【完結】元の体を取り戻すのです! by.電   作:ふぁもにか

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ふぁもにか「1話4000字と言ったな? あの発言はなかったことにしてください」
電「ナノデス!」

 どうも、ふぁもにかです。今回は幕間ということで、電不在でちょっとした息抜きの話です。なので、申し訳程度のギャグ要素が入っております。とはいえ、基本がシリアスなのであんまり息抜きできませんけどね。サブタイトルもサブタイトルですし。



幕間 失踪した艦娘の話

 

 第参鎮守府の一角、艦娘寮の一室にて。旅立つ妹の暁型駆逐艦四番艦・電の姿を、その背中が見えなくなるまで見送った後、暁型駆逐艦三番艦・雷はボフッとベッドに顔を埋め、長く息を吐く。

 

 

(ハァ、電。行っちゃったなぁ……)

 

 せっかく帰ってきてくれたのに速攻で元の艦娘の体を取り戻す旅を選択した電。1か月前に電が轟沈してから一人ぼっちで寂しかったこの寮部屋がしばらくの間はそうでなくなるものと考えていただけに、雷の意気消沈具合は凄まじい。

 

 

(元の体を取り戻したいって気持ちはわかるけど、せめてもう何日かぐらいここにいてくれていいじゃない。本当に言い出したら聞かないんだから……)

 

 雷は電の行動に対してぷくーと頬を膨らませ、ベッドをポフポフ叩いて内々に秘めていた本音を発散する。だが、いつまでもベッドでダラダラしてはいられない。このままでは今後控えている任務に支障が出てしまう。切り替えないと。雷がどうにか平静を取り戻そうと考えていると。突如として、窓がバリーンと派手な破砕音とともに砕け散った。

 

 

(ちょっと、何事!?)

 

 慌ててベッドから飛び降り、窓の方向を見やると、窓を破壊して寮部屋に侵入した何者かがシュタッと華麗に着地する姿が見受けられる。ここで何者かによる鎮守府襲撃の可能性を視野に入れた雷だったが、侵入者がガバッと顔を上げた瞬間、雷の目が点になった。何せ、眼前の侵入者の正体が、暁型駆逐艦一番艦・暁――要するに雷の姉だったのだから。

 

 

「やっほー! お邪魔するわよ、雷!」

「あ、暁お姉ちゃん!? なんで窓ぶち破ってきちゃうの!? 意味不明なんだけど!」

「え、なんでって言われても、窓を蹴り破って派手に室内に入るのが最近のレディの嗜みって青葉から聞いたから、ちょっと試してみたのよ!」

「……」

(青葉!? いくら暁お姉ちゃんが純粋だからってなに余計なこと吹き込んでるのよ!?)

 

 雷は思わず絶句する。青葉型重巡洋艦一番艦・青葉がいつの間にやら姉の暁に誤った知識を植えつけている(しかも、雷の知る青葉の性格からして面白半分の可能性が非常に高い)ことに頭を抱える。一方、雷の様子を特に何とも思っていない暁はテクテクと雷の元へ歩み寄る。

 

 

「ねぇねぇ、今のどうだった? レディっぽかった?」

「……」

「あれ、どうしたの? 元気ないみたいだけど」

「誰のせいだと思ってるのよ。窓の修理だってタダじゃないのよ?」

「あはは、ごめんごめん。でも、ちゃんと事前に雷の寮部屋を調べて実践してるから大丈夫!」

「どこがよ! なおさら性質悪いわよぉぉおおおおおおおお――!」

 

 雷は吠えた。ただでさえ電がいなくなって落ち込んでいる所に、己の心労なんて知ったことかと言わんばかりの暁のハイテンション&天然っぷりを見せつけられた雷は叫ばずにはいられなかった。その後、心内に溜め込んでいたストレスとかその他諸々を先の叫びですっかり吐き出し終えたらしく、幾分か落ち着いた雷は暁に問いかける。

 

 

「それで? どうして第弐鎮守府の暁お姉ちゃんがここにいるの?」

 

 暁は第弐鎮守府の艦娘である。なのになぜか今ここにいる。その疑問を解消するための問いかけに暁は「第参鎮守府に来たのは午後の演習のためよ。雷の部屋に来たのは、ちょっと聞きたいことがあったからね」と簡潔に答える。ちなみに、青葉もまた第弐鎮守府の艦娘である。

 

 

「聞きたいこと?」

「うん。響が鎮守府から失踪した件、知ってる?」

「え……?」

 

 暁がさらっと口にした衝撃的な内容に雷はつい呆然とする。が、すぐに正気を取り戻した雷の心で弾けたのは案の定、驚愕の感情だった。

 

 

「はぁぁあああああ!? 響お姉ちゃんがいなくなった!?」

「その様子だと知らなかったみたいね。話によると、3日前に第伍鎮守府の不知火と球磨と一緒に響が失踪したらしくてね。捜索しても足取りが掴めないって第伍鎮守府じゃ大騒ぎみたい」

「響お姉ちゃんたちはどんな感じでいなくなったの?」

「えーとね。3日前の朝、提督が執務室に入ると机の上に――」

 

 

