「遠慮じゃなくて私、緑茶は飲めないんです」
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クロボウと私(クロわた)
:第10話<天然娘>(常新2版)
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<<訪問者:天然娘>>
私はアパート前に降りてきた彼女に問いかけた。
「あの……何か?」
「ちょっと、ご相談が」
恥ずかしそうに言うアズミさん。何だろう、毛むくじゃらなのに可愛いい。やっぱアニメとかイラストと違って、本物は”生きて”いるから超リアルだ……と、私は勝手に妄想していた。
そんな彼女が困っているのだ。ここは話を聞いてあげよう。
「じゃ、部屋に入りますか?」
「済みません」
私は両手に買い物袋を下げて、入口から入ろうとした。アズミさんが、ドアを開けてくれたので、私は会釈をしてそのまま部屋に入る。直ぐに後から、アズミさんがついて来る。
私は買い物袋を冷蔵庫の上において、アズミさんを自分の部屋に案内した。えっと……座布団くらいしかない。めったに来客が無いから、接待の道具が無いんだよな。
「ごめんなさい、本当に何もなくて」
私が詫びながら、ちょっと思案していると、アズミさんは言った。
「あの、お構いなく」
気を取り直したように私は言った。
「そうだ、お茶入れますね」
でも彼女は、手を開いて左右に振るしぐさをした。
「あ、良いです。遠慮じゃなくて私、本当に緑茶は飲めないんです」
「すると、これもダメ?」
私は買物袋からお菓子の袋を取り出して、確認をした。アズミさんは軽くうなづいた。なるほど限りなくナチュラルでないと、天狗って言うのはダメなのだなあ。本当に天然娘なんだ……あ、ちょっと意味は違うけど、私はその事実に妙に感心した。
<<再訪者:アズミさん>>
「私、あまり長居が出来なくて……直ぐに済みますから」
微妙に慌てたような素振りを見せるアズミさん。本当に時間が無さそうなので私も直ぐに、彼女の近くに座った。
「相談って……私で役に立つのかな?」
これが正直な感想だ。だって天狗が困ることって、普通じゃないよね。
「あのクロボウさんが、何かのトラブルに巻き込まれていることは、ご存知ですよね」
「うん、何となくだけど」
「私としては、何とか止めさせたいんです」
「どっちを?」
「その、クロボウさんが、開発反対派の中心であることを」
ははあ、あの大山の開発の話題だと私は思った。
「でも、私が言っても彼は聞かないでしょ?」
「今すぐでなくても良いです。そういう状況だってことだけ、今はアナタに分かって貰えたら良いのです」
彼女は、そう言いながら懐から黒い短刀を取り出した。私は焦った。
<<結界:お守り>>
「あ、怖がらなくて大丈夫です。これは、念のためのお守りです」
「お守り?」
「はい、クロボウさんが反対派に居ると、いろいろ危ないのです。今はアナタには直接、危害は加わっていないのですが、これからは、正直どうなるか分かりません」
そう言いつつ彼女は短刀を、私のひざの前に押し出した。
「いや、受け取れません」
私は慌てて押し戻した。短刀も要らないけど、これ以上かかわると、何か大きなトラブルに巻き込まれる気配を感じるのだ。
アズミさんは困ったような顔をした。
「クロボウさんが居るときは、このアパートにも結界が張られていたのですが、今はなくなっています。いま私が来たときににも、屋根から簡単な結界を張ったのですが、実はここも発見されていて、もう推進派に狙われているのです」
「ちょ……」
狙われているとか、全然分からないし。そもそも、そっちから勝手に巻き込んでおいて、何?危ないって?冗談じゃないって。そんな短刀持ち込むからでしょ?いや、それ以前に、あの宝珠が私が危なくなった原因かもしれない。私は急に腹が立って来た。
「出てって!短刀も要らないから。宝珠も返す」
そう言いながら、私は小座布団の上の小さい玉を取ろうとした。
「あ、待って!」
振り返って驚いた。アズミさん、泣いているのだ。そんな、大げさな。私が加わろうが、関係ないと思うんだけど。
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※これはオリジナル作品です。1~8話までは
『《第2回》ハーメルン小説コンテスト』入賞作品です
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PS:(クロわた)とは、クロボウと私の略です。