どうも、ふぁもにかです。今回からは第1章。電の元の艦娘の体を取り戻すための旅が始まります。が、これ一応タグで『冒険譚(※スケールがしょぼい)』って書いてますからね。所詮は冒険譚もどきですからね。ワンピースとかマギみたいなワクワクの止まらない大冒険とか期待しないでくださいね! ふぁもにかとの約束ですからね! ね!
1話 複雑な立場なのです!
元の艦娘の体を取り戻す。普通に考えれば叶う可能性の著しく低い目標を胸に第参鎮守府から旅立った暁型駆逐艦四番艦・電。姫級の深海棲艦の体を持つ電の目的地はかつて電が雷を庇って轟沈した地点である。どこに存在するかわからない、黒い歯車の謎の機構。その場所へたどり着くためには、まず自身が轟沈した場所へ向かうのが先決だと判断したのだ。
そうして。天気は快晴で、艦娘にとっても深海棲艦にとっても良い航行日和である中。目的地へとテクテク歩く電の表情は浮かないものとなっていた。しかし、それは決して第参鎮守府の仲間たちに別れを告げて一人ぼっちの旅を始めたからではない。己が轟沈した、苦い思い出の残る場所へ向かおうと決めたからではない。
「オ腹、スイタノデス……」
お腹と背中とがくっつきそうなほどに飢えていたからだ。そう、電は全然考えてなかったのだ。決意を固めて衝動のまま抜錨したまではよかったが。旅自体が突発的に思いついたアイディアだったせいか、己の食事のことは全く視野に入れていなかったのだ。しかも、よくよく考えれば電は前日のパーティーで食べた食べ物も飲み物も漏れなく吐き出している。前日から何も食べてないと言っていい今の電が食欲に苛まれないわけがなかった。
深海棲艦は料理一般を受けつけない。だが、さすがに活動を続けるために必要だと思われる燃料まで受けつけないことはないだろう。幸い、燃料などを確保できる海域はすぐ近くにある。でも、そこからある程度の燃料を回収できるにはできるが、所詮微々たるものだ。それで丸一日食事を抜いた形となる電の食欲を満たすことは期待できない。
「補給、ドウシヨウ……」
電は途方に暮れて立ち止まる。まだ第参鎮守府を出発してから数時間しか経過していないため、一旦鎮守府に戻るのも選択肢だ。けど、わざわざ仲間たちに大々的に見送ってもらったのに、すぐに第参鎮守府に引き返すなんて情けない真似はしたくない。電は羞恥心と空腹感とを天秤にかけて己がどうするべきかをムムムと悩む。
と、ここで。小柄な電が装備するにしてはやたらごつい艤装の中から小人たちがにょきっと顔を出す。そして、お腹を鳴らす電にニコニコ笑顔でアイディアを提供する。
『艦娘喰えば、万事解決じゃね?』
『艦娘ムシャムシャ、美味しそう!』
『艦娘狩ろうぜ、人間でもいいぜ!』
『いや、むしろ人間解体ショーが先だろ!』
『一日一人間か、心躍るぜ!』
(あ、相変わらず黒妖精さんたちは物騒なのです……)
普通に考えれば恐ろしいことをきゃいきゃい楽しそうに話してくる小人たちをよそに、電は深々とため息を吐く。
この穏やかじゃない提案を投げかける小人たちもまた妖精である。だが、その容姿は鎮守府に住まい、人類に味方する妖精たちとは大きく異なる。手のひらサイズの身体こそ同じだが、白と黒のみで表現された小さい体躯は深海棲艦の特徴と合致する。
病的なほどに真っ白な肌。どす黒さが目立つ真っ黒な髪。これらを併せ持ち、深海棲艦の味方をするこの妖精たちは、電が第参鎮守府から飛び出て半刻経過した辺りから、電の艤装から姿を現したのだ。妖精たち曰く、第参鎮守府内で一切姿を現さなかったのは、わざわざ敵地で姿を晒したくなかったからだそうだ。
そんなわけで、思わぬ形で旅の同行者を手に入れた電。とりあえず電は鎮守府に住まう妖精たちと深海棲艦を味方するこの妖精たちとを差別化するため、便宜上、彼女たちを『黒妖精』と呼んでいる。理由は単に黒妖精の思考回路が何かと殺伐としているからだ。
『ほら、行こうぜ』
『楽しい艦娘ハントだ!』
「ソンナノ、オ断リナノデス」
『ちぇー』
『つまんねえのー』
電に艦娘を襲う意思がないと知るや黒妖精たちは不満に頬を膨らませながら艤装に引っ込む。いくら内容が物騒とはいえ、黒妖精たちの純粋な楽しみを無下に奪ってしまった電。何だか急に申し訳なくなって「ゴメンナサイ」とつい謝る。
と、その直後。電の前方から何者かが顔を出す。ザバァと水を割るようにして姿を現したのは、空母ヲ級。牙剥き出しの趣味の悪い帽子らしきものに比較的人間に近い体躯が特徴的な空母ヲ級の登場に電は反射的に艤装を構える。が、対する空母ヲ級はしばし電の態度を不思議そうに見つめた後、まるで何事もなかったかのように、海中に両手を突き出し、海からドラム缶を引き揚げた。
(あ、そっか。今の私の体は深海棲艦。すっかり忘れてたのです)
今の自分が深海棲艦の体を持つ以上、空母ヲ級に攻撃される心配はない。電は空母ヲ級目線で不可解な行動を取ってしまったことに少々羞恥心を抱きつつも、攻撃体勢を解除する。一方、空母ヲ級は両手いっぱいにドラム缶を抱え、電のすぐ目の前にビチャと置いた。
「エ、エット。ソノドラム缶ヲ私ニクレルノ?」
「……」
ドラム缶の横から片目を覗かせ、電の反応を待つ空母ヲ級。電がドラム缶を指差して問いかけると、無言ながらコクリと頷いてくる。そして空母ヲ級は己の持つ怪力をもってドラム缶の蓋を素手で開けると、改めて電にズイとドラム缶を寄せる。半ば押しつけるように。
ドラム缶を受け取った電は迷わずドラム缶を傾け、中身をゴクゴク飲み始めた。ドラム缶から漏れ出る独特の匂いから燃料が入っているとわかったからだ。
「アリガトウナノデス。凄ク助カッタノデス」
「……」
飢えを満たすためにひとしきり燃料をグビグビ飲んだ電は空母ヲ級にお礼を告げる。感謝された当の空母ヲ級は無言ではあるがそこはかとなく嬉しそうだ。
(私が深海棲姫の体をしているから、大切にしてくれてるのかな?)