不知火『しばらく鎮守府を留守にしますが、何か不知火に落ち度でも?( ・´ー・`)』

球磨『心配ないから捜さないでほしいクマーヽ( ・(ェ)・ )ノ』

響『ハラショー、ハラショーショー(*´ω`*)』

 

 

「――と、それぞれの書き置きがあったらしいわ。きっと響たちは夜の内に姿を消したんだわ」

「……色々と理解が追いつかないんだけど。とりあえずそのふざけた書き置き、解体処分待ったなしの所業なんじゃないの?」

「いや、この書き置きを見た第伍鎮守府の司令官は急性胃炎を発症して胃薬と日々を共にしているわ。レディ風に言うと、ケッコンカッコカリを前提とした胃薬(伊89(イヤク))さんとのお付き合いって感じかしら?」

「……あー、第伍鎮守府の司令官は不憫系の人なのね。機会があったら謝らないといけないわね。響お姉ちゃんのやらかしたことだし」

 

 雷はまだ見ぬ第伍鎮守府の提督がストレスで体調悪化したであろうことに同情する。謝罪の機会に恵まれた時は何かお詫びの菓子折りを用意しようと雷が考えていると、暁が話の纏めにかかる。

 

 

「ま、そういうわけだから、もし響の行方について何かわかったら私か第伍鎮守府に連絡してちょうだい。いい?」

「うん、わかった。でも、なんで暁お姉ちゃんは私に響お姉ちゃんのことを直接聞きにきたの? 司令官には話さないの?」

「ええ。ここの司令官には既に第伍鎮守府の司令官経由で話が伝わっているはずだからね」

 

 雷との会話を経て、用を終えた暁は寮部屋の玄関から立ち去ろうとする。が、ここで暁はふと立ち止まる。振り返って、無言で雷を見つめる。

 

 

「……」

「暁お姉ちゃん?」

「雷。お願いだから、貴女までいなくなったりしないでね」

「え……」

「電が轟沈して、響が失踪して……雷まで消えちゃったら、私は――」

「大丈夫。私は絶対にいなくならない。心配しないで」

「……あ。うん、そうね。そうよね! ごめんね、今のはちょっとらしくなかったわ」

 

 優しく包み込むように雷に手を握られ、真摯な雷の目を向けられ。暁はいつの間にか自分が得も言われぬ不安に心を押し潰されそうになっていたことに気づく。お姉ちゃんなはずの自分が妹に励まされたことに己の未熟さを改めて認識する。

 

 

「もっとレディとして経験を積まないとダメね」

 

 暁はもう大丈夫だからとのメッセージを込めてニコリと笑う。雷は言えない。つい先日、轟沈した電が帰ってきたことを言えない。暁を信用できないわけじゃない。だけど、電の安全を考えれば、第参鎮守府に所属していない艦娘に深海棲艦化した電の存在を伝えるわけにはいかない。妹として、暁の心の負担を軽くしてあげたいのに、何もできない。雷は複雑な心境に駆られた。

 

 

「――と、もうヒトフタマルマルなのね。雷、せっかくだし一緒に食堂で食べよ?」

「うん。案内するわ、暁お姉ちゃん」

「お願いね。……ふふふ。楽しみだわ、第参鎮守府の日替わりランチ!」

(こういう所ですぐに通常運行に切り替える辺り、さすがは暁お姉ちゃんね……)

 

 部屋の掛け時計からお昼時になっていると気づいた暁は姉妹で楽しく昼食をとるために雷とともに食堂へ向かう。ちなみに、暁は知らなかった。第参鎮守府の今日の日替わりランチが駆逐艦の艦娘たちに考慮したキッズメニューで構成されていることを。

 

 




暁→第弐鎮守府所属の暁型駆逐艦一番艦。暁型の長女としてレディであろうと決めているも、あんまりレディをやれていない、背伸びしたお子様な感じがデフォルト。この作品でもお子様ではあるが、ちょっとばかりお子様のベクトルが違う。
雷→第参鎮守府所属の暁型駆逐艦三番艦。電がいなくなった寂しさは暁の訪問により薄れた模様。暁に今の電のことを言えない現状にジレンマを感じている。
青葉→第弐鎮守府所属の青葉型重巡洋艦一番艦。アクティブにパパラッチをやっているのがデフォルト。暁に誤ったレディ像を吹き込み、暁の反応を楽しんでいるらしい。
不知火→第伍鎮守府所属の陽炎型駆逐艦二番艦。第伍鎮守府から失踪した問題児その1。
球磨→第伍鎮守府所属の球磨型軽巡洋艦一番艦。第伍鎮守府から失踪した問題児その2。
響→第伍鎮守府所属の暁型駆逐艦二番艦。第伍鎮守府から失踪した問題児その3。
第伍鎮守府の提督→第伍鎮守府所属の艦娘たちを率いる立場の若い男性。真面目な性格ゆえに、色々な意味で個性的な艦娘たちがやらかす度に胃を痛めている。ご愁傷さまである。

暁「あれ、窓割れてない?」
雷「あんたが割ったんでしょうが! 『かんむすぐらし!』への誘導はやめなさい!」

 というわけで、プロローグの幕間は終了です。一刻も早く暁を登場させたいばかりに衝動的に急ピッチで組み上げることとなった幕間ですが、今後の展開への布石を打てたのでこれはこれでいいんじゃないかなと思っています。
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