彼もがキラキラとした笑顔を浮かべていたのが、提督の第一印象だった。

 

 

「超弩級戦艦、伊勢型の1番艦の伊勢です! 元戦艦レ級ってことでよろしくね!」

「こんばんは、提督。あたしは軽巡洋艦の阿武隈です。元軽巡ト級でしたけど、そういうのは気にしないで接してほしいです! よろしくお願いします!」

「初めまして、子日(ねのひ)だよぉ! 前は北方棲姫をやってたよ! よろしくしてね!」

「高雄型重巡洋艦三番艦の摩耶さまだ。元重巡リ級の経験もあるぜ。よろしくな」

 

 伊勢型戦艦一番艦・伊勢、長良型軽巡洋艦六番艦・阿武隈、初春型駆逐艦二番艦・子日、高雄型重巡洋艦三番艦・摩耶は順番に提督に自己紹介をする。が、その際にサラッと口にした衝撃の事実に提督はピシリと石像のごとく固まり、その後。

 

 

「はぁああああああああああああああ!?」

 

 提督は高らかに絶叫した。

 

 

「え、なに!? どういうこと!? 深海棲姫だけが元艦娘って話なんじゃないの!? 元北方棲姫の子はともかく、どうして他の深海棲艦まで艦娘になってるのさ!?」

「妖精たちの話によると、どうやら【システム】が壊れたのと同じぐらいの時間にこの第零鎮守府所属の深海棲艦たちも艦娘の姿を取り戻したそうだ。こうなってくると、おそらく人類や艦娘に対し寛容な態度を持ち、言葉の通じる深海棲艦は皆、元艦娘だったという説が妥当な所だろうが……細かいことは考えたら負けだと私は思っているよ」

「えぇぇぇ……」

「というわけで。睦月、伊58、時雨にプラスして、この子たちの受け入れもよろしく頼むよ」

「ちょッ!?」

 

 第零鎮守府にて建造された睦月、伊58、時雨を受け入れる態勢を整えるだけでも大変なのに、さらに元深海棲艦の艦娘4名をも受け入れないといけなくなった。多少強引にでも大本営を納得させないといけなくなった提督が思わず頭を抱える中、響は「さて、皆。まだ球磨と不知火がその辺に入るだろうから、探し出して、鎮守府の案内を頼むといい」と、4名の艦娘をひとまず執務室から出発させた。

 

 

「まさかこうも仕事が増えるとは……安易に第零鎮守府をありのまま受け入れるべきじゃなかったか? こんなの上に何て報告すればいいんだよ……」

「ガンバッ、司令官☆ 胃薬の貯蔵は十分か?」

「うるせぇよ、問題児。それと、前言撤回。あと30分延長で石抱きセカンドシーズンな。何だかんだ、結構余裕そうにしてるしなぁ?」

「なん、だと!? このタイミングでまさかのセカンドフェイズに突入するというのか!? バカな、バカなぁぁああああああああああああああああああああああ!!」

 

 戦争中より戦後の方が次々と仕事量が増えていく現状に提督が早くも第零鎮守府を抱え込んだことを後悔し始める一方、響はテヘッとわざとらしい笑顔を貼りつけて提督を応援する。結果、響は再び石抱きの刑に苦しみ、提督は提督で今後の第伍鎮守府の立場をどう持っていくべきかとの悩みの影響で精神的疲労が積み重なるのだった。

 

 




響→第伍鎮守府から失踪し、第零鎮守府の提督となった暁型駆逐艦二番艦。が、第零鎮守府は第伍鎮守府に吸収されたので、もう提督ではなくなった。短い提督業であった。
神通→第伍鎮守府所属の川内型軽巡洋艦二番艦。秘書艦を担当している。響、球磨、不知火に第伍鎮守府から何も言わずに姿を消した罰として石抱きを提唱した張本人。
伊勢→第零鎮守府所属だった伊勢型戦艦一番艦。まっすぐな性格をしているがどこか抜けているのがデフォルト。ここでは元・戦艦レ級のため、ドS属性が付加されている。
阿武隈→第零鎮守府所属だった長良型軽巡洋艦六番艦。自分に自信がなさげで神経質なのがデフォルト。ここでは元・軽巡ト級であり、第零鎮守府所属の影響で、神経質な性格が改善されている。
子日(ねのひ)→第零鎮守府所属だった初春型駆逐艦二番艦。実は、正確な名前の呼び方が判明していないのがデフォルト。ここでは元・北方棲姫であり、子供っぽさに磨きがかかっている。
摩耶→第零鎮守府所属だった高雄型重巡洋艦三番艦。男勝りで、提督の悪友ポジションにぴったりなのがデフォルト。ここでは元・重巡リ級であり、ノリのよさ部門では一級品。
第伍鎮守府の提督→苦労人な男性提督。【システム】戦や響たち第零鎮守府勢の件で慎重に報告書を作らないといけないため、戦争はもう終わったのに、胃薬との共同生活がまだまだ続く模様。

 というわけで、エピローグ1話は終了です。いくらシリアスがあるからといって、響が登場する時点で、1話丸々シリアスな雰囲気とか無理だったんじゃあ、といった話でしたね。響の出番がある話は不思議と会話文が多くなる辺りが自分でもなんだか不思議です。
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