深海棲艦からすれば姫級の深海棲艦は艦娘攻略に重要な戦力。だからこそこの空母ヲ級は燃料枯渇に苦しむ自分を助けてくれたのか。電が空母ヲ級の行動の目的を軽く予測立てていると、空母ヲ級の帽子らしきものの口がグバッと開かれる。空母ヲ級は帽子の口の中に手を突っ込むと、中から手紙を掴み出した。
「コレヲ読ンデホシイノ?」
「……」
手紙を差し出す空母ヲ級に再度問いかけると、コクコク首を上下に動かす空母ヲ級。彼女は電が手紙を受け取ったことをしかとその目(&帽子らしきものの目)で確認すると、用は済んだばかりに海中へ飛び込み、姿を消した。一人ポツンと海上に残される形となった電は「ア……」と少しだけ寂しそうな声を漏らした後、手渡された手紙をその場で開封した。
『初めまして、
「ッ!?」
電は戦慄する。私の居場所が深海棲艦側に捕捉されている。第参鎮守府のことすら把握されている。深海棲艦はその気になればいつでも第参鎮守府を襲うことができる。電はあたかも何者かにガシッと心臓を握られたかのような心境に駆られつつ、手紙の続きに目を向ける。
『燃料や弾薬の補給に関しては適宜ヲ級を派遣しますので、心配しないでください。もし手数が欲しい時は海中へ向けて貴女が抱える負の感情を解き放ってください。そうすれば、貴女の魅力的な負の感情に惹かれて深海棲艦たちが集まるでしょう。貴女の負の感情が強ければ強いほど、たくさんの深海棲艦が、あるいは強力な深海棲艦が貴女の元へ参上し、惜しみなく力を貸してくれることでしょう。遊撃たる貴女の働きが、一秒でも早く人類を滅ぼす一助となると信じて。
「……」
一通り手紙を読み終えた電はしばし沈黙する。手紙の文言を反芻して、魂甲棲姫とやらの思惑が理解できずに首を傾げる。
(魂甲棲姫は一体何を考えているのでしょうか?)
深海棲艦側の組織形態がどうなっているかはわからない。でも、深海棲艦が人類や艦娘の殲滅を望んでいる以上、私を通して第参鎮守府の場所を発見できたのなら、すぐにでも大規模な部隊を編成して襲撃するのが普通なはずだ。なのに、魂甲棲姫は第参鎮守府への襲撃の時期を私に一任している。第参鎮守府に滞在し、艦娘を誰一人に傷つけずに出ていくような、人類や艦娘の殲滅に非積極的だと想定される私に、深海棲艦側に不利益をもたらす可能性が比較的高い私に遊撃として好きなように行動しろとの指示を出してくる。
(――でも、これは好都合なのです)
どうやら今の自分は深海棲艦側の中核の立場にいるであろう魂甲棲姫の手のひらの上らしい。が、深海棲艦側の偉い存在に自由行動を認められたことは、電にとって非常に好都合だ。魂甲棲姫の意図は読めない。だが、少なくとも何らかの形で私を利用するつもりなのは確かだ。なら、私の方も魂甲棲姫を利用し返さないと損だ。
魂甲棲姫に敵視されないよう気をつけながら、元の体を取り戻す手段を見つける。旅の方針を決めた電は手紙を服のポケットに入れ、かつて自分が轟沈した地点へ向かっての歩みを再開する。今の電に、深海棲艦として人類や艦娘に敵対するつもりは欠片もなかった。
電→深海棲艦の体に艦娘の心を宿した暁型駆逐艦四番艦。深海棲艦側から『電轟棲姫』と命名されている。遊撃の名目の元、比較的自由に元の体を取り戻す手段を探れるようになった。
黒妖精→今まで電の艤装に身を潜めていた謎の存在。人間や艦娘を殲滅したい深海棲艦を全面的に支持しており、電とは価値観が合わない。性格のモデルとしてチャチャゼロを参考にしている。
空母ヲ級→高威力の航空攻撃に定評のある深海棲艦。この作品では無言キャラをやっている。可愛い。この度、姫級な電に燃料や弾薬などを供給する役回りを魂甲棲姫から命じられた。
魂甲棲姫→オリジナルの深海棲姫。深海棲艦側の偉い地位に就いている。何やら企んでいる模様。
というわけで第1章1話は終了です。鎮守府を離れると途端に艦娘の出番がなくなってしまうのが困りものですね。私的にはもっと色んな艦娘を登場させたいのですが、今は我慢の時なのです。