どうも、ふぁもにかです。ふと改めて今後の話の展開を脳内妄想で再構成して思ったことが1つ。この第1章、もしかしたらプロローグよりも話数少なくなるかもしれません。これが見切り発車作品ゆえの想定外事項、何と恐ろしい。
電(プロローグよりも文章量も話数も少ない本編第1章って一体……)
深海棲艦側から
と、ここで。電は海上に深海棲艦の存在を捉えた。その人に限りなく近い体系をした深海棲艦は海の下を凝視している。一目見て、彼女が自分と同じ、姫型の深海棲艦だと理解した。電は今まで見たことのない彼女との距離を詰める。今の電は、相手が深海棲艦だからと、艦娘の時と同様に武器を構えるような真似はしない。電は過去からきっちり教訓を学び取る艦娘なのである。
「アノ、何ヲシテイルノデスカ?」
電が首をコテンと傾けて問いかけると、海中に真剣に視線を注いでいた深海棲姫はたった今電の存在に気づいたと言わんばかりに顔を上げる。そして、当の深海棲姫は「オ魚、追イカケテル! アイツ、スバシッコイ!」と、元気いっぱいに電の質問に答える。
「オ魚サン、ナノデス?」
「ウム。アイツハ優秀ダ! イクラ捕マエヨウトシテモ逃ゲラレテシマウ。悔シイ!」
「ハ、ハァ……」
足元の水面下には悠々と泳ぐイワシの群れ。その最前線で群れを率いる、一回り大きいイワシを指差して深海棲姫は率直に感情を表出させる。電がどう反応すればいいのか迷っていると、ガシッと電の手を深海棲姫の両手で掴まれた。
「手数ガ欲シイ! 協力シテクレ! 一緒ニ、アノイケ好カナイ生意気ナ魚ヲ手中ニ収メ、負ケヲ認メサセルンダ!」
「ワ、私モデスカ!?」
「当タリ前ダ! オ前モ姫ダロ! 姫ガ二人イレバ最強ダ! 勝テナイ奴ナンテイナイ!」
深海棲姫のキラキラとした眼差しは自身の協力要請を突っぱねられることを欠片も想定していない。電は人一倍優しい性格をしている。深海棲姫の純粋な期待を裏切る真似は、できなかった。
「……ワカッタノデス」
「ヤッタ! ジャア――エト。オ前、名前何ダ?」
「私? 私ハイナヅ……電轟棲姫ナノデス」
電に指示を下そうとした深海棲姫はここで電の名前を知らないことに気づき、尋ねる。電は艦娘として問いに応じようとしたが、しばし考えた後、深海棲艦側に命名された名前を告げる。その方が
「電轟棲姫、電轟棲姫、電轟棲姫。~~~ッ! 長イ! 『デンチャン』デイイヤ!」
「デ、デンチャン!?」
「私ハ奈落棲姫! 好キニ呼ベ!」
「……ジャア、『ナッチャン』ッテ呼ブネ」
「ナッチャンカ、イイナソレ!」
深海棲姫、もとい奈落棲姫から名前を覚えられないからと愛称をつけられた電は自分だけ真面目に名前を呼ぶのもどうかと思い、己が言いやすい愛称を奈落棲姫につけ返す。奈落棲姫は『ナッチャン』との相性の語呂が気に入ったのか、何度か『ナッチャン』『ナッチャン』と繰り返す。
「ヨシ、ジャア始メルゾ! 私ハアッチデ潜ッテ群レヲ誘導スルカラ、デンチャンハソッチデ潜ッテ待機シテ、奴ガ来タラ捕マエテ! 挟ミ撃チデアノ憎タラシイ魚ニ打チ勝ツゾ!」
「ハイナノデス」
体に馴染ませるように『ナッチャン』と繰り返し口に出していた奈落棲姫は挟撃作戦でリーダー格のイワシを捕まえる旨を電に伝える。電から少し離れた地点でドボンと海中へと身を投じる奈落棲姫。その様子を見届けた後、電も海中へと潜る。
(どうしてこんな展開になったのでしょうか。でも、やるからには真剣にいかないとお魚さんにもナッちゃんにも失礼なのです。……電の本気を見るのです!)
◇◇◇
(お魚さんには勝てなかったのです……)
結局、イワシは捕まえられなかった。チャンスはたくさんあった。奈落棲姫が砲撃やその身をもって群れを電の方へと導いてくれるも、電がリーダー格のイワシを素手キャッチしようとした所でリーダー格は華麗に身を翻して電の手から逃れてのける。電が群れの誘導役、奈落棲姫がリーダー格の捕獲役と役割交代をしても結果は同じ。
失敗を重ねる度にリーダー格のイワシが敢えて目の濁りを増して「雑魚乙www」と煽っているように思えて。口がニヤリと弧を描いているように思えて。ムキになった電と奈落棲姫は何度もリーダー格の捕獲にチャレンジした。その結果、もう日没から数時間が経過していた。
得られたものは何もない。失ったのは体力と気力と弾薬と燃料。だけど、電の心はなぜか満たされていた。こんなにも楽しいと思えたのはいつぶりだろうか。少なくとも、深海棲艦の体になってからは初めてだ。
「キョ、今日ノ所ハ見逃シテヤル。ダガ、次ハナイカラナ! 覚エテロ、魚!」
体力を使い果たし水面に上がった奈落棲姫は相変わらず真下の海で悠然と群れを導いているリーダー格のイワシに負け惜しみ染みた捨て台詞を吐く。ガルルルと唸りながら群れを睨む奈落棲姫。自分よりも身体の大きい奈落棲姫が自分より遥かに子供っぽいことへの微笑ましさに、電はふと「フフッ」と笑みを零す。
「ア、ヤット笑ッタ!」
「ヘ? イキナリドウシタノ?」
「デンチャン、最初怖イ顔シテタ! 怖イ顔ノママダト疲レル! 遊ブ時ハ全力デ楽シム! 真面目ナ時ハチャントヤル! メリハリガ大事ダッテ友達ガ言ッテタ!」
「……モシカシテ、協力シテッテ頼ンデキタノハ?」
「ウン! 笑顔ハ大切ダカラナ!」
奈落棲姫はニッカリ笑う。電は目を見開き、そして奈落棲姫に応じるように微笑んだ。奈落棲姫と一緒に遊んだことで、自覚できた。私は、少々気を張り詰めすぎていたのかもしれない。元は艦娘だったのに深海棲艦となってしまったことを深刻に捉えすぎていたのかもしれない。魂甲棲姫からの思惑を、見えないプレッシャーを意識しすぎていたのかもしれない。
己の状況をしっかり見据えることは間違いじゃない。だけど、私は少しばかり神経を尖らせすぎていた。己の心境を打ち明けられる仲間が今はいないせいか、深海棲艦化した今の自分の今後を真面目に考えすぎていた。それじゃあいつか私の心は壊れてしまう。空気を送り続けた風船がいつか破裂してしまうように。だから、息抜きが必要なのだ。今日のように、頭を空っぽにして遊ぶ時間を設けるのも、元の体を取り戻すために必要なことなんだ。決して時間の無駄じゃないのだ。
(ゆっくりでいいんだ。私は私のペースで旅を続ければいい。少しのんびりしたぐらいで、元の体を取り戻す手掛かりは逃げたりしないんだから)
「アリガトウナノデス、ナッチャン」
「ドウイタシマシテ! 私モデンチャント一緒ニ遊ベテ楽シカッタゾ! オ互イ様ダ!」
わざわざ電に大切なことを教えてくれた奈落棲姫にペコリと頭を下げて感謝の言葉を告げると、奈落棲姫は相変わらずのハイテンションで返事する。そして、奈落棲姫は何を思ったか、右足を中心にグルングルンと回転し始める。
「魚トノ戦イハ楽シイ! 真ッ黒ナグルグル歯車ヲ見ルノモ楽シイ! デモ、コノ世ニハモット楽シイモノガアル! 何ダト思ウ?」
「エ、エット……何ナノデス?」
「――夜戦ダッ!」
「ッ!?」
「夜戦ハイイゾ! 超絶楽シイゾ、夜戦! ヨクワカラナイガ、太陽ガ沈ンデ夜ニナルト、スッゴクワクワクスル! 夜戦ハ最高ダ!」
クワッと劇画調の表情を貼りつけて夜戦というキーワードを前面に押し出してきた奈落棲姫。電は今度こそ驚愕に目を見開く。電には覚えがあった。第弐鎮守府に所属しており、川内型軽巡洋艦三番艦・那珂(※第参鎮守府所属)の姉である川内型軽巡洋艦一番艦・川内もまた、夜戦をこよなく愛し、事あるごとに身近の艦娘や提督に夜戦を推していたことに。
「エ、ウソ……マサカ、ナッチャンハ――川内サンナノデスカ!?」
「ン、川内? 何ソレ、新タナオ魚?」
「……ワカラナイノデス?」
「ワカラナイ! デモ、川内、川内……何カ懐カシイ響キダナ! 不思議ダ!」
電は奈落棲姫のウソ偽りのない回答からほぼ確信する。目の前の奈落棲姫の正体が深海棲艦化した川内であることを。もしかしたら単に川内と同じく夜戦が大好きな姫級かもしれない。けど、川内も2か月前に轟沈している。訃報を聞いた那珂の落ち込みっぷりが凄まじく印象的だったことを電は覚えている。深海棲艦の体を抱えることになった電と条件が一致している。『奈落棲姫=川内』説を視野に入れないわけがなかった。
(もしも奈落棲姫が川内さんなら、深海棲艦になった艦娘は私だけじゃないってことになるのです。でも、仮にそうだとして、今の奈落棲姫の状態はどうなっているのでしょう? もしかして、艦娘だった頃の記憶を忘れているとか?)
「夜戦、ドウダ? 夜戦夜戦!」
「……」
「デンチャン? ドウシタ!?」
「ア、ナッチャン! ゴメンナサイ、話ヲ聞イテナカッタノデス」
「ナライッパイ言ウ! デンチャン! 私ト今カラ一緒ニ夜戦ヤラナイカ!? サッキノ魚獲リヨリ何百倍モ面白イゾ!」
自分と同じ状況に陥った可能性の高い艦娘がすぐ目の前にいる。奈落棲姫のことを深く考え込む電はそれゆえに奈落棲姫のお誘いを無視する。奈落棲姫に顔を覗き込まれて初めてハッと我に返った電は改めて奈落棲姫に夜戦の誘いを受けるも、奈落棲姫について考察したいことが増えた今の電に、頭を空にして遊びたい感情はなかった。
「ゴメンナサイ。今日ハモウ疲レチャッタカラ、マタ次ノ機会ニシテホシイノデス」
「エー。ムム、デモ無理強イハダメカ……ジャア次ハ夜戦ダ! 約束ダゾ!」
奈落棲姫は電を何が何でも巻き込んで夜戦を楽しみたい感情と、電の都合を無視して強引に夜戦に引き込んではいけないとの感情との板挟みの末に、またの機会に電と夜戦を共にする選択肢を選び、ピンと伸ばした小指を電へ向ける。奈落棲姫の意図を汲み取った電は「ハイ、約束ナノデス」と指切りげんまんをする。その後、電は奈落棲姫に尋ねる。自分と同じで、深海棲艦化したであろう艦娘の今の心境を聞きたくなったのだ。
「ナッチャン。1ツ、聞イテイイ?」
「オ、何ダ?」
「ナッチャンハ人間ヤ艦娘ノコト、ドウ思ッテル?」
「憎イゾ! 憎イニ決マッテル! 奴ラハ私タチ深海棲艦ノ怨敵ダ!」
「ソッカ……」
歯を剥き出しにして怨恨の念をぶちまける、元艦娘なはずの奈落棲姫を前に、電の心は沈鬱に沈む。艦娘の心を抱え持つ以上わかっていたことだが、自分が深海棲艦としても異端であることを嫌でも思い知らされることは、思いの外心に響いた。
「デモ、奴ラハ敵ダケド、皆ガ皆、悪ジャナイ! 良イ奴モタマニイル! 私ニ友好的ナ優シイ艦娘モイル!」
「エ?」
「ダカラ、私ハ襲イカカッテキタ奴ダケ返リ討チニスルコトニシテル! 私ハ敵ニ攻撃サレテ嬉シイマゾジャナイカラナ!」
が、続けざまに奈落棲姫が紡いだ言葉に電は沈んだ心が掬い上げられる錯覚を抱く。深海棲艦だからといって人類や艦娘に敵対感情を抱いていないといけないわけじゃない。深海棲艦だからといって己の信条を捻じ曲げて人類や艦娘を否定しないといけないわけじゃない。そのことは、電を確かに安堵させた。
(……そっか。深海棲艦でもそういう考え方を持っていてもいいんだね)
「デンチャンハドウダ? ドウ思ッテル?」
「ンー。私モナッチャンノ考エト一緒カナ?」
「オオ、私トオ揃イカ! イイナ! 同志ダナ!」
「ハイ、同志ナノデス!」
電と奈落棲姫は互いに笑い合う。この時、二人は友達になった。言葉に出して自分たちが友達かどうか確認したわけじゃない。が、似たような価値観を共有し合い、意気投合する二人は、第三者目線ではどう見ても友達のそれだった。
◇◇◇
(今日はとっても楽しかったのです)
奈落棲姫と別れ、例の無人島に上陸した電は砂浜に体育座りをして体を休める。と、ここで。奈落棲姫との出会いを脳内で振り返っていた電は「アッ!」と気づく。
――魚トノ戦イハ楽シイ! 真ッ黒ナグルグル歯車ヲ見ルノモ楽シイ!
――真ッ黒ナグルグル歯車ヲ見ルノモ楽シイ!
奈落棲姫が電が目的地と定めた黒い歯車の機構についてサラッと言及していたことに、電は今になってようやく気づいた。『奈落棲姫=川内』説のインパクトの強さのせいで、今の今まで気づけなかったのだ。
「……マァ、イイカ」
が、電はその事実に焦るのでなく、ただ夜の海を見つめる。元の体を取り戻すという目的達成を焦りすぎてもいいことはないと教えてくれた友達のおかげである。
(次、どこかで会ったら聞いてみるのです)
元の体を取り戻すことを急がなくていいのだから。ゆっくりでいいのだから。
電はふと視線を頭上へ向ける。人工的な光源のない無人島から見上げた星は、大小様々で、それぞれの色とりどりの輝きを精一杯放っていた。
電→深海棲艦の体に艦娘の心を宿した暁型駆逐艦四番艦。この度、深海棲姫の友達ができた。
奈落棲姫→これまたオリジナルの深海棲姫。純真な子供のような性格をしている。ただいま『奈落棲姫=川内』説の疑いがかけられている。
リーダー格のイワシ「>゜)))>< ニヤリ」
電&奈落棲姫「「カッチーン(`・д・´)」」
というわけで、第1章2話は終了です。元艦娘の疑いのあるオリジナル深海棲姫と仲良くなる話でしたね。にしても、深海棲艦同士の会話はカタカナが多くて読みにくいのが難点ですね。今後、深海棲艦の台詞が多くなるようなら対策を講じなければならなくなりそうです。例えば、新たに深海棲艦の台詞用の鍵カッコ(例.【】)でも使って区別化するとか検討しなきゃですね